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2019-07-25 16:36
by Gastautor Fabian Geyer
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生命の再生―爆発的に数が増えるマイクロバイオーム研究

爆発的に増えるマイクロバイオーム研究
爆発的に数が増えるマイクロバイオーム研究

ファビアン・ガイヤー氏から素晴らしい寄稿を頂きました。ガイヤー氏はBIOMES社のコミュニケーション・チームの一員です。

マイクロバイオームに関する文献を読むと、「食べ物があなたを形づくります」や「人間の体は、人体の細胞よりも2倍以上も数が多い微生物の住処です」という表現をよく目にします。細菌は第二のゲノムとも呼ばれています。人間はDNAによって形づくられるだけでなく、細菌からも何らかの影響を受けているのでしょうか?程度の問題はあれ、これは事実です。遺伝的要因とは異なり、私たちは体の細菌の構成を変化させることができます。変化には良いものもあれば、悪いものもあります。遺伝子技術によってすでに子孫のDNAを変化させられるようになっているという事実は、しばらくの間忘れましょう。

マイクロバイオームは伝統的な医学では未だに受け入れられていません

マイクロバイオームは科学において大きなトレンドになっています。また、一般的な関心も大きくなっています。しかし、いくつかの理由から、伝統的な医学では未だ十分には受け入れられていません。過去21年の間、マイクロバイオームに関する研究の数は急速に増えてきました。その数は5桁にもなります (グラフ参照)。ヒトゲノムの解析が進んだため、今度は細菌のゲノムの解読に関心が集まっています。DNAシークエンス解析が発展したため、ゲノムの解読はより正確なものになっています。

過去21年の間、マイクロバイオームの研究の数は急速に増えています

マイクロバイオーム研究の急激な増加
グラフ: Biomes.world

微生物の宇宙は今後何年も拡大し続けるでしょう

ハイスループット・シークエンシングは、人間や微生物のDNAを解析する現在最も水準の高い技術です。今では、微生物、特に細菌の世界がまるで宇宙のように記述できるようになりました。最も下位の分類レベル(種)では数十万種の細菌が存在することを考えるなら、調査に時間がかかること、場合によっては数年を要することは理解できることです。

過去5年の間にさまざまなタイプのマイクロバイオーム研究が出てきました

これまで、ヒトマイクロバイオームの研究は非常に大きく進展してきました。マイクロバイオームが人間の臓器に及ぼす影響が大きいことが分かってきたため、研究に費やされる資金も大きくなっています。公的資金と私的資金の両方で、とても多くの科学研究と臨床研究が実施されています。過去5年の間にさまざまなタイプのマイクロバイオーム研究が出てきました。特に1990年以降に登場した新しい技術とその後の改良によって、マイクロバイオーム研究は現在科学の大きなトレンドとなっています。

病気になった?大した問題じゃありません。何にでも効く治療法があります。

何にでも効く治療法があります
何にでも効く治療法があります。20~30年前には多くの人が利用できる方法でした。

健康への関心が高まっているように思えます。人々は(再び)健康を意識して暮らし、食事をするようになりました。フィットネスやダイエットが流行から外れることはありません。人々のライフスタイルは科学の影響を受けます。わずか20~30年前には、人々は工業生産によって提供されるものを受動的に使っていました。男性と女性の両方にフルタイムの仕事を強いる現代のライフスタイルは、昔のように毎日健康で新鮮な食事を用意できる暮らしを許しません。病気になった?大した問題ではありません。何にでも効く治療法があります。大きな街であれば、昔から食べ物はいつでも手に入りました。それは今も変わりません。昼休みには冷凍食品を食べれば十分です。栄養学がストレスや貧しい食事によって引き起こされる長期的なダメージを明らかにするのには時間がかかりました。今では、現代病の多く(そのほとんどは西洋諸国でよく見られます)が、誤った食事によって引き起こされることはよく知られています。WHOはそのような病気を慢性病のリストの最初に加えました。

産業化、技術、そして商業は人間の健康に高い代償を払わせました

産業化と健康の関連は大きなトレンドとなっています。信頼できる科学的なエビデンスのおかげで、人々がこの問題を容易に理解できるようになっているため、トレンドではなく「健康への関心」と呼んだ方が良いほどです。技術を過剰に用いて、何にでもビジネスにしてしまう産業化が、現代社会を大きく形作っています。産業化が人々の健康に高い代償を払わせたことは、日に日に明らかになっています。マイクロバイオームの重要性に対する気づきは、過剰な医療、貧しい栄養、ストレス、無気力、そして進行する都市化から距離を取るという新しい考えの一部となっています。

多くの公的医療制度は未だに整備されていません

健康産業の技術とビジネスの発展が及ぼす影響については、充分な議論が行われていません。その一方で、公的医療制度も未だに多くが未整備のままです。今日では、病気の予防措置や検査、経過追跡の技術発展に大きな可能性があります。私たちが食べている物は、私たちが毎日踏み出している一歩一歩のようなものです。そして、自分の中の細菌の構成について知りたいと思うのは全く自然なことです。現在では、新しいテクノロジーと知識のおかげで、細菌の数を分析し、その変化を追跡できるようになっています。健康市場はずっと開拓されてきました。マイクロバイオームの研究は人間の健康の全般的な解明につながるため、マイクロバイオームの解析は健康市場における大きな可能性の一つとなっています。世界中の企業がマイクロバイオームの解析を行っており、いくつかはDNA検査を行っています。医師や療法士は必要ありません。それは自分自身でできる新しい検査方法です。このような検査は何らかの症状を訴えている人と、マイクロバイオームの構成を調べて最適化したいと願う人の両方をターゲットにしているので、大きな需要が見込まれています。企業などの民間セクターでこのような動きがなければ、私たちはおそらく恩恵を受けられなかったでしょう。

