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2019-03-13 9:14
by Gastautor Fabian Geyer
  Last edited:

Biomes社のテオドロス・デベベ医学博士へのインタビュー

テオドロス・デベベ医学博士
テオドロス・デベベ博士「どれかひとつ細菌を選ぶのなら、乳酸桿菌を選びます」

どの細菌がお気に入りなのですか?またその理由は?

私たちの健康に大切なすべての善玉菌がお気に入りです。もしどれかひとつを選ぶのなら、乳酸桿菌を選びます。乳酸桿菌はコレステロールを減らしたり、下痢の予防や症状の緩和、過敏性腸症候群(IBS)の症状の改善、膣感染症の予防、体重減少、風邪の症状緩和、アレルギー反応や湿疹の減少など、さまざまな良い影響を与えてくれます。

乳酸桿菌はいつ誰によって発見されたのですか?

乳酸桿菌属には現在180以上の種が含まれています。各々の乳酸桿菌種は異なる時期に発見されました。最初の乳酸桿菌種は、1900年にオーストリア人内科医のエルンスト・モロによって、幼児の糞便から発見されました。初めはバシルス・アシドフィルスという名前で記述されていましたが、後にラクトバシルス・アシドフィルスと変更されました。

乳酸桿菌が地球上に登場してからどのくらいの年数が経っていますか?

乳酸桿菌が地球上に登場してからどのくらいの時間が経っているのか、正確なことは分かっていません。しかし、ミルクの細菌発酵によってつくられるヨーグルトに関わる乳酸桿菌種は、少なくともヨーグルトが発明されたときから存在していると考えられます。ヨーグルトは紀元前5000年前頃からつくられ始めました。ミルクのために家畜を飼う文化のほとんどでヨーグルトはつくられており、それぞれの地域でほぼ同じ方法でヨーグルトが発明されたと考えられています。人間はその存在を知らず何千年も乳酸桿菌を利用してきましたが、1900年頃には科学者たちがヨーグルトをつくる細菌を調べて特定しました。オーストリア人の内科医エルンスト・モロがラクトバシルス・アシドフィルスを発見したのです。モロ医師は胃腸障害の幼児の糞便を調べていました。

1905年に、ブルガリア人のスタメン・グリゴロフ博士がヨーグルトから特種な乳酸桿菌を発見し、ラクトバシルス・ブルガリカスと名付けました。1907年頃、グリゴロフ博士の発見に興味を持っていたロシア人科学者のイリヤ・メチニコフは、コーカサス山脈の人里離れた村で生活していました。その村では多くの住民が世界平均よりも長寿でした。メチニコフ博士は村の100歳以上のお年寄りが発酵したヨーグルト飲料を毎日飲んでいることに気が付きました。ヨーグルトにはラクトバシルス・ブルガリカスと呼ばれるプロバイオティクス細菌が含まれており、人々の長寿に貢献していた可能性があったのです。代田稔という日本の細菌学者はイリヤ・メチニコフの研究からインスピレーションを受け、ラクトバシルス・カゼイ・シロタという乳酸桿菌種を発見しました。代田博士は消化管で乳酸が産生されると腸管の悪玉菌が排除され、健康状態が改善して長寿につながると信じていました。代田博士のことを聞いたことがない方もいると思いますが、彼の発明した飲み物の名前を知らない人は少ないでしょう。ヨーグルト・プロバイオティクス飲料のヤクルトは、一般に購入できる最初のプロバイオティクス製品の一つです。

乳酸桿菌はどの分類レベルに該当するのでしょうか?

分類学的な階層に関して言えば、乳酸桿菌は属のレベルに該当し、大部分が乳酸菌グループに含まれます(例えば、乳酸桿菌は砂糖を乳酸に変えます)。この名前は、この細菌が産生する物質、つまり乳酸を示しています。乳酸桿菌はラクターゼという酵素を産生することで乳酸をつくりだします。ラクターゼはミルクに含まれるラクトースという糖を分解し、乳酸に変えます。

乳酸桿菌は主に体のどこに生息しているのですか?

