青春の泉の発見–それはあなたの消化管マイクロバイオームにあります
2019年3月、コロラド大学ボーダー校のオンラインジャーナル『CU Boulder Today』は、マイクロバイオームに関する記事を公開しました。記事は統合生理学学科のウィーン・ブラントが主筆著者となり、ポスドクの研究チームによる最新の研究結果が報告されました。
加齢が心血管疾患のリスクを高めることはよく知られています。また、疾患のリスクを高める原因である高炎症マーカー値についても数多くの研究が行われてきました。加齢によって消化管マイクロバイオームが「悪い」状態になり、多くの悪玉菌が消化管に定着すると心血管疾患のリスクが高まるという洞察は、これまでにない新しい発見です。
消化管マイクロバイオームが宿主(人間)に歯をむく
この驚くべき論文(記事の全文は『Journal of Physiology』で読むことができます)は若齢マウスと老齢マウスを対象に、さまざまな種類の抗生物質を用いて消化管マイクロバイオームの細菌を排除した実験に基づいています。抗生物質でマイクロバイオームの細菌を除去した後、若齢マウスと老齢マウスの動脈を調べ、血管の硬さ、炎症性物質やフリーラジカル、抗酸化物質、窒素酸化物の量を分析しました。
その結果はとても驚くべきものでした。抗生物質を三週間投与した後、若齢マウスでは循環器疾患への影響は認められませんでした。しかし、老齢マウスでは循環器の顕著な発達が観察されたのです。
論文の最終著者で研究ラボディレクターのドゥ・シールズはこう述べています。老齢マウスの心血管機能は、抗生物質でマイクロバイオームを破壊することによって若いマウスと同じレベルまで引き上げられたのです。
長寿のためのマイクロバイオーム治療?
研究チームは抗生物質で治療したマウスでプロテオバクテリア属(サルモネラ菌)やデスルホビブリオ属などの炎症誘発性の細菌が減少していることを発見しました。老齢マウスの比較群でも同様の細菌が見つかっていますが、過去の研究ではこれらの細菌は心血管疾患と関連していました。 また、抗生物質治療を行わなかった比較群ではTMAO(トリメチルアミン-N-オキシド)が見つかっていますが、過去の研究では若齢マウス群よりも3倍高いレベルで動脈硬化や心臓発作と関連していました。
シールズたちは、年齢を重ねるとともにマイクロバイオームに悪影響を及ぼすような変化があり、炎症性物質などの産生量が増加したのだと考えています。
しかし、抗生物質でマイクロバイオームを破壊することは解決策になるのでしょうか?三週間の抗生物質治療で機能しなくなったマイクロバイオームを破壊し、心血管疾患のリスクを若齢者と同じレベルにまで引き下げることに意味はあるのでしょうか?
著者たちは明らかにこの解決方法を強く主張することは控えています。予測できない抗生物質の副作用リスクは、このような過激な治療法のメリットを上回っています。しかし、年齢を重ねるごとに食べ物を変え、抗炎症性の食べ物の摂取を増やしていくことは、マイクロバイオームを助けるために賢明な手段と言えます。ヨーグルトやケフィアなどのプロバイオティクス食品や、果物や野菜、他の食物繊維が豊富なプレバイオティクス食品を食べることで実現できます。さらに、高品質なオリーブオイルやビネガー、赤ワインを食事に加えれば、TMAOから体を守るジメチル・ブタノールを摂取することができます。
年を取れば取るほど、マイクロバイオームを気遣うことが大事になります。
免責事項:このサイトやブログの内容は医学的助言、診断や治療を提供することを意図したものではありません。