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2019-10-31 11:24
by Lisa Keilhofer
  Last edited:

マイクロバイオームのクラウドファンディング – あなたも研究に参加しましょう!

IBMコーポレートシチズンシップが開始したプロジェクトに、現在およそ65万人の個人と460の機関が参加しています。
IBMコーポレートシチズンシップが開始したプロジェクトに、現在およそ65万人の個人と460の機関が参加しています。

マイクロバイオーム研究はここ数年で急速な進展を見せてきました。特に、消化管マイクロバイオームの解読は現代的なシークエンシング技術によって大きく進んでいます。対照的に、皮ふマイクロバイオームの研究はまだ始まったばかりです(「スキンケアには生きた細菌と死んだ細菌のどちらが良い?」の記事参照)。肺マイクロバイオームの研究についても同様です。ヒトマイクロバイオームの研究は宇宙の探索を行うようなものだと感じる人もいるかもしれません。全部で300兆(兆の単位です!)の細菌が人間の体に住んでいることを考えるなら、この比較は適切なものだと言えます。

人間の体の中の魅力的な宇宙を探索しましょう!

優れたシークエンシング技術を用いた無数の細菌の研究は、計り知れないほど大きなプロジェクトです。しかし、シークエンシングはやるべき価値のある仕事です。これまでに分かっているように、ほとんどの細菌は人間にとって友人だと言えるからです。細菌たちは免疫系を活性化し、人間の活動を高めてくれます。私たちは同時に、遺伝的素因やマイクロバイオームを傷つける有害物質が、クローン病などの病気を発症させることを知っています。

私たちは健康な食事を行い、動物たちと十分に接触する機会がある、自然に近い生活が人間のマイクロバイオームにとって最良であるということも知っています。また、現代の生活様式はマイクロバイオームにとっては良くない環境で、早急に科学の力で対策しなければいけないこと(利用可能なマイクロバイオームの回復手段に頼らなければいけないこと)を知っています。

21世紀になってようやく解決策が見出されました。それはいわゆるスーパーコンピューターです。スーパーコンピューターはメインメモリーを共有することで、多くのプロセッサによって膨大な処理パワーを実現しています。

ワールド・コミュニティー・グリッドの一員になりましょう!

この記事を書いた目的の一つは、読者の方にワールド・コミュニティー・グリッドへの参加に興味を持ってもらうことです。ワールド・コミュニティー・グリッドはとても魅力的なプロジェクトです。

その理念は、多くの人々(また企業などの団体)に余っているコンピューターの処理パワーを提供してもらい、膨大な処理パワーを必要とするスーパーコンピューターの稼働に参加してもらうことにあります。このプロジェクトは2004年にIBMコーポレートシチズンシップが開始し、現在およそ65万人の個人と460の団体が参加しています。現在までに、30を超える科学研究プロジェクトを支援しており、HIV/エイズやがんの研究もサポートしています。

そして、マイクロバイオーム研究へのサポートも行われています。わずか6ヶ月の間に、数多くの支援者が提供した処理パワーのおかげで、20万以上のタンパク質の構造が解読されています。これは人間のマイクロバイオームで知られているタンパク質構造の3分の1に当たります。このプロジェクトは、カリフォルニア大学サンディエゴ校のロブ・ナイト教授が開始しました。MyMicrobiomeの読者の方によく知られている(例えば、「土や泥で汚れるのは良いこと?過度な衛生が免疫系に及ぼす影響」の記事)ナイト教授は、マイクロバイオーム開発研究チームの中心的人物です。

プロジェクトは現在も進行中で、完了までにもう数年かかるでしょう。プロジェクトの目標はマイクロバイオームのタンパク質構造を解読し、1型糖尿病や炎症性腸疾患などの病気をより理解することです。類似した構造に基づいて、タンパク質はいわゆる「ファミリー」に分類されます。ひとつの「ファミリーメンバー」を詳細に理解すれば、十分に他の「親類」のタンパク質の構造と機能に関して結論を出すことができます。したがって、1型糖尿病や炎症性腸疾患の研究のために、研究に役立つ「ファミリー」から役立たない「ファミリー」を除外し、重要な要素だけを集中して研究できるのです。

分類を容易にすることは、全ての細菌のゲノムを各々調べるのではなく、いわゆるパンゲノムを調べることを意味します。全ての細菌株にゲノムがあります。科学の研究は非常に高速化されたコンピューターの力を借りることで、非常に早く進みます。

個人の持つコンピューターの小さな処理パワーで地球を救うことができるのですか?

