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2019-06-27 23:32
by Lisa Keilhofer
  Last edited:

青春の泉の発見–それはあなたの消化管マイクロバイオームにあります

消化管マイクロバイオームは青春の泉?
消化管マイクロバイオームは青春の泉?

2019年3月、コロラド大学ボーダー校のオンラインジャーナル『CU Boulder Today』は、マイクロバイオームに関する記事を公開しました。記事は統合生理学学科のウィーン・ブラントが主筆著者となり、ポスドクの研究チームによる最新の研究結果が報告されました。

加齢が心血管疾患のリスクを高めることはよく知られています。また、疾患のリスクを高める原因である高炎症マーカー値についても数多くの研究が行われてきました。加齢によって消化管マイクロバイオームが「悪い」状態になり、多くの悪玉菌が消化管に定着すると心血管疾患のリスクが高まるという洞察は、これまでにない新しい発見です。

消化管マイクロバイオームが宿主(人間)に歯をむく

この驚くべき論文(記事の全文は『Journal of Physiology』で読むことができます)は若齢マウスと老齢マウスを対象に、さまざまな種類の抗生物質を用いて消化管マイクロバイオームの細菌を排除した実験に基づいています。抗生物質でマイクロバイオームの細菌を除去した後、若齢マウスと老齢マウスの動脈を調べ、血管の硬さ、炎症性物質やフリーラジカル、抗酸化物質、窒素酸化物の量を分析しました。

その結果はとても驚くべきものでした。抗生物質を三週間投与した後、若齢マウスでは循環器疾患への影響は認められませんでした。しかし、老齢マウスでは循環器の顕著な発達が観察されたのです。

論文の最終著者で研究ラボディレクターのドゥ・シールズはこう述べています。老齢マウスの心血管機能は、抗生物質でマイクロバイオームを破壊することによって若いマウスと同じレベルまで引き上げられたのです。

長寿のためのマイクロバイオーム治療?

研究チームは抗生物質で治療したマウスでプロテオバクテリア属(サルモネラ菌)デスルホビブリオ属などの炎症誘発性の細菌が減少していることを発見しました。老齢マウスの比較群でも同様の細菌が見つかっていますが、過去の研究ではこれらの細菌は心血管疾患と関連していました。 また、抗生物質治療を行わなかった比較群ではTMAO(トリメチルアミン-N-オキシド)が見つかっていますが、過去の研究では若齢マウス群よりも3倍高いレベルで動脈硬化や心臓発作と関連していました。

シールズたちは、年齢を重ねるとともにマイクロバイオームに悪影響を及ぼすような変化があり、炎症性物質などの産生量が増加したのだと考えています。

しかし、抗生物質でマイクロバイオームを破壊することは解決策になるのでしょうか?三週間の抗生物質治療で機能しなくなったマイクロバイオームを破壊し、心血管疾患のリスクを若齢者と同じレベルにまで引き下げることに意味はあるのでしょうか?

著者たちは明らかにこの解決方法を強く主張することは控えています。予測できない抗生物質の副作用リスクは、このような過激な治療法のメリットを上回っています。しかし、年齢を重ねるごとに食べ物を変え、抗炎症性の食べ物の摂取を増やしていくことは、マイクロバイオームを助けるために賢明な手段と言えます。ヨーグルトやケフィアなどのプロバイオティクス食品や、果物や野菜、他の食物繊維が豊富なプレバイオティクス食品を食べることで実現できます。さらに、高品質なオリーブオイルやビネガー、赤ワインを食事に加えれば、TMAOから体を守るジメチル・ブタノールを摂取することができます。

年を取れば取るほど、マイクロバイオームを気遣うことが大事になります。

クリスティン・ノイマン博士, 著者
クリスティン・ノイマン博士
著者

みなさん、こんにちは。微生物学者のクリスティン・ノイマンです。生命の仕組みに興味があり、分子生物学を学びました。…

ファビアン・ガイヤー, 特別寄稿者
ファビアン・ガイヤー
特別寄稿者

ファビアン・ガイヤー氏から素晴らしい特別寄稿を頂きました。
ガイヤー氏はBIOMES社コミュニケーション・チームの一員です。BIOMES社はベルリンを拠点とするバイオ企業で、一般と専門家向けのマイクロバイオーム解析を専門としています。
ガイヤー氏は熟練の「翻訳者」として、人間と細菌の仲を取り持ちます。人間と細菌の関係は長年大きく誤解されていました。

