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2019-10-15 12:22
by DmitryAlexeev
  Last edited:

旅行時に腸の健康を保つための専門家のアドバイス


旅行時に健康を保つために、消化管マイクロバイオームに配慮するのは大切なことです。航空機への搭乗、食べ慣れていない食事、水や気候の違い、時差、そして旅行者を取り巻く細菌やウイルス、これら全ての要素が体にストレスを与え、胃に望ましくない影響を及ぼします。民間の健康関連企業Atlas Biomed社のマイクロバイオーム主任研究者であるディミトリ・アレクセーエフ博士が、休暇旅行中にマイクロバイオームを健康に保つための原則を示してくれました。

問題1:睡眠不足と時差

博士のアドバイス: 食事と睡眠は普段と同じリズムを心がけてください。旅行先の時差が数時間しかないのであれば、概日リズムを乱さないスケジュールの航空チケットを選ぶようにしましょう。時差の大きい遠く離れた国に旅行するのであれば、乗り継ぎ時間が長かったり、複数回乗り継ぐ必要のあるチケットは避けましょう。

遠くの国に旅行したり、深夜便に乗る、あるいはその両方であれば、概日リズムが乱されてしまいます。

概日リズムは人間の体の天然の時計です。体内のあらゆるプロセスに指示を出し、特定の時間における体の機能のオン・オフを切り替えます。マイクロバイオームもこの時計に従います。概日リズムは体の代謝を制御しています。そのおかげで、胃液やインシュリンが食べ物を消化し、エネルギーの貯蔵や利用が可能になっています。また、細胞の維持や修復の調整、睡眠と起床に関わるホルモンの分泌を切り替えに関わっているのは言うまでもありません。概日リズムは太陽の動きや人間の日常生活(多くの人は昼間の時間に活動しています)に基づいた24時間時計に合わせて働いているのです。

アレクセーエフ博士は次のように述べています。「深夜便で睡眠不足になったり、大きな時差があることは、消化器系に大きな影響を及ぼします。消化器系は人が寝ている間に活動を休むという通常のリズムに慣れているからです。消化管の細菌の働きも普段の食事に応じて変わります。毎朝8時にフルーツとナッツを添えたオートミールを食べているのであれば、あなたの細菌は毎朝同じ栄養を期待しています。それが当然、早朝5時に空港で揚げ物を食べたら、消化管とマイクロバイオームが混乱してしまうのは当然です。

問題2:空港と飛行機での食事

博士のアドバイス:飛行機には食べ慣れた食事を持ち込んでください。空港や飛行機で食事をしなければいけないのであれば、サラダを選びましょう。新鮮な果物やナッツなどの健康に良い食品を荷物に加えてください。そして、水をたくさん飲むことを忘れないようにしましょう。

空港や飛行機での食事、そして時差が組み合わさると、非常に大きな影響があります。膨満感や消化器系の問題が引き起こされるのです。空港で購入できる食事のほとんどは、消化器に問題を起こす可能性のある単糖類を多く含んでいます。糖類は日和見な悪玉菌の急速な成長を助け、ガスを増やしたり、下痢の原因となる水分消費量の変化を起こしたりします。空港や飛行機、旅先の外国の食事で糖分量をコントロールするのは難しいため、簡単に推奨量を超えた量の糖分を摂取することになります。そして、消化管の細菌が糖分をたくさん食べ、増殖するのです。

問題 3: 旅先で旅行者を取り巻く細菌とウイルス

旅行中は多くの人々に取り囲まれることになります。そのため、風邪やインフルエンザになったり、他の伝染性のウイルスに感染するリスクが上昇します。旅行者の中には感染を予防するためにマスクをする人もいます。インフルエンザが流行していたり、特別風邪に罹りやすい体質でなければ、マスクをする必要はありません。いくつかの対策を行えば十分です。まず、手をしっかりと洗いましょう。ナガバクコのような殺菌作用のあるエッセンシャルオイルを使うのも良いかもしれません。また、休息をしっかり取り、急激な気温の変化を避けることも重要です。冷房の使用を避け、温かい機内から冷たい外に出るときはジャケットを羽織るようにしましょう。

問題 4: 水分調節

博士のアドバイス: できるだけ動くようにしましょう。飛行機が着陸したら喜んで降りましょう。朝には植物繊維を多く含む食事を食べ、アルコールを避けてください(少なくとも消化が終わるまでは)。

旅行時の免疫系の維持において、水分補給はとても大切です。また、気圧の変化は体の細胞間の水収支を変化させます。フライトの後に体がむくむのはその例です。同様に、消化管の媒質の水分量も多くなります。ポリッジなどの繊維質を多く含む食事が余分な水分の吸収を助け、消化管の過剰な便通を避けてくれます。フライト中のアルコールは水収支を乱す可能性があるので、できれば避けましょう。

また、十分に動けばリンパ系の水分を移動させることができます。そのため、ストレッチや歩行は、特に2時間以上のフライトの場合は不可欠です。できることなら、エスカレーターの代わりに階段を使い、動く歩道の代わりに歩くようにしましょう。

問題5: ストレス

博士のアドバイス:ヘッドフォンや良書、瞑想アプリなど、旅行中のストレスを解消してくれるものは何でも持っていきましょう。ヨーグルトやケフィア、あるいは薬局で買えるプロバイオティクスのサプリなどを使って、消化管マイクロバイオームと乳酸菌を維持し、ストレスの緩和を促してください。