乳酸桿菌は、消化器系、尿路系、生殖器系などの、人体のさまざまな場所に存在する細菌群の中で重要な位置を占めています。女性では通常、乳酸桿菌膣細菌叢の主要細菌となっています。乳酸桿菌は人体と相互作用しています。乳酸桿菌は病原菌などの侵入から宿主を守る一方、宿主は細菌に栄養源を与えているのです。

乳酸桿菌はどのような環境や食べ物で見つかりますか?

乳酸桿菌は植物や土壌で見つけることができます。主に動物の飼料や貯蔵牧草、肥料から見つかります。乳酸桿菌種の細菌はヨーグルトやケフィアなどの発酵食品で見つかる最も典型的な細菌です。さまざまな種の乳酸桿菌がサワ―ミルクやチーズ、ヨーグルトなどの製造で商業的に利用されており、発酵野菜(ピクルスやザワークラウト)や発酵飲料(ワインやジュース)、サワードウ・ブレッドやソーセージの生産で重要な役割を果たしています。

どのようにすれば消化管内で乳酸桿菌を増やすことができますか?

通常、健康な腸の細菌群には多くの乳酸桿菌種が含まれています。しかし、乳酸桿菌乳酸桿菌を含むプロバイオティクス・サプリメントを単独で摂取したり、他のプロバイオティクスやプレバイオティクスと組み合わせて摂取することで増やすこともできます。また、発酵食品から乳酸桿菌を摂取することも可能です。ケフィアやヨーグルト、ザワークラウト、多くの種類のチーズ、味噌やテンペなどの発酵食品が、理想的な乳酸桿菌の摂取源となります。

乳酸桿菌を工業的に生産することはできますか?

かなり複雑な生産プロセスになりますが、規模が大きく厳密な管理が行われている条件下なら、乳酸桿菌の生産は可能です。生産方法は、国際的な品質規格を満たした工場で、大量培養によって行います。乳酸桿菌は増殖培地で培養されます。バイオマス培養層を回収した後、いわゆるリュフィリゼーション(フリーズドライ)によって細菌を不活性化します。凍結された細菌を人間の消化管などの栄養に満ちた環境に戻すと、再び活性化します。多くの乳酸桿菌種がパウダーやパウダーを含んだカプセルの形でプロバイオティクス・サプリメントに使われます。消費者は乳酸桿菌のプロバイオティクスを製造業者から直接購入したり、薬局で買うことができます。プロバイオティクス細菌の品質はCFU (コロニー形成単位)として示されます。CFUは、どれだけの量の細菌がプロバイオティクス製品内で増殖し、コロニーを形成するのかを定量化するために用いられる単位です。分かりやすく言うと、CFUは一口分に含まれる細菌の量を表します。

ご存知のように、乳酸桿菌は食品産業で広く用いられており、ほとんどのスーパーマーケットで発酵食品を購入することができます。食品の発酵はさまざまな種類の微生物を含むスターター・カルチャーと言われるものを用いて行われます。私たちが口にする発酵食品の約35%がスターター・カルチャーによって製造されています。

乳酸桿菌は人間の腸内でどんな代謝物を産生するのですか。また、乳酸桿菌の代謝物は健康にどのような良い影響を与えますか?

乳酸桿菌はビタミン類、酵素、短鎖脂肪酸(酪酸、酢酸塩、プロピオン酸)などの健康に有益な代謝物をいくつも産生します。これらの代謝物は、人間の健康やエネルギー代謝にさまざまな良い影響を与えることが示されています。例えば、腸の内壁の強化、免疫系の調整、腸脳軸を通じた心理的反応への良い影響などです。面白いことに、乳酸桿菌は、悪玉菌の成長を抑制するバクテリオシンという物質を産生します。膣細菌叢において乳酸桿菌は膣の細菌生態系を維持し、カンジダによって起こる膣感染症の予防に重要な役割を果たしています。乳酸桿菌は膣内環境を酸性に保つ乳酸を代謝物として産生し、悪玉菌が膣内で生存できないようにしているのです。

