2019年09月12日
傷ついたマイクロバイオームが健康に及ぼす影響
さまざまな理由から、私たちは人間ではなく細菌です。
微生物(細菌、菌類、ウイルス)の数の方が、人間の細胞の数よりも1.3対1の割合で多いのです。また、微生物の遺伝子の数は人間の体の遺伝子よりも、なんと150対1の割合で多いのです。微生物の遺伝子は人間の体にとって大切な道具です。微生物の遺伝子がなければ心地良さを感じることはできません。それどころか生存することさえままならないでしょう。
ごく最近まで、私たちはほとんどの細菌(人間と密に共生し、相互恩恵的な協力関係にある細菌)を敵として扱ってきました。細菌を敵として扱うことは、私たち自身を傷つけることだとは知らなかったのです。
人間の体はまるで惑星のように多様な生態系をもっています。体のそれぞれの場所で、細菌の生態群集がつくられています。これら細菌群集の1つでもバランスが乱れてしまうと、人間は体調が悪くなってしまいます。このことをディスバイオーシスと言います。そして、ディスバイオーシスがどれほど人間に破壊的な影響を与えるかに、私たちはようやく気が付いたのです。

抗生物質は細菌にとって核兵器です
過去70年間、抗生物質は数百万人の命を救ってきました。今日では、敗血症や重篤な肺感染症のリスクがある生命に危険な状況では、必ず抗生物質が使われています。しかし、抗生物質を使うことで人類は大きな代償を負ったということ、そして抗生物質は気軽に使える薬ではないということを認識しなければいけません。
抗生物質は人間のマイクロバイオームにとって最大の脅威です。それも抗生物質は単なる通常兵器ではなく、細菌の生態系すべてを破壊してしまう核兵器のようなものです。抗生物質が多用されるようになってから数十年の間、人間は確実に破滅への道を歩んでいます。1型糖尿病や喘息患者の増加は、抗生物質の過剰な使用に相関があると考えられています。
ディスバイオーシスは人間の体全体に影響を及ぼします
善玉菌が体の中から取り除かれると、人間は病原菌に感染しやすくなります。病原菌は弱った生態系に忍び寄って定着し、人間を病気にします。健康な人であればマイクロバイオームは1年以内に回復します。ですが、免疫不全の人が健康なマイクロバイオームを取り戻すことは難しく、そのためにより多くの抗生物質を必要とするという悪循環に陥ってしまいます。
善玉菌を除去すると病原菌に感染しやすくなるだけでなく、さまざまな疾患の発症と相関します
消化器系

下痢
抗生物質関連下痢症は、体の細菌の生態系がバランスを失ったときに起きる病気としてよく知られています。抗生物質を使うと、消化管の細菌の生態系が弱ってしまいます。その結果、消化管は細菌という病原菌と戦うための武器だけでなく、健全に消化を行うための大切な道具も失ってしまいます。細菌のカーペットがなくなって剥き出しになった腸壁は、病原菌が定着するには最適な場所です。クロストリジウム・ディフィシルと呼ばれる細菌は、最も数が多く、最も危険な病原菌の一つです。この細菌は二種類の強力な毒素を放出して腸の粘膜を傷つけ、結腸に炎症を起こします。

肥満
消化管の微生物の構成は、人間の食欲と脂肪の沈着に影響を与えます。
胃に生息する細菌、ヘリコバクター・ピロリ菌のおかげで、人間は空腹と満腹を感じることができます。ピロリ菌は胃の酸性度を調整するだけでなく、食欲調整に関わるホルモンのグレリンを減少させます。胃の中にピロリ菌がいないと、グレリンの分泌量が増え、食欲が増してしまいます。不幸なことに、ピロリ菌は過去数十年の間、過敏症の人に消化性潰瘍を引き起こす病原菌と見なされていました。そのため、抗生物質の使用によって、現在ではピロリ菌は多くの人の胃から根絶されています。例えば、米国の2~3世代前には80%の人がピロリ菌を保有していました。今では、米国人の子供のわずか6%以下しかピロリ菌を保有していません。このことは、アメリカで子供の肥満が増えている原因の一つと考えられています。同時に、過去には珍しかった食道がんが10倍に増えています。
腸の細菌叢の構成は、人間が食べ物から得られるカロリー量に影響します。その昔、食料が貴重だった時代には、食べ物からより多くの脂肪を体内に貯蔵できるマイクロバイオームを持った人間の方が、より大きな生存のチャンスを持っていました。現代ではいつでも食料が手に入るため、このようなマイクロバイオームは肥満を起こしてしまいます。二人の人間が同じ量の食べ物を食べて肥満になるかスリムなままでいられるかは、マイクロバイオームが炭水化物からエネルギーを得る方法によって決まります。
また、食べ物の種類も消化管のマイクロバイオームに影響を与えます。植物由来の炭水化物を多く摂取している日本のような国に住む人々を見ると、消化管の細菌の多くが植物炭水化物を分解できることが分かります。また、高脂肪食品の摂取は、消化管マイクロバイオームの細菌の数を減少させ、急速に脂肪を沈着させる細菌の成長を促してしまいます。

消化管間質腫瘍
マイクロバイオームは消化管間質腫瘍とも相関しています。がんを引き起こすのはマイクロバイオームではありません。人間の食べ物が有害な細菌の腸への定着を招くのです。特に欧米の食事(肉と脂肪の摂取量が多く、野菜が少ない)は、特定の酵素と胆汁酸を生成する細菌の増殖を促します。この特殊な酵素は、人間にとって無害な化合物をヘテロサイクリックアミンなどの発がん物質に変えてしまいます。ヘテロサイクリックアミンは焼いた肉にも付着しています。人間にとって無害な化合物が求電子性誘導体と呼ばれる有害な物質に変わると、DNAが損傷し、結果的にがんを引き起こされてしまいます。「1日1個のりんご」を心がけましょう。
炎症性腸疾患
炎症性腸疾患(IBD)という病気は、ある一種の細菌が他の種の細菌に強く依存していることを示しています。IBDは消化管の慢性的かつ再発性の炎症で、粘膜損傷を引き起こします。通常、健康な人では、消化管ではフィルミクテス門とバクテロイデス門の細菌が優勢です。IBD患者ではこれらの細菌の割合が減っています。フィルミクテス門が少ないと、今度はクロストリジウム種(IXaおよびIV群)の数が減ってしまいます。クロストリジウム種は酪酸を産生して、炎症誘発性サイトカインレベルを低下させます。さらに、IBD患者ではバクテロイデス・フラギリスも減少しています。この細菌は制御性T細胞を活性化し、炎症性T細胞が活発化しすぎないように抑制しています。つまり、通常、免疫系を抑制している細菌が炎症性腸疾患によって少なくなってしまうと、免疫系が過剰に働いて自らの細胞も攻撃してしまうのです。
皮ふ

アトピー性皮ふ炎
神経皮膚炎としても知られているアトピー性皮ふ炎(AD)は子供に大きな影響を与える、とても深刻な慢性皮膚感染症です。劇的なディスバイオーシスがこの疾患に大きく関わっています。この病気の最初のきっかけになるのは何なのでしょうか?皮ふの炎症または黄色ブドウ球菌の感染でしょうか?患者の感染部位だけでなく、感染していない場所の皮ふでも黄色ブドウ球菌が劇的に増える (90%)ことを考えると、後者が正しそうです。健康な人では、黄色ブドウ球菌は皮ふでは稀にしか見つかりません。AD患者で増加する黄色ブドウ球菌は、この細菌を排除する他の善玉共生菌の生息場所と栄養を独占してしまいます。面白いことに、表皮ブドウ球菌も健康な人よりもAD患者でたくさん見つかります。表皮ブドウ球菌が黄色ブドウ球菌と戦うために増殖していることが示唆されていますが、これはまだ推測に過ぎません。

