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2019-06-19 19:57
by Kristin Neumann
  Last edited:

アメリカに移民するとマイクロバイオームが変化し、肥満になる可能性が高まる

アメリカに移民すると肥満になる可能性を高める
アメリカに移住すれば、数カ月の間、西洋的な食事をするだけで行うだけで肥満になる可能性が上がります

2018年11月、ミネソタ大学は食習慣の「西洋化」と移民の消化管マイクロバイオームにおける細菌の多様性低下との関連について研究を公表しました。食習慣の西洋化によるマイクロバイオームの変化は、移民の体内の細菌の多様性を低下させ、メタボリックシンドロームや肥満になる可能性を高めます。

この研究では、タイの農村部に住んでいて、後にアメリカのミネアポリスに移住したタイ人女性のグループを対象としています。タイで女性たちは伝統的なタイ料理(多くの米と自家製の野菜が中心で、肉がほとんどない)を食べていました。アメリカのライフスタイルに適応するため、女性たちは移民後にアメリカの食習慣を取り入れました。つまり、タンパク質と糖分の豊富なインスタント食品を多く食べるようになったのです。この少数の女性グループにおいて、タイでは5%だった肥満率が、米国への移住後には30%を超えました。

マイクロバイオームを徹底的に調査

肥満率の増加は驚くべきことではありません。健康的なタイの食事からアメリカのジャンクフードに食事が変わったとき、BMIが増えることは予測済みだったからです。しかし、この研究の優れている点は、対象者のマイクロバイオームを徹底的に調査していることです。研究では3つのグループのマイクロバイオームを調査しています。1)東南アジアに住む女性のグループ、2)タイからアメリカに移住したタイ人女性のグループ、3)両親が東南アジア出身で、アメリカで生まれて育った移民第二世代の女性グループ、そして比較グループとしてヨーロッパ・アメリカ系の女性グループのマイクロバイオームをそれぞれ調査しています。

食習慣だけが問題となるわけではありません

注目すべき点は、食習慣の変化が問題の一部でしかないことです。もっと重要なことは、マイクロバイオームの多様性の低下が、後にメタボリックシンドロームを引き起こす要因となっている可能性があることです。この研究では、移民女性がアメリカに到着してから6ヶ月の間に、例えば食物繊維を分解する酵素などの元々持っていたマイクロバイオームを失ったことが分かっています。タイ人女性のグループでは、プレボテラというアジア人のマイクロバイオームで良く見られる細菌の数が減少し、西洋人に多いバクテロイデスが増えていました。これは消化管の機能が弱まったことを意味します。例えば、レジスタントスターチのような炭水化物を簡単に消化したり、発酵することができなくなります。

マイクロバイオームの著しい「西洋化」

移民がアメリカで長い時間を過ごせば過ごすほど、そのマイクロバイオームは比較グループのヨーロッパ・アメリカ系の人々のものに似てきました。移民がアメリカに到着してから6ヶ月から9ヶ月後には、マイクロバイオームは西洋系の人々のものに類似し始めます。移民二世のマイクロバイオームは完全に「西洋化」しており、消化管の機能は弱まっています。しかし、これは研究結果の核心となる部分なのですが、移民女性がアメリカに到着してから半年では、食生活はそこまで西洋化していません。移住後6~9ヶ月目では、まだタイ人女性たちはヨーロッパ・アメリカ系の人々よりも多くの米を食べていました。しかし、マイクロバイオームの変化はすでに始まっていました。このことは、食習慣だけがマイクロバイオームに影響を与える要因ではないという重要な問題を示唆しています。

 

クリスティン・ノイマン博士, 著者
クリスティン・ノイマン博士
著者

みなさん、こんにちは。微生物学者のクリスティン・ノイマンです。生命の仕組みに興味があり、分子生物学を学びました。…

ファビアン・ガイヤー, 特別寄稿者
ファビアン・ガイヤー
特別寄稿者

ファビアン・ガイヤー氏から素晴らしい特別寄稿を頂きました。
ガイヤー氏はBIOMES社コミュニケーション・チームの一員です。BIOMES社はベルリンを拠点とするバイオ企業で、一般と専門家向けのマイクロバイオーム解析を専門としています。
ガイヤー氏は熟練の「翻訳者」として、人間と細菌の仲を取り持ちます。人間と細菌の関係は長年大きく誤解されていました。

