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2019-10-24 11:02
by Lisa Keilhofer
  Last edited:

uBiome社の起こした問題:事業が完全停止に

uBiome社の起こした問題:事業が完全停止に
残念なことになりました。糞便サンプルを用いたマイクロバイオームテストキットを販売していたUbiome社が閉鎖となりました、画像: © iridi66 – stock.adobe.com

MyMicrobiomeでは糞便サンプルの分析によって自分のマイクロバイオームを調べることができる、消化管マイクロバイオームのテストキットを紹介しました。一般にも購入可能な複数の製品を詳細に調査し、どの製品が最も信頼できるか調査を行い記事にしています。

マイクロバイオームのテストキットを販売した先駆者がアメリカのuBiome社でした。MyMicrobiomeで各社のテストキットのレビューを行ったとき、私たちはuBiome社にも参加の可否を尋ねる質問票を送っています。しかし、現在問題となっていることが理由で、同社からは否定的な返事が返ってきました。また、uBiome社はある記事の中で皮ふマイクロバイオームに関してL’real社との共同研究を計画していると言及しました。このことはMyMicrobiomeでも「化粧品業界が皮ふマイクロバイオームに注目しています」の記事で詳細に解説しています。uBiome社が私たちのテストキットの製品レビューに参加していないとしても、同社はマイクロバイオームの業界では依然重要な企業だったのです。

激しい批判に直面するuBiome社

2019年4月、uBiome社はFBIから激しい批判を受けました(Businessinsiderの記事、英語)。共同創立者・CEOのジェシカ・リッチマンと50人の社員は通知があるまで休職状態となっています。また、uBiome社はスマート・ジェーンとスマート・ガットの二つのテストキット販売を停止しました。捜査はuBiome社の支払い請求に集中しています。ウォールストリートジャーナルとCNBCによれば、uBIome社は購入者に二重請求をしていたとされています(参考リンク、ウォールストリートジャーナルCNBC)。また、uBiome社と処方を行っていた医師の不適切な関係も発覚しています。同社の他の製品はまだ販売中です。現在のところ、問題となっているスマート・ジェーンとスマート・ガットの二つの製品だけです。

さらに、糞便サンプルの分析でも、取り扱いが適切でなかったことが分かっています。比較サンプルの中に幼児や子供、マウスのサンプルすら混入していたのです。比較に不適切なサンプルに含まれる、明らかに異質な内容物はテストの結果を大きく狂わせます。例えば、幼児の糞便には母乳由来の細菌がとても多く含まれています(Fiercebiotech.com)。

私たちがこのニュースを知っておかなければいけない理由

uBiome社の問題について、読者の方に詳細にお伝えしました。しかし、記事の公開には躊躇いもありました。というのも、当初はuBIome社の二重請求の問題だけが批判されており、マイクロバイオーム研究やデータの収集に関しては批判の対象とはなっていなかったからです。uBiome社のCFOと一部の関係者だけが問題に関わっていました。また、MyMicrobiomeではuBiome社の製品をレビューしてはいませんでした。そのため、この問題はMyMicrobiomeの読者の方には関係がないと思えたのです。

しかし、現在、uBiome社のマイクロバイオーム研究にも批判が拡大しているのは明らかです。私たちはこのことを読者の方に伝えなければいけないと感じています。そして、2019年7月、uBiome社は事業の完全停止を命じられました。

批判は請求や財政の問題だけでなく、製品の品質にも向けられるようになっています。私たちはuBiome社の問題が他のマイクロバイオームテストキットを開発・製造している企業や、マイクロバイオームの検査そのものに悪い影響を与えないことを願っています。テストキットなどの製品やサービスについては、MyMicrobiomeや他の第三者が厳しく精査する必要があります。テストキットに関しては、オープンソースのデータベースで公開されています(もちろん、個人情報は匿名化されています)。マイクロバイオームの検査を行った人は自身のマイクロバイオームが持つ細菌の構成について知ることができるだけでなく、マイクロバイオーム研究全般にも貢献できるのです(その例のひとつが、アメリカン・ガット・プロジェクトです)。

MyMicrobiomeは、マイクロバイオームテストキットの先駆者であるuBiomeのような企業が悪い先例を残したことを残念に思います。そして、他の企業が素晴らしい科学的業績を成し遂げ続けることを願っています。