ワールド・コミュニティー・グリッドの基本原則は、クラウド・ファンディングのものと似ています。1台のコンピューターのキャパシティーは、膨大な容量のデータを扱えばすぐに限界が来てしまいます。しかし、数十万台のコンピューターが一つのスーパーコンピューターをサポートすれば、プロジェクトの完了に十分に大きな処理パワーが得られます。

もし、あなたのコンピューターの持つ小さなデータ処理能力では意味がないと思うなら、現在のスマートフォンは人類が最初に月に着陸したときに使われたコンピューターよりも性能が良いということを考えてみてください。そして、人々が持つコンピューターやスマートフォンのデータ処理能力が完全に使われていることはほとんどないのです。従って、私たちはこのプロジェクトに寄与するには十分な以上のデータ処理能力を持っているのです。そして、最も素晴らしいことは、寄付したお金が戻ってこないクラウド・ファンディングとは異なり、提供した処理パワーは無くなってしまわないことです。あなたはコンピューターの使っていない処理能力を一時的にシェアするだけです。月面着陸の計算を行うために大きな処理能力を必要とする場合はいつでも、全を使うことができます。小さな力で地球を救えるのなら、参加しない理由はありません!

クリスティン・ノイマン博士, 著者
クリスティン・ノイマン博士
著者

みなさん、こんにちは。微生物学者のクリスティン・ノイマンです。生命の仕組みに興味があり、分子生物学を学びました。…

ファビアン・ガイヤー, 特別寄稿者
ファビアン・ガイヤー
特別寄稿者

ファビアン・ガイヤー氏から素晴らしい特別寄稿を頂きました。
ガイヤー氏はBIOMES社コミュニケーション・チームの一員です。BIOMES社はベルリンを拠点とするバイオ企業で、一般と専門家向けのマイクロバイオーム解析を専門としています。
ガイヤー氏は熟練の「翻訳者」として、人間と細菌の仲を取り持ちます。人間と細菌の関係は長年大きく誤解されていました。

リサ・カイルホーファー, 著者
リサ・カイルホーファー
著者

レーゲンスブルク大学で学びました。
多言語化業務に携わり、フリーランスの編集者としても活躍しています。

キャラ・コーラー
キャラ・コーラー
著者

シカゴのデポール大学とドイツのバンベルク大学で学位を取得し、現在博士号取得候補者となっています。
また、フリーランスの独英翻訳者、英独コピーエディターとしても活躍しています。

インゲ・リンドセット
インゲ・リンドセット
登録栄養士

オスロ大学のインゲ・リンドセットは登録栄養士で、専門分野は糖尿病と肥満、運動療法です。エクササイズの効果を最大限に高めたり、スポーツで最高のパフォーマンスを上げるための研究を行っています。
インゲ・リンドセットについて(ノルウェー語)

マリア・ペトロヴァ博士
マリア・ペトロヴァ博士
寄稿著者

マリア博士はヒトマイクロバイオームの分野で世界的に著名な研究者です。泌尿生殖器の細菌叢とプロバイオティクスを研究しています。ベルギーのルーベン・カトリック大学とアントワープ大学で乳酸桿菌と病原菌・ウイルスの分子相互作用を研究し、博士号を取得しました。博士の大きな業績は、ポスドクフェローのときに行った乳酸桿菌の遺伝的、分子的、機能的特性の研究です。この研究によって、膣内環境下での乳酸桿菌の働きについて素晴らしい知見を得ました。
マリア・ペトロヴァ博士について(英語)

ヨハンナ・ギルブロ博士
ヨハンナ・ギルブロ博士
寄稿著者

ヨハンナ・ギルブロ博士は受賞歴のある皮ふの専門家で、ベストセラーとなった『Skin We’re In』の著者です。
博士は実験皮ふ病学、臨床研究、そしてスキンケア製品開発の分野で15年以上の経験を持っています。また、製薬企業での長い経験を持っています。皮ふ科とコスメティクスの国際会議では、最先端の研究について頻繁に講演を行っています。また、「International Journal of Cosmetic Science」誌で過去10年の間に最も多く引用された研究者でもあります。博士はアンチエイジング成分で複数の特許を取得しており、スキンケア企業でアンチエイジング治療の研究・開発マネージャーを務めています。ギルブロ博士がスキンケア分野のエキスパートであることは言うまでもありません。『Skin We’re In』の執筆が示すように、現在は私たちのような一般人に知識を伝えることを使命としています。
2019年4月の出版の以来、『Skin We’re In』は主要な販売店でベストセラーとなっています。現在、スウェーデン語版のみが刊行されています。
https://www.skinomeproject.com

ディミトリ・アレクセーエフ博士
ディミトリ・アレクセーエフ博士
寄稿著者

ディミトリ・アレクセーエフ博士は消化管マイクロバイオーム、分子生物学、バイオインフォティクス、栄養学分野の優れた研究者です。基礎研究の臨床への応用に情熱的に取り組んでいます。Atlas Biomedグループでの主な役割は、社内外の科学プロジェクトを発展させることです。博士が携わっているプロジェクトは、栄養や神経変性疾患、炎症やがんに対するマイクロバイオームの応用、英国医薬品・医療製品規制庁の承認など多岐にわたります。Atlas Biomedグループでの統合的な役割に加え、ディミトリ博士は現在サンクトペテルブルクITMO大学で助教授を務め、健康のためのアルゴリズム開発を行っています。今後、博士はオランダのフローニンゲン大学医療センター(UMCG)に移り、老化研究に携わることになっています。
ディミトリ博士について(英語)

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