マウスウォッシュの使い過ぎはマイクロバイオームに良くない?
使い過ぎないことが大切です。
ある研究(英語リンク)によると、抗菌成分を含んだマウスウォッシュを頻繁に使う人は、糖尿病のリスクが増える可能性があります。その理由として、マウスウォッシュに含まれる抗菌成分が原因となり、人間の食物中に含まれる物質を栄養分として利用する細菌の数が減ってしまうことが挙げられています。
消化管の細菌だけが人間にとって重要な細菌であるわけではありません。口の内に住む細菌も健康にとって大切な存在です。口内の細菌の役割には消化管の細菌よりも重要なものもあります。その一つが、硝酸塩を亜硝酸塩に変えることです。一酸化窒素をつくるためには、亜硝酸塩が必要です。硝酸塩から直接つくることはできません。
一酸化窒素は人間の体内でさまざまな働きを担っており、血圧に影響を与えたり、細胞間で必要な酸素量が異なるときに筋肉に運ぶ血液量を調整したりと言った、重要な役割もあります。
消化管から口に戻ってみましょう
硝酸塩はビーツなどの食べ物に大量に含まれており、このような食べ物が消化管で吸収されたとき血流に取り込まれます。その後、血流に取り込まれた硝酸塩の一部はとても面白い運命を辿ります。唾液の一部として分泌され、口の中で多くの硝酸塩が亜硝酸塩に変えられるのです。この亜硝酸塩は今度は腸で吸収されます。
マウスウォッシュの日常的な使用は糖尿病のリスクを増加させます
今回参照した研究では、体重過多/肥満の参加者を3年間にわたって経過観察しています。そして、前糖尿病/糖尿病と診断されるリスクの増加に関して調査しています。マウスウォッシュを1日に2~3回使用していた参加者は、マウスウォッシュの使用頻度が少ない参加者や全く使わない参加者と比較して、前糖尿病や糖尿病のリスクが50%程度増加していました。この関連は交絡因子の調整後にも認められました。おそらく最も重要なことは、他の口腔衛生用品では交絡が認められず、口内の状態や病気の変化もなかったことです。いずれにせよ、糖尿病の発症にマウスウォッシュが影響を及ぼすという説に関して確証を得るためには、さらなる研究が必要です。研究の進展は、マウスウォッシュを使用するタイミングについてより理に適ったアドバイスを行うためにも必要です。
マウスウォッシュは耐糖能の短期的な改善を無効にしてしまいます
論文の著者は、このメカニズムとして考えられる説に言及しています。著者たちは以前の研究(英語リンク)で、硝酸塩の吸収が耐糖能を短期的に改善させることに触れています。そして、マウスウォッシュを使うと、この効果が無効になってしまうのです。また、別の研究(英語リンク)では、硝酸塩を与えると、遺伝子組み換えマウスでメタボリックシンドロームの発症が防がれたことが示されています。これらの結果は、一酸化窒素がグルコース-インシュリンダイナミクス、微小血管の血流調整、ミトコンドリアの機能、糖新生、そして抗炎症物質の産生に関わっていることに関係があります。
硝酸塩を豊富に含む食べ物、ビーツ
ビーツは硝酸塩を最も多く含む食べ物です。一般的に、サラダやフルーツ、野菜は硝酸塩の摂取源となりますが、その量はそれぞれ大きく異なります(関連研究を見る)。
ビーツは近年スポーツの世界で注目されるようになっています(関連記事を見る)。ビーツは持久系のスポーツにおいてパフォーマンス向上に影響を与えるとされており、過去10年で多くの研究が行われてきました。そのため、硝酸塩を加えたり、ビーツの濃縮ジュースを使った、硝酸塩を多く含む製品がいくつも開発されました。これらの製品は糖尿病を予防したいと考えている人にとって選択肢となるでしょう。特に、硝酸塩の豊富な食べ物を十分たくさん食べるのが難しい人にとっては良い選択肢となります。
しかし、1日に通常のビーツのジュースを1杯飲むだけで血圧を下げられるとする研究も複数あります(関連研究を見る)。高血圧は一般的に糖尿病のリスク増加の懸念をもたらします。つまり、ビーツは高血圧の人々にも恩恵をもたらすのです。ビーツや他の硝酸塩が豊富な食べ物が糖尿病の予防に役立つとしても、どれほどの量が必要なのかに関してはより深く調査する必要があります。
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