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2019-08-24 23:26
by JohannaGillbro
  Last edited:

スキンケアには生きた細菌と死んだ細菌のどちらが良い?

皮ふマイクロバイオームは人間の肌の健康全般に影響を及ぼします
私たちはすでに皮ふマイクロバイオームの役割を理解し始めています。つまり、人間の皮ふ細菌叢が肌の健康全般に影響していることを知っています。

「ラクトバチルス・ロイテリDSM 17938-プロバイオティクスとライセートの人間の肌への効果の比較研究」の要約を基にした記事です。著者ヨハンナ・ギルブロ、www.skinomeproject.com、(共著者I・フマラーゼ、É・バトラー、S・ファーブル)。

過去10年の間、マイクロバイオームは主に消化管を対象を研究されてきました。消化管マイクロバイオームに関しては10年以上の研究の蓄積があり、体重の減少やメンタルヘルス、クロストリジウム・ディフィシル腸炎の治療などが、消化管マイクロバイオームの変調と相関していることが示されています。

しかし、人間の体の中で最も表面積が大きい皮ふのマイクロバイオームについては、比較的研究は進んでいません。皮ふは数百万の細菌やウイルス、菌類が生息する場所です。

最初に皮ふマイクロバイオームの役割を知るから始め、そして皮ふの細菌叢が肌全般の健康に関わっていることを理解しましょう(マイクロバイオームと皮ふ疾患については、この記事で詳しく扱っています)。皮ふマイクロバイオームには以下の重要な役割があります。

  • 抗菌性や抗炎症性の物質を産生し、望ましくない病原菌や日和見感染を起こす微生物から宿主を守る
  • 宿主の炎症を調整する
  • 肌バリアをサポートする
  • 肌の老化プロセスに関わる

プロバイオティクス細菌の食品への利用

過去100年の間、プロバイオティクス細菌(健康に良い生きた細菌)は、消化管の健康を増進する目的で食品に応用されてきました。消化管の不調などの問題に対して、今やプロバイオティクスや他の細菌学的技術は、伝統的な医薬品と競合しています。現在、尿路のさまざまな炎症・感染症の治療やオーラル・ヘルスなどで、生きた細菌の利用に関心がもたれています。さらに、最近では、皮ふ科分野でのプロバイオティクス細菌の利用にも関心が高まっています。

化粧品業界ではプロバイオティクスの誇大広告に懸念が高まっています

その一方で、プロバイオティクスという言葉は、不活性だったり、死んだ乳酸桿菌に使われていることもあります。

市場で販売されている商品の中で、生きた細菌を利用して開発された製品はわずかしかありません。乳酸桿菌や土壌に生息するニトロソモナス・ユートロファという細菌を使った製品です(AOBiome社)。

論文中では、生きたラクトバチルス・ロイテリとそのライセート(死んだ細菌の溶解物)の効果を比較しています。これら二つを調整したものを、実験用に再現した人の表皮と通常の人の肌に使用しました。そして、人間の肌の抗炎症機能や抗細菌機能、バリア機能への影響を調べました。

研究で用いた細菌種(L・ロイテリDSM 17938)は、経口投与すれば消化管の健康の改善を改善させますが、肌の健康に与える潜在的な効果について公表されたデータは限られています。

興味深いことに、試験の結果は生きたL・ロイテリがライセートよりも大きな効果があることを示しました。生きた細菌とライセートの両方とも、UV誘発炎症性サイトカイン(IL-6からIL-8)に抗炎症効果を示し、肌バリアにも良い影響を与えました。その上で、生きたL・ロイテリは肌に感染する病原菌の予防効果も持っていました。

これらの結果は、L・ロイテリDSM 17938を生きた状態で使用すると、光老化や肌のディスバイオーシスによる細菌の過剰繁殖、皮ふの水分量低下などに対して効果がある可能性を示唆しています。ライセートは抗炎症作用が求められる場所にスキンケアとして用いることができるでしょう。

結論として、L・ロイテリは生きた状態でも死んだ状態でも、人間の肌に局所的に用いることで抗炎症作用を期待することができます。しかし、本当のプロバイオティクスである生きた細菌は、ポストバイオティクスと比較してさらに抗細菌作用も示します。これらの知見は、アトピー性皮膚炎や酒さ、にきびなど他の皮ふの炎症治療に対するプロバイオティクスの研究の可能性を示しています。これらの炎症に対するコルチコステロイドや抗生物質、過酸化ベンゾイルやサリチル酸などの使用を抑制できる可能性があります。

