アメリカに移民するとマイクロバイオームが変化し、肥満になる可能性が高まる
2018年11月、ミネソタ大学は食習慣の「西洋化」と移民の消化管マイクロバイオームにおける細菌の多様性低下との関連について研究を公表しました。食習慣の西洋化によるマイクロバイオームの変化は、移民の体内の細菌の多様性を低下させ、メタボリックシンドロームや肥満になる可能性を高めます。
この研究では、タイの農村部に住んでいて、後にアメリカのミネアポリスに移住したタイ人女性のグループを対象としています。タイで女性たちは伝統的なタイ料理(多くの米と自家製の野菜が中心で、肉がほとんどない)を食べていました。アメリカのライフスタイルに適応するため、女性たちは移民後にアメリカの食習慣を取り入れました。つまり、タンパク質と糖分の豊富なインスタント食品を多く食べるようになったのです。この少数の女性グループにおいて、タイでは5%だった肥満率が、米国への移住後には30%を超えました。
マイクロバイオームを徹底的に調査
肥満率の増加は驚くべきことではありません。健康的なタイの食事からアメリカのジャンクフードに食事が変わったとき、BMIが増えることは予測済みだったからです。しかし、この研究の優れている点は、対象者のマイクロバイオームを徹底的に調査していることです。研究では3つのグループのマイクロバイオームを調査しています。1)東南アジアに住む女性のグループ、2)タイからアメリカに移住したタイ人女性のグループ、3)両親が東南アジア出身で、アメリカで生まれて育った移民第二世代の女性グループ、そして比較グループとしてヨーロッパ・アメリカ系の女性グループのマイクロバイオームをそれぞれ調査しています。
食習慣だけが問題となるわけではありません
注目すべき点は、食習慣の変化が問題の一部でしかないことです。もっと重要なことは、マイクロバイオームの多様性の低下が、後にメタボリックシンドロームを引き起こす要因となっている可能性があることです。この研究では、移民女性がアメリカに到着してから6ヶ月の間に、例えば食物繊維を分解する酵素などの元々持っていたマイクロバイオームを失ったことが分かっています。タイ人女性のグループでは、プレボテラというアジア人のマイクロバイオームで良く見られる細菌の数が減少し、西洋人に多いバクテロイデスが増えていました。これは消化管の機能が弱まったことを意味します。例えば、レジスタントスターチのような炭水化物を簡単に消化したり、発酵することができなくなります。
マイクロバイオームの著しい「西洋化」
移民がアメリカで長い時間を過ごせば過ごすほど、そのマイクロバイオームは比較グループのヨーロッパ・アメリカ系の人々のものに似てきました。移民がアメリカに到着してから6ヶ月から9ヶ月後には、マイクロバイオームは西洋系の人々のものに類似し始めます。移民二世のマイクロバイオームは完全に「西洋化」しており、消化管の機能は弱まっています。しかし、これは研究結果の核心となる部分なのですが、移民女性がアメリカに到着してから半年では、食生活はそこまで西洋化していません。移住後6~9ヶ月目では、まだタイ人女性たちはヨーロッパ・アメリカ系の人々よりも多くの米を食べていました。しかし、マイクロバイオームの変化はすでに始まっていました。このことは、食習慣だけがマイクロバイオームに影響を与える要因ではないという重要な問題を示唆しています。
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