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2019-06-28 15:43
by Cara Koehler
  Last edited:

マイクロバイオームは人間の発達にどのような役割を果たしているのですか?

あなたのマイクロバイオームの成長
あなたが生まれた瞬間から、マイクロバイオームはあなたと共に(あなたの中で)成長し始めます!

MyMicrobiomeのウェブサイトでは、衛生用品肥満抗生物質メンタルヘルスなどのさまざまな健康問題とマイクロバイオームの関係について、魅力的な記事をたくさん投稿してきました。今回は、人間の誕生の話に立ち戻り、マイクロバイオームが人間の発達にどのような影響を与えるのか改めて見直していきます。

ハッピーバースデー

あなたが生まれた瞬間から、マイクロバイオームはあなたと共に(あなたの中で)成長し始めます!母親が赤ちゃんを母乳で育てるのなら、母乳がすべての始まりとなります。科学者たちは生まれてから最初の3年間が、マイクロバイオームの発達に最も重要な時期であると考えています。バースデーケーキの代わりに、赤ちゃんの最初の誕生日には母乳のシェイクを用意しましょう!ホイップクリームやさくらんぼで飾り付けるのも悪くないアイデアです。

マイクロバイオームの基礎知識をおさらいしたいのなら、「人間の発達におけるマイクロバイオームの役割」という記事を読むことをお勧めします。マリア・グロリア・ドミンゲス・ベロ、フィリッパ・ゴドイ・ヴィットリノ、ロブ・ナイト、そしてマーティン・J・ブレイザー(ニューヨーク大学研究教授)が執筆しています。この論文の重要なポイントを以下にまとめます。4名の研究者たちはマイクロバイオームが人間の発達に及ぼす影響について、これまでの知見を総括しています。具体的には、1)人間の進化、2)母体と胎児の関係、3)マイクロバイオームが人間の栄養摂取と成長に及ぼす影響についての将来的な研究の展望、の3つのトピックです。

生命の輪-進化と誕生

最初に書いたように、誕生してから始まる人間の成長には、細菌叢の成長も含まれています。しかし、細菌叢が適切に発達していなければ、人間も発達できなかったということを考えたことはあるでしょうか?マイクロバイオームは人間とともに進化し、私たちの祖先の系統から少しずつ現生人類の表現型を形づくってきました。表現型とは、私たちの実際の物理的な特徴のことです。身長や目の色などの目に見える特徴だけでなく、健康状態や病歴、性格なども表現型なのです!論文中で著者たちは、このことをとても詩的に強調しています。

細菌叢は私たち人間の体と外部とのインターフェースであり、環境(食物や太陽光、入浴や化粧品なども含めた)との相互作用を担っています。細菌叢は自己であると同時に非自己でもあるのです

インターフェースが二つの系が接触して相互作用する一点だとしたら、細菌叢はアパート(人間の体)の中にいる荷物運搬人のようなものと考えれば良いでしょう。荷物運搬人は誰(何)が建物の外からやってくるのか、常に注意を払っています。

母親の細菌叢は胎児に間接的に影響を与える

ひとりの人間の細菌叢の観察に立ち戻りましょう。ヒトなどの哺乳動物では、子宮は免疫で守られており、細菌が中に定着することはできません。子宮、胎児、そして胎盤にはいかなる細菌叢も存在していません。しかし、母親の細菌叢は胎児に間接的に影響を与えます。分娩と授乳は「子供が初めて複雑な細菌叢に接触する機会です。それは哺乳動物における細菌叢の世代間移行の原始的なメカニズム」なのです。どのようにして一つの世代(母親)からもう一つの世代(赤ちゃん)に細菌叢が移行するのでしょうか?答えは解剖学にあります。産道は肛門管に隣接しており、この構造によって母親の消化管と膣の細菌叢が子供に移るのです。そのため、経腟分娩中の抗生物質投与や帝王切開は、細菌の子供への定着を変化させてしまいます。また、細菌叢の移行はこれだけでなく、論文の著者たちによれば、母乳を与えることで子供の脳の感覚・運動機能を顕著に発達させることができます*。

生まれた後には何が起こるのですか?

