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2019-10-07 10:02
by Lisa Keilhofer
  Last edited:

土や泥の汚れの中にいる人間の旧友は、あなたを健康で幸福にしてくれます

土や泥の汚れの中にいる人間の旧友
土や泥の汚れの中にいる私たちの旧友、画像: © MNStudio – stock.adobe.

「汚れることは良いこと?」-このタイトルの記事はMyMicrobiomeの中で最もよく読まれ、多くの議論を起こしました。ソーシャルメディアでの高い評価は、この記事の内容が多くの読者にとって大切なものだったことを示しています。そして、2019年5月末には、コロラド大学が土や泥の汚れに触れることが健康に良いことを解説する記事を公開しました。

衛生仮説

1989年、英国の科学者デビッド・ストラッチャンが衛生仮説を唱えました。仮説の内容は、アレルギーや喘息のような文明病の多くは、過剰に衛生的な環境で育ち、免疫系が細菌に曝されないことによって起こされるというものでした。衛生仮説によれば、小児期は汚れに接触するための大切な期間です。ロブ・ナイト教授とジャック・ギルバート教授の『子どもの人生は「腸」で決まる』では、衛生仮説が正しいことを確認し、若い家族(もちろん、他の人々も)に衛生用品の過剰な使用を控え、子供たちを土や泥の汚れの中(化学物質で汚染されていなければ)で遊ばせることを勧めています。

しかし、なぜ土や泥で汚れることは良いことなのでしょうか?

現在の研究は、衛生仮説をさらに洗練させました。定期的に土や泥などの汚れに触れている人々がより健康で幸福であることが観察され、衛生仮説を支持する有力な説明となっています。今まで、衛生仮説では、土や泥の中のホメオパシーを起こすほどの数の細菌やウイルスによって、私たちの免疫系が強化されているという説明がなされていました。しかし、最近の研究ではむしろ、土や泥の汚れの中にいる「旧友」である細菌そのものが、人間の免疫系を強化していると説明するようになっています。

今回の記事で扱っている論文の原著者であるクリストファー・ローリー教授は、マイコバクテリウム・バッカエを土や泥の中にいる人間の「旧友」として特定しました。ローリー教授は土壌で見つかるこの細菌が、人間の体の中で抗炎症効果を示すことを証明しました。齧歯類を使った試験では、マイコバクテリウム・バカエはさらに抗うつ効果も示しました。気分が突然良くなる要因として、抗炎症物質も挙げられます。

ローリー教授の研究における重要な存在は、10(z)-ヘキサデセノイック酸と呼ばれる脂質です。教授は現代的なシークエンス技術を用いてこの脂質の存在を証明しました。教授の研究ではさらに、10(z)-ヘキサデセノイック酸とマクロファージや免疫細胞の相互作用も調査していて、それらがまるで鍵と鍵穴のように一致することが発見されました。酸とマクロファージや免疫細胞の結合が成功すると、受容体(いわゆるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体、PPAR)が活性化し、抗炎症性物質を放出するのです。

これらの発見は誰に恩恵がありますか?

Tローリー教授の研究は、私たちの生活において土や泥の汚れに触れることの重要性と、過剰な衛生がもたらす危険性を改めて強調しています。しかし、教授の研究はさらにもう一歩踏み込んでいます。土や泥の汚れのストレス解消効果は、「抗ストレスワクチン」として用いることができ、現在さらに研究が行われています。兵士などの非常にストレスの大きい環境下にいる人々は、この研究から恩恵を受けられるでしょう。特定された10(z)-ヘキサデセノイック酸にはとても多くの応用が期待されています。

ローリー教授は「この発見はほんの氷山の一角だ」と確信しています。教授は健康を増進してくれる、人間の体に完璧に合う「旧友」が無数に存在することを確信しています。現代人が生活する文明化された社会では、私たちは祖先がかつて住んでいた土や泥の汚れの中で暮らす機会を失っています。ローリー教授の発見は、心身の健康を維持するために必要とされるものを示しています。