リサ・カイルホーファー, 著者
リサ・カイルホーファー
著者

レーゲンスブルク大学で学びました。
多言語化業務に携わり、フリーランスの編集者としても活躍しています。

キャラ・コーラー
キャラ・コーラー
著者

シカゴのデポール大学とドイツのバンベルク大学で学位を取得し、現在博士号取得候補者となっています。
また、フリーランスの独英翻訳者、英独コピーエディターとしても活躍しています。

インゲ・リンドセット
インゲ・リンドセット
登録栄養士

オスロ大学のインゲ・リンドセットは登録栄養士で、専門分野は糖尿病と肥満、運動療法です。エクササイズの効果を最大限に高めたり、スポーツで最高のパフォーマンスを上げるための研究を行っています。
インゲ・リンドセットについて(ノルウェー語)

マリア・ペトロヴァ博士
マリア・ペトロヴァ博士
寄稿著者

マリア博士はヒトマイクロバイオームの分野で世界的に著名な研究者です。泌尿生殖器の細菌叢とプロバイオティクスを研究しています。ベルギーのルーベン・カトリック大学とアントワープ大学で乳酸桿菌と病原菌・ウイルスの分子相互作用を研究し、博士号を取得しました。博士の大きな業績は、ポスドクフェローのときに行った乳酸桿菌の遺伝的、分子的、機能的特性の研究です。この研究によって、膣内環境下での乳酸桿菌の働きについて素晴らしい知見を得ました。
マリア・ペトロヴァ博士について(英語)

ヨハンナ・ギルブロ博士
ヨハンナ・ギルブロ博士
寄稿著者

ヨハンナ・ギルブロ博士は受賞歴のある皮ふの専門家で、ベストセラーとなった『Skin We’re In』の著者です。
博士は実験皮ふ病学、臨床研究、そしてスキンケア製品開発の分野で15年以上の経験を持っています。また、製薬企業での長い経験を持っています。皮ふ科とコスメティクスの国際会議では、最先端の研究について頻繁に講演を行っています。また、「International Journal of Cosmetic Science」誌で過去10年の間に最も多く引用された研究者でもあります。博士はアンチエイジング成分で複数の特許を取得しており、スキンケア企業でアンチエイジング治療の研究・開発マネージャーを務めています。ギルブロ博士がスキンケア分野のエキスパートであることは言うまでもありません。『Skin We’re In』の執筆が示すように、現在は私たちのような一般人に知識を伝えることを使命としています。
2019年4月の出版の以来、『Skin We’re In』は主要な販売店でベストセラーとなっています。現在、スウェーデン語版のみが刊行されています。
https://www.skinomeproject.com

ディミトリ・アレクセーエフ博士
ディミトリ・アレクセーエフ博士
寄稿著者

ディミトリ・アレクセーエフ博士は消化管マイクロバイオーム、分子生物学、バイオインフォティクス、栄養学分野の優れた研究者です。基礎研究の臨床への応用に情熱的に取り組んでいます。Atlas Biomedグループでの主な役割は、社内外の科学プロジェクトを発展させることです。博士が携わっているプロジェクトは、栄養や神経変性疾患、炎症やがんに対するマイクロバイオームの応用、英国医薬品・医療製品規制庁の承認など多岐にわたります。Atlas Biomedグループでの統合的な役割に加え、ディミトリ博士は現在サンクトペテルブルクITMO大学で助教授を務め、健康のためのアルゴリズム開発を行っています。今後、博士はオランダのフローニンゲン大学医療センター(UMCG)に移り、老化研究に携わることになっています。
ディミトリ博士について(英語)

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