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2019-06-26 9:26
by Kristin Neumann
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プロバイオティクスとプレバイオティクスを肌に使うと効果がある?

プロバイオティクスとプレバイオティクスが皮ふマイクロバイオームに及ぼす影響
プロバイオティクスとプレバイオティクスが皮ふマイクロバイオームに及ぼす影響

キャス・オネイル博士へのインタビュー

オネイル博士は人間の皮ふについて長年研究してきた、肌の健康のスペシャリストです。ここ数年は皮ふマイクロバイオームの研究に重点を置いています。SkinBio Therapeutics社とともに、彼女は研究の拠点をマンチェスター大学からSkinBiotix®に移しました。SkinBio Therapeutics社では肌の健康に関わる三つの分野―化粧品、感染予防、湿疹を研究対象としています。

SkinBiotix®での研究は、乳酸桿菌ビフィズス菌などの細菌から抽出したライセート(溶解物)に関する知見に基づいています。

私(クリスティン・ノイマン)とキャスは、ロッテルダムで行われた第五回マイクロバイオーム研究開発・ビジネスコラボレーションフォーラムで出会いました。彼女にプロバイオティクスとプレバイオティクスが皮ふマイクロバイオームに及ぼす影響について質問を行いました。

プロバイオティクスは皮ふマイクロバイオームにどのような影響を与えるのですか?

「消化管の細菌を含むプロバイオティクスを肌に使っても、皮ふマイクロバイオームに変化があるとは思いません。しかし、肌の生理機能に変化を与えることは確かです。乳酸桿菌は嫌気性の細菌ですので、皮ふで成長することはおそらくないでしょう。ですが、死んだ乳酸桿菌であっても、複数の細菌株が肌に顕著な影響を与えます。」

プレバイオティクスを肌に使った場合はどうですか?

「FOSなどの消化管に良い影響を与えるプレバイオティクスが、肌に同じ影響を与えることはありません。なぜなら、皮ふマイクロバイオームの細菌はプレバイオティクスを消化するための酵素を持っていないからです。皮ふマイクロバイオームの善玉菌の成長を促す化合物を特定するためには、さらなる研究が必要です。」

SkinBio Therapeutics社の製品では死んだ細菌を肌に使います。どのような原理なのですか?

「微生物のライセート(溶解液)を使うことは、ワクチンを打つようなものだと思っています。ワクチンは、免疫応答を起こすためにすでに死んでいるか、弱めた細菌を使います。私たちは細菌の抽出物に含まれるたんぱく質について知識を持っています。質量分析を使ってタンパク質を解析し、肌にどのような影響があるのか知ることができるのです。私はたくさんの細菌株のスクリーニングを行ってライセートの効果を調べ、数多くのイン・ヴィトロ研究を実施してきました。」

 

実際、SkinBio Therapeutics社の主張には科学的な根拠があります。4本の査読論文において、キャス・オネイル博士と共同研究者はライセートがケラチノサイトモデル(表皮の最も一般的な細胞型、肌の最外層)に及ぼす効果について示しました。

1. 肌モデルでのバリア効果の改善

ケラチノサイトの細菌培養で、細胞間の間隙を塞ぐいわゆる「タイトジャンクション」を、ビフィドバクテリウム・ロンガムと他の乳酸桿菌株の細菌ライセートが存在する条件下で調査しました。発酵乳酸桿菌を除き、調査を行ったすべての細菌株が24時間以内にタイトジャンクション障壁を高めました。全般的に、ビフィドバクテリウム・ロンガムL・ラムノサス・GGが4日間の試験で最も高い用量依存効果を示しました。これらのデータは、プロバイオティクスとプレバイオティクスのライセートが皮ふのタイトジャンクションに及ぼす影響が、細菌株の種類に強く依存していることを示しています

asm.orgの論文へのリンク(英語)

2. 皮ふ修復機能の改善

ケラチオサイトに関する別の研究では、複数の乳酸桿菌ライセートの効果をスクラッチアッセイによって調査しています。スクラッチアッセイでは、ケラチノサイトの単層を剥離し、各々の細菌ライセートで培養します。剝離層の再上皮化をモニターし、未処理の対照グループと比較します。L・ラムノサス・GGL・ロイテリが特に再上皮化率を高めた一方で、L・ラムノサス・GGのライセートは細胞の増殖率と遊走率を向上させる点で最も有効でした。

nature.comの論文へのリンク(英語)

3. 細菌数の減少

二つの試験で、ケラチノサイト単層における乳酸桿菌ライセートの黄色ブドウ球菌感染予防効果を調査しています。黄色ブドウ球菌はアトピー性皮膚炎患者に非常に多く見られる病原菌です。これらの研究によって、特定種の細菌が、細菌の成長を抑制して細菌の付着を減少させ(LGG)、競争排除によって黄色ブドウ球菌の感染を防ぐことが示されました。しかし、ケラチノサイトにおける黄色ブドウ球菌の感染予防効果は、プロバイオティクス細菌のライセートを事前に加えるか、黄色ブドウ球菌を同時に加えたときにだけ観察されました。この結果は、プロバイオティクスを感染予防のために利用できる可能性があることを示しています。

asm.orgの論文へのリンク(英語)

asm.orgの論文へのリンク(英語)

キャスと彼女の同僚が行った研究の全てが、本来は経口で摂取するプロバイオティクスが、肌の健康にも良い効果をもたらす可能性があることを示しています。しかし、観察された効果は細菌種によって大きく異なっており、細菌株ごとの具体的な評価が必要です。

SkinBio Therapeutics社は人間を対象とした科学に基づくスキンケア、感染症予防、湿疹について、三つの臨床試験を計画しています。

結果がとても楽しみです!