クリスティン・ノイマン博士, 著者
クリスティン・ノイマン博士
著者

みなさん、こんにちは。微生物学者のクリスティン・ノイマンです。生命の仕組みに興味があり、分子生物学を学びました。…

ファビアン・ガイヤー, 特別寄稿者
ファビアン・ガイヤー
特別寄稿者

ファビアン・ガイヤー氏から素晴らしい特別寄稿を頂きました。
ガイヤー氏はBIOMES社コミュニケーション・チームの一員です。BIOMES社はベルリンを拠点とするバイオ企業で、一般と専門家向けのマイクロバイオーム解析を専門としています。
ガイヤー氏は熟練の「翻訳者」として、人間と細菌の仲を取り持ちます。人間と細菌の関係は長年大きく誤解されていました。

リサ・カイルホーファー, 著者
リサ・カイルホーファー
著者

レーゲンスブルク大学で学びました。
多言語化業務に携わり、フリーランスの編集者としても活躍しています。

キャラ・コーラー
キャラ・コーラー
著者

シカゴのデポール大学とドイツのバンベルク大学で学位を取得し、現在博士号取得候補者となっています。
また、フリーランスの独英翻訳者、英独コピーエディターとしても活躍しています。

インゲ・リンドセット
インゲ・リンドセット
登録栄養士

オスロ大学のインゲ・リンドセットは登録栄養士で、専門分野は糖尿病と肥満、運動療法です。エクササイズの効果を最大限に高めたり、スポーツで最高のパフォーマンスを上げるための研究を行っています。
インゲ・リンドセットについて(ノルウェー語)

マリア・ペトロヴァ博士
マリア・ペトロヴァ博士
寄稿著者

マリア博士はヒトマイクロバイオームの分野で世界的に著名な研究者です。泌尿生殖器の細菌叢とプロバイオティクスを研究しています。ベルギーのルーベン・カトリック大学とアントワープ大学で乳酸桿菌と病原菌・ウイルスの分子相互作用を研究し、博士号を取得しました。博士の大きな業績は、ポスドクフェローのときに行った乳酸桿菌の遺伝的、分子的、機能的特性の研究です。この研究によって、膣内環境下での乳酸桿菌の働きについて素晴らしい知見を得ました。
マリア・ペトロヴァ博士について(英語)

ヨハンナ・ギルブロ博士
ヨハンナ・ギルブロ博士
寄稿著者

ヨハンナ・ギルブロ博士は受賞歴のある皮ふの専門家で、ベストセラーとなった『Skin We’re In』の著者です。
博士は実験皮ふ病学、臨床研究、そしてスキンケア製品開発の分野で15年以上の経験を持っています。また、製薬企業での長い経験を持っています。皮ふ科とコスメティクスの国際会議では、最先端の研究について頻繁に講演を行っています。また、「International Journal of Cosmetic Science」誌で過去10年の間に最も多く引用された研究者でもあります。博士はアンチエイジング成分で複数の特許を取得しており、スキンケア企業でアンチエイジング治療の研究・開発マネージャーを務めています。ギルブロ博士がスキンケア分野のエキスパートであることは言うまでもありません。『Skin We’re In』の執筆が示すように、現在は私たちのような一般人に知識を伝えることを使命としています。
2019年4月の出版の以来、『Skin We’re In』は主要な販売店でベストセラーとなっています。現在、スウェーデン語版のみが刊行されています。
https://www.skinomeproject.com

ディミトリ・アレクセーエフ博士
ディミトリ・アレクセーエフ博士
寄稿著者

ディミトリ・アレクセーエフ博士は消化管マイクロバイオーム、分子生物学、バイオインフォティクス、栄養学分野の優れた研究者です。基礎研究の臨床への応用に情熱的に取り組んでいます。Atlas Biomedグループでの主な役割は、社内外の科学プロジェクトを発展させることです。博士が携わっているプロジェクトは、栄養や神経変性疾患、炎症やがんに対するマイクロバイオームの応用、英国医薬品・医療製品規制庁の承認など多岐にわたります。Atlas Biomedグループでの統合的な役割に加え、ディミトリ博士は現在サンクトペテルブルクITMO大学で助教授を務め、健康のためのアルゴリズム開発を行っています。今後、博士はオランダのフローニンゲン大学医療センター(UMCG)に移り、老化研究に携わることになっています。
ディミトリ博士について(英語)

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