にきび
多くの方が思春期にこの病気を経験します。実際、10代の85%がにきびになります。10代のときに私たちを苦しめる細菌はアクネ菌で、普段は穏やかにシンボーシス(相利共生)を保って私たちと共存しています。思春期が始まると、皮ふ、特に顔の皮ふの化合物がホルモンの変動によって変化します。これによって、免疫系とアクネ菌の間に戦いが起こり、皮脂腺の感染とにきびが起こります。科学者たちは、特定の種のアクネ菌がにきびを引き起こし、他の共生菌とは異なる働きをしているのかどうかについて研究しています。
免疫系

マイクロバイオームは免疫系を強化するという重要な使命を担っています。多くの自己免疫疾患は、適応していた免疫系が乱れた結果として起こります。1型糖尿病、関節リウマチ、喘息のような自己免疫疾患が増加しているのは、人体の環境の変化が影響しているのだと推測している人もいます。偏った食事や抗生物質の多用などの環境要因、帝王切開や消毒剤の乱用、兄弟姉妹が少ないといった要因によって、マイクロバイオームの多様性は減少しました。その結果、ディスバイオーシスが起こり、体内の細菌群集のバランスが乱れます。細菌という免疫系の「トレーナー」がコントロールを失ってしまうのです。こうなると人間の免疫系は、良い細胞と悪い細胞を見分けることができず、自分の体を攻撃し始めてしまいます。これが、自己免疫疾患やアレルギーと呼ばれるものです。
神経系

あなたは自分の直観に従いますか(英語の格言、直訳すると「腸の感覚に従いますか」)?実際、この古い格言は、想像以上に多くの真実を含んでいます。腸は人間の感覚に影響を及ぼし、 脳は脳腸相関を通じて消化管を制御しています。脳と腸のコミュニケーションの大部分にマイクロバイオームが関わっています。消化管と脳の最も大切な連絡路は迷走神経です。迷走神経は唾液分泌、心臓の鼓動や消化を制御しています。逆に言うと、消化管は脳に「満腹している」と伝え、リラックスしているときには心臓の鼓動を抑えるのです。迷走神経が受け取るメッセージは、消化管のマイクロフローラの代謝物と消化管の免疫・ホルモン細胞のメッセンジャー物質に由来しています。 そして、消化管の免疫細胞・ホルモン細胞由来のメッセンジャー物質は、消化管のマイクロバイオームに依存しています。腸からのメッセージが脳に至るもう一つの経路は血液で、何十万もの細菌代謝産物が体の中を駆け巡っています。
マウスを用いた実験で、消化管の細菌と脳のコネクションが証明されています。大人しいマウスの消化管の細菌を情緒不安定なマウスに移植すると、情緒不安定なマウスから恐怖の感情がなくなりました。すでに、ヨーグルトやプロバイオティクス細菌の投与が人間の気分に良い影響を与えることが示されています。それらを考慮すると、将来的には、憂鬱に苦しむ患者の消化管マイクロバイオームをスクリーニングし、不足している善玉菌を食事として与えるという光景を想像できるかもしれません。それまでは、健康な食事をしましょう!
2019年09月12日
健康なマイクロバイオームを維持する方法
どうすれば健康なマイクロバイオームを維持できますか?
健康なマイクロバイオームを養い、維持するための方法はたくさんあります。

最初がいちばん肝心
人間と微生物は数百万年かけて美しい共生関係を築いてきました。自然分娩では、人間の赤ちゃんは母親の産道を通って生まれてきますが、産道にはたくさんの乳酸桿菌が生息しています。生まれてくる赤ちゃんの皮ふと口は、スポンジのように細菌を吸い寄せます。赤ちゃんが誕生して最初にすることは、母乳を飲むことです。ラクトーゼ(乳酸桿菌の大好きな栄養分)をたくさん含む母乳を飲むことで、口や皮ふに付着した細菌が体の中に流し込まれます。
こうして乳酸桿菌は人間の消化管に住む最初の細菌となります。そして、生まれてから数か月の間、赤ちゃんが飲んだミルクの消化を助けます。母乳にはさらに特別な糖分が含まれています。この糖分のおかげで、二番目の細菌、ビフィドバクテリウム・ビフィダムが消化管に住めるようになります。この誕生と授乳、細菌の定着の自然な流れは数百万年の間続いていて、消化管に住む「善玉菌」の選別と「悪玉菌」の排除に関わっています。
自然分娩が帝王切開に変わると、赤ちゃんが乳酸桿菌に接触できず、この細菌の消化管への定着が遅れてしまうことになります。乳酸桿菌の定着が遅れると、赤ちゃんの成長にどのような影響があるのかは正確には分かっていません。しかし、できる限り自然分娩を行って母乳で育てた方が、赤ちゃんにとって良いのは間違いないでしょう。
1日1個のりんごで医者いらずに

栄養の問題について論じる前に、大切なことを述べます。私たちのマイクロバイオームと体の相互作用は極めて複雑で、これから説明するのはそのごく一部だけです。
MyMicrobiomeは食事内容についてのアドバイスは行いません。しかし、大切な読者の方々にご自身の意見を持ってもらえるように、科学的根拠のあるさまざまな説をご紹介いたします。
食事内容を決めることで、どの細菌を増やし、どの細菌を増やさないかを選ぶことができます。いろいろな種類の食物を食べるのであれば、消化管に生息する細菌の多様性が増大します。消化管の細菌は、果物、野菜、ナッツ、豆類、全粒粉などの植物繊維を好みます。植物繊維を食べれば、体の中の細菌は短鎖脂肪酸を生成します。短鎖脂肪酸は腸障壁をつくり、免疫機能を高めて炎症を防ぎ、がんのリスクを低下させます。
とても素晴らしいニュース があります
果物や野菜だけでなく、お茶やコーヒー、ワイン、ブラックチョコレートも、消化管マイクロバイオームの多様性の増大に相関していました。これらの食べ物はポリフェノールを含んでいます。ポリフェノールは天然の抗酸化成分を含んでいます。
その一方で、食物脂肪と単糖類をたくさん含む食べ物は、消化管マイクロバイオームの多様性の減少に相関していました。
また、食物の加工方法も影響を与えます。新鮮な生の食べ物は揚げ物のような加工食品よりもたくさんの繊維を含んでいます。
食べ物は、消化管に良い細菌を体内に運ぶ乗り物にもなります。このような食べ物はプロバイオティクスと呼ばれます。例えば、発酵食品には乳酸桿菌やビフィズス菌などの善玉菌がたくさん含まれています。
もっと簡単に言えば、食べる食べ物の種類が少なくなるほど、マイクロバイオームの多様性は減っていきます。
ヨーグルトは消化管に良い細菌を体の中に運んでくれる食べ物です。
あなたは几帳面な人ですか?
マイクロバイオームの研究者たちは、現代人がどれだけマイクロバイオームの多様性を失っているのかに関心を持ち、アマゾンで孤立して生活するヤノマミ族の集落で排泄物、口、皮ふのマイクロバイオームを採取し、分析を行いました。
排泄物のマイクロバイオームを除き、ヤノマミ族の皮ふのマイクロバイオームはアメリカ人のものとは完全に異なっており、より大きな多様性を持っていました。
西洋人の皮ふのマイクロバイオームではブドウ球菌が優勢なのに対し、ヤノマミ族では単独の種の細菌が特別多い状態にはなっていませんでした。過去に土壌菌として報告された細菌さえも豊富に見られました。この理由は簡単に説明できます。ヤノマミ族は、近代的な住宅で暮らし、外出後には汚れを洗い落とす現代人とは対照的に、自然と水の近くで暮らし、わずかな服しか身に着けていないからです。
要するに、人間の皮ふのマイクロバイオームは、私たちが外でより長く過ごせば過ごすほど、より多くの恩恵を受けるのです。子供たちを外で遊ばせ、私たちも一緒に遊びましょう!
抗菌石鹸や消毒剤のような衛生用品を使う場合は注意して製品を選んでください。制汗剤、歯磨き粉、マウスウォッシュ、洗顔剤の成分をよく確認してください。あなたと共生する細菌を死滅させてしまう必要はありません。普通の石鹸で手を洗えばそれで十分です。殺菌剤は必要ないのです!
Mother Dirtという製品をご存知でしょうか。AOBiome社は石鹸をやめて、細菌で体を洗うことを勧めています!ニューヨークタイムズマガジンの記者は、長年使っていたクレンジング製品を細菌のトリートメントに変え、肌が以前よりも柔らかく滑らかになったと報告しています!