クリスティン・ノイマン博士, 著者
クリスティン・ノイマン博士
著者

みなさん、こんにちは。微生物学者のクリスティン・ノイマンです。生命の仕組みに興味があり、分子生物学を学びました。…

ファビアン・ガイヤー, 特別寄稿者
ファビアン・ガイヤー
特別寄稿者

ファビアン・ガイヤー氏から素晴らしい特別寄稿を頂きました。
ガイヤー氏はBIOMES社コミュニケーション・チームの一員です。BIOMES社はベルリンを拠点とするバイオ企業で、一般と専門家向けのマイクロバイオーム解析を専門としています。
ガイヤー氏は熟練の「翻訳者」として、人間と細菌の仲を取り持ちます。人間と細菌の関係は長年大きく誤解されていました。

リサ・カイルホーファー, 著者
リサ・カイルホーファー
著者

レーゲンスブルク大学で学びました。
多言語化業務に携わり、フリーランスの編集者としても活躍しています。

キャラ・コーラー
キャラ・コーラー
著者

シカゴのデポール大学とドイツのバンベルク大学で学位を取得し、現在博士号取得候補者となっています。
また、フリーランスの独英翻訳者、英独コピーエディターとしても活躍しています。

インゲ・リンドセット
インゲ・リンドセット
登録栄養士

オスロ大学のインゲ・リンドセットは登録栄養士で、専門分野は糖尿病と肥満、運動療法です。エクササイズの効果を最大限に高めたり、スポーツで最高のパフォーマンスを上げるための研究を行っています。
インゲ・リンドセットについて(ノルウェー語)

マリア・ペトロヴァ博士
マリア・ペトロヴァ博士
寄稿著者

マリア博士はヒトマイクロバイオームの分野で世界的に著名な研究者です。泌尿生殖器の細菌叢とプロバイオティクスを研究しています。ベルギーのルーベン・カトリック大学とアントワープ大学で乳酸桿菌と病原菌・ウイルスの分子相互作用を研究し、博士号を取得しました。博士の大きな業績は、ポスドクフェローのときに行った乳酸桿菌の遺伝的、分子的、機能的特性の研究です。この研究によって、膣内環境下での乳酸桿菌の働きについて素晴らしい知見を得ました。
マリア・ペトロヴァ博士について(英語)

ヨハンナ・ギルブロ博士
ヨハンナ・ギルブロ博士
寄稿著者

ヨハンナ・ギルブロ博士は受賞歴のある皮ふの専門家で、ベストセラーとなった『Skin We’re In』の著者です。
博士は実験皮ふ病学、臨床研究、そしてスキンケア製品開発の分野で15年以上の経験を持っています。また、製薬企業での長い経験を持っています。皮ふ科とコスメティクスの国際会議では、最先端の研究について頻繁に講演を行っています。また、「International Journal of Cosmetic Science」誌で過去10年の間に最も多く引用された研究者でもあります。博士はアンチエイジング成分で複数の特許を取得しており、スキンケア企業でアンチエイジング治療の研究・開発マネージャーを務めています。ギルブロ博士がスキンケア分野のエキスパートであることは言うまでもありません。『Skin We’re In』の執筆が示すように、現在は私たちのような一般人に知識を伝えることを使命としています。
2019年4月の出版の以来、『Skin We’re In』は主要な販売店でベストセラーとなっています。現在、スウェーデン語版のみが刊行されています。
https://www.skinomeproject.com

ディミトリ・アレクセーエフ博士
ディミトリ・アレクセーエフ博士
寄稿著者

ディミトリ・アレクセーエフ博士は消化管マイクロバイオーム、分子生物学、バイオインフォティクス、栄養学分野の優れた研究者です。基礎研究の臨床への応用に情熱的に取り組んでいます。Atlas Biomedグループでの主な役割は、社内外の科学プロジェクトを発展させることです。博士が携わっているプロジェクトは、栄養や神経変性疾患、炎症やがんに対するマイクロバイオームの応用、英国医薬品・医療製品規制庁の承認など多岐にわたります。Atlas Biomedグループでの統合的な役割に加え、ディミトリ博士は現在サンクトペテルブルクITMO大学で助教授を務め、健康のためのアルゴリズム開発を行っています。今後、博士はオランダのフローニンゲン大学医療センター(UMCG)に移り、老化研究に携わることになっています。
ディミトリ博士について(英語)

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