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2018年02月20日

プロバイオティクスに虫歯予防の可能性

プロバイオティクスに虫歯予防の可能性


ミュータンスレンサ球菌は虫歯のいちばんの原因となる病原菌です。

エジプトとアメリカの研究チームは、乳酸桿菌種(ラクトバチルス・カゼイラクトバチルス・ロイテリラクトバチルス・プランタルムラクトバチルス・サリバリウス)を使ったプロバイオティクスが、ミュータンスレンサ球菌のバイオフィルム形成を抑えることを発見しました。

研究チームはレンサ球菌を複数の乳酸桿菌種と一緒に培養し、調査対象の乳酸桿菌種すべてでミュータンス連鎖球菌のバイオフィルム形成が少なくなることを観察しました。

バイオフィルムの形成は、ミュータンスレンサ球菌が歯の硬組織を侵食する酸性物質を作り出す前に行う最初のステップです。

また、これらの乳酸桿菌種は研究室環境中でミュータンスレンサ球菌の成長も抑制しました。

ラクトバチルス・サリヴァリゥスは口内マイクロバイオームの一部をなす細菌ですが、この細菌が免疫系によるミュータンス連鎖球菌の抑制を手助けしているのは明らかです。

研究結果からは、プロバイオティクスが消化管の健康に貢献するだけでなく、口内マイクロバイオームのバランスも整えることも示されています。

もっと詳しい情報はこちらの記事で読めます(英語)。

2018年02月20日

私たちは本当に無菌状態で生まれるのですか?

私たちは本当に無菌状態で生まれるのですか?

私たちは本当に無菌状態で生まれるのですか?
人間は本当に無菌状態で生まれるのか―論争が起こっています。

マイクロバイオーム研究者の間で論争が起きています。子宮は無菌なのでしょうか?1世紀以上もの間、胎盤は無菌状態だと考えられてきました。

2011年以降、世界中の科学者がこの定説に疑問を呈しています。

インディラ・マイソアカーは胎盤サンプル200のうち、3分の1から細菌を検出しました。細菌は胎盤の細胞内でさえ見つかりましたが、周囲の免疫細胞は炎症を起こしていませんでした。細菌は早産だった女性だけでなく、正常分娩を行った女性からも見つかっています。また、胎盤や羊水、胎児が子宮内で排泄する胎便からも細菌は見つかりました。これらの結果は、胎児のマイクロバイオームを理解するヒントとなります。

カースティ・オーゴール博士の研究チームが胎盤の細胞から細菌のDNAを発見する

「新生児は母親の産道を通るときにマイクロバイオームを構成することになる細菌を受け取ると考えられてきましたが、オーゴール博士は妊娠した女性の膣に存在する細菌と生後1週間の幼児に存在する細菌のミスマッチに気が付きました。このズレは、マイクロバイオームが赤ん坊の誕生前から形成され始めると考えるなら納得できます。」

研究チームはすでに女性320名の胎盤を調査しており、調査対象には早産だった女性も含まれています。細菌のDNAを含んでいた胎盤は少なくなく、むしろほとんどの胎盤から細菌のDNAが見つかりました。研究チームは大腸菌などが優勢になっていた細菌群を発見しています。見つかった細菌群は、人間の口内で一般的に見つかる細菌群と最もよく一致していました。問題は、これらの細菌群はどのようにして口から胎盤にもたらされたのかということです。オーゴール博士は早産だった女性の胎盤で見つかった細菌が、正常分娩を行った女性の胎盤から見つかる細菌とは異なると主張しています。実際、胎盤には炎症を起こさない細菌が何種か存在していて、それらの細菌が胎児のマイクロバイオームを構成するという説が一つのヒントになります。

しかし、多くの科学者が胎児のマイクロバイオームという仮説には懐疑的です。

胎児のマイクロバイオームに否定的な科学者たちは、胎盤で見つかった細菌の痕跡が実験器具からの汚染であると主張しています。フィラデルフィアのサミュエル・パリー博士の研究チームは、胎盤のマイクロバイオームを調べているときに、実際にスワブやDNA精製キット、他の器具から細菌の汚染があったことを確認しました。DNAの汚染があったため、研究チームは胎盤から細菌のDNAを確認することはできませんでした。

帝王切開を行った場合に母親の膣の細菌が胎児にどのように移行するのかを研究している、マリア・ドミンゲス・ベロ博士もこの説に反論しています。マリア博士は羊膜腔が破れたときに胎児が細菌を受けとって無菌状態が終わり、このときには細菌が幼児の消化管に移行するために十分な時間があると主張しています。