抗生物質-マイクロバイオームを傷つけるもの
最後に、マイクロバイオームにとっての最大の敵について説明しておきます。そう、抗生物質です。(詳しくは「薬剤耐性菌の危険性」をお読みください)
抗生物質を使うときには、あなたは細菌の生態系に核兵器を落とそうとしているのだということを忘れないでください。抗生物質を使うと、生態系が回復するまでに数年はかかります。ひょっとすると完全には回復しないかもしれません。それだけでなく、免疫系が弱り、感染症に罹りやすくなるかもしれません。
抗生物質を使う前には少なくとも二度考えてください。本当に調子が良くないのか、あと数日は我慢ができるのではないかと。内科医に感染症について診断を仰いでくださいーもし症状がウイルスによって起こされていたのであれば、抗生物質を使っても無意味です。
2019年09月12日
人間の体の細菌たち
細菌の系統樹
細菌の系統発生的分類
LUCA-私たちの共通祖先
地球上のすべての生命は3つのドメイン(生物学において最も高次の分類群)-細菌、古細菌、真核生物に分類されます。3つのドメインの上にはLUCA(全生物の最後の共通祖先)が存在します。

古細菌
古細菌はとても古いドメインです。外見は細菌ととても類似していますが、遺伝子と生化学的機能は非常に異なります。現在、26の進化群(門)が知られています。熱水泉や塩湖のような極限環境の生態系だけでなく、消化管やへそのような生態学的ニッチでも見つかります。
真核生物
真核生物は核と細胞小器官をもった単細胞生物で、進化的に最も新しいドメインになります。単細胞生物は、6億年前に登場し進化してきた複雑な多細胞生物の構成要素でもあります。従って、カビや藻類などの微生物の中にも真核生物に属するものがいます。真核生物は5つの進化群(門)に分類されます。

細菌
細菌ドメインは3つのドメインの中で最も多様性に富み、現在92の門があります。2016年には1,000を超える新しい細菌が発見され、科学者たちはさらに門が増えることを確信しています。
細菌の大きな多様性は次のように説明すれば分かりやすいでしょう。地球上のすべての生物を含む生命の樹をつくるなら、LUCAは木の幹の真ん中に位置し、そこから枝を大きく広げます。もし、人間が5時の方向の枝の末端に位置するとするなら、誰もが知っているハーブのバジルはどこに位置するのでしょうか?実は、私たち人間のすぐ隣、5.01時の方向の枝に位置するのです!系統樹においてハーブと人間がこれほど近いのであれば、樹の枝の他の部分はいったい何が占めているのでしょうか?それは細菌です!細菌は生命の樹のおよそ80%を占めるのです。例えば、よく知られた大腸菌が6時の方向の枝に位置するなら、乳酸連鎖球菌は12時の方向に位置することになります!
細菌の分類
細菌は観測可能な特徴(表現型と言われます)によって分類されます。
微生物学ではまず何よりも、グラム染色が最も重要な分類ツールです。グラム染色によって細菌の二種類のエンベロープ(膜)を区別することができます。グラム染色で染められるエンベロープと、染められないエンベロープがあります。 固く厚い細胞壁を持ち、細胞膨圧の高い細菌がグラム陽性細菌です。グラム陰性細菌の細胞壁は薄いのですが、さらに外膜に覆われています。グラム陰性細菌は染料で染めることができないため、このような名前が付いています。クリスチャン・グラム博士の開発した染色法には反応しないのです。

細菌はコロニーの形態によっても分類することができます。必要とする栄養素が豊富で適温の環境下で細菌を培養すると、一匹の細菌でもコロニーを形成することができます。コロニーは数百万の細菌のクローンの集合体(コングロマリット)で、肉眼でも観察することができます。細菌の種類によって、形成されるコロニーの特徴は異なります。粘液性のもの、乾燥したもの、しわのあるもの、塔状のもの、複数の色を持つものなどがあります。
細菌が動くのであれば、移動方法によって分類することができます。 細菌は泳ぎ、這い、群れで移動し、ガス胞(浮力を調整する細胞内の小胞)によって動きます。
また、特別な栄養素で細菌を培養するか、特定の温度やpHの環境下で培養すると、生理学的特徴によって分類することができます。細菌は特別な培地で成長したり、 特定の化学成分の色を変化させる酵素を放出します。
近年では遺伝子型によって分類されることが多くなっています。遺伝子型による分類はより正確です。
主要な細菌の進化群(門)の抜粋を下図に載せました。細菌の分類方法と相互の関係を見てみてください。最も高次の分類単位がドメインです。細菌は細菌ドメインに属します。ドメインの下位の分類単位が門になります。
網: バチルスまたはファーミバクテリア
目: バチルス
- 科: バチルス
バチルス (消化管や環境中の片利共生細菌) - 科: リステリア
リステリア (リステリア症の病原菌) - 科: ブドウ球菌
ブドウ球菌 (アトピー性皮膚炎の病原菌、MRSA)
目: 乳酸菌
- 科: エンテロコッカス
エンテロコッカス (消化管の片利共生細菌) - 科: 乳酸桿菌
乳酸桿菌 (消化管と膣の片利共生細菌) - 科: レンサ球菌
レンサ球菌 (口内の片利共生細菌)
網: クロストリジウム
目: クロストリジウム
- 科: クロストリジウム
クロストリジウム (消化管の片利共生細菌、食中毒の病原菌)
網: 放線菌
目: 放線菌
亜目: コリネバクテリウム
- 科: コリネバクテリウム
コリネバクテリウム (皮ふの片利共生細菌) - 科: マイコバクテリウム
マイコバクテリウム (結核の病原菌)
亜目: プロピオン酸菌
- 科: プロピオン酸菌
プロピオン酸菌 (皮ふの片利共生細菌、にきびの病原菌)
目: ビフィズス菌
- 科: ビフィズス菌
ビフィズス菌 (消化管の片利共生細菌)
網: バクテロイデス
目: バクテロイデス
- 科: バクテロイデス
バクテロイデス (消化管の片利共生細菌) - 科: プレボテラ
プレボテラ (消化管の片利共生細菌)
網: フラボバクテリウム
目: フラボバクテリウム
- 科: フラボバテクリウム
フラボバクテリウム (環境中の細菌)
網: アルファプロテオバクテリア
目: リゾビウム
- 科: リゾビウム
リゾビウム (根粒窒素固定共生細菌)
網: ベータプロテオバクテリア
目: ナイセリア
- 科: ナイセリア
ナイセリア (淋病の病原菌)
網: イプシロンプロバクテリア
目: カンピロバクター
- 科: カンピロバクター
カンピロバクター (食中毒の病原菌) - 科: ヘリコバクター
ヘリコバクター (胃の片利共生細菌)
網: ガンマプロテオバクテリア
目: 腸内細菌
- 科: 腸内細菌
エンテロバクター (消化管の片利共生細菌)
大腸菌 (消化管の片利共生細菌)
クレブシエラ (病院で見つかる危険な病原菌)
サルモネラ菌 (食中毒の病原菌)
赤痢菌 (赤痢の病原菌)
目: ビブリオ
- 科: ビブリオ
ビブリオ (コレラの病原菌)
目: レジオネラ
- 科: レジオネラ
レジオネラ (レジオネラ症の病原菌、温水管で見つかる)
目: シュードモナス
- 科: モラクセラ
アシネトバクター (病院で見つかる危険な病原菌) - 科: シュードモナス
シュードモナス (肺感染症の病原菌、 嚢胞性線維症患者で多く見つかる)
2019年09月12日
マイクロバイオーム検査キット製品のレビュー
MyMicrobiomeはマイクロバイオーム検査キットのレビューを行いました。結果をご報告します。複数の企業が無料で製品提供を行ってくれました。大変感謝いたします。このことはもちろん、私たちの中立的な評価には何の影響も与えません。どうぞ、楽しんでお読みになってください。
調査したマイクロバイオーム検査キットと評価結果

