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2019-09-16 14:37
by Lisa Keilhofer
  Last edited:

甘味料が消化管マイクロバイオームを傷つける

砂糖の代わりに甘味料を使うことは、私たちのマイクロバイオームに良いのでしょうか?
砂糖の代わりに甘味料を使うことは、私たちのマイクロバイオームに良いのでしょうか? 画像: © minoandriani – stock.adobe.com

食品業界が砂糖の代替品を探し求めてから数十年が経過しています。砂糖は食品の味を良くします。ある研究によれば、人間が砂糖を美味しいと感じるのは、母乳の優しい甘さに似ているからと言われています。また、甘い果物の多くは食べることができますが、苦みのある植物には毒のあるものも少なくありません。苦みは植物が身を守るための手段で、食べようとする生き物に警告を与えるためのものです。ある試験結果によると、食品が多くの砂糖を含んでいるほど、人間はその食品を好むことが分かっています。チョコレートだけでなく、ケチャップでも同様です。そうならば、食品メーカーが消費者の好みに応え、ライバル企業に勝つために、商品に砂糖を加えるという安上がりな手段を見逃さないわけがありません。

甘味料を使うことは消費者への妥協?

もちろん、砂糖の摂り過ぎが健康に良くないことは、科学の理論としても、個人の経験としても目新しいことではありません。そのため、消費者は「ノンシュガー」と記された製品を好みます(この話題に関して、「アメリカに移民すると肥満になる可能性が高まり、マイクロバイオームが変化する」の記事を読むことをお勧めします)。その結果、食品メーカーは、本物の砂糖を使わず、甘味料を代用することで食品に甘みをつけるようになっています。しかし、甘味料が無害か健康に良くないのかについては、いつものように議論が分かれています。長い間、人工甘味料は健康に良くないと考えられており、人工甘味料を含む食品はスーパーマーケットでは少ししか取り扱われていませんでした。しかし、最近公表されたローバッハらの研究は、甘味料には問題がないと結論しています。LoCarb NoCarb Sweeteners (LCNS)という甘味料は人間の消化管マイクロバイオームに無害で、規制機関に承認された量では安全であるとされています。

しかし、ローバッハたちの研究の結論は誤りです

研究を再検証すると、試験結果を再現することはできませんでした。ローバッハの主張は誤りです。甘味料は消化管マイクロバイオームを傷つけます。通常の量で摂取した場合もです。

研究ではそれぞれ10匹のラットからなる5グループを調査しています(ラットは米国FDAによって、人間の消化管マイクロバイオームと比較可能な種であると認められたものです)。12週の間、それぞれのグループのラットに体重1kgあたり1.1mg、3.3mg、5.5mg、そして11mgのスクラロース(人工甘味料)を与えました。比較グループには通常の飲料水が与えられました。ラットの糞便サンプルを毎週採取し、ビフィズス菌、乳酸桿菌、バクテロイデス、クロストリジウム、好気性菌、嫌気性菌を分析しました。合計で4200回の測定を行っています。結果は、先行研究でも示されたように、マウスの消化管細菌が減少するというネガティブな副作用を示すものでした。

LCNSは消化管マイクロバイオームを長期的に傷つけます

スクラロースを与えた12週間の実験が終わった後も、マウスの消化管マイクロバイオームは実験前の多様性の大きさを完全に取り戻すことはできませんでした。別の調査では、平均体重の人が1日1杯のソフトドリンクを飲むと、心血管疾患、メタボリックシンドローム(2型糖尿病)、過剰な体重増加のリスクが上昇することが証明されています。試験参加者は、インシュリン感受性の低下に伴って、インシュリン分泌が増えました。この試験結果と先行研究を考慮すると、ローバッハたちの研究が誤っていることが証明されます。スクラロース(ほぼすべての人口甘味料で使われています)は明らかに消化管マイクロバイオームを傷つけるものです。ローバッハたちの研究が誤っていた理由の一つとして考えられのは、人口甘味料の製造企業によって出資されている貿易グループから資金提供を受けていたことです。

砂糖と人工甘味料、どちらが良いのですか?

