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プロバイオティクスは役に立たない?

プロバイオティクスは役に立たない?
プロバイオティクスは役に立たない?BBCの記事がプロバイオティクス製品の関係者に混乱をもたらしています。

BBCの記事がプロバイオティクスの関係者に混乱をもたらしています。イスラエルの科学者 (ワイツマン科学研究所)の科学論文に基づき、BBCはプロバイオティクスが「全く役に立たない」という見出しの記事を公表しました。しかし、この記事は気を付けて読むべきです。イスラエルの科学者ズモラたちの研究では、健常者ボランティア25名が一般的な11種の細菌を含んだカクテルを1ヶ月の間飲み続けました。研究者たちはボランティアの胃と小腸、大腸からサンプルを採取しました。参加したボランティアの半数でカクテルに含まれていた細菌は腸管を通り抜けました。残りの半数ではしばらくの間、消化管に定着しました。しかし、後者で細菌が消化管に定着していたのは、既存のマイクロバイオームの細菌が新しく入ってきた細菌を排除してしまうまでの間でした。この結果は別に驚くことではありません。また、プロバイオティクスが役に立たないことを証明するものでもありません。

私たちは、健康なマイクロバイオームの細菌が消化管の中を占めていて、外部からやってくる細菌の定着を防ぐことを知っています。健康なマイクロバイオームを持つ人々では、ほとんどの場合プロバイオティクスは予防効果しかありません(そのため、健康な人では、抗生物質を使うときや、海外旅行で悪玉菌を体内に取り込んでしまった場合にプロバイオティクスを使います)。マイクロバイオームが乱れている人では、プロバイオティクスは多くの場合に有益な効果を示します。

プロバイオティクスには確かな効果があります

この問題のもう一つのポイントは、プロバイオティクスの細菌が短時間しか消化管に定着しなかったとしても、消化管を通るときに確かな効果をもたらすということです。

さらに言えば、適切なプロバイオティクスを使うことが大切です。スーパーマーケットで販売されているプロバイオティクス製品の多くに、有益な健康効果がないことは本当でしょう。プロバイオティクスに含まれる細菌に関しては、特徴を詳細に示すことが求められます(製品に含まれる細菌株を正確に栄養表示する義務があります)。また、それぞれの細菌の推奨摂取量の記載も必要です。これらの情報が表示されていない製品は決して利用しないでください!

BBCの記事はまた、プロバイオティクスが抗生物質の投与後にマイクロバイオームの回復を遅らせる可能性があることにも言及しています。この問題については、ワイツマン科学研究所の別の論文で扱われています。論文中で科学者たちは、過去の論文と同じプロバイオティクス細菌株の混合カクテルを使っています。参加したボランティアの半数で細菌株が定着しなかったのにも関わらず(先ほど言及したとおりです)、抗生物質が投与されていた場合には、細菌株は宿主のマイクロバイオームに良い影響を与えました。プロバイオティクス製品の副作用については十分分かっているわけではないので、この結果に不安要素があるのは事実です。この研究で使われたプロバイオティクス細菌の混合カクテルには乳酸桿菌ラクトコッカスビフィズス菌、そしてレンサ球菌が含まれていますが、これらの細菌はプロバイオティクス製品で良く使われているものです。しかし、研究では正確な細菌株の名前と数量の記述されていません。これは重大な問題です。プロバイオティクスに抗生物質関連下痢症を防ぐ可能性を示すエビデンスが数多くあることからも、正しい細菌株を選ぶことはこれまで以上に重要です。

プロバイオティクスに最適な細菌株

オランダの研究グループは最近、プロバイオティクスに関するすべての臨床試験を分析した素晴らしい総論を公表しました。抗生物質関連下痢症(AAD)の減少・予防効果を考慮すると、以下の細菌種が最適なプロバイオティクス細菌として推奨されています。

  • ラクトバチルス・ラムノサス・GG (1日摂取量2 x 109 CFU)
  • ラクチバチルス・ラムノサス・GG、ラクトバチルス・アシドフィルスLA-5ビフィドバクテリウム ラクティスBB-1の混合カクテル

オランダで利用できるプロバイオティクス製品の臨床試験を分析した結果、いずれの乳製品もAADの減少に有意な効果を示さず、ラクトバチルス・ラムノサ・GGを含むサプリメント(最小使用量20億 CFU)のみ3件の臨床試験でAADに有益だとする結果を得ています。

注意してプロバイオティクス製品を選びましょう

一連の研究結果を考慮すると、適切なプロバイオティクス製品を選ぶことが、プロバイオティクスの健康効果を得るための鍵であることが分かります。また、プロバイオティクスは、健康な消化管マイクロバイオームを持つ人たちに必ずしも有益な効果をもたらす必要はありません。しかし、これはプロバイオティクスが役に立たないことを意味するものではありません。消費者と医師の両方に、適切なプロバイオティクスの選び方を周知することが重要です。やるべき仕事はたくさんあります。最善を尽くしましょう!