『おしゃべりな腸』(著者ジュリア・エンダース)が出版されてから、腸が健康と幸福のために最も大切な存在であるということが一般にも知られるようになりました。それまではずっと重要視されていませんでしたが、ここ10年間で腸とその住民であるマイクロバイオームの研究に重点が置かれるようになってきています。これにともない、世界中の科学者が皮ふ、口、肺、尿生殖路、そして特に腸のマイクロバイオームの分類を行うようになりました。体のそれぞれの場所で、どの微生物や化合物がマイクロバイオームの健康バランスを示すのかや、体の微生物生態系が乱れたときにどうすれば良い形でバランスを取り戻すことができるのかなどが研究されています。
マイクロバイオームの検査キットが世界中で雨後のたけのこのように売り出されています
科学者たちの研究が活発になるのと同時に、一般の消費者も購入できるマイクロバイオームの検査キットが世界中で売り出されました。検査キットは役立つのでしょうか? 「検査」とは一体どのような内容で、各社の製品にはどんな違いがあるのでしょうか?現時点で購入することができるマイクロバイオーム検査キットのレビューを行いました。
マイクロバイオームの自己検査キットについて、uBiome、Viome、Biohm、IhcodeやDayTwoなど10社以上のサプライヤーに問い合わせました。その結果、全部で5社の企業が参加に同意してくださいました。
- Biomes.world (ドイツ)
- Thryve (アメリカ)
- Atlas Biomed (イギリス)
- TFTAK (エストニア)
- Medivere (ドイツ)
プロバイオティクスヨーグルトを2週間毎日食べた前後で、各社の検査キットを二回使用しました。
複数の評価基準による検査キットの評価

発送/梱包/マニュアル/サンプルの返送方法
全ての検査キットがすぐに届けられました(一週間以内)。アメリカから届いたキットだけ税関で止められました。いずれの製品も丁寧に梱包されていましたが、TFTAKキットには改善の余地がありました。Biomes、Thryve、TFTAKの内容物は類似していて、スワブ(綿棒状の採取キット)、検査サンプル用の安定剤が入った小さなチューブ、サンプル採取のマニュアルが入っていました。Atlasのサンプル用チューブは少し大きく、より多くのサンプル採取が必要でした。Medivereの製品はチューブの中に安定剤が入っておらず、25mlのサンプルが必要でした。これは減点対象です。TFTAK、MedivereとAtlasの検査キットには排泄物の採取キットが入っていました。また、TFTAKとThryveの製品には失敗した場合の交換セットが含まれていました。
検査サンプルの返送がいちばん楽だったのはAtlas、Biomes、Medivereで、料金前納済みの返送用封筒や梱包箱が入っていました。Thryveにも返送用の梱包箱が入っていましたが、一度郵便料金を支払わなければならず、支払い後にレシートを送ると送料がPayPalで返金されるようになっていました。TFTAKには返送用の梱包箱や封筒が入っておらず、送料の表示さえありませんでした。将来的にはしっかりと改善されることを期待します。
検査結果
検査結果が戻ってくるのまでの期間は2週間から3ヶ月で、TFTAKが最も時間がかかりました。
結果は各社ウェブサイトのダッシュボードで確認できるか(Thryve、Biomes、Atlas)、レポートにまとめられていました(Biomes、Medivere、TFTAK)。ダッシュボードにログインすると概要ページが開き、そこから各項目のページに移動できます。全体的にダッシュボードは使いやすいデザインになっていました。Biomes とThryveのダッシュボードはとても簡単に利用できましたが、Atlasでは確認したいデータを探すのに苦労することがあり、また一部の項目が隠れていました。
ダッシュボード形式の方がレポートでの報告よりも情報量が多いのですが、確認のために何度もページを閲覧し、検索する必要があります。ダッシュボードの利点は、検査したマイクロバイオームに含まれる細菌について、それぞれの項目をクリックすればより詳しい情報を得られることです。
Biomes、Medivere、TFTAKのレポートは整った体裁で、結果を分かりやすくまとめてくれていました。Medivereは分析した細菌を機能グループごとに分け、検査で見つかった細菌ドメインをリストにしています。
Biomesでは2018年11月半ばから新しいダッシュボードの運用が始まっています。新しいダッシュボードでは旧ダッシュボードの検査データを要約し、検査で判明したマイクロバイオームに適した食事内容を示してくれています。
TFTAKでは検査サンプルで最も多く見つかった細菌をリストにまとめ、健康なエストニア人の比較サンプルで最も多く見つかる細菌との比較結果を示しています。
各検査キットの解析方法と検査結果には大きな違いがありました
各検査キットの解析結果では、マイクロバイオームの多様性と健康・栄養に関して詳細に説明していました。BiomesとMedivereでは、検査サンプルのマイクロバイオームの多様性は非常に大きいと評価していました。他の三社の検査結果では多様性の評価は低くなっていましたが、ヨーグルトを食べ続けた二週間後には多様性は増大していました。多様性が大きいほど、健康に良くなります。

インフォボックス:エンテロタイプ
エンテロタイプに分類することで、マイクロバイオームを構成する主要な細菌について知ることができます。主要な細菌が分かれば、普段の食事の傾向についても知ることができます。
マイクロバイオームの中で優勢となっている細菌を基準にして、3種類のエンテロタイプのうち1つに分類することができます。エンテロタイプは普段の食事に関係しています。
マイクロバイオームの主要な細菌はバクテロイデス属で、平均80%を占めています。これは、マイクロバイオームの多様性が低いことを意味します。バクテロイデス属の細菌は単糖類、動物性脂肪、タンパク質を栄養源にしています。
プレボテラが主要な細菌となります。プレボテラは一般にアマゾンやアフリカの先住民から検出されます。これら先住民たちの食事は主に植物繊維で、単糖類や肉、脂肪は全く食べないか、食べたとしてもごくわずかな量です。ヨーロッパではこのエンテロタイプは主にベジタリアンに見られます。
ルミノコッカスが最も多く、次にユーバクテリウム、ドレア、その他の細菌と続きます。これらの細菌は特に酪酸と抗炎症作用のある短鎖脂肪酸を産生する能力に優れ、主に難消化性でんぷんやセルロースなどの炭水化物を用います(レンティル豆、豆類、全粒穀)。
エンテロタイプについて記載があったのは一部の検査キットだけでした

ThryveとTFTAKの検査結果ではエンテロタイプについて何の記載もありませんでした。Biomesが報告したエンテロタイプの結果はAtlasと同じでした。Medivereの報告ではエンテロタイプ3であると書かれていましたが、実際の検査結果はエンテロタイプ1、つまりバクテロイデスの優勢を示していました。
もう一つの面白い違いは、バクテロイデスに対するフィルミクテスの比率でした。フィルミクテスは特に脂肪の利用に優れているのですが、フィルミクテスの比率が高い人は、体重が増えやすい傾向があります。最適な比率は1から3の間です。Biomesの検査結果では、マイクロバイオームのカロリー利用率がとても高かったのですが、その他の検査キットでは最適な比率でした。Atlas、Biome、TFTAKの報告ではフィルミクテスとバクテロイデスの関係について触れていませんでした。

