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2019-09-13 12:53
by Kristin Neumann
  Last edited:

感染症の統計-死者数は緩やかにしか減少していない

感染症の死亡率が低下しているとは言え、病原菌と寄生虫による死亡数は緩やかにしか減っていません。1990年には年間1,600万人の死者数でしたが、2010年の死者数は年間1,500万人です。死亡数は1年に1%しか下がっていません。

世界保健機関(WHO)は、何らかの対策が取られなければ、2050年までに感染症によって1,300万人が死亡し、さらに薬剤耐性菌の感染によって世界で1,000万人が死亡する(これは現在のがんの死者数よりも多い数です)と予測しています。これらの死者の大半はわずか数種類の病原菌が原因となります。



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1990年から年間1,600万人の死亡



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2010年までに年間1,500万人の死亡


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薬剤耐性菌が発生し、新しい抗生物質が開発されていないため、感染症による死者数の減少にブレーキがかけられています。過去50年間で、新しい抗生物質はわずか二種類しか開発されませんでした。ブドウ球菌と他のグラム陽性細菌(以前から耐性が存在)に対する抗生物質です。

結核が再流行

過去には抑制されていた結核が、非常に薬剤耐性の高い結核菌株を伴って再流行しています。

急性感染症と慢性感染症

細菌は休眠することができる
細菌は「休眠する」ことができます

バランスを保って宿主と共存している病原菌にはほとんど害はありませんが、ときに慢性感染症を起こすことがあります。慢性感染症を起こす細菌は「休眠」することができ、生息するための空間さえあれば長い期間生存することができます。分裂や代謝を行わないため、抗生物質さえ効きません。このような細菌は宿主の免疫系が弱ったときにだけ目覚め、病気を引き起こします。

そうなると、急性感染症を起こす可能性が出てきます。急性感染症は、急速で劇的な発症が特徴的です。最も危険な急性感染症は呼吸器感染で、特に発展途上国の子供で死亡率が高くなっています(2002年で死者数400万人)。次に死者数が多いのがHIVの慢性感染症と急性感染症による下痢です。

緑膿菌
緑膿菌

世界規模で拡大している薬剤耐性菌は人類にとって大きな脅威

特に危険な高度薬剤耐性細菌は病院で見つかっています。このような薬剤耐性細菌、例えば緑膿菌は弱った免疫系につけ込み、患者を死亡させます。毎年ヨーロッパだけで250万例の感染症が病院で起こっており、9万人の死者が出ています。患者は感染症と戦い、感染症を予防するために抗生物質を使用します。その結果、自分を守ってくれるマイクロバイオームを破壊し、さらなる薬剤耐性を引き起こしてしまいます。そして、最終的に宿主(人間)を死に至らしめるスーパー耐性菌を生み出すという悪循環に陥ってしまいます。最後には、患者の弱った免疫系はスーパー耐性菌に抗うことができず、利用できる有効な抗生物質も残されていません。

マイクロバイオームが傷ついていない健康な人では、病原菌の「大群」(ほとんどの場合はウイルスか細菌)に襲われたときにしか感染は起こりません。健康な人が大量の病原菌に感染すると、免疫系とマイクロバイオームが感染症と戦うために総動員され、宿主(人間)は戦いが終わるまでの間ベットの上で苦しむことになります。

免疫不全の人やマイクロバイオームが傷ついている人にとって状況は異なる

免疫不全となっていたり、マイクロバイオームが傷ついている人たちは、ごくわずかな細菌やウイルスだけで感染が起こってしまいます。感染を引き起こす細菌はすでに体内にいるものかもしれません。HIVや自己免疫疾患、がんのような慢性病に苦しんでいる人は免疫不全に陥っていることが多くなっています。子供や妊娠した女性、高齢者も同様です。また、数週間から数か月前に抗生剤治療を受けて一度は感染症から回復したものの、抗生物質によってマイクロバイオームが傷ついてしまった人も免疫も弱っています。

抗生物質は免疫系を弱めます
抗生物質は免疫系を弱めます

そう、抗生物質は初期の急性感染症を治療することはできるのですが(感染症が細菌によって引き起こされた場合)、同時にその後で侵入してくる病原菌を防ぐ力を弱めてしまうのです。抗生物質は、病原菌の侵入に対して最大の盾となる善玉共生菌も排除してしまいます。マイクロバイオームが傷ついていない人では、感染症が起こるためには数十万もの細菌が侵入する必要があります。しかし、抗生物質治療を受けた人ではわずかな数の細菌でも重篤な感染症が起こってしまいます。この現象はマウスの実験だけでなく、人間でも観察されています。

抗生物質を何度も使用した人は、そうでない人よりも感染症にずっと罹りやすくなります

1950年代、 マージョリー・ボンホッフとC. フィリップ・ミラーは、マウスの腸管微生物叢を調査する実験を行っているときにこの現象を確認しました。彼らは、人間に重い下痢を引き起こす病原菌のサルモネラ菌をマウスに感染させました。健康なマウスに感染を起こすためには、10万もの細菌を感染させる必要がありました。一方、第二群のマウスには、感染を起こさせる前に抗生物質(ストレプトマイシン)を投与しました。すると数日後にはサルモネラに感染したのです。あらかじめ抗生物質を投与したマウスを感染させるためには、わずか3つの細菌で十分だったのです。3万倍の違いです!科学者たちはこの問題をさらに調査し、他の抗生物質でも同じ結果となることを確認しました。実験の数週間前に抗生物質を投与していた場合でも、感染を起こすにはわずかな数の細菌で十分だったのです。

あなたのマイクロバイオームを救いましょう!

