uBiome社の起こした問題:事業が完全停止に
MyMicrobiomeでは糞便サンプルの分析によって自分のマイクロバイオームを調べることができる、消化管マイクロバイオームのテストキットを紹介しました。一般にも購入可能な複数の製品を詳細に調査し、どの製品が最も信頼できるか調査を行い記事にしています。
マイクロバイオームのテストキットを販売した先駆者がアメリカのuBiome社でした。MyMicrobiomeで各社のテストキットのレビューを行ったとき、私たちはuBiome社にも参加の可否を尋ねる質問票を送っています。しかし、現在問題となっていることが理由で、同社からは否定的な返事が返ってきました。また、uBiome社はある記事の中で皮ふマイクロバイオームに関してL’real社との共同研究を計画していると言及しました。このことはMyMicrobiomeでも「化粧品業界が皮ふマイクロバイオームに注目しています」の記事で詳細に解説しています。uBiome社が私たちのテストキットの製品レビューに参加していないとしても、同社はマイクロバイオームの業界では依然重要な企業だったのです。
激しい批判に直面するuBiome社
2019年4月、uBiome社はFBIから激しい批判を受けました(Businessinsiderの記事、英語)。共同創立者・CEOのジェシカ・リッチマンと50人の社員は通知があるまで休職状態となっています。また、uBiome社はスマート・ジェーンとスマート・ガットの二つのテストキット販売を停止しました。捜査はuBiome社の支払い請求に集中しています。ウォールストリートジャーナルとCNBCによれば、uBIome社は購入者に二重請求をしていたとされています(参考リンク、ウォールストリートジャーナルとCNBC)。また、uBiome社と処方を行っていた医師の不適切な関係も発覚しています。同社の他の製品はまだ販売中です。現在のところ、問題となっているスマート・ジェーンとスマート・ガットの二つの製品だけです。
さらに、糞便サンプルの分析でも、取り扱いが適切でなかったことが分かっています。比較サンプルの中に幼児や子供、マウスのサンプルすら混入していたのです。比較に不適切なサンプルに含まれる、明らかに異質な内容物はテストの結果を大きく狂わせます。例えば、幼児の糞便には母乳由来の細菌がとても多く含まれています(Fiercebiotech.com)。
私たちがこのニュースを知っておかなければいけない理由
uBiome社の問題について、読者の方に詳細にお伝えしました。しかし、記事の公開には躊躇いもありました。というのも、当初はuBIome社の二重請求の問題だけが批判されており、マイクロバイオーム研究やデータの収集に関しては批判の対象とはなっていなかったからです。uBiome社のCFOと一部の関係者だけが問題に関わっていました。また、MyMicrobiomeではuBiome社の製品をレビューしてはいませんでした。そのため、この問題はMyMicrobiomeの読者の方には関係がないと思えたのです。
しかし、現在、uBiome社のマイクロバイオーム研究にも批判が拡大しているのは明らかです。私たちはこのことを読者の方に伝えなければいけないと感じています。そして、2019年7月、uBiome社は事業の完全停止を命じられました。
批判は請求や財政の問題だけでなく、製品の品質にも向けられるようになっています。私たちはuBiome社の問題が他のマイクロバイオームテストキットを開発・製造している企業や、マイクロバイオームの検査そのものに悪い影響を与えないことを願っています。テストキットなどの製品やサービスについては、MyMicrobiomeや他の第三者が厳しく精査する必要があります。テストキットに関しては、オープンソースのデータベースで公開されています(もちろん、個人情報は匿名化されています)。マイクロバイオームの検査を行った人は自身のマイクロバイオームが持つ細菌の構成について知ることができるだけでなく、マイクロバイオーム研究全般にも貢献できるのです(その例のひとつが、アメリカン・ガット・プロジェクトです)。
MyMicrobiomeは、マイクロバイオームテストキットの先駆者であるuBiomeのような企業が悪い先例を残したことを残念に思います。そして、他の企業が素晴らしい科学的業績を成し遂げ続けることを願っています。
免責事項:このサイトやブログの内容は医学的助言、診断や治療を提供することを意図したものではありません。