検査結果の詳細は各社によって大きく異なっていました
すべての検査キットのレビューで同じサンプルを使いました。まず、必要なサンプル量と保存方法に明らかな違いがありました。Biomes、Thryve、TFTAKではトイレットペーパーで拭った程度の量のサンプルで十分でしたが、Atlasは約2ml、 Medivereに至っては25mlのサンプルが必要でした。Medivereを除くすべての検査キットで、サンプル採取用の容器に安定剤が入っていました。安定剤は、サンプルをラボに送るまでの間に細菌の増殖を防ぎ、ラボでの検査中に細菌のDNAとRNAを安定させるためには不可欠です。また、安定剤の種類は検査結果に影響を及ぼす可能性もあります。
すべての検査キットで、16SリボソームRNA系統解析を用いてマイクロバイオームを解析していました。これは標準的な解析方法ですが、一部の細菌種を解析することができません。細菌はそれぞれ異なる数の16SリボソームRNAの複製を持っているので、実際のサンプル中の細菌数を決定するには正確なアルゴリズムを使う必要があります。そのため、検査を再度行うと、異なった結果になってしまう可能性もあります。また、検査の結果は比較に用いたデータベースの影響も受けます。各社は独自のデータベースを持っていますが、データ量は限られています。検査結果は常にデータベースと比較され、数値の調整を行うこともあります。マイクロバイオームの検査キットを利用する場合は、同じ国または少なくとも同じ大陸の企業の製品を選ぶことをお勧めします。例えば、ヨーロッパ人の平均的なマイクロバイオームは北アメリカやアジアの人のものとは大きく異なります。
検査結果の詳細は異なっていたものの、各社ともマイクロバイオームの構成について同じ傾向を結果として示していました。
1回目の検査では、マイクロバイオームの評価はエンテロタイプ2に近かったのですが、2回目の検査ではエンテロタイプ3でした(Biomes、TFTAK、Atlas)。これらのエンテロタイプは、被験者の食事内容と矛盾なく一致していました。3社(Biomes、TFTAK、Medivere)の製品で、2回目の検査時に炎症誘発性細菌(プロテオバクテリア)の割合が増加していました。また、すべての検査キットで、2回目の検査結果で細菌の多様性が増加するか、少なくとも現状のまま維持されていました。
推奨する食事内容は共通でした
- BiomesとThryveは似た内容のプロバイオティクス混合食を推奨していました。どちらも不足している細菌群または細菌種を補う特別な食事を提案しています。Biomesは新しく運用が始まったダッシュボードで詳細なPDFレポートを提供しています。その中でマイクロバイオームに合った食事レシピを紹介しています。解析したマイクロバイオームにとってどの栄養素が良いのかや、不足している栄養素を知ることができます。また、マイクロバイオームの構成が原因となって起こる可能性がある食事不耐症についても解説していました。
- Atlasは電子メールによって毎週おすすめの食事を知らせてくれます。
- Thryveではウェブサイトのダッシュボードで、どのような食事をすれば消化管の中でそれぞれの細菌の成長を促せるのか示しています。

すべての解析レポートで発症する可能性のある疾患を説明していました
すべての検査キットの解析レポートで、被験者のマイクロバイオームのバランスが失われると発症する可能性のある疾患について説明
- BiomesとAtlasは、マイクロバイオームのビタミン類の合成能について評価し、問題がある場合は指摘を行っています。また、ウェブサイトのダッシュボードで、カロリー利用率や炎症マーカー、腸管粘膜、便秘についてコメントしています。
- Thryveでは、疲労や不安、睡眠不足、皮ふ、体重の問題などの症状について言及し、これらの症状にマイクロバイオームがどの程度関わっているのか説明しています。ダッシュボード上で該当の項目をクリックすると、症状を改善するために必要な栄養素について知ることができます。
- Atlasではマイクロバイオームの乱れに相関している疾患 (2型糖尿病、肥満、小腸炎、動脈硬化症)をリスト化して、検査したマイクロバイオームの状態に基づく発症リスクを示しています。
-
Medivereは診断と言えるほど詳細な健康レポートを提供してくれました。過敏性腸症候群、自己免疫疾患、神経疾患、代謝疾患のリスクを、マイクロバイオームのデータに基づいて評価し、消化管の細菌のさまざまな特徴について詳細に説明しています。
- TFTAKは検査で見つかった細菌に関して、善玉菌と悪玉菌を表で説明しています。また、検査サンプルの細菌を健康なエストニア人のサンプルで最も多い細菌と比較しています。比較によってどの細菌が不足し、どの細菌が多いのかを知ることができます。
結論
ヒトマイクロバイオームの科学はまだ黎明期にあります。それにも関わらず、マイクロバイオームが私たちの健康にどのような影響を与えているのかについて、はっきりと分かっていることも少なくありません。各社の検査キットの解析結果が異なっていたのは、検査キットの内容や解析に使われたデータベースが異なっていたことが原因ですが、結果に一定の傾向があったことも事実です。今回レビューを行った検査キットで、どの製品が最も優れていたのかを言うことはできません。ですが、腸の健康に問題を抱えている人にとって、また純粋に健康のために何かしたいと思っている人にとって、マイクロバイオームの検査キットはきっと役立ちます。
検査キットの解析結果で、低タンパク質と低脂肪の食事、つまり植物繊維が豊富な食事がマイクロバイオームの多様性を増やすと記載されていたことは共通でした。ただし、これはタンパク質と脂質をまったく摂取してはいけないことを意味するのではありません。すでにご理解頂いていると思いますが、それよりもできる限り未加工で新鮮な食べ物、できるだけ色彩豊かな食べ物を食べることが大切です。食事内容が多彩になるほど、マイクロバイオームの多様性は増します。
各社の検査キットはとても優れており、今後開発されるであろう新しい技術によって、より信頼できるものになることは確実です。一方で、マイクロバイオームの解析方法とサンプル採取の方法を標準化し、一致した結果を得られるようにすることは喫緊の課題と言えます!
MyMicrobiomeでは定期的にマイクロバイオーム検査キットのレビューを行い、最新の情報をお届けします。
2019年09月12日
マイクロバイオームに良い食事と栄養
マイクロバイオームに良い食事と科学的根拠
食事は人間の体に住む細菌と健康にどのような影響を与えますか?

プロバイオティクス
プロバイオティクスは、食品や栄養補助食として摂取できる生きた細菌のことです。国際プロバイオティクス・プレバイオティクス学術機関(ISAPP)は最近、プロバイオティクスに関する国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の定義を批准しました。その定義とは、「適切な量で摂取したときに、宿主(人間)の健康に有益な生きた微生物」というものです。ISAPPの定義には、プロバイオティクスに含まれる細菌の種類と量を明確に定義し、安全に用いられなければいけないという考えが含まれています。生きていない細菌を含んだ製品や成分、定義に含まれない細菌を用いた食品などはプロバイオティクスには該当しません。従って、定義に含まれない細菌叢を使った発酵食品もプロバイオティクスではありません。
プロバイオティクス・・・適切な量で摂取すれば、宿主(人間)の健康に有益な生きた細菌
プロバイオティクスの定義について、ヨーロッパの状況は少し違います。欧州食品安全機構(EFSA)によってプロバイオティクスと認められた製品は一つだけしかありません。Winclove Probiotics社が培養・生産しているプロピオニバクテリウム・フロイデンライシイW200です。この細菌は適量のビタミンB12を含み、EFSAから健康強調表示を行う認可を得ています。EFSAは2011年に、プロバイオティクスという言葉を健康強調表示に使うためには、科学的な根拠が必要であるとの声明を出しています。ヨーロッパにはとても大きな「プロバイオティクス」製品の市場があるにも関わらず、プロピオニバクテリウム・フロイデンライシイW200を除き、正式にプロバイオティクスと表示できる製品がないのは驚きです。それ以外の「プロバイオティクス」製品には健康強調表示を行う医学的根拠がありません。

