1990年から年間1,600万人の死亡
感染症の統計-死者数は緩やかにしか減少していない
感染症の死亡率が低下しているとは言え、病原菌と寄生虫による死亡数は緩やかにしか減っていません。1990年には年間1,600万人の死者数でしたが、2010年の死者数は年間1,500万人です。死亡数は1年に1%しか下がっていません。
世界保健機関(WHO)は、何らかの対策が取られなければ、2050年までに感染症によって1,300万人が死亡し、さらに薬剤耐性菌の感染によって世界で1,000万人が死亡する(これは現在のがんの死者数よりも多い数です)と予測しています。これらの死者の大半はわずか数種類の病原菌が原因となります。
0
0
2010年までに年間1,500万人の死亡
0
薬剤耐性菌が発生し、新しい抗生物質が開発されていないため、感染症による死者数の減少にブレーキがかけられています。過去50年間で、新しい抗生物質はわずか二種類しか開発されませんでした。ブドウ球菌と他のグラム陽性細菌(以前から耐性が存在)に対する抗生物質です。
結核が再流行
過去には抑制されていた結核が、非常に薬剤耐性の高い結核菌株を伴って再流行しています。
急性感染症と慢性感染症
バランスを保って宿主と共存している病原菌にはほとんど害はありませんが、ときに慢性感染症を起こすことがあります。慢性感染症を起こす細菌は「休眠」することができ、生息するための空間さえあれば長い期間生存することができます。分裂や代謝を行わないため、抗生物質さえ効きません。このような細菌は宿主の免疫系が弱ったときにだけ目覚め、病気を引き起こします。
そうなると、急性感染症を起こす可能性が出てきます。急性感染症は、急速で劇的な発症が特徴的です。最も危険な急性感染症は呼吸器感染で、特に発展途上国の子供で死亡率が高くなっています(2002年で死者数400万人)。次に死者数が多いのがHIVの慢性感染症と急性感染症による下痢です。
世界規模で拡大している薬剤耐性菌は人類にとって大きな脅威
特に危険な高度薬剤耐性細菌は病院で見つかっています。このような薬剤耐性細菌、例えば緑膿菌は弱った免疫系につけ込み、患者を死亡させます。毎年ヨーロッパだけで250万例の感染症が病院で起こっており、9万人の死者が出ています。患者は感染症と戦い、感染症を予防するために抗生物質を使用します。その結果、自分を守ってくれるマイクロバイオームを破壊し、さらなる薬剤耐性を引き起こしてしまいます。そして、最終的に宿主(人間)を死に至らしめるスーパー耐性菌を生み出すという悪循環に陥ってしまいます。最後には、患者の弱った免疫系はスーパー耐性菌に抗うことができず、利用できる有効な抗生物質も残されていません。
マイクロバイオームが傷ついていない健康な人では、病原菌の「大群」(ほとんどの場合はウイルスか細菌)に襲われたときにしか感染は起こりません。健康な人が大量の病原菌に感染すると、免疫系とマイクロバイオームが感染症と戦うために総動員され、宿主(人間)は戦いが終わるまでの間ベットの上で苦しむことになります。
免疫不全の人やマイクロバイオームが傷ついている人にとって状況は異なる
免疫不全となっていたり、マイクロバイオームが傷ついている人たちは、ごくわずかな細菌やウイルスだけで感染が起こってしまいます。感染を引き起こす細菌はすでに体内にいるものかもしれません。HIVや自己免疫疾患、がんのような慢性病に苦しんでいる人は免疫不全に陥っていることが多くなっています。子供や妊娠した女性、高齢者も同様です。また、数週間から数か月前に抗生剤治療を受けて一度は感染症から回復したものの、抗生物質によってマイクロバイオームが傷ついてしまった人も免疫も弱っています。
そう、抗生物質は初期の急性感染症を治療することはできるのですが(感染症が細菌によって引き起こされた場合)、同時にその後で侵入してくる病原菌を防ぐ力を弱めてしまうのです。抗生物質は、病原菌の侵入に対して最大の盾となる善玉共生菌も排除してしまいます。マイクロバイオームが傷ついていない人では、感染症が起こるためには数十万もの細菌が侵入する必要があります。しかし、抗生物質治療を受けた人ではわずかな数の細菌でも重篤な感染症が起こってしまいます。この現象はマウスの実験だけでなく、人間でも観察されています。
抗生物質を何度も使用した人は、そうでない人よりも感染症にずっと罹りやすくなります
1950年代、 マージョリー・ボンホッフとC. フィリップ・ミラーは、マウスの腸管微生物叢を調査する実験を行っているときにこの現象を確認しました。彼らは、人間に重い下痢を引き起こす病原菌のサルモネラ菌をマウスに感染させました。健康なマウスに感染を起こすためには、10万もの細菌を感染させる必要がありました。一方、第二群のマウスには、感染を起こさせる前に抗生物質(ストレプトマイシン)を投与しました。すると数日後にはサルモネラに感染したのです。あらかじめ抗生物質を投与したマウスを感染させるためには、わずか3つの細菌で十分だったのです。3万倍の違いです!科学者たちはこの問題をさらに調査し、他の抗生物質でも同じ結果となることを確認しました。実験の数週間前に抗生物質を投与していた場合でも、感染を起こすにはわずかな数の細菌で十分だったのです。
あなたのマイクロバイオームを救いましょう!
免責事項:このサイトやブログの内容は医学的助言、診断や治療を提供することを意図したものではありません。