この仮説を検証するためにさらなる研究が求められます。

この問題に関してこちらの記事もご覧ください。「プロバイオティクスとプレバイオティクスを肌に使うと効果がある?キャス・オネイル博士へのインタビュー」

クリスティン・ノイマン博士, 著者
クリスティン・ノイマン博士
著者

みなさん、こんにちは。微生物学者のクリスティン・ノイマンです。生命の仕組みに興味があり、分子生物学を学びました。…

ファビアン・ガイヤー, 特別寄稿者
ファビアン・ガイヤー
特別寄稿者

ファビアン・ガイヤー氏から素晴らしい特別寄稿を頂きました。
ガイヤー氏はBIOMES社コミュニケーション・チームの一員です。BIOMES社はベルリンを拠点とするバイオ企業で、一般と専門家向けのマイクロバイオーム解析を専門としています。
ガイヤー氏は熟練の「翻訳者」として、人間と細菌の仲を取り持ちます。人間と細菌の関係は長年大きく誤解されていました。

リサ・カイルホーファー, 著者
リサ・カイルホーファー
著者

レーゲンスブルク大学で学びました。
多言語化業務に携わり、フリーランスの編集者としても活躍しています。

キャラ・コーラー
キャラ・コーラー
著者

シカゴのデポール大学とドイツのバンベルク大学で学位を取得し、現在博士号取得候補者となっています。
また、フリーランスの独英翻訳者、英独コピーエディターとしても活躍しています。

インゲ・リンドセット
インゲ・リンドセット
登録栄養士

オスロ大学のインゲ・リンドセットは登録栄養士で、専門分野は糖尿病と肥満、運動療法です。エクササイズの効果を最大限に高めたり、スポーツで最高のパフォーマンスを上げるための研究を行っています。
インゲ・リンドセットについて(ノルウェー語)

マリア・ペトロヴァ博士
マリア・ペトロヴァ博士
寄稿著者

マリア博士はヒトマイクロバイオームの分野で世界的に著名な研究者です。泌尿生殖器の細菌叢とプロバイオティクスを研究しています。ベルギーのルーベン・カトリック大学とアントワープ大学で乳酸桿菌と病原菌・ウイルスの分子相互作用を研究し、博士号を取得しました。博士の大きな業績は、ポスドクフェローのときに行った乳酸桿菌の遺伝的、分子的、機能的特性の研究です。この研究によって、膣内環境下での乳酸桿菌の働きについて素晴らしい知見を得ました。
マリア・ペトロヴァ博士について(英語)

ヨハンナ・ギルブロ博士
ヨハンナ・ギルブロ博士
寄稿著者

ヨハンナ・ギルブロ博士は受賞歴のある皮ふの専門家で、ベストセラーとなった『Skin We’re In』の著者です。
博士は実験皮ふ病学、臨床研究、そしてスキンケア製品開発の分野で15年以上の経験を持っています。また、製薬企業での長い経験を持っています。皮ふ科とコスメティクスの国際会議では、最先端の研究について頻繁に講演を行っています。また、「International Journal of Cosmetic Science」誌で過去10年の間に最も多く引用された研究者でもあります。博士はアンチエイジング成分で複数の特許を取得しており、スキンケア企業でアンチエイジング治療の研究・開発マネージャーを務めています。ギルブロ博士がスキンケア分野のエキスパートであることは言うまでもありません。『Skin We’re In』の執筆が示すように、現在は私たちのような一般人に知識を伝えることを使命としています。
2019年4月の出版の以来、『Skin We’re In』は主要な販売店でベストセラーとなっています。現在、スウェーデン語版のみが刊行されています。
https://www.skinomeproject.com

ディミトリ・アレクセーエフ博士
ディミトリ・アレクセーエフ博士
寄稿著者

ディミトリ・アレクセーエフ博士は消化管マイクロバイオーム、分子生物学、バイオインフォティクス、栄養学分野の優れた研究者です。基礎研究の臨床への応用に情熱的に取り組んでいます。Atlas Biomedグループでの主な役割は、社内外の科学プロジェクトを発展させることです。博士が携わっているプロジェクトは、栄養や神経変性疾患、炎症やがんに対するマイクロバイオームの応用、英国医薬品・医療製品規制庁の承認など多岐にわたります。Atlas Biomedグループでの統合的な役割に加え、ディミトリ博士は現在サンクトペテルブルクITMO大学で助教授を務め、健康のためのアルゴリズム開発を行っています。今後、博士はオランダのフローニンゲン大学医療センター(UMCG)に移り、老化研究に携わることになっています。
ディミトリ博士について(英語)

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