(ロイナネン他、2012年)
プロバイオティクスに最もよく使われている細菌-ビフィズス菌と乳酸桿菌
「プロバイオティクス」製品に最もよく使われている細菌は、乳酸桿菌属またはビフィズス菌属です。ビフィズス菌属には短鎖脂肪酸(SCFA)、特に乳酸と酢酸塩を産生する種が含まれています。ある研究では、プロバイオティクスの性質を持つビフィズス菌を投与することによって、人間や鳩の排泄物中にSCFAが増加することが明らかにされています。SCFAは人間の消化管に直接的に良い影響を与えます。また、他の細菌叢によって酪酸塩のような物質に変えられても、健康に良い影響を与えます。例えば、SCFAは消化管の運動と収縮機能にSCFA受容体を通じて好影響を与えたり、抗炎症性サイトカインIL-10を刺激することで抗炎症効果を示します。
乳酸桿菌とビフィズス菌は「毛」を持ち、消化管に付着できる
グラム陽性細菌(例えば、乳酸桿菌やビフィズス菌)の細胞表面は、宿主と細菌の直接の相互作用を可能にする特別な性質を帯びています。これは、プロバイオティクスの細菌が消化管に定着するために極めて重要な機能です。髪の毛のように見える細菌の付属物は、線毛と呼ばれます。線毛は細胞表面の特徴的な構造で、これによって細菌は内皮に付着することができます。線毛の機能は、病原菌の競合排除や免疫調整、腸粘膜の構造保全に関わっています。ビフィズス菌と乳酸桿菌で3本の線毛が見つかっています。実験の結果によって、特にラクトバチルス属ラムノサス種GG株 (LGG)がバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)などの病原菌エンテロコッカス・フェシウムを攻撃することが示されています。
ラクトバチルス属ラムノサス種GG株(LGG)はバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)を攻撃
グラム陽性細菌の細胞表面の特徴は、細胞壁の構造それ自体による免疫調節です(例えば、ペプチドグリカンやリポタイコ酸)。これらの特徴的な細胞壁構造は乳酸桿菌とビフィズス菌によって維持され、プロバイオティクスの細菌の重要な働きである腸管バリア機能に良い影響を与えます。
LGGは最も特徴的なプロバイオティクス細菌
プロバイオティクス製品の誇大広告の背景には何があるのでしょうか?もっともよく使われているプロバイオティクスの細菌の働きを見ると、健康上の利益は明らかです。プロバイオティクスの細菌のラクトバチルス属ラムノサス種GG株(LGG-GG、1985年に人間の腸管細菌叢からこの細菌株を発見したシャーウッド・ゴーバックとバリー・ゴールディンにちなんで名付けられました)は世界で最も多くの記事や論文で扱われ、300回を超える臨床試験の対象となっています。特に小児科で多くの研究が行われており、小児における急性胃腸炎の治療と抗菌薬関連下痢症(AAD)の予防に有効であることが証明されています。また、LGGは院内下痢症と呼吸器感染症の予防に有効であることも証明されています。しかし、ヘリコバクター・ピロリ菌の抗生物質治療に関しては、成人においてのみ有意な結果が得られています。
プロバイオティクスの細菌は有害な細菌を攻撃し、健康上の利益をもたらす
プロバイオティクスの細菌に関する科学論文を考察すると、プロバイオティクスの細菌は消化管のマイクロバイオームが機能不全に陥った患者や、免疫系が弱っている患者の治療に適していると言えます。一連の研究によると、プロバイオティクスの細菌は子供や優れたスポーツ選手、抗生物質治療を受けた患者や炎症性腸疾患(IBD)患者に良好な転帰をもたらします。治療が奏効する理由はすべて同じで、細菌の日和見感染を防ぐことによります。健康な成人では、プロバイオティクスの摂取後にはマイクロバイオームの変化が見られましたが、健康上の利益までは見出せませんでした。また、プロバイオティクスの細菌は、下痢を起こす有害な細菌の増殖を防ぐ目的で、健康な人にも旅行前などに使うことが推奨されています。
プロバイオティクスを摂食または服用する場合は、製品に含まれる細菌株の種類と量を知ることが大切です。プロバイオティクスの細菌には胃の強い酸性環境中で生存し、消化管に定着することが求められます。また、副作用も含めて、その特徴をよく把握しておく必要があります。プロバイオティクスの細菌は特に健康な人には、消化管のマイクロバイオームの構成を劇的に変化させることはありません。しかし、抗生物質の投与後や、病原菌の侵入を受けやすいマイクロバイオームのバランスが崩れた人では、有害な細菌の定着を防いでくれます。

プレバイオティクス
プレバイオティクスのことを知った方は、毎日食べたいと思うのではないでしょうか?プレバイオティクスを食べるとどのようなメリットがあり、体の中の細菌叢と体にどのような影響を与えるのでしょうか?プレバイオティクスについて深く掘り下げ、すでに分かっている事実をご紹介します!
プレバイオティクスとは何ですか?
プレバイオティクス―宿主(人間)のマイクロバイオームが選択的に利用して、健康上の利益をもたらすもの
現在使われているプレバイオティクスの定義は、ISAPPが提案したものです。その定義は、宿主(人間)のマイクロバイオームが選択的に利用することで、人間に健康上の利益をもたらすもの、となっています。
炭水化物に限定されず、多くの研究でさまざまな種類のオリゴ糖もプレバイオティクスに含めています。
ヒトミルクオリゴ糖(HMOs)…200種類以上のHMOが同定されています。HMOはブドウ球菌やビフィズス菌などの特定の細菌群の成長を促進します。HMOは素晴らしいプレバイオティクスです。
食物繊維とデンプンは細菌によって短鎖脂肪酸 (SCFAs)に分解されます
- 食物繊維とデンプン・・・消化管で細菌によって短鎖脂肪酸(SCFAs)に分解されます。酪酸、酢酸塩、プロピオン酸が最も多く、これらは嫌気性発酵の最終産物です。
- レジスタントスターチ(RS)・・・小腸を通過し、大腸に到達して細菌に発酵されるデンプンです。大腸で細菌がRSを発酵することでSCFA(特に酪酸)が産生され、消化管に生息する細菌の多様性が増します。
- 食物繊維・・・消化することができない化合物で、ほとんどが炭水化物です。食物繊維の多くは穀物、豆類、果物、野菜から抽出されます。長時間咀嚼し、ゆっくりと消化すれば満腹感を得られます。また、食物繊維は小腸のグルコース吸収率を低下させます。
- 難消化性オリゴ糖(NDOs)・・・単糖類と多糖類の中間体です。消化管の細菌生態系の多様性、生化学的作用と生理学的作用を改善します。
- NDOの中では、インシュリンやオリゴフルクトースなどのフラクトオリゴ糖(FOS)がプレバイオティクスとして最もよく研究されています。
プレバイオティクスが人間とヒトマイクロバイオームの両方に有益であるという示唆は多いのですが、科学的根拠のある研究はまだまだ少ないです。
多くの研究がフラクトオリゴ糖(FOS)などの食物繊維に焦点を置いています
レジスタントスターチとプレバイオティクスを摂取すると、特定のプレバイオティクスと炭水化物を代謝する細菌の数が変化します。特にビフィズス菌や乳酸桿菌などが影響を受けます。ヒト対照試験では、食物繊維の摂取がビフィズス菌と短鎖脂肪酸、特に腸内pHを低下させる酪酸の増加に相関していることが示されました。

