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2019年03月13日

Biomes社のテオドロス・デベベ医学博士へのインタビュー

Biomes社のテオドロス・デベベ医学博士へのインタビュー

テオドロス・デベベ医学博士
テオドロス・デベベ博士「どれかひとつ細菌を選ぶのなら、乳酸桿菌を選びます」

どの細菌がお気に入りなのですか?またその理由は?

私たちの健康に大切なすべての善玉菌がお気に入りです。もしどれかひとつを選ぶのなら、乳酸桿菌を選びます。乳酸桿菌はコレステロールを減らしたり、下痢の予防や症状の緩和、過敏性腸症候群(IBS)の症状の改善、膣感染症の予防、体重減少、風邪の症状緩和、アレルギー反応や湿疹の減少など、さまざまな良い影響を与えてくれます。

乳酸桿菌はいつ誰によって発見されたのですか?

乳酸桿菌属には現在180以上の種が含まれています。各々の乳酸桿菌種は異なる時期に発見されました。最初の乳酸桿菌種は、1900年にオーストリア人内科医のエルンスト・モロによって、幼児の糞便から発見されました。初めはバシルス・アシドフィルスという名前で記述されていましたが、後にラクトバシルス・アシドフィルスと変更されました。

乳酸桿菌が地球上に登場してからどのくらいの年数が経っていますか?

乳酸桿菌が地球上に登場してからどのくらいの時間が経っているのか、正確なことは分かっていません。しかし、ミルクの細菌発酵によってつくられるヨーグルトに関わる乳酸桿菌種は、少なくともヨーグルトが発明されたときから存在していると考えられます。ヨーグルトは紀元前5000年前頃からつくられ始めました。ミルクのために家畜を飼う文化のほとんどでヨーグルトはつくられており、それぞれの地域でほぼ同じ方法でヨーグルトが発明されたと考えられています。人間はその存在を知らず何千年も乳酸桿菌を利用してきましたが、1900年頃には科学者たちがヨーグルトをつくる細菌を調べて特定しました。オーストリア人の内科医エルンスト・モロがラクトバシルス・アシドフィルスを発見したのです。モロ医師は胃腸障害の幼児の糞便を調べていました。

1905年に、ブルガリア人のスタメン・グリゴロフ博士がヨーグルトから特種な乳酸桿菌を発見し、ラクトバシルス・ブルガリカスと名付けました。1907年頃、グリゴロフ博士の発見に興味を持っていたロシア人科学者のイリヤ・メチニコフは、コーカサス山脈の人里離れた村で生活していました。その村では多くの住民が世界平均よりも長寿でした。メチニコフ博士は村の100歳以上のお年寄りが発酵したヨーグルト飲料を毎日飲んでいることに気が付きました。ヨーグルトにはラクトバシルス・ブルガリカスと呼ばれるプロバイオティクス細菌が含まれており、人々の長寿に貢献していた可能性があったのです。代田稔という日本の細菌学者はイリヤ・メチニコフの研究からインスピレーションを受け、ラクトバシルス・カゼイ・シロタという乳酸桿菌種を発見しました。代田博士は消化管で乳酸が産生されると腸管の悪玉菌が排除され、健康状態が改善して長寿につながると信じていました。代田博士のことを聞いたことがない方もいると思いますが、彼の発明した飲み物の名前を知らない人は少ないでしょう。ヨーグルト・プロバイオティクス飲料のヤクルトは、一般に購入できる最初のプロバイオティクス製品の一つです。

乳酸桿菌はどの分類レベルに該当するのでしょうか?

分類学的な階層に関して言えば、乳酸桿菌は属のレベルに該当し、大部分が乳酸菌グループに含まれます(例えば、乳酸桿菌は砂糖を乳酸に変えます)。この名前は、この細菌が産生する物質、つまり乳酸を示しています。乳酸桿菌はラクターゼという酵素を産生することで乳酸をつくりだします。ラクターゼはミルクに含まれるラクトースという糖を分解し、乳酸に変えます。

乳酸桿菌は主に体のどこに生息しているのですか?