クリスティン・ノイマン博士, 著者
クリスティン・ノイマン博士
著者

みなさん、こんにちは。微生物学者のクリスティン・ノイマンです。生命の仕組みに興味があり、分子生物学を学びました。…

ファビアン・ガイヤー, 特別寄稿者
ファビアン・ガイヤー
特別寄稿者

ファビアン・ガイヤー氏から素晴らしい特別寄稿を頂きました。
ガイヤー氏はBIOMES社コミュニケーション・チームの一員です。BIOMES社はベルリンを拠点とするバイオ企業で、一般と専門家向けのマイクロバイオーム解析を専門としています。
ガイヤー氏は熟練の「翻訳者」として、人間と細菌の仲を取り持ちます。人間と細菌の関係は長年大きく誤解されていました。

リサ・カイルホーファー, 著者
リサ・カイルホーファー
著者

レーゲンスブルク大学で学びました。
多言語化業務に携わり、フリーランスの編集者としても活躍しています。

キャラ・コーラー
キャラ・コーラー
著者

シカゴのデポール大学とドイツのバンベルク大学で学位を取得し、現在博士号取得候補者となっています。
また、フリーランスの独英翻訳者、英独コピーエディターとしても活躍しています。

インゲ・リンドセット
インゲ・リンドセット
登録栄養士

オスロ大学のインゲ・リンドセットは登録栄養士で、専門分野は糖尿病と肥満、運動療法です。エクササイズの効果を最大限に高めたり、スポーツで最高のパフォーマンスを上げるための研究を行っています。
インゲ・リンドセットについて(ノルウェー語)

マリア・ペトロヴァ博士
マリア・ペトロヴァ博士
寄稿著者

マリア博士はヒトマイクロバイオームの分野で世界的に著名な研究者です。泌尿生殖器の細菌叢とプロバイオティクスを研究しています。ベルギーのルーベン・カトリック大学とアントワープ大学で乳酸桿菌と病原菌・ウイルスの分子相互作用を研究し、博士号を取得しました。博士の大きな業績は、ポスドクフェローのときに行った乳酸桿菌の遺伝的、分子的、機能的特性の研究です。この研究によって、膣内環境下での乳酸桿菌の働きについて素晴らしい知見を得ました。
マリア・ペトロヴァ博士について(英語)

ヨハンナ・ギルブロ博士
ヨハンナ・ギルブロ博士
寄稿著者

ヨハンナ・ギルブロ博士は受賞歴のある皮ふの専門家で、ベストセラーとなった『Skin We’re In』の著者です。
博士は実験皮ふ病学、臨床研究、そしてスキンケア製品開発の分野で15年以上の経験を持っています。また、製薬企業での長い経験を持っています。皮ふ科とコスメティクスの国際会議では、最先端の研究について頻繁に講演を行っています。また、「International Journal of Cosmetic Science」誌で過去10年の間に最も多く引用された研究者でもあります。博士はアンチエイジング成分で複数の特許を取得しており、スキンケア企業でアンチエイジング治療の研究・開発マネージャーを務めています。ギルブロ博士がスキンケア分野のエキスパートであることは言うまでもありません。『Skin We’re In』の執筆が示すように、現在は私たちのような一般人に知識を伝えることを使命としています。
2019年4月の出版の以来、『Skin We’re In』は主要な販売店でベストセラーとなっています。現在、スウェーデン語版のみが刊行されています。
https://www.skinomeproject.com

ディミトリ・アレクセーエフ博士
ディミトリ・アレクセーエフ博士
寄稿著者

ディミトリ・アレクセーエフ博士は消化管マイクロバイオーム、分子生物学、バイオインフォティクス、栄養学分野の優れた研究者です。基礎研究の臨床への応用に情熱的に取り組んでいます。Atlas Biomedグループでの主な役割は、社内外の科学プロジェクトを発展させることです。博士が携わっているプロジェクトは、栄養や神経変性疾患、炎症やがんに対するマイクロバイオームの応用、英国医薬品・医療製品規制庁の承認など多岐にわたります。Atlas Biomedグループでの統合的な役割に加え、ディミトリ博士は現在サンクトペテルブルクITMO大学で助教授を務め、健康のためのアルゴリズム開発を行っています。今後、博士はオランダのフローニンゲン大学医療センター(UMCG)に移り、老化研究に携わることになっています。
ディミトリ博士について(英語)

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