その他の食品の健康への影響
乳化剤によってマウスは慢性腸炎とメタボリックシンドロームを発症
リボ多糖とフラジェリンの二つは自然免疫系を活性化させることで知られています。その結果、マウスは慢性腸炎(慢性大腸炎を促進)とメタボリックシンドローム(腹部肥満、高血圧、高血糖、高血清トリグリセリドおよび高比重リポタンパク (HDL) の5つの病状のうち、少なくとも3つが認められる)を発症しました。このことは心血管病と2型糖尿病のリスクに関連していました。乳化剤によって変化したマイクロバイオームは腸内を覆う堅い粘液層に浸透することもあります。他の研究では、乳化剤が大腸がんの発症率を高めることも示されています。
乳化剤を与えたマウスで不安が増加
ホルダーの研究チームはまた、乳化剤を与えた後のマウスの振る舞いを観察しました。マイクロバイオームの乱れが脳腸軸を通じて神経系にも影響を与えることが広く知られていたからです。乳化剤を与えたマウスで不安の増加が観察されました。また、乳化剤が食欲に影響を及ぼすペプチドとホルモン(アグーチ関連ペプチド(AgRP)とαメラニン細胞刺激ホルモン(αMSH))に影響を与えることも認められました。つまり、乳化剤を摂取すると食事量が増加する可能性があるのです。
この記事では、数多くのトピックについてご紹介しました。ここで扱った内容はそれぞれ、加工食品や発酵食品、ポリフェノール、オススメの料理レシピなどのトピックでさらに掘り下げます。ぜひご覧になってください!
2019年09月12日
マイクロバイオームに優しい体内環境を整えましょう
体のいろいろな場所のマイクロバイオーム
宇宙から地球を見ると、動物も植物も昆虫も、地球上の生命は何も見られません。
一人の人間を見たときも同じことが起こります。
私たちは惑星に似ています。数兆もの「住人」である微生物の宿主なのですから。
顕微鏡で人体を見ると、砂漠や河谷、危険な沼地、酸性湖、多湿のジャングルを探検することができます。
鼻を見てください。くしゃみをするたびに、侵入者と戦うペプチドを含んだ風速300kmのハリケーンが起こります。
人間の体という惑星の生態系はとても多様です。そして、その住民たちである微生物も同じように多様性に満ちています。
中でも、細菌たちは多様な生態系への適応力の点で、間違いなく最も優れています。
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口
口の中には60億以上の細菌が生息しています。細菌は、口腔粘膜や歯、舌でそれぞれ異なった生態系をつくっています。
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胃
胃は酸性湖のようなもので、ごく僅かな種類の特別な細菌だけが生存できます。これらの細菌は胃の酸性度を整え、食欲を調整しています!
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腸と結腸
人体の中をさらに下っていくと、最も多くの細菌が生息する腸に至ります。腸には皮ふや口よりも百万倍多い数の細菌が生息していて、腸壁は細菌のカーペットで覆われています。
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膣のマイクロバイオーム
膣にはとても独特な生態系があります。乳酸桿菌とその仲間だけが生存することができます。これらの細菌は侵入してくる有害な微生物と戦ってくれます。
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皮ふ
人間の皮ふは場所ごとに特徴が異なり、それぞれに独自の生態系があります。前腕であれば砂漠、脇の下であれば多湿のジャングル、そして額は脂ぎった世界となっています。しかし、過度に衛生的な西洋社会では、皮ふの細菌の多様性の多くが失われてしまっています。


尿生殖路に生息する細菌を見つけようと思うと、限られた種類の細菌しか見つかりません。膣のマイクロバイオームはとても特別で、ごく一部の種の細菌だけが生存できます。マイクロバイオームの多様性が乏しいにも関わらず、膣の細菌は独特な生態系をつくっていて、pHを適切なレベルに保ち、有害な細菌の侵入を防いでくれます。この環境を好むのは乳酸桿菌種です。ほとんどの女性は5タイプの乳酸桿菌群のうちの1種類を持っています。いずれのタイプも、ラクトバチルス種 (L.クリスパタス、L.イネルス、L.イエンセニまたはL.ガセリ)が優勢です。これらの細菌は乳酸と「科学兵器」(H2O2とバクテリオシン)を放出し、イースト菌や病原菌などの有害な細菌の侵入を防いでくれます。
皮ふの面積は1.8 m2あり、そのマイクロバイオームはとても複雑です。皮ふは場所によって特徴が異なり、それぞれ独特の生態系が存在しています。皮ふの「砂漠地帯」(臀部、前腕、手のさまざまな部位などの乾燥した部分)では、細菌の多様性はとても豊かです。19種類の細菌門が存在し、特に4種類の細菌が優勢です(アクチノバクテリア (52%)、フィルミクテス (24%)、プロテオバクテリア (17%) およびバクテロイデス(7%))。かつては消化管からの汚染によって存在していると考えられていたグラム陰性細菌さえも、皮ふの乾燥した部分に生息しています。面白いことに、乾燥した皮ふに住む細菌は、消化管や口腔内の細菌よりも系統発生的な意味での多様性が豊かです。
皮ふの脂ぎった部分(額や耳の後ろ側、鼻孔の後ろや両側などの皮脂性部分)には、主にプロピオニバクテリウム種が生息しています。この細菌は通常は無害ですが、外敵となる細菌の侵入者と戦うときにだけ攻撃的になります。思春期になると、皮ふ、特に顔の皮ふの化学組成がホルモンの変化によって変わります。この変化によって免疫系とプロピオニバクテリウムに争いが起こり、皮脂腺の感染によってにきびができます。

多湿なジャングル(へそ、脇の下、鼠径部、臀部のくぼみ、足の裏、膝と内肘の後ろ側などの湿った部分) はコリネバクテリウム種とブドウ球菌の生息地です。これらの場所のマイクロバイオームの多様性は乾燥した皮ふと比べると乏しいのですが、細菌の数は多く、スタンプ一個分の範囲で1,500万もの細菌が見つかります。
表皮ブドウ球菌は、皮ふの細菌の中で最も重要な戦士です。皮ふの免疫系と活発に協力して病原菌(例えば、黄色ブドウ球菌)を排除してくれます。人間の体の細菌生態系において、細菌と免疫系の共存関係が乱れる―つまり、ディスバイオーシスが起こると病気になります。アトピー性皮ふ炎、乾癬、尋常性痤瘡、慢性創傷などの皮ふ疾患は、ディスバイオーシスによって起こる病気として良く知られている例です。

口から始まる消化器系に住む60億の細菌は、4つの主要細菌門に属しています(フィルミクテス、プロテオバクテリア、バクテロイデス、放線菌およびフソバクテリウム)。口腔粘膜や歯、舌には細菌が住んでいて、それぞれ異なる生態系をつくっています。一般的には、人間の口の中は一種類の細菌、レンサ球菌が占めています。
酸性環境のせいで、胃にはわずかな種類のマイクロバイオームしか存在していませんが、重要なことに変わりはありません。胃のマイクロバイオームの大半は放線菌とヘリコバクター(例えば、H.ピロリ)です。これらの細菌は胃の酸性度を調整し、H.ピロリはホルモンのグレニン分泌を減少させます。グレニンは食欲の調整に関わっています。不幸にも、H.ピロリは過去数十年の間、過敏性の人々に消化性潰瘍を引き起こす病原菌と見なされていました。その結果、抗生物質によって人間の胃の中からほぼ根絶されています。このことは、特に米国において子供の肥満が増えている理由の一つと考えられています。

胃からさらに小腸を経て結腸まで降りていくと、下に行くにつれて細菌の数は劇的に増えていきます。腸には皮ふや口と比べて百万倍も多い数の細菌が生息しています。結腸の腸壁を直接見ることができないのは、細菌のカーペットによって覆われているからです。
消化管のマイクロバイオームでは二種類の細菌門、バクテロイデスとフィルミクテスが優勢です。この二種類の細菌の比率は個々人で大きく異なり、肥満のなりやすさに大きく影響します。バクテロイデスに対してフィルミクテスの割合が大きいと、肥満になる傾向があります。
消化管のマイクロバイオームは程度の差こそあれ食物からエネルギーを蓄えています。また、ビタミン合成のような代謝機能のほか、化学物質や栄養素の分解、脂肪代謝のサポート、病原菌の排除や免疫系の刺激・熟化といった重要な役割も担っています。
2019年09月12日
マイクロバイオームが乱れると皮ふの病気になります
マイクロバイオームが乱れると皮ふの病気になります
アトピー性皮ふ炎

神経皮膚炎としても知られているアトピー性皮ふ炎(AD)は子供に大きな影響を与える、とても深刻な慢性皮膚感染症です。マイクロバイオームの劇的なディスバイオーシスがこの病気に大きく関わっています。アトピー性皮膚炎は最初に何が原因となるのでしょうか?皮ふの炎症でしょうか?それとも黄色ブドウ球菌の感染でしょうか?患者の皮ふの感染部位だけでなく、感染していない場所でも黄色ブドウ球菌が劇的に増えること(90%)を考えると、後者が正しそうです。健康な人では、黄色ブドウ球菌は皮ふでは稀にしか見つかりません。AD患者で劇的に増えた黄色ブドウ球菌は、この細菌を排除する善玉共生菌が生息する空間と栄養を独占してしまいます。興味深いことに、黄色ブドウ球菌と戦う表皮ブドウ球菌も、健康な人よりもAD患者でたくさん見つかっています。表皮ブドウ球菌が黄色ブドウ球菌と戦うために増殖していることが示唆されていますが、これはまだ推測に過ぎません。
にきび