乳酸桿菌は、消化器系、尿路系、生殖器系などの、人体のさまざまな場所に存在する細菌群の中で重要な位置を占めています。女性では通常、乳酸桿菌膣細菌叢の主要細菌となっています。乳酸桿菌は人体と相互作用しています。乳酸桿菌は病原菌などの侵入から宿主を守る一方、宿主は細菌に栄養源を与えているのです。

乳酸桿菌はどのような環境や食べ物で見つかりますか?

乳酸桿菌は植物や土壌で見つけることができます。主に動物の飼料や貯蔵牧草、肥料から見つかります。乳酸桿菌種の細菌はヨーグルトやケフィアなどの発酵食品で見つかる最も典型的な細菌です。さまざまな種の乳酸桿菌がサワ―ミルクやチーズ、ヨーグルトなどの製造で商業的に利用されており、発酵野菜(ピクルスやザワークラウト)や発酵飲料(ワインやジュース)、サワードウ・ブレッドやソーセージの生産で重要な役割を果たしています。

どのようにすれば消化管内で乳酸桿菌を増やすことができますか?

通常、健康な腸の細菌群には多くの乳酸桿菌種が含まれています。しかし、乳酸桿菌乳酸桿菌を含むプロバイオティクス・サプリメントを単独で摂取したり、他のプロバイオティクスやプレバイオティクスと組み合わせて摂取することで増やすこともできます。また、発酵食品から乳酸桿菌を摂取することも可能です。ケフィアやヨーグルト、ザワークラウト、多くの種類のチーズ、味噌やテンペなどの発酵食品が、理想的な乳酸桿菌の摂取源となります。

乳酸桿菌を工業的に生産することはできますか?

かなり複雑な生産プロセスになりますが、規模が大きく厳密な管理が行われている条件下なら、乳酸桿菌の生産は可能です。生産方法は、国際的な品質規格を満たした工場で、大量培養によって行います。乳酸桿菌は増殖培地で培養されます。バイオマス培養層を回収した後、いわゆるリュフィリゼーション(フリーズドライ)によって細菌を不活性化します。凍結された細菌を人間の消化管などの栄養に満ちた環境に戻すと、再び活性化します。多くの乳酸桿菌種がパウダーやパウダーを含んだカプセルの形でプロバイオティクス・サプリメントに使われます。消費者は乳酸桿菌のプロバイオティクスを製造業者から直接購入したり、薬局で買うことができます。プロバイオティクス細菌の品質はCFU (コロニー形成単位)として示されます。CFUは、どれだけの量の細菌がプロバイオティクス製品内で増殖し、コロニーを形成するのかを定量化するために用いられる単位です。分かりやすく言うと、CFUは一口分に含まれる細菌の量を表します。

ご存知のように、乳酸桿菌は食品産業で広く用いられており、ほとんどのスーパーマーケットで発酵食品を購入することができます。食品の発酵はさまざまな種類の微生物を含むスターター・カルチャーと言われるものを用いて行われます。私たちが口にする発酵食品の約35%がスターター・カルチャーによって製造されています。

乳酸桿菌は人間の腸内でどんな代謝物を産生するのですか。また、乳酸桿菌の代謝物は健康にどのような良い影響を与えますか?

乳酸桿菌はビタミン類、酵素、短鎖脂肪酸(酪酸、酢酸塩、プロピオン酸)などの健康に有益な代謝物をいくつも産生します。これらの代謝物は、人間の健康やエネルギー代謝にさまざまな良い影響を与えることが示されています。例えば、腸の内壁の強化、免疫系の調整、腸脳軸を通じた心理的反応への良い影響などです。面白いことに、乳酸桿菌は、悪玉菌の成長を抑制するバクテリオシンという物質を産生します。膣細菌叢において乳酸桿菌は膣の細菌生態系を維持し、カンジダによって起こる膣感染症の予防に重要な役割を果たしています。乳酸桿菌は膣内環境を酸性に保つ乳酸を代謝物として産生し、悪玉菌が膣内で生存できないようにしているのです。

2019年03月04日

喫煙はあなたのマイクロバイオームをひどく傷つけます

喫煙はあなたのマイクロバイオームをひどく傷つけます

喫煙はあなたとマイクロバイオームをひどく傷つけます
喫煙者のマイクロバイオームの多様性が非喫煙者よりも低くなっているとは、誰が想像したでしょうか?

