アメリカン・ガット・プロジェクト
考えるきっかけに―世界最大のマイクロバイオーム市民科学プロジェクト
カリフォルニア大学サンディエゴ校の教授と共同研究者たちが、アメリカン・ガット・プロジェクトを立ち上げました。クラウドソーシングを利用して世界中の人々が参加できるプロジェクトで、5年前から始まっています。2018年5月に最初の結果が公表されました。
1万1000人の参加者から1万5000を超えるマイクロバイオームのサンプルが採取されました。参加者の国籍のほとんどがアメリカ、イギリス、そしてオーストラリアですが、他にも42ヵ国の国や地域の人々から提供されたマイクロバイオームが解析されています。アメリカン・ガット・プロジェクトで得られたデータはすべて一般に公開されており、参加者の個人情報を除き詳細な情報を知ることができます。オープンなデータ公開によって、世界中の科学者が研究のためにデータを利用できます。
アメリカン・ガット・プロジェクトは誰でも参加することができます。一般の方は99ドルを支払って検査キットを受け取り、糞便や皮ふ、口からサンプルを採取します。
科学ディレクターを務める研究者たち(ロブ・ナイト、ジェフ・リーチ、ジャック・ギルバート、ダニエル・マクドナルド) はこのプロジェクトによって、人間のマイクロバイオームについて理解の枠組みを得ようとしています。実際、アメリカン・ガット・プロジェクトによって、さまざまな国や地域の人々からサンプルを採取したマイクロバイオームの多様性は、サンプル数の少ない小規模な研究よりも大きいことが分かっています。
以下の興味深い結果がこれまでに得られています。
- 多くの種類の野菜を食べれば食べるほど、消化管マイクロバイオームの多様性が大きくなります。1週間に30種類以上の野菜を食べる人は、1週間に10種類以下の野菜しか食べない人よりもマイクロバイオームの多様性が大きくなっていました。
- 抗生物質の投与によって消化管マイクロバイオームの多様性が低下することは、予測通りでした。しかし、抗生物質を使った人では細菌の産生する化合物のバリエーションが大きく、過去1年の間に抗生物質を投与されなかった人よりもずっと大きくなっていたのは驚くべき結果でした。検出された化合物は抗生物質の投与に関係していると考えられます。今後の研究が必要な課題のひとつです。
- もう一つの予想外だった結果は、サンプル採取を行う1年前から抗生物質は使っていないと申告した人々で、農業用の抗生物質が検出されたことです。このことは、私たちが普段食べる肉から、マイクロバイオームを傷つける抗生物質を摂取している可能性があることを示しています。
- イギリスとアメリカのどちらも同じ西洋の人々を比較すると、サンプルの多様性に顕著な違いがありました。イギリス人のマイクロバイオームはアメリカ人よりも多様性が大きくなっていました。
- 研究者はマイクロバイオームの構成と抑うつ症状の関連を発見しました。大西洋の二つの地域、アメリカとイギリスで採取したサンプルで同様の関連が見られました。このことは人々が住んでいる地域とは無関係に、マイクロバイオームと疾患が相互に強く影響しあっていることを示しています。
アメリカン・ガット・プロジェクトの最大の特徴は、すべてのデータが共通の方法によって解析されており、世界中から集めたサンプルの解析結果を相互に直接比較できることです(アメリカン・ガット・プロジェクトはアース・マイクロバイオーム・プロジェクトの一部です)。
サンプルの多くはアメリカ、イギリス、オーストラリアから採取されました。世界中の国々から各国を代表するサンプルを集めるため、マクドナルド教授たちはさらにマイクロセッタ・イニシアティブという新しいプロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトで、マクドナルド教授たちは世界中の研究者や協力者たちと密に協力して研究を行っています。
誰でも市民科学者になれます。世界最大のマイクロバイオーム市民科学プロジェクトに参加しましょう!
詳細情報(英語):
アメリカン・ガット・プロジェクトに参加する
アメリカン・ガット・プロジェクト
マイクロセッタ・イニシアティブ
研究結果の公表
アース・マイクロバイオーム・プロジェクト
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