あなたのマイクロバイオームを救いましょう!

関連記事(英語):
isappscience.orginternationalprobiotics.org

クリスティン・ノイマン博士, 著者
クリスティン・ノイマン博士
著者

みなさん、こんにちは。微生物学者のクリスティン・ノイマンです。生命の仕組みに興味があり、分子生物学を学びました。…

ファビアン・ガイヤー, 特別寄稿者
ファビアン・ガイヤー
特別寄稿者

ファビアン・ガイヤー氏から素晴らしい特別寄稿を頂きました。
ガイヤー氏はBIOMES社コミュニケーション・チームの一員です。BIOMES社はベルリンを拠点とするバイオ企業で、一般と専門家向けのマイクロバイオーム解析を専門としています。
ガイヤー氏は熟練の「翻訳者」として、人間と細菌の仲を取り持ちます。人間と細菌の関係は長年大きく誤解されていました。

リサ・カイルホーファー, 著者
リサ・カイルホーファー
著者

レーゲンスブルク大学で学びました。
多言語化業務に携わり、フリーランスの編集者としても活躍しています。

キャラ・コーラー
キャラ・コーラー
著者

シカゴのデポール大学とドイツのバンベルク大学で学位を取得し、現在博士号取得候補者となっています。
また、フリーランスの独英翻訳者、英独コピーエディターとしても活躍しています。

インゲ・リンドセット
インゲ・リンドセット
登録栄養士

オスロ大学のインゲ・リンドセットは登録栄養士で、専門分野は糖尿病と肥満、運動療法です。エクササイズの効果を最大限に高めたり、スポーツで最高のパフォーマンスを上げるための研究を行っています。
インゲ・リンドセットについて(ノルウェー語)

マリア・ペトロヴァ博士
マリア・ペトロヴァ博士
寄稿著者

マリア博士はヒトマイクロバイオームの分野で世界的に著名な研究者です。泌尿生殖器の細菌叢とプロバイオティクスを研究しています。ベルギーのルーベン・カトリック大学とアントワープ大学で乳酸桿菌と病原菌・ウイルスの分子相互作用を研究し、博士号を取得しました。博士の大きな業績は、ポスドクフェローのときに行った乳酸桿菌の遺伝的、分子的、機能的特性の研究です。この研究によって、膣内環境下での乳酸桿菌の働きについて素晴らしい知見を得ました。
マリア・ペトロヴァ博士について(英語)

ヨハンナ・ギルブロ博士
ヨハンナ・ギルブロ博士
寄稿著者

ヨハンナ・ギルブロ博士は受賞歴のある皮ふの専門家で、ベストセラーとなった『Skin We’re In』の著者です。
博士は実験皮ふ病学、臨床研究、そしてスキンケア製品開発の分野で15年以上の経験を持っています。また、製薬企業での長い経験を持っています。皮ふ科とコスメティクスの国際会議では、最先端の研究について頻繁に講演を行っています。また、「International Journal of Cosmetic Science」誌で過去10年の間に最も多く引用された研究者でもあります。博士はアンチエイジング成分で複数の特許を取得しており、スキンケア企業でアンチエイジング治療の研究・開発マネージャーを務めています。ギルブロ博士がスキンケア分野のエキスパートであることは言うまでもありません。『Skin We’re In』の執筆が示すように、現在は私たちのような一般人に知識を伝えることを使命としています。
2019年4月の出版の以来、『Skin We’re In』は主要な販売店でベストセラーとなっています。現在、スウェーデン語版のみが刊行されています。
https://www.skinomeproject.com

ディミトリ・アレクセーエフ博士
ディミトリ・アレクセーエフ博士
寄稿著者

ディミトリ・アレクセーエフ博士は消化管マイクロバイオーム、分子生物学、バイオインフォティクス、栄養学分野の優れた研究者です。基礎研究の臨床への応用に情熱的に取り組んでいます。Atlas Biomedグループでの主な役割は、社内外の科学プロジェクトを発展させることです。博士が携わっているプロジェクトは、栄養や神経変性疾患、炎症やがんに対するマイクロバイオームの応用、英国医薬品・医療製品規制庁の承認など多岐にわたります。Atlas Biomedグループでの統合的な役割に加え、ディミトリ博士は現在サンクトペテルブルクITMO大学で助教授を務め、健康のためのアルゴリズム開発を行っています。今後、博士はオランダのフローニンゲン大学医療センター(UMCG)に移り、老化研究に携わることになっています。
ディミトリ博士について(英語)

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