人間の初期の発達は泡の中で起こるわけではありません。人口密度、住居の構造、換気、食事、衣服、運動、パーソナルケア商品や医薬品、そして住んでいる地域など、すべての要因が発達に影響を及ぼします。先進国の都市部では、どのようにすれば大人や子供たちが「健全な」細菌叢を維持することができるのでしょうか?著者たちは、子供の身長・体重と成長の関係について基準を定めたのと同様に、健康な環境下でマイクロバイオームがどのように発達するのか、健康的でない環境と比較して評価する研究の必要性を訴えています。「特に、マイクロバイオーム発達の成長曲線」が必要とされています。そのような基準があって初めて、細菌叢の乱れと宿主(人間)の反応、疾患の関連を知ることができるのです。将来の世代のためにマイクロバイオームを取り戻すという希望を持ちましょう。

*赤ちゃんの生後3年間の消化管細菌叢の発達については、こちらの記事をご覧ください

クリスティン・ノイマン博士, 著者
クリスティン・ノイマン博士
著者

みなさん、こんにちは。微生物学者のクリスティン・ノイマンです。生命の仕組みに興味があり、分子生物学を学びました。…

ファビアン・ガイヤー, 特別寄稿者
ファビアン・ガイヤー
特別寄稿者

ファビアン・ガイヤー氏から素晴らしい特別寄稿を頂きました。
ガイヤー氏はBIOMES社コミュニケーション・チームの一員です。BIOMES社はベルリンを拠点とするバイオ企業で、一般と専門家向けのマイクロバイオーム解析を専門としています。
ガイヤー氏は熟練の「翻訳者」として、人間と細菌の仲を取り持ちます。人間と細菌の関係は長年大きく誤解されていました。

リサ・カイルホーファー, 著者
リサ・カイルホーファー
著者

レーゲンスブルク大学で学びました。
多言語化業務に携わり、フリーランスの編集者としても活躍しています。

キャラ・コーラー
キャラ・コーラー
著者

シカゴのデポール大学とドイツのバンベルク大学で学位を取得し、現在博士号取得候補者となっています。
また、フリーランスの独英翻訳者、英独コピーエディターとしても活躍しています。

インゲ・リンドセット
インゲ・リンドセット
登録栄養士

オスロ大学のインゲ・リンドセットは登録栄養士で、専門分野は糖尿病と肥満、運動療法です。エクササイズの効果を最大限に高めたり、スポーツで最高のパフォーマンスを上げるための研究を行っています。
インゲ・リンドセットについて(ノルウェー語)

マリア・ペトロヴァ博士
マリア・ペトロヴァ博士
寄稿著者

マリア博士はヒトマイクロバイオームの分野で世界的に著名な研究者です。泌尿生殖器の細菌叢とプロバイオティクスを研究しています。ベルギーのルーベン・カトリック大学とアントワープ大学で乳酸桿菌と病原菌・ウイルスの分子相互作用を研究し、博士号を取得しました。博士の大きな業績は、ポスドクフェローのときに行った乳酸桿菌の遺伝的、分子的、機能的特性の研究です。この研究によって、膣内環境下での乳酸桿菌の働きについて素晴らしい知見を得ました。
マリア・ペトロヴァ博士について(英語)

ヨハンナ・ギルブロ博士
ヨハンナ・ギルブロ博士
寄稿著者

ヨハンナ・ギルブロ博士は受賞歴のある皮ふの専門家で、ベストセラーとなった『Skin We’re In』の著者です。
博士は実験皮ふ病学、臨床研究、そしてスキンケア製品開発の分野で15年以上の経験を持っています。また、製薬企業での長い経験を持っています。皮ふ科とコスメティクスの国際会議では、最先端の研究について頻繁に講演を行っています。また、「International Journal of Cosmetic Science」誌で過去10年の間に最も多く引用された研究者でもあります。博士はアンチエイジング成分で複数の特許を取得しており、スキンケア企業でアンチエイジング治療の研究・開発マネージャーを務めています。ギルブロ博士がスキンケア分野のエキスパートであることは言うまでもありません。『Skin We’re In』の執筆が示すように、現在は私たちのような一般人に知識を伝えることを使命としています。
2019年4月の出版の以来、『Skin We’re In』は主要な販売店でベストセラーとなっています。現在、スウェーデン語版のみが刊行されています。
https://www.skinomeproject.com

ディミトリ・アレクセーエフ博士
ディミトリ・アレクセーエフ博士
寄稿著者

ディミトリ・アレクセーエフ博士は消化管マイクロバイオーム、分子生物学、バイオインフォティクス、栄養学分野の優れた研究者です。基礎研究の臨床への応用に情熱的に取り組んでいます。Atlas Biomedグループでの主な役割は、社内外の科学プロジェクトを発展させることです。博士が携わっているプロジェクトは、栄養や神経変性疾患、炎症やがんに対するマイクロバイオームの応用、英国医薬品・医療製品規制庁の承認など多岐にわたります。Atlas Biomedグループでの統合的な役割に加え、ディミトリ博士は現在サンクトペテルブルクITMO大学で助教授を務め、健康のためのアルゴリズム開発を行っています。今後、博士はオランダのフローニンゲン大学医療センター(UMCG)に移り、老化研究に携わることになっています。
ディミトリ博士について(英語)

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