不安に思う消費者の方は、どの研究が正しいのか、また砂糖や人工甘味料は取った方が良いのか疑問に思うでしょう。正直なところ、エンドユーザーである消費者の方にどの研究が信頼できるものなのか伝えることは難しいです。なぜなら、研究の資金提供源について常に公開されているわけではないからです。砂糖や人工甘味料が健康に良いものなのかどうかに関しては、マイクロバイオームの研究者は決してそれらを推奨したいとは思わないはずです。なぜなら、砂糖には健康にネガティブな影響もあるからです。従って、私たちは工業的に製造された加工食品を避け、家庭で調理した新鮮な食べ物を食べることをお勧めします。また、砂糖や甘味料を含む食事を欲さないように、味覚を慣らしましょう。

クリスティン・ノイマン博士, 著者
クリスティン・ノイマン博士
著者

みなさん、こんにちは。微生物学者のクリスティン・ノイマンです。生命の仕組みに興味があり、分子生物学を学びました。…

ファビアン・ガイヤー, 特別寄稿者
ファビアン・ガイヤー
特別寄稿者

ファビアン・ガイヤー氏から素晴らしい特別寄稿を頂きました。
ガイヤー氏はBIOMES社コミュニケーション・チームの一員です。BIOMES社はベルリンを拠点とするバイオ企業で、一般と専門家向けのマイクロバイオーム解析を専門としています。
ガイヤー氏は熟練の「翻訳者」として、人間と細菌の仲を取り持ちます。人間と細菌の関係は長年大きく誤解されていました。

リサ・カイルホーファー, 著者
リサ・カイルホーファー
著者

レーゲンスブルク大学で学びました。
多言語化業務に携わり、フリーランスの編集者としても活躍しています。

キャラ・コーラー
キャラ・コーラー
著者

シカゴのデポール大学とドイツのバンベルク大学で学位を取得し、現在博士号取得候補者となっています。
また、フリーランスの独英翻訳者、英独コピーエディターとしても活躍しています。

インゲ・リンドセット
インゲ・リンドセット
登録栄養士

オスロ大学のインゲ・リンドセットは登録栄養士で、専門分野は糖尿病と肥満、運動療法です。エクササイズの効果を最大限に高めたり、スポーツで最高のパフォーマンスを上げるための研究を行っています。
インゲ・リンドセットについて(ノルウェー語)

マリア・ペトロヴァ博士
マリア・ペトロヴァ博士
寄稿著者

マリア博士はヒトマイクロバイオームの分野で世界的に著名な研究者です。泌尿生殖器の細菌叢とプロバイオティクスを研究しています。ベルギーのルーベン・カトリック大学とアントワープ大学で乳酸桿菌と病原菌・ウイルスの分子相互作用を研究し、博士号を取得しました。博士の大きな業績は、ポスドクフェローのときに行った乳酸桿菌の遺伝的、分子的、機能的特性の研究です。この研究によって、膣内環境下での乳酸桿菌の働きについて素晴らしい知見を得ました。
マリア・ペトロヴァ博士について(英語)

ヨハンナ・ギルブロ博士
ヨハンナ・ギルブロ博士
寄稿著者

ヨハンナ・ギルブロ博士は受賞歴のある皮ふの専門家で、ベストセラーとなった『Skin We’re In』の著者です。
博士は実験皮ふ病学、臨床研究、そしてスキンケア製品開発の分野で15年以上の経験を持っています。また、製薬企業での長い経験を持っています。皮ふ科とコスメティクスの国際会議では、最先端の研究について頻繁に講演を行っています。また、「International Journal of Cosmetic Science」誌で過去10年の間に最も多く引用された研究者でもあります。博士はアンチエイジング成分で複数の特許を取得しており、スキンケア企業でアンチエイジング治療の研究・開発マネージャーを務めています。ギルブロ博士がスキンケア分野のエキスパートであることは言うまでもありません。『Skin We’re In』の執筆が示すように、現在は私たちのような一般人に知識を伝えることを使命としています。
2019年4月の出版の以来、『Skin We’re In』は主要な販売店でベストセラーとなっています。現在、スウェーデン語版のみが刊行されています。
https://www.skinomeproject.com

ディミトリ・アレクセーエフ博士
ディミトリ・アレクセーエフ博士
寄稿著者

ディミトリ・アレクセーエフ博士は消化管マイクロバイオーム、分子生物学、バイオインフォティクス、栄養学分野の優れた研究者です。基礎研究の臨床への応用に情熱的に取り組んでいます。Atlas Biomedグループでの主な役割は、社内外の科学プロジェクトを発展させることです。博士が携わっているプロジェクトは、栄養や神経変性疾患、炎症やがんに対するマイクロバイオームの応用、英国医薬品・医療製品規制庁の承認など多岐にわたります。Atlas Biomedグループでの統合的な役割に加え、ディミトリ博士は現在サンクトペテルブルクITMO大学で助教授を務め、健康のためのアルゴリズム開発を行っています。今後、博士はオランダのフローニンゲン大学医療センター(UMCG)に移り、老化研究に携わることになっています。
ディミトリ博士について(英語)

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