今日の食事は何?調理がマイクロバイオームに及ぼす影響
私たちは何を食べるべきでしょうか?この疑問には未だに答えがありません。歴史的に考えるなら、答えは「手に入るものは何でも食べるべき」です。ですが、ものに溢れた現代では、人々は他の選択肢と採れるという恵まれた地位にあります。とはいえ、本当に恵まれていると言えるのでしょうか?少なくとも、私たちが食べるものは健康に大きな影響を及ぼします。
現代には無数の食事法があります。その中には、「原始人の食事」(新鮮な果物と野菜を中心にした食事)を主張する専門家(自称専門家も含めて)もいます。「原始人の食事」の背景にある考えは、人間の遺伝子は食習慣が変わるよりもずっと遅く変化し、人間の体は未だに新しい調理方法に適応していないというものです。
また、人類の発展の歴史を見れば、火と調理の発明によって食物の摂取がより簡単になり、エネルギーが余ったことで他の機能が発展(脳容量の増大など)したことが分かります。詳細は、「知性を持つ胃―人間の第二の脳」の記事をご覧ください。
なぜ調理が必要なのですか?
調理が「理に適った」ものかどうか判断するには、さまざまな現代的な道具を考えすぎるあまり、主題から離れてしまったかもしれません。そこで、まず人間はなぜ火を使って食物を調理するのかに注目して考えてみましょう。最も一般的な答えはもちろん、温かい食事は体の内部から温めてくれるというものです。これは特に、北方の国に住む人々には冬に恩恵をもたらしてくれます。衛生の観点から考えると、食物を熱することは食物の内外に存在する病原菌や好ましからざる存在を排除してくれることになります。特に幼児や子供、老人や妊婦にとって、調理は病気を防ぐ効果的な手段です。また、少なくとも、調理によって食物の構造や化学的組成を変化させ、より消化しやすいものに変えることができます。
食物を調理するかどうかで違いはあるのですか?
調理した食事と未調理の食事が人間の体に及ぼす影響について、研究は少ししかありません。カリフォルニア大学サンフランシスコ校のピーター・ターンバウ博士とハーバード大学のレイチェル・カーモディー博士の研究チームは、調理が人間のマイクロバイオームに影響を及ぼすかどうかの研究を行いました。簡潔に言えば、答えはイエスです。調理は人間のマイクロバイオームの細菌構成と多様性に影響を及ぼします。不幸なことに、これが現時点で導き出された明確な結論なのです。実際、調理が人間のマイクロバイオームに及ぼす影響は複雑なプロセスで決まります。
2019年9月に「Nature Microbiology」誌に掲載された研究を詳細に見てみましょう。先行研究が比較可能性を示した通り、この研究はマウスと人間を対象に行われました。
未調理のポテトを与えたマウスはマイクロバイオームの多様性が低下
新鮮な未調理のポテトをマウスに与えた場合、マイクロバイオームの多様性が低下しました。また、マウスの消化管の細菌の総数もわずかに減少しました。さらに、バクテロイデスがわずかに増加を示しました。バクテロイデスは生のサツマイモに含まれる多糖の糖鎖分解に必要な細菌です。マイクロバイオームの変化を引き起こした本当の要因を特定するために、科学者たちはスターチのレベルで分解性に関してリストを作成しました。次に、マウスに未調理と調理済みのジャガイモ、ビーツ、ニンジン、トウモロコシ、そして豆のエサを与えました。食物の成分を正確に分類し、食物摂取とマイクロバイオームの相関を評価できるようにしました。結果は次の通りです。未調理のジャガイモと調理済みのジャガイモのエサはサツマイモと似た結果を示しました。しかし、全ての食物に関して一般化を行うことはできません。肉類に関しても同様です。調理した肉と未調理の肉では、マイクロバイオームの変化は有意ではありませんでした。
ターンバウ博士は以下の結論を出しています。調理した食物がマイクロバイオームに及ぼす影響が、未調理の食物と部分的に異なる理由は、消化が難しいスターチを分析することで分かります。この結果はマウスに関してとても興味深いものでした。しかし、一方で、生のジャガイモやサツマイモは消化が難しいのですが、調理したジャガイミやサツマイモは人間のキッチンで見つかるものです。
試験期間中、未調理のエサを与えられたマウスは体重が減少しましたが、理論的には、体重減少はマイクロバイオームの変化と相関していると考えられます。検定交雑試験で、調理したエサを与えたマウスに「未調理のエサを与えたマウスのマイクロバイオーム」を移植しました。しかし、結果は驚くことに、このマウスは体重が増加したのです。研究チームはこの矛盾する結果の原因を追究中です。
人間に及ぼした影響は?
マウスの試験に続き、24歳から40歳の5人の健康な女性と3人の健康な男性のグループを対象に、調理した食事と未調理の食事の比較試験を行い、糞便サンプルを分析しました。まず、マウスの試験と同様に、「未調理の食事を食べたときのマイクロバイオーム」と「調理した食事を食べたときのマイクロバイオーム」で明確な違いがあるように思われました。しかし、細菌叢の変化はマウスの方がより明確でした。この研究結果は、人間とマウスの比較可能性は非常に限られていることを示しています。
また、研究結果には多くの疑問を残っています。主な結果は、食物の調理はマイクロバイオームの変化を起こし、変化は食物の種類によって大きく異なるというものでした。また、マウスと人間を比較できる部分は非常に限られており、マウスは人間の理想的な比較的対象ではないということも分かりました。そして、8人という人間の研究サンプルの数は、信頼できる結論を得るには少なすぎるということです。
ターンバウ博士とカーモディー博士の研究チームは、この研究結果を将来的に栄養療法に用いることを望んでいます。しかし、現状では、行わなければいけない研究は数多く残されています。
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