クリスティン・ノイマン博士, 著者
クリスティン・ノイマン博士
著者

みなさん、こんにちは。微生物学者のクリスティン・ノイマンです。生命の仕組みに興味があり、分子生物学を学びました。…

ファビアン・ガイヤー, 特別寄稿者
ファビアン・ガイヤー
特別寄稿者

ファビアン・ガイヤー氏から素晴らしい特別寄稿を頂きました。
ガイヤー氏はBIOMES社コミュニケーション・チームの一員です。BIOMES社はベルリンを拠点とするバイオ企業で、一般と専門家向けのマイクロバイオーム解析を専門としています。
ガイヤー氏は熟練の「翻訳者」として、人間と細菌の仲を取り持ちます。人間と細菌の関係は長年大きく誤解されていました。

リサ・カイルホーファー, 著者
リサ・カイルホーファー
著者

レーゲンスブルク大学で学びました。
多言語化業務に携わり、フリーランスの編集者としても活躍しています。

キャラ・コーラー
キャラ・コーラー
著者

シカゴのデポール大学とドイツのバンベルク大学で学位を取得し、現在博士号取得候補者となっています。
また、フリーランスの独英翻訳者、英独コピーエディターとしても活躍しています。

インゲ・リンドセット
インゲ・リンドセット
登録栄養士

オスロ大学のインゲ・リンドセットは登録栄養士で、専門分野は糖尿病と肥満、運動療法です。エクササイズの効果を最大限に高めたり、スポーツで最高のパフォーマンスを上げるための研究を行っています。
インゲ・リンドセットについて(ノルウェー語)

マリア・ペトロヴァ博士
マリア・ペトロヴァ博士
寄稿著者

マリア博士はヒトマイクロバイオームの分野で世界的に著名な研究者です。泌尿生殖器の細菌叢とプロバイオティクスを研究しています。ベルギーのルーベン・カトリック大学とアントワープ大学で乳酸桿菌と病原菌・ウイルスの分子相互作用を研究し、博士号を取得しました。博士の大きな業績は、ポスドクフェローのときに行った乳酸桿菌の遺伝的、分子的、機能的特性の研究です。この研究によって、膣内環境下での乳酸桿菌の働きについて素晴らしい知見を得ました。
マリア・ペトロヴァ博士について(英語)

ヨハンナ・ギルブロ博士
ヨハンナ・ギルブロ博士
寄稿著者

ヨハンナ・ギルブロ博士は受賞歴のある皮ふの専門家で、ベストセラーとなった『Skin We’re In』の著者です。
博士は実験皮ふ病学、臨床研究、そしてスキンケア製品開発の分野で15年以上の経験を持っています。また、製薬企業での長い経験を持っています。皮ふ科とコスメティクスの国際会議では、最先端の研究について頻繁に講演を行っています。また、「International Journal of Cosmetic Science」誌で過去10年の間に最も多く引用された研究者でもあります。博士はアンチエイジング成分で複数の特許を取得しており、スキンケア企業でアンチエイジング治療の研究・開発マネージャーを務めています。ギルブロ博士がスキンケア分野のエキスパートであることは言うまでもありません。『Skin We’re In』の執筆が示すように、現在は私たちのような一般人に知識を伝えることを使命としています。
2019年4月の出版の以来、『Skin We’re In』は主要な販売店でベストセラーとなっています。現在、スウェーデン語版のみが刊行されています。
https://www.skinomeproject.com

ディミトリ・アレクセーエフ博士
ディミトリ・アレクセーエフ博士
寄稿著者

ディミトリ・アレクセーエフ博士は消化管マイクロバイオーム、分子生物学、バイオインフォティクス、栄養学分野の優れた研究者です。基礎研究の臨床への応用に情熱的に取り組んでいます。Atlas Biomedグループでの主な役割は、社内外の科学プロジェクトを発展させることです。博士が携わっているプロジェクトは、栄養や神経変性疾患、炎症やがんに対するマイクロバイオームの応用、英国医薬品・医療製品規制庁の承認など多岐にわたります。Atlas Biomedグループでの統合的な役割に加え、ディミトリ博士は現在サンクトペテルブルクITMO大学で助教授を務め、健康のためのアルゴリズム開発を行っています。今後、博士はオランダのフローニンゲン大学医療センター(UMCG)に移り、老化研究に携わることになっています。
ディミトリ博士について(英語)

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