人間と共存している細菌はどんな生き物なのですか?
地球の年齢はおよそ45億歳です。微生物の痕跡は38億6000万年前の岩石から見つかっています。つまり、微生物は地球最初の入植者だったのです。
細菌の細胞は人間の細胞の1/10の大きさしかありません。また、細菌の形状はさまざまで、球状や棒状、湾曲型の細菌や、尾部や毛、性線毛を持つ細菌がいます(細菌が形成するチューブは相互につながり、遺伝情報を交換します)。
細菌には性があるのですか!?
その通り、細菌には性があります。細菌はお互いにつながって遺伝情報を交換します (細菌に薬剤耐性が拡大する理由のひとつです)。細菌は泳ぐことができ、物体の表面に付着して巨大な集合体(バイオフィルム)を作ります。また、化学的な言葉でお互いにコミュニケーションをとることができ、残っている栄養や外敵の接近などについて情報交換を行います。
人間の体内に善玉菌だけがいる場合には、細菌のおかげで免疫寛容が維持されます。病原菌がいる場合には、細菌は人間の免疫系と協力して戦ってくれます。抗菌性ペプチドを放出し、人間の体内で増殖することで、病原菌の増殖を防いでくれるのです。
細菌は人間のためにビタミン類を産生している
人間にとって細菌は発電所のようなものです。人間が食物から得るカロリーの30%は、消化管の細菌によって生み出されています。また、細菌は人間のためにビタミンKなどのビタミン類を産生しています。
なぜ細菌はこのようなことができるのですか?
細菌の多様性の大きさに秘密があります。細菌はそれぞれの種が固有の道具(遺伝子)を使って、協力して働きます。これは、人間の遺伝子の150倍以上の数の遺伝子が働いていることになります。
細菌の詳細図
わたしたち真核生物の細胞(ヒトの細胞、動物細胞など)とは対照的に、細菌の細胞には細胞内小器官や核はありません。
細菌の細胞中の物質は全てただ一つの区画、細胞質の中にあります。
ハンス・クリスチャン・グラム医師、グラム染色を発明
細菌の細胞壁は、細菌を分類するときにとても重要な特徴となります。1884年、デンマーク人医師のハンス・クリスチャン・グラムはベルリンの病院で働いていたときに、ある細菌を他の細菌と区別したいと考えました。細菌感染症によって毎年何千人もの人々の命が奪われていたので、感染症を起こす細菌を特定したいと考えていたのです。グラム博士は細菌を染料で染めて標識することにしました。とても驚いたことに、多くの細菌株は染色できなかったのですが、染めることのできた細菌株も存在していたのです。グラムはこの問題をさらに深く追求し、固くて厚い細胞壁を持った細胞内圧の高い細菌、つまりグラム陽性細菌を発見しました。グラム陰性細菌は細胞壁が薄いのですが、身を守るための外部膜を持っています。このような細菌は染料で染めることができず、グラム医師の発明した標識方法を使えません。そのため、現在ではグラム陰性細菌と呼ばれています。現在、グラム医師の手法は微生物学において最も重要な分類ツールとなっています。そしてまったく偶然にも、グラム陰性細菌は抗生物質に対して最も強い耐性を持っています。自然な薬剤耐性を持っているのです。グラム陰性細菌群に属する細菌の名前を一度は聞いたことがあるかもしれません。例えば、大腸菌、シュードモナス、アシネトバクター、サルモネラなどです。グラム陽性細菌の中にも、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のような非常に有名な細菌が含まれています。MRSAは最も危険な細菌としてよく知られていますが、大きな多様性を持つ細菌の中ではほんの一部の存在でしかありません。
細菌の遺伝的多様性の大きさは、代謝の多様性の大きさを反映しています。それぞれの細菌種は、生息する環境で得られる栄養分の利用に特化しています。ある細菌種が生息している生態系では、別の細菌種は生存することはできません。その環境で得られる栄養分を利用することができないからです。
細菌は光合成、発酵、好気呼吸や嫌気呼吸、脱窒、メタン生成に曝され、これらの代謝プロセスで産生される水や酸素、二酸化炭素、硫化水素、窒素、鉄、糖分などを利用しています。
この幅広い代謝経路は、多様な遺伝子によってコードされている様々な酵素の存在によって可能となっています。これらの酵素は細菌にとってのツールであるだけでなく、細菌が生息する環境やわたしたち人間にとっても必要不可欠なものなのです!
細菌が生存するために必要な栄養分を分解すると、宿主は細菌が生み出す副産物を利用できます。宿主とは人間、つまり、あなたや私のことです!
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