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2018-02-20 11:47
by Kristin Neumann
  Last edited:

私たちは本当に無菌状態で生まれるのですか?

私たちは本当に無菌状態で生まれるのですか?
人間は本当に無菌状態で生まれるのか―論争が起こっています。

マイクロバイオーム研究者の間で論争が起きています。子宮は無菌なのでしょうか?1世紀以上もの間、胎盤は無菌状態だと考えられてきました。

2011年以降、世界中の科学者がこの定説に疑問を呈しています。

インディラ・マイソアカーは胎盤サンプル200のうち、3分の1から細菌を検出しました。細菌は胎盤の細胞内でさえ見つかりましたが、周囲の免疫細胞は炎症を起こしていませんでした。細菌は早産だった女性だけでなく、正常分娩を行った女性からも見つかっています。また、胎盤や羊水、胎児が子宮内で排泄する胎便からも細菌は見つかりました。これらの結果は、胎児のマイクロバイオームを理解するヒントとなります。

カースティ・オーゴール博士の研究チームが胎盤の細胞から細菌のDNAを発見する

「新生児は母親の産道を通るときにマイクロバイオームを構成することになる細菌を受け取ると考えられてきましたが、オーゴール博士は妊娠した女性の膣に存在する細菌と生後1週間の幼児に存在する細菌のミスマッチに気が付きました。このズレは、マイクロバイオームが赤ん坊の誕生前から形成され始めると考えるなら納得できます。」

研究チームはすでに女性320名の胎盤を調査しており、調査対象には早産だった女性も含まれています。細菌のDNAを含んでいた胎盤は少なくなく、むしろほとんどの胎盤から細菌のDNAが見つかりました。研究チームは大腸菌などが優勢になっていた細菌群を発見しています。見つかった細菌群は、人間の口内で一般的に見つかる細菌群と最もよく一致していました。問題は、これらの細菌群はどのようにして口から胎盤にもたらされたのかということです。オーゴール博士は早産だった女性の胎盤で見つかった細菌が、正常分娩を行った女性の胎盤から見つかる細菌とは異なると主張しています。実際、胎盤には炎症を起こさない細菌が何種か存在していて、それらの細菌が胎児のマイクロバイオームを構成するという説が一つのヒントになります。

しかし、多くの科学者が胎児のマイクロバイオームという仮説には懐疑的です。

胎児のマイクロバイオームに否定的な科学者たちは、胎盤で見つかった細菌の痕跡が実験器具からの汚染であると主張しています。フィラデルフィアのサミュエル・パリー博士の研究チームは、胎盤のマイクロバイオームを調べているときに、実際にスワブやDNA精製キット、他の器具から細菌の汚染があったことを確認しました。DNAの汚染があったため、研究チームは胎盤から細菌のDNAを確認することはできませんでした。

帝王切開を行った場合に母親の膣の細菌が胎児にどのように移行するのかを研究している、マリア・ドミンゲス・ベロ博士もこの説に反論しています。マリア博士は羊膜腔が破れたときに胎児が細菌を受けとって無菌状態が終わり、このときには細菌が幼児の消化管に移行するために十分な時間があると主張しています。

「出産には時間がかかります。出産のときに赤ちゃんは産道の壁の一部を口に含み、体を擦りつけます。帝王切開で生まれるときでさえも、最初の排泄を行うまでに数時間、ときには数日かかるのです。排泄行為は子宮の外から細菌を受け取る窓のようなものです。」

胎児のマイクロバイオームが存在しないとする最も有力な証拠は、実験用の無菌マウスが存在することです。無菌マウスは通常のマイクロバイオームを持ったマウスから手術によって取り出され、その後は無菌状態で育てられます。もし胎児のマイクロバイオームが存在するのであれば、無菌マウスが70年間も使われ続けていることはないでしょう。

この論争はすぐに決着が着くでしょう。サミュエル・パリー博士の研究チームとアメリカ国立小児保健発達研究所(ミシガン州デトロイト)の産婦人科医ロバート・ロメロは多施設研究を行い、より多くの胎盤サンプルを調査することで、この問題を解決しようとしています。彼らは1年後には答えを出そうと計画しています。「この論争はすぐに解決するでしょう」とロメロは述べています。