喫煙がマイクロバイオームに及ぼす影響について調べた研究は少ししかありませんが、結論は非常に明確です。ご想像のとおり、喫煙は健康に良くありません。タバコの箱に印刷された、喫煙が及ぼす様々な悪影響についての警告文を読んだことがあるはずです。タバコは寿命を縮めます。タバコは肺がんを引き起こします。また、タバコは歯頚や歯を傷つけます。そして興味深いことに、これらは喫煙によってマイクロバイオームが傷ついた結果として起こるのです。詳しく見てみましょう。

テルアビブとテル・ハショメールのイスラエル人研究者グループ、ジヴ・サヴィンたちのメタ研究から見てみましょう。メタ研究とは過去の研究を一定の基準の元に要約したものです。サヴィンたちは2000年から2016年の間に行われた、喫煙と消化管マイクロバイオームに関する個別事例の研究をまとめました。喫煙はクロストリジウムプレボテラに加えて、プロテオバクテリア門とバクテロイデス門の細菌を増加させます。また同時に、喫煙によって放線菌フィルミクテス門ビフィズス菌ラクトコッカスの減少が観察されました。おそらくタバコの免疫抑制作用が原因となって、喫煙者では嫌気性細菌の増加が示されています。

喫煙者は消化管疾患のリスクが2倍になる

一般的に、喫煙者のマイクロバイオームの多様性は、禁煙者や非喫煙者と比較して低下しています。その結果、喫煙者の免疫系は脆弱になり、病気になるリスクが高まります。過去の研究では、酸化ストレスや酸塩基関係も調査されていました。喫煙者のマイクロバイオームの細菌構成は、肥満やクローン病などの炎症性腸疾患患者のものと類似していました。その理由のひとつとして、科学者たちは乳酸桿菌の減少によって抗炎症反応が弱まっていることを特定しました。この発見は、これらの疾患に苦しむ患者さんたちにとって喫煙の危険性を示すものです。また、喫煙は傷ついた腸をさらに損傷します。良いニュースとしては、禁煙をすれば、マイクロバイオームはすぐに多様性を取り戻し、正常な細菌構成に戻るということです。すでに病気にかかっている喫煙者の方にも、禁煙が遅すぎるということはありません。

喫煙と口内マイクロバイオーム

ISME(国際微生物生態学会)誌の論考(ウー他の2016年の論文およびガネサン他の2017年の論文)は、喫煙者の口内マイクロバイオームがどのように変容しているのかを明らかにしています。ウーたちは口内マイクロバイオームの変化をサヴィンたちの研究が示した知見に結び付けています。しかし、口内マイクロバイオームの変化は、部分的には消化管とは逆方向に起こります。喫煙者の口内では放線菌の数が増加し、プレボテラの数が減少します(消化管では逆のことが起こります)。また、ベータプロテオバクテリアとガンマプロテオバクテリアの減少も観察されています。一方で、喫煙者ではビフィズス菌レンサ球菌が非喫煙者と比較して顕著に増加していました。著者たちは、頭部がんや頸部がん、膵がんをこれらの変化の明らかな結果と見ています。禁煙がマイクロバイオームを非喫煙者のレベルまで回復させるという素晴らしい解決方法であるとも訴えています。また、1日数本の喫煙であってもマイクロバイオームの細菌構成に影響があったことが試験で分かっています。

二つのリスクによって危険性が倍増

ガネサンたちは喫煙がもたらす破壊的な影響を証明しました。喫煙は歯肉下のマイクロバイオームを変容させ、歯周炎を引き起こします。喫煙者で見られる血糖値の上昇(高血糖)は糖尿病のものと類似しています。論考ではまた、喫煙が消化管に及ぼす影響についても指摘しています。高血糖や高血糖に関連する疾患の患者、また高血糖の傾向のある患者は、喫煙者と非喫煙者に違いはないと簡単に結論付けてはいけません。喫煙すればリスク因子が増えるだけでなく、リスクが倍増します。逆に、禁煙は常に良い結果をもたらします。

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