土や泥の汚れの中にいる人間の旧友は、あなたを健康で幸福にしてくれます
「汚れることは良いこと?」-このタイトルの記事はMyMicrobiomeの中で最もよく読まれ、多くの議論を起こしました。ソーシャルメディアでの高い評価は、この記事の内容が多くの読者にとって大切なものだったことを示しています。そして、2019年5月末には、コロラド大学が土や泥の汚れに触れることが健康に良いことを解説する記事を公開しました。
衛生仮説
1989年、英国の科学者デビッド・ストラッチャンが衛生仮説を唱えました。仮説の内容は、アレルギーや喘息のような文明病の多くは、過剰に衛生的な環境で育ち、免疫系が細菌に曝されないことによって起こされるというものでした。衛生仮説によれば、小児期は汚れに接触するための大切な期間です。ロブ・ナイト教授とジャック・ギルバート教授の『子どもの人生は「腸」で決まる』では、衛生仮説が正しいことを確認し、若い家族(もちろん、他の人々も)に衛生用品の過剰な使用を控え、子供たちを土や泥の汚れの中(化学物質で汚染されていなければ)で遊ばせることを勧めています。
しかし、なぜ土や泥で汚れることは良いことなのでしょうか?
現在の研究は、衛生仮説をさらに洗練させました。定期的に土や泥などの汚れに触れている人々がより健康で幸福であることが観察され、衛生仮説を支持する有力な説明となっています。今まで、衛生仮説では、土や泥の中のホメオパシーを起こすほどの数の細菌やウイルスによって、私たちの免疫系が強化されているという説明がなされていました。しかし、最近の研究ではむしろ、土や泥の汚れの中にいる「旧友」である細菌そのものが、人間の免疫系を強化していると説明するようになっています。
今回の記事で扱っている論文の原著者であるクリストファー・ローリー教授は、マイコバクテリウム・バッカエを土や泥の中にいる人間の「旧友」として特定しました。ローリー教授は土壌で見つかるこの細菌が、人間の体の中で抗炎症効果を示すことを証明しました。齧歯類を使った試験では、マイコバクテリウム・バカエはさらに抗うつ効果も示しました。気分が突然良くなる要因として、抗炎症物質も挙げられます。
ローリー教授の研究における重要な存在は、10(z)-ヘキサデセノイック酸と呼ばれる脂質です。教授は現代的なシークエンス技術を用いてこの脂質の存在を証明しました。教授の研究ではさらに、10(z)-ヘキサデセノイック酸とマクロファージや免疫細胞の相互作用も調査していて、それらがまるで鍵と鍵穴のように一致することが発見されました。酸とマクロファージや免疫細胞の結合が成功すると、受容体(いわゆるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体、PPAR)が活性化し、抗炎症性物質を放出するのです。
これらの発見は誰に恩恵がありますか?
Tローリー教授の研究は、私たちの生活において土や泥の汚れに触れることの重要性と、過剰な衛生がもたらす危険性を改めて強調しています。しかし、教授の研究はさらにもう一歩踏み込んでいます。土や泥の汚れのストレス解消効果は、「抗ストレスワクチン」として用いることができ、現在さらに研究が行われています。兵士などの非常にストレスの大きい環境下にいる人々は、この研究から恩恵を受けられるでしょう。特定された10(z)-ヘキサデセノイック酸にはとても多くの応用が期待されています。
ローリー教授は「この発見はほんの氷山の一角だ」と確信しています。教授は健康を増進してくれる、人間の体に完璧に合う「旧友」が無数に存在することを確信しています。現代人が生活する文明化された社会では、私たちは祖先がかつて住んでいた土や泥の汚れの中で暮らす機会を失っています。ローリー教授の発見は、心身の健康を維持するために必要とされるものを示しています。
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