わたしたちは孤独ではありません

人々の中には、微生物の世界に不安を抱いている人もいます。そのような人にとって、マイクロバイオームの存在は私たちは孤独ではないということ、私たちは環境と健全な共存をはかりながら、微生物と共にしか生きていけないことを示してくれます。本質は目に見えないところにあるという格言は、本当のことだと思います。

クリスティン・ノイマン博士, 著者
クリスティン・ノイマン博士
著者

みなさん、こんにちは。微生物学者のクリスティン・ノイマンです。生命の仕組みに興味があり、分子生物学を学びました。…

ファビアン・ガイヤー, 特別寄稿者
ファビアン・ガイヤー
特別寄稿者

ファビアン・ガイヤー氏から素晴らしい特別寄稿を頂きました。
ガイヤー氏はBIOMES社コミュニケーション・チームの一員です。BIOMES社はベルリンを拠点とするバイオ企業で、一般と専門家向けのマイクロバイオーム解析を専門としています。
ガイヤー氏は熟練の「翻訳者」として、人間と細菌の仲を取り持ちます。人間と細菌の関係は長年大きく誤解されていました。

リサ・カイルホーファー, 著者
リサ・カイルホーファー
著者

レーゲンスブルク大学で学びました。
多言語化業務に携わり、フリーランスの編集者としても活躍しています。

キャラ・コーラー
キャラ・コーラー
著者

シカゴのデポール大学とドイツのバンベルク大学で学位を取得し、現在博士号取得候補者となっています。
また、フリーランスの独英翻訳者、英独コピーエディターとしても活躍しています。

インゲ・リンドセット
インゲ・リンドセット
登録栄養士

オスロ大学のインゲ・リンドセットは登録栄養士で、専門分野は糖尿病と肥満、運動療法です。エクササイズの効果を最大限に高めたり、スポーツで最高のパフォーマンスを上げるための研究を行っています。
インゲ・リンドセットについて(ノルウェー語)

マリア・ペトロヴァ博士
マリア・ペトロヴァ博士
寄稿著者

マリア博士はヒトマイクロバイオームの分野で世界的に著名な研究者です。泌尿生殖器の細菌叢とプロバイオティクスを研究しています。ベルギーのルーベン・カトリック大学とアントワープ大学で乳酸桿菌と病原菌・ウイルスの分子相互作用を研究し、博士号を取得しました。博士の大きな業績は、ポスドクフェローのときに行った乳酸桿菌の遺伝的、分子的、機能的特性の研究です。この研究によって、膣内環境下での乳酸桿菌の働きについて素晴らしい知見を得ました。
マリア・ペトロヴァ博士について(英語)

ヨハンナ・ギルブロ博士
ヨハンナ・ギルブロ博士
寄稿著者

ヨハンナ・ギルブロ博士は受賞歴のある皮ふの専門家で、ベストセラーとなった『Skin We’re In』の著者です。
博士は実験皮ふ病学、臨床研究、そしてスキンケア製品開発の分野で15年以上の経験を持っています。また、製薬企業での長い経験を持っています。皮ふ科とコスメティクスの国際会議では、最先端の研究について頻繁に講演を行っています。また、「International Journal of Cosmetic Science」誌で過去10年の間に最も多く引用された研究者でもあります。博士はアンチエイジング成分で複数の特許を取得しており、スキンケア企業でアンチエイジング治療の研究・開発マネージャーを務めています。ギルブロ博士がスキンケア分野のエキスパートであることは言うまでもありません。『Skin We’re In』の執筆が示すように、現在は私たちのような一般人に知識を伝えることを使命としています。
2019年4月の出版の以来、『Skin We’re In』は主要な販売店でベストセラーとなっています。現在、スウェーデン語版のみが刊行されています。
https://www.skinomeproject.com

ディミトリ・アレクセーエフ博士
ディミトリ・アレクセーエフ博士
寄稿著者

ディミトリ・アレクセーエフ博士は消化管マイクロバイオーム、分子生物学、バイオインフォティクス、栄養学分野の優れた研究者です。基礎研究の臨床への応用に情熱的に取り組んでいます。Atlas Biomedグループでの主な役割は、社内外の科学プロジェクトを発展させることです。博士が携わっているプロジェクトは、栄養や神経変性疾患、炎症やがんに対するマイクロバイオームの応用、英国医薬品・医療製品規制庁の承認など多岐にわたります。Atlas Biomedグループでの統合的な役割に加え、ディミトリ博士は現在サンクトペテルブルクITMO大学で助教授を務め、健康のためのアルゴリズム開発を行っています。今後、博士はオランダのフローニンゲン大学医療センター(UMCG)に移り、老化研究に携わることになっています。
ディミトリ博士について(英語)

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