キャス・オネイルとクリスティン・ノイマン
ロッテルダムで行われたマイクロバイオーム・カンファレンスにて、キャス・オネイルとクリスティン・ノイマン(2018年3月)

インタビューに応じてくださったキャス博士に感謝します。臨床試験の結果について、次回のインタビューを楽しみにしています!

クリスティン・ノイマン博士, 著者
クリスティン・ノイマン博士
著者

みなさん、こんにちは。微生物学者のクリスティン・ノイマンです。生命の仕組みに興味があり、分子生物学を学びました。…

ファビアン・ガイヤー, 特別寄稿者
ファビアン・ガイヤー
特別寄稿者

ファビアン・ガイヤー氏から素晴らしい特別寄稿を頂きました。
ガイヤー氏はBIOMES社コミュニケーション・チームの一員です。BIOMES社はベルリンを拠点とするバイオ企業で、一般と専門家向けのマイクロバイオーム解析を専門としています。
ガイヤー氏は熟練の「翻訳者」として、人間と細菌の仲を取り持ちます。人間と細菌の関係は長年大きく誤解されていました。

リサ・カイルホーファー, 著者
リサ・カイルホーファー
著者

レーゲンスブルク大学で学びました。
多言語化業務に携わり、フリーランスの編集者としても活躍しています。

キャラ・コーラー
キャラ・コーラー
著者

シカゴのデポール大学とドイツのバンベルク大学で学位を取得し、現在博士号取得候補者となっています。
また、フリーランスの独英翻訳者、英独コピーエディターとしても活躍しています。

インゲ・リンドセット
インゲ・リンドセット
登録栄養士

オスロ大学のインゲ・リンドセットは登録栄養士で、専門分野は糖尿病と肥満、運動療法です。エクササイズの効果を最大限に高めたり、スポーツで最高のパフォーマンスを上げるための研究を行っています。
インゲ・リンドセットについて(ノルウェー語)

マリア・ペトロヴァ博士
マリア・ペトロヴァ博士
寄稿著者

マリア博士はヒトマイクロバイオームの分野で世界的に著名な研究者です。泌尿生殖器の細菌叢とプロバイオティクスを研究しています。ベルギーのルーベン・カトリック大学とアントワープ大学で乳酸桿菌と病原菌・ウイルスの分子相互作用を研究し、博士号を取得しました。博士の大きな業績は、ポスドクフェローのときに行った乳酸桿菌の遺伝的、分子的、機能的特性の研究です。この研究によって、膣内環境下での乳酸桿菌の働きについて素晴らしい知見を得ました。
マリア・ペトロヴァ博士について(英語)

ヨハンナ・ギルブロ博士
ヨハンナ・ギルブロ博士
寄稿著者

ヨハンナ・ギルブロ博士は受賞歴のある皮ふの専門家で、ベストセラーとなった『Skin We’re In』の著者です。
博士は実験皮ふ病学、臨床研究、そしてスキンケア製品開発の分野で15年以上の経験を持っています。また、製薬企業での長い経験を持っています。皮ふ科とコスメティクスの国際会議では、最先端の研究について頻繁に講演を行っています。また、「International Journal of Cosmetic Science」誌で過去10年の間に最も多く引用された研究者でもあります。博士はアンチエイジング成分で複数の特許を取得しており、スキンケア企業でアンチエイジング治療の研究・開発マネージャーを務めています。ギルブロ博士がスキンケア分野のエキスパートであることは言うまでもありません。『Skin We’re In』の執筆が示すように、現在は私たちのような一般人に知識を伝えることを使命としています。
2019年4月の出版の以来、『Skin We’re In』は主要な販売店でベストセラーとなっています。現在、スウェーデン語版のみが刊行されています。
https://www.skinomeproject.com

ディミトリ・アレクセーエフ博士
ディミトリ・アレクセーエフ博士
寄稿著者

ディミトリ・アレクセーエフ博士は消化管マイクロバイオーム、分子生物学、バイオインフォティクス、栄養学分野の優れた研究者です。基礎研究の臨床への応用に情熱的に取り組んでいます。Atlas Biomedグループでの主な役割は、社内外の科学プロジェクトを発展させることです。博士が携わっているプロジェクトは、栄養や神経変性疾患、炎症やがんに対するマイクロバイオームの応用、英国医薬品・医療製品規制庁の承認など多岐にわたります。Atlas Biomedグループでの統合的な役割に加え、ディミトリ博士は現在サンクトペテルブルクITMO大学で助教授を務め、健康のためのアルゴリズム開発を行っています。今後、博士はオランダのフローニンゲン大学医療センター(UMCG)に移り、老化研究に携わることになっています。
ディミトリ博士について(英語)

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