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2019-06-14 19:41
by Kristin Neumann
  Last edited:

自閉症が消化管マイクロバイオームの変化と相関

自閉症が消化管マイクロバイオームの変化と相関

自閉スペクトラム症(ASD)は神経・発達障害で、患者と他者との関わり方に影響を及ぼします。ASDには遺伝要因と環境要因の両方が関わっています。ほとんどのASD患者では、下痢、便秘、鼓腸などの胃腸症状が随伴しています。このことは消化管マイクロバイオームとASDに相関があることを強く示しています。消化管マイクロバイオームは腸脳軸を通じて神経系に影響を及ぼしている可能性があります。消化管マイクロバイオームの乱れによって生み出される細菌毒が、神経内分泌や神経免疫、自律神経系に影響を及ぼしていることを示す証拠が多く見つかっています。

ASD患者の腸管では透過性が上昇している

消化管の状態がASDに影響するというエビデンスを支持する重要な事実は、ASD患者では腸管の透過性が上昇しており、「腸管壁浸漏」と呼ばれる状態になっていることです。また、ASD患者では血液脳関門に障害があり、細菌代謝物や細菌毒が容易に神経系に到達するようになっています。

消化管マイクロバイオームのディスバイオーシス(乱れ)と相関する他の障害と同様に(参考:「傷ついたマイクロバイオームが健康に及ぼす影響」)、ASDはマイクロバイオームが傷ついた子供でよく見られます。妊娠中の母親の肥満、帝王切開、人工栄養、妊娠中から生後3年目までの抗生物質投与などの環境要因が、ASDのリスクを高める恐れがあります。ASDの小児では、平均的により早い時期により多くの抗生物質が投与されています。そのため、早い時期に小児の消化管マイクロバイオームの自然な発達が促されていれば、後に抗生物質を使う必要はなくなります。

ASD患者の消化管で微生物相が変化すると、イースト菌(カンジダ菌)の成長が促されます。イースト菌は自閉症的行動を引き起こすアンモニアと毒素を産生します。健康なマイクロバイオームであれば、カンジダ菌の増殖は防がれます

消化管の微生物相の調整が自閉症治療につながる可能性を秘めています

これまでASDには有効な治療はなく、患者の両親はASD小児の個々のニーズに合わせた治療的介入を受けていました。これまでに積み重ねられたエビデンスのすべてが、消化管の微生物相の調整がASD患者の治療につながる可能性を秘めていることを示唆しています。プロバイオティクス、プレバイオティクス、糞便細菌移植(FMT)、食事療法などが有効な選択肢になると考えられています。

乳酸桿菌やビフィズス菌のプロバイオティクスを用いた治療は、人間とマウスを対象にした複数の研究で腸障壁を強化することを示しています。しかし、マイクロバイオーム治療に関しては、まだ大規模な多施設無作為化比較対照試験が行われていません。このような試験は、特にASD患者で生じる可能性のある副作用を除外するためには不可欠です。

詳細情報(英語):

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fncel.2017.00120/full

クリスティン・ノイマン博士, 著者
クリスティン・ノイマン博士
著者

みなさん、こんにちは。微生物学者のクリスティン・ノイマンです。生命の仕組みに興味があり、分子生物学を学びました。…

ファビアン・ガイヤー, 特別寄稿者
ファビアン・ガイヤー
特別寄稿者

ファビアン・ガイヤー氏から素晴らしい特別寄稿を頂きました。
ガイヤー氏はBIOMES社コミュニケーション・チームの一員です。BIOMES社はベルリンを拠点とするバイオ企業で、一般と専門家向けのマイクロバイオーム解析を専門としています。
ガイヤー氏は熟練の「翻訳者」として、人間と細菌の仲を取り持ちます。人間と細菌の関係は長年大きく誤解されていました。

リサ・カイルホーファー, 著者
リサ・カイルホーファー
著者

レーゲンスブルク大学で学びました。
多言語化業務に携わり、フリーランスの編集者としても活躍しています。

キャラ・コーラー
キャラ・コーラー
著者

シカゴのデポール大学とドイツのバンベルク大学で学位を取得し、現在博士号取得候補者となっています。
また、フリーランスの独英翻訳者、英独コピーエディターとしても活躍しています。

インゲ・リンドセット
インゲ・リンドセット
登録栄養士

オスロ大学のインゲ・リンドセットは登録栄養士で、専門分野は糖尿病と肥満、運動療法です。エクササイズの効果を最大限に高めたり、スポーツで最高のパフォーマンスを上げるための研究を行っています。
インゲ・リンドセットについて(ノルウェー語)

マリア・ペトロヴァ博士
マリア・ペトロヴァ博士
寄稿著者

マリア博士はヒトマイクロバイオームの分野で世界的に著名な研究者です。泌尿生殖器の細菌叢とプロバイオティクスを研究しています。ベルギーのルーベン・カトリック大学とアントワープ大学で乳酸桿菌と病原菌・ウイルスの分子相互作用を研究し、博士号を取得しました。博士の大きな業績は、ポスドクフェローのときに行った乳酸桿菌の遺伝的、分子的、機能的特性の研究です。この研究によって、膣内環境下での乳酸桿菌の働きについて素晴らしい知見を得ました。
マリア・ペトロヴァ博士について(英語)

ヨハンナ・ギルブロ博士
ヨハンナ・ギルブロ博士
寄稿著者

ヨハンナ・ギルブロ博士は受賞歴のある皮ふの専門家で、ベストセラーとなった『Skin We’re In』の著者です。
博士は実験皮ふ病学、臨床研究、そしてスキンケア製品開発の分野で15年以上の経験を持っています。また、製薬企業での長い経験を持っています。皮ふ科とコスメティクスの国際会議では、最先端の研究について頻繁に講演を行っています。また、「International Journal of Cosmetic Science」誌で過去10年の間に最も多く引用された研究者でもあります。博士はアンチエイジング成分で複数の特許を取得しており、スキンケア企業でアンチエイジング治療の研究・開発マネージャーを務めています。ギルブロ博士がスキンケア分野のエキスパートであることは言うまでもありません。『Skin We’re In』の執筆が示すように、現在は私たちのような一般人に知識を伝えることを使命としています。
2019年4月の出版の以来、『Skin We’re In』は主要な販売店でベストセラーとなっています。現在、スウェーデン語版のみが刊行されています。
https://www.skinomeproject.com

ディミトリ・アレクセーエフ博士
ディミトリ・アレクセーエフ博士
寄稿著者

ディミトリ・アレクセーエフ博士は消化管マイクロバイオーム、分子生物学、バイオインフォティクス、栄養学分野の優れた研究者です。基礎研究の臨床への応用に情熱的に取り組んでいます。Atlas Biomedグループでの主な役割は、社内外の科学プロジェクトを発展させることです。博士が携わっているプロジェクトは、栄養や神経変性疾患、炎症やがんに対するマイクロバイオームの応用、英国医薬品・医療製品規制庁の承認など多岐にわたります。Atlas Biomedグループでの統合的な役割に加え、ディミトリ博士は現在サンクトペテルブルクITMO大学で助教授を務め、健康のためのアルゴリズム開発を行っています。今後、博士はオランダのフローニンゲン大学医療センター(UMCG)に移り、老化研究に携わることになっています。
ディミトリ博士について(英語)

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