「出産には時間がかかります。出産のときに赤ちゃんは産道の壁の一部を口に含み、体を擦りつけます。帝王切開で生まれるときでさえも、最初の排泄を行うまでに数時間、ときには数日かかるのです。排泄行為は子宮の外から細菌を受け取る窓のようなものです。」

胎児のマイクロバイオームが存在しないとする最も有力な証拠は、実験用の無菌マウスが存在することです。無菌マウスは通常のマイクロバイオームを持ったマウスから手術によって取り出され、その後は無菌状態で育てられます。もし胎児のマイクロバイオームが存在するのであれば、無菌マウスが70年間も使われ続けていることはないでしょう。

この論争はすぐに決着が着くでしょう。サミュエル・パリー博士の研究チームとアメリカ国立小児保健発達研究所(ミシガン州デトロイト)の産婦人科医ロバート・ロメロは多施設研究を行い、より多くの胎盤サンプルを調査することで、この問題を解決しようとしています。彼らは1年後には答えを出そうと計画しています。「この論争はすぐに解決するでしょう」とロメロは述べています。

詳細情報のリンク(英語): https://www.nature.com/articles/d41586-018-00664-8

2018年02月20日

消化管マイクロバイオームの乱れが多発性硬化症と関連

消化管マイクロバイオームの乱れが多発性硬化症と関連

消化管マイクロバイオームの乱れが多発性硬化症と関連
近い将来、マイクロバイオームの治療が多発性硬化症(MS)の治療につながると期待されています

多発性硬化症は自己免疫疾患

多発性硬化症(MS)は中枢神経系(CNS)の慢性炎症疾患です。MSは自己免疫疾患と考えられており、免疫細胞(T細胞)がミエリンペプチド(神経を保護する層)を攻撃してしまいます。その結果、MS患者は炎症と神経変性に苦しみ、感覚や運動、認知の障害を訴えます。MS発症のメカニズムは複雑で、遺伝要因と環境要因の両方が病因となっています。疾患リスクの30%が遺伝要因で、残りの70%が環境要因です。最近の研究で得られたエビデンスによると、MSの環境要因に消化管マイクロバイオームが大きく関わっていることが示唆されています。

MSや1型糖尿病、炎症性腸疾患、関節リウマチなどの自己免疫疾患患者のマイクロバイオームを解析すると、いずれの病気でも患者のマイクロバイオームが変容していることが示されています。そこには共通のパターンがあります。善玉菌が減少し、有害な細菌が増殖しているのです。

MS患者はディスバイオーシス(マイクロバイオームの乱れ)を起こしている

MS患者のマイクロバイオームの特徴を調査するために、世界中で多くの研究が行われました。それらの研究結果を比較すると、研究の全てでMS患者でディスバイオーシス(マイクロバイオームの乱れ)が起きていることが示されました。しかし、MS患者に特有の細菌の構成パターンは見つりませんでした。このことは、MS患者では特定の細菌が多かったり、逆に少なかったりするのではなく、マイクロバイオーム全体が炎症を起こす状態になっていることを意味しています。従って、マイクロバイオームのデータは慎重に取り扱う必要があります。地理環境や遺伝、解析方法や食事などの影響を考慮する必要があるのです。特定の種類の細菌を調べるのではなく、マイクロバイオーム全体の細菌の比率変化が及ぼす影響を重視するべきです。

近い将来、MS患者(また、他の自己免疫疾患患者についても)の消化管の細菌の変化が及ぼす影響について明らかにされるはずです。そうなれば、治療法のさらなる進歩も期待できます。

MS患者に共通する細菌の構成パターンは、プレボテラ属バクテロイデス・フラジリスなどの短鎖脂肪酸(SCFA)を産生する細菌の数が少ないことです。SCFAはエネルギー源となるだけでなく、炎症反応のダウンレギュレーションを起こして免疫系に強く働きかけます。

消化管細菌叢は多発性硬化症に大きな影響を及ぼします

消化管細菌叢は、SCFAや胆汁酸、フィトエストロゲンなどのさまざまな代謝経路に影響を及ぼすことで、宿主の免疫調節を行っています。この働きがMSの発展に大きな影響を及ぼしていることは明らかです。マイクロバイオームの細菌、人間の代謝、免疫系の複雑な相互作用を明らかにするために、さらなる研究が必要です。

近い将来、マイクロバイオームの治療がMSの治療につながるはずです!

詳細情報(英語): Freedman et al., 2018

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