細菌の系統樹
細菌の系統発生的分類
LUCA-私たちの共通祖先
地球上のすべての生命は3つのドメイン(生物学において最も高次の分類群)-細菌、古細菌、真核生物に分類されます。3つのドメインの上にはLUCA(全生物の最後の共通祖先)が存在します。
古細菌
古細菌はとても古いドメインです。外見は細菌ととても類似していますが、遺伝子と生化学的機能は非常に異なります。現在、26の進化群(門)が知られています。熱水泉や塩湖のような極限環境の生態系だけでなく、消化管やへそのような生態学的ニッチでも見つかります。
真核生物
真核生物は核と細胞小器官をもった単細胞生物で、進化的に最も新しいドメインになります。単細胞生物は、6億年前に登場し進化してきた複雑な多細胞生物の構成要素でもあります。従って、カビや藻類などの微生物の中にも真核生物に属するものがいます。真核生物は5つの進化群(門)に分類されます。
細菌
細菌ドメインは3つのドメインの中で最も多様性に富み、現在92の門があります。2016年には1,000を超える新しい細菌が発見され、科学者たちはさらに門が増えることを確信しています。
細菌の大きな多様性は次のように説明すれば分かりやすいでしょう。地球上のすべての生物を含む生命の樹をつくるなら、LUCAは木の幹の真ん中に位置し、そこから枝を大きく広げます。もし、人間が5時の方向の枝の末端に位置するとするなら、誰もが知っているハーブのバジルはどこに位置するのでしょうか?実は、私たち人間のすぐ隣、5.01時の方向の枝に位置するのです!系統樹においてハーブと人間がこれほど近いのであれば、樹の枝の他の部分はいったい何が占めているのでしょうか?それは細菌です!細菌は生命の樹のおよそ80%を占めるのです。例えば、よく知られた大腸菌が6時の方向の枝に位置するなら、乳酸連鎖球菌は12時の方向に位置することになります!
細菌の分類
細菌は観測可能な特徴(表現型と言われます)によって分類されます。
微生物学ではまず何よりも、グラム染色が最も重要な分類ツールです。グラム染色によって細菌の二種類のエンベロープ(膜)を区別することができます。グラム染色で染められるエンベロープと、染められないエンベロープがあります。 固く厚い細胞壁を持ち、細胞膨圧の高い細菌がグラム陽性細菌です。グラム陰性細菌の細胞壁は薄いのですが、さらに外膜に覆われています。グラム陰性細菌は染料で染めることができないため、このような名前が付いています。クリスチャン・グラム博士の開発した染色法には反応しないのです。
細菌はコロニーの形態によっても分類することができます。必要とする栄養素が豊富で適温の環境下で細菌を培養すると、一匹の細菌でもコロニーを形成することができます。コロニーは数百万の細菌のクローンの集合体(コングロマリット)で、肉眼でも観察することができます。細菌の種類によって、形成されるコロニーの特徴は異なります。粘液性のもの、乾燥したもの、しわのあるもの、塔状のもの、複数の色を持つものなどがあります。
細菌が動くのであれば、移動方法によって分類することができます。 細菌は泳ぎ、這い、群れで移動し、ガス胞(浮力を調整する細胞内の小胞)によって動きます。
また、特別な栄養素で細菌を培養するか、特定の温度やpHの環境下で培養すると、生理学的特徴によって分類することができます。細菌は特別な培地で成長したり、 特定の化学成分の色を変化させる酵素を放出します。
近年では遺伝子型によって分類されることが多くなっています。遺伝子型による分類はより正確です。
主要な細菌の進化群(門)の抜粋を下図に載せました。細菌の分類方法と相互の関係を見てみてください。最も高次の分類単位がドメインです。細菌は細菌ドメインに属します。ドメインの下位の分類単位が門になります。
網: バチルスまたはファーミバクテリア
目: バチルス
- 科: バチルス
バチルス (消化管や環境中の片利共生細菌) - 科: リステリア
リステリア (リステリア症の病原菌) - 科: ブドウ球菌
ブドウ球菌 (アトピー性皮膚炎の病原菌、MRSA)
目: 乳酸菌
- 科: エンテロコッカス
エンテロコッカス (消化管の片利共生細菌) - 科: 乳酸桿菌
乳酸桿菌 (消化管と膣の片利共生細菌) - 科: レンサ球菌
レンサ球菌 (口内の片利共生細菌)
網: クロストリジウム
目: クロストリジウム
- 科: クロストリジウム
クロストリジウム (消化管の片利共生細菌、食中毒の病原菌)
網: 放線菌
目: 放線菌
亜目: コリネバクテリウム
- 科: コリネバクテリウム
コリネバクテリウム (皮ふの片利共生細菌) - 科: マイコバクテリウム
マイコバクテリウム (結核の病原菌)
亜目: プロピオン酸菌
- 科: プロピオン酸菌
プロピオン酸菌 (皮ふの片利共生細菌、にきびの病原菌)
目: ビフィズス菌
- 科: ビフィズス菌
ビフィズス菌 (消化管の片利共生細菌)
網: バクテロイデス
目: バクテロイデス
- 科: バクテロイデス
バクテロイデス (消化管の片利共生細菌) - 科: プレボテラ
プレボテラ (消化管の片利共生細菌)
網: フラボバクテリウム
目: フラボバクテリウム
- 科: フラボバテクリウム
フラボバクテリウム (環境中の細菌)
網: アルファプロテオバクテリア
目: リゾビウム
- 科: リゾビウム
リゾビウム (根粒窒素固定共生細菌)
網: ベータプロテオバクテリア
目: ナイセリア
- 科: ナイセリア
ナイセリア (淋病の病原菌)
網: イプシロンプロバクテリア
目: カンピロバクター
- 科: カンピロバクター
カンピロバクター (食中毒の病原菌) - 科: ヘリコバクター
ヘリコバクター (胃の片利共生細菌)
網: ガンマプロテオバクテリア
目: 腸内細菌
- 科: 腸内細菌
エンテロバクター (消化管の片利共生細菌)
大腸菌 (消化管の片利共生細菌)
クレブシエラ (病院で見つかる危険な病原菌)
サルモネラ菌 (食中毒の病原菌)
赤痢菌 (赤痢の病原菌)
目: ビブリオ
- 科: ビブリオ
ビブリオ (コレラの病原菌)
目: レジオネラ
- 科: レジオネラ
レジオネラ (レジオネラ症の病原菌、温水管で見つかる)
目: シュードモナス
- 科: モラクセラ
アシネトバクター (病院で見つかる危険な病原菌) - 科: シュードモナス
シュードモナス (肺感染症の病原菌、 嚢胞性線維症患者で多く見つかる)
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