休暇旅行はストレスに満ちています。旅のストレスは大きいため、目的地がフライトよりもずっと素晴らしいものであることを願いたくなります。ストレスは消化管の善玉菌に悪影響を及ぼし、消化を遅らせたり、気分を下げたりします。

身軽に旅行しましょう。これはスーツケースに入れる荷物だけでなく、フライト前は軽い食事にするということも意味しています。一口に食べる量を通常よりも少なくし、肉や脂肪などの重たい食事は避けましょう。

空港に早めに行くようにするのは、渋滞やセキュリティチェックの長い行列を避けるだけでなく、ストレスを避けるという意味でも良い考えです。コルチゾール値を高めることは、乳酸菌を増やすだけでなく、健康全般を維持するために重要なことです。

クリスティン・ノイマン博士, 著者
クリスティン・ノイマン博士
著者

みなさん、こんにちは。微生物学者のクリスティン・ノイマンです。生命の仕組みに興味があり、分子生物学を学びました。…

ファビアン・ガイヤー, 特別寄稿者
ファビアン・ガイヤー
特別寄稿者

ファビアン・ガイヤー氏から素晴らしい特別寄稿を頂きました。
ガイヤー氏はBIOMES社コミュニケーション・チームの一員です。BIOMES社はベルリンを拠点とするバイオ企業で、一般と専門家向けのマイクロバイオーム解析を専門としています。
ガイヤー氏は熟練の「翻訳者」として、人間と細菌の仲を取り持ちます。人間と細菌の関係は長年大きく誤解されていました。

リサ・カイルホーファー, 著者
リサ・カイルホーファー
著者

レーゲンスブルク大学で学びました。
多言語化業務に携わり、フリーランスの編集者としても活躍しています。

キャラ・コーラー
キャラ・コーラー
著者

シカゴのデポール大学とドイツのバンベルク大学で学位を取得し、現在博士号取得候補者となっています。
また、フリーランスの独英翻訳者、英独コピーエディターとしても活躍しています。

インゲ・リンドセット
インゲ・リンドセット
登録栄養士

オスロ大学のインゲ・リンドセットは登録栄養士で、専門分野は糖尿病と肥満、運動療法です。エクササイズの効果を最大限に高めたり、スポーツで最高のパフォーマンスを上げるための研究を行っています。
インゲ・リンドセットについて(ノルウェー語)

マリア・ペトロヴァ博士
マリア・ペトロヴァ博士
寄稿著者

マリア博士はヒトマイクロバイオームの分野で世界的に著名な研究者です。泌尿生殖器の細菌叢とプロバイオティクスを研究しています。ベルギーのルーベン・カトリック大学とアントワープ大学で乳酸桿菌と病原菌・ウイルスの分子相互作用を研究し、博士号を取得しました。博士の大きな業績は、ポスドクフェローのときに行った乳酸桿菌の遺伝的、分子的、機能的特性の研究です。この研究によって、膣内環境下での乳酸桿菌の働きについて素晴らしい知見を得ました。
マリア・ペトロヴァ博士について(英語)

ヨハンナ・ギルブロ博士
ヨハンナ・ギルブロ博士
寄稿著者

ヨハンナ・ギルブロ博士は受賞歴のある皮ふの専門家で、ベストセラーとなった『Skin We’re In』の著者です。
博士は実験皮ふ病学、臨床研究、そしてスキンケア製品開発の分野で15年以上の経験を持っています。また、製薬企業での長い経験を持っています。皮ふ科とコスメティクスの国際会議では、最先端の研究について頻繁に講演を行っています。また、「International Journal of Cosmetic Science」誌で過去10年の間に最も多く引用された研究者でもあります。博士はアンチエイジング成分で複数の特許を取得しており、スキンケア企業でアンチエイジング治療の研究・開発マネージャーを務めています。ギルブロ博士がスキンケア分野のエキスパートであることは言うまでもありません。『Skin We’re In』の執筆が示すように、現在は私たちのような一般人に知識を伝えることを使命としています。
2019年4月の出版の以来、『Skin We’re In』は主要な販売店でベストセラーとなっています。現在、スウェーデン語版のみが刊行されています。
https://www.skinomeproject.com

ディミトリ・アレクセーエフ博士
ディミトリ・アレクセーエフ博士
寄稿著者

ディミトリ・アレクセーエフ博士は消化管マイクロバイオーム、分子生物学、バイオインフォティクス、栄養学分野の優れた研究者です。基礎研究の臨床への応用に情熱的に取り組んでいます。Atlas Biomedグループでの主な役割は、社内外の科学プロジェクトを発展させることです。博士が携わっているプロジェクトは、栄養や神経変性疾患、炎症やがんに対するマイクロバイオームの応用、英国医薬品・医療製品規制庁の承認など多岐にわたります。Atlas Biomedグループでの統合的な役割に加え、ディミトリ博士は現在サンクトペテルブルクITMO大学で助教授を務め、健康のためのアルゴリズム開発を行っています。今後、博士はオランダのフローニンゲン大学医療センター(UMCG)に移り、老化研究に携わることになっています。
ディミトリ博士について(英語)

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