リサ・カイルホーファー, 著者
リサ・カイルホーファー
著者

レーゲンスブルク大学で学びました。
多言語化業務に携わり、フリーランスの編集者としても活躍しています。

キャラ・コーラー
キャラ・コーラー
著者

シカゴのデポール大学とドイツのバンベルク大学で学位を取得し、現在博士号取得候補者となっています。
また、フリーランスの独英翻訳者、英独コピーエディターとしても活躍しています。

インゲ・リンドセット
インゲ・リンドセット
登録栄養士

オスロ大学のインゲ・リンドセットは登録栄養士で、専門分野は糖尿病と肥満、運動療法です。エクササイズの効果を最大限に高めたり、スポーツで最高のパフォーマンスを上げるための研究を行っています。
インゲ・リンドセットについて(ノルウェー語)

マリア・ペトロヴァ博士
マリア・ペトロヴァ博士
寄稿著者

マリア博士はヒトマイクロバイオームの分野で世界的に著名な研究者です。泌尿生殖器の細菌叢とプロバイオティクスを研究しています。ベルギーのルーベン・カトリック大学とアントワープ大学で乳酸桿菌と病原菌・ウイルスの分子相互作用を研究し、博士号を取得しました。博士の大きな業績は、ポスドクフェローのときに行った乳酸桿菌の遺伝的、分子的、機能的特性の研究です。この研究によって、膣内環境下での乳酸桿菌の働きについて素晴らしい知見を得ました。
マリア・ペトロヴァ博士について(英語)

ヨハンナ・ギルブロ博士
ヨハンナ・ギルブロ博士
寄稿著者

ヨハンナ・ギルブロ博士は受賞歴のある皮ふの専門家で、ベストセラーとなった『Skin We’re In』の著者です。
博士は実験皮ふ病学、臨床研究、そしてスキンケア製品開発の分野で15年以上の経験を持っています。また、製薬企業での長い経験を持っています。皮ふ科とコスメティクスの国際会議では、最先端の研究について頻繁に講演を行っています。また、「International Journal of Cosmetic Science」誌で過去10年の間に最も多く引用された研究者でもあります。博士はアンチエイジング成分で複数の特許を取得しており、スキンケア企業でアンチエイジング治療の研究・開発マネージャーを務めています。ギルブロ博士がスキンケア分野のエキスパートであることは言うまでもありません。『Skin We’re In』の執筆が示すように、現在は私たちのような一般人に知識を伝えることを使命としています。
2019年4月の出版の以来、『Skin We’re In』は主要な販売店でベストセラーとなっています。現在、スウェーデン語版のみが刊行されています。
https://www.skinomeproject.com

ディミトリ・アレクセーエフ博士
ディミトリ・アレクセーエフ博士
寄稿著者

ディミトリ・アレクセーエフ博士は消化管マイクロバイオーム、分子生物学、バイオインフォティクス、栄養学分野の優れた研究者です。基礎研究の臨床への応用に情熱的に取り組んでいます。Atlas Biomedグループでの主な役割は、社内外の科学プロジェクトを発展させることです。博士が携わっているプロジェクトは、栄養や神経変性疾患、炎症やがんに対するマイクロバイオームの応用、英国医薬品・医療製品規制庁の承認など多岐にわたります。Atlas Biomedグループでの統合的な役割に加え、ディミトリ博士は現在サンクトペテルブルクITMO大学で助教授を務め、健康のためのアルゴリズム開発を行っています。今後、博士はオランダのフローニンゲン大学医療センター(UMCG)に移り、老化研究に携わることになっています。
ディミトリ博士について(英語)

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