多くの方が思春期にこの病気を経験します。実際、10代の85%がにきびになります。10代の若者を苦しめる細菌はアクネ菌で、普段は穏やかにシンバイオーシス(相利共生)を保って私たちと共存しています。しかし思春期が始まると、皮ふ、特に顔の化学組成がホルモンの変化によって変わります。これによって免疫系とアクネ菌の間に戦いが起こり、皮脂腺が感染し、にきびができます。科学者たちは、特定の種のアクネ菌がにきびを引き起こし、他の共生菌とは異なる働きをしているのかどうかについて研究しています。
2019年09月12日
フレイオイル®はマイクロバイオーム・フレンドリーな製品として認定され、グレード1.2の評価を得ました
フレイオイル®はマイクロバイオーム・フレンドリーと認定され、グレード1.2の評価を得ました

製造メーカーによる商品説明
フレイオイル®-より美しく引き締まった肌に。フレイオイル®は、肌に良い原料と天然オイルを使っています。これらの原料は薬学の原理に基づいて、管理・生産されています。定期的にご利用いただくことで、肌がより美しく滑らかになります。効果的に皮下脂肪を減らし、お腹、脚、お尻、上腕などの弛みやすい部分を引き締められます。詳細は次のウェブサイトをご覧ください。www.freioel.de
認証検査の内容
MyMicrobiome Standard 18.10は、皮ふや粘膜に用いる化粧品・スキンケア商品がマイクロバイオームに与える影響について評価を行います。
皮ふのマイクロバイオームが健康であることは、肌の健康にとって不可欠です。肌に優しい製品であるなら、同時にマイクロバイオーム・フレンドリーでもあるべきです。皮ふマイクロバイオームのバランスを乱すものであってはいけません。
MyMicrobiome Standard 18.10認証検査では、化粧品とスキンケア商品が皮ふや粘膜の各部位に特徴的な細菌に与える影響を評価します。ヒトマイクロバイオームは個々人でとても大きく異なります。また、皮ふのそれぞれの場所では細菌やウイルス、菌類が特徴的なマイクロバイオームを構成しています。そのために「コア・マイクロバイオーム」と呼ばれています。認証検査では皮ふの各部位の代表的な細菌を調べ、標準的な認証検査のプロトコルを提供します。
複数の基準に基づいて評価を行います。
1. 製品の微生物的品質
2. 天然の健康なスキンバランスに与える影響
3. 体の各部位に生息する細菌の多様性に与える影響
4. 体の各部位に生息する細菌の成長に与える影響

検査結果
フレイオイル®は非常に優れたパフォーマンスを示しました。
スキンバランス検査では、健康な肌に有益な表皮ブドウ球菌がやや増加しました。乾燥肌の雑菌スペクトル検査では、各々の細菌の成長や多様性に対する悪影響は認められませんでした。肌に間接的に使用したケースの検査でのみ、細菌数のわずかな減少が認めまれました。
各々の検査はグレード1から3で評価を行っています。各検査項目で製品が良い影響を与えるか、少なくとも悪影響を与えない場合にはグレード1の評価となります。悪影響がわずかにある場合はグレード2で、明らかな悪影響があった場合はグレード3となります。グレード1または2の評価で検査に合格となります。
グレードの内容
1 = マイクロバイオーム・フレンドリー 2 = 基本的に悪影響を与えない 3 = マイクロバイームを傷つける
フレイオイル®の検査結果
| 検査項目 | グレード |
| 微生物的品質 | 1 |
| 皮ふマイクロバイオームのバランスへの影響 | 1 |
| 皮ふマイクロバイオームの多様性への影響 | 1 |
| 肌に直接使ったときの影響 | 1 |
| 肌に間接的に使ったときの影響 | 2 |
| 平均グレード | 1,2 |
製品情報:
製造メーカー: Apotheker Walter Bouhon GmbH, Walter-Bouhon-Strasse 4, 90427 Nuremberg
製品名称と製品種:
frei öl®Shaping Oil、2 bottles Lot Nr .: 4025/1 710 44 711および4025/3 71044711
製品種目 乾燥肌用
検査日/期間 2019年3月25日から2019年4月16日
検査番号 1810-110.310
検査結果(平均グレード) 1,2
2019年09月12日
ヒトマイクロバイオーム計画
ヒトマイクロバイオーム計画
生物学における大発見の時代は終わったと思われています。
しかし、生物学の発展が今どの位置にあるのか考えてみてください — マイクロバイオームという私たちの認識を一変させる、新しい世界を見出しているところなのです。

私たちはみんな「超個体」です。
ヒトマイクロバイオーム計画(HMP)は史上最も大きな生物学の計画のひとつです。微生物学においてマイクロバイオームは、微生物学の創始者であるルイ・パストゥール以来の最も魅力的なトピックです。HMPの目標は、人間の体に生息する全ての細菌と、細菌が人間の健康と病気に与える影響の一覧表をつくることです。
HMPは2008年にアメリカの国立衛生研究所(NIH)によって、ヒトゲノム計画(HGP)の理念を拡張して設立されました。HGPの驚くべき成果の一つは、ヒトゲノムがわずか2万から2万5000の遺伝子しか含んでおらず、研究者たちが発見できると見込んでいた数の5分の1の遺伝子しか見つけられなかったことです。欠けた遺伝子の探求は、研究者たちの関心をマイクロバイオームに向かわせました。
ヒトマイクロバイオーム計画は以下の研究機関を含む諸学提携のプロジェクトです。
バージニア・コモンウェルス大学、ブロード研究所、スタンフォード大学、ジャクソン研究所、ベイラー医科大学、ワシントン大学医学部、J・クレイグ・ヴェンター研究所、データ連携研究センター (DCC)
HMPの第一フェーズ (HMP1)は、5年間で1億5千万ドルの予算を組んで開始されました。このフェーズでは、健常者を対象に、人体の5つの主要箇所である皮ふ、鼻、口、消化管、膣に焦点を置いた分析が行われました。HMP1は2013年に終了し、300人の被験者から14テラバイトのデータが集められました。
HMPの第二フェーズは統合的HMP(iHMP)と呼ばれ、2014年に立ち上げられました。iHMPでは以下の問題に焦点を置いて、マイクロバイオームと宿主(人間)両方の生物学的特性に関するデータセットを作成しています。

妊娠と早産

炎症性腸疾患
(IBD)の発症

2型糖尿病の発症
HMPで得られたすべてのデータは一般に公開されています。
こちらからご覧ください。https://hmpdacc.org(英語)/
2019年09月12日
がんとマイクロバイオームの関係
マイクロバイオームがディスバイオーシスに陥ると、がんを発症する可能性があります

慢性炎症による体へのダメージは、がんの成長を促す要因の一つです。つまり、慢性炎症に関わるマイクロバイオームは、がんの成長にも大きな影響を与えます。
炎症性腸疾患(IBD)は大腸がん成長の重大なリスク因子です(大腸がんは世界で三番目に多い悪性腫瘍です)。フソバクテリウム・ヌクレアタムという細菌が大腸がんの組織中に多く観察されています。
ピロリ菌は胃がんに関連していますが、胃がんを引き起こす様々な要因の一つでしかありません。胃がんの発生には、喫煙や遺伝的素因などの環境要因も大きく影響しています。胃がんは世界で二番目に死者数の多いがんです。
乳がんと前立腺がんは女性と男性でそれぞれ死亡例の多いがんです。進行の早い乳がんの成長には、メチロバクテリウムという細菌の減少が相関しています。また、男性がかかる前立腺がんには、前立腺の炎症が相関しています。前立腺の炎症は、尿路のマイクロバイオームの乱れによって起こることがあります。
マイクロバイオームはがん治療に影響を及ぼします
人間の体の細菌は化学療