詳細情報のリンク(英語): https://www.nature.com/articles/d41586-018-00664-8

クリスティン・ノイマン博士, 著者
クリスティン・ノイマン博士
著者

みなさん、こんにちは。微生物学者のクリスティン・ノイマンです。生命の仕組みに興味があり、分子生物学を学びました。…

ファビアン・ガイヤー, 特別寄稿者
ファビアン・ガイヤー
特別寄稿者

ファビアン・ガイヤー氏から素晴らしい特別寄稿を頂きました。
ガイヤー氏はBIOMES社コミュニケーション・チームの一員です。BIOMES社はベルリンを拠点とするバイオ企業で、一般と専門家向けのマイクロバイオーム解析を専門としています。
ガイヤー氏は熟練の「翻訳者」として、人間と細菌の仲を取り持ちます。人間と細菌の関係は長年大きく誤解されていました。

リサ・カイルホーファー, 著者
リサ・カイルホーファー
著者

レーゲンスブルク大学で学びました。
多言語化業務に携わり、フリーランスの編集者としても活躍しています。

キャラ・コーラー
キャラ・コーラー
著者

シカゴのデポール大学とドイツのバンベルク大学で学位を取得し、現在博士号取得候補者となっています。
また、フリーランスの独英翻訳者、英独コピーエディターとしても活躍しています。

インゲ・リンドセット
インゲ・リンドセット
登録栄養士

オスロ大学のインゲ・リンドセットは登録栄養士で、専門分野は糖尿病と肥満、運動療法です。エクササイズの効果を最大限に高めたり、スポーツで最高のパフォーマンスを上げるための研究を行っています。
インゲ・リンドセットについて(ノルウェー語)

マリア・ペトロヴァ博士
マリア・ペトロヴァ博士
寄稿著者

マリア博士はヒトマイクロバイオームの分野で世界的に著名な研究者です。泌尿生殖器の細菌叢とプロバイオティクスを研究しています。ベルギーのルーベン・カトリック大学とアントワープ大学で乳酸桿菌と病原菌・ウイルスの分子相互作用を研究し、博士号を取得しました。博士の大きな業績は、ポスドクフェローのときに行った乳酸桿菌の遺伝的、分子的、機能的特性の研究です。この研究によって、膣内環境下での乳酸桿菌の働きについて素晴らしい知見を得ました。
マリア・ペトロヴァ博士について(英語)

ヨハンナ・ギルブロ博士
ヨハンナ・ギルブロ博士
寄稿著者

ヨハンナ・ギルブロ博士は受賞歴のある皮ふの専門家で、ベストセラーとなった『Skin We’re In』の著者です。
博士は実験皮ふ病学、臨床研究、そしてスキンケア製品開発の分野で15年以上の経験を持っています。また、製薬企業での長い経験を持っています。皮ふ科とコスメティクスの国際会議では、最先端の研究について頻繁に講演を行っています。また、「International Journal of Cosmetic Science」誌で過去10年の間に最も多く引用された研究者でもあります。博士はアンチエイジング成分で複数の特許を取得しており、スキンケア企業でアンチエイジング治療の研究・開発マネージャーを務めています。ギルブロ博士がスキンケア分野のエキスパートであることは言うまでもありません。『Skin We’re In』の執筆が示すように、現在は私たちのような一般人に知識を伝えることを使命としています。
2019年4月の出版の以来、『Skin We’re In』は主要な販売店でベストセラーとなっています。現在、スウェーデン語版のみが刊行されています。
https://www.skinomeproject.com

ディミトリ・アレクセーエフ博士
ディミトリ・アレクセーエフ博士
寄稿著者

ディミトリ・アレクセーエフ博士は消化管マイクロバイオーム、分子生物学、バイオインフォティクス、栄養学分野の優れた研究者です。基礎研究の臨床への応用に情熱的に取り組んでいます。Atlas Biomedグループでの主な役割は、社内外の科学プロジェクトを発展させることです。博士が携わっているプロジェクトは、栄養や神経変性疾患、炎症やがんに対するマイクロバイオームの応用、英国医薬品・医療製品規制庁の承認など多岐にわたります。Atlas Biomedグループでの統合的な役割に加え、ディミトリ博士は現在サンクトペテルブルクITMO大学で助教授を務め、健康のためのアルゴリズム開発を行っています。今後、博士はオランダのフローニンゲン大学医療センター(UMCG)に移り、老化研究に携わることになっています。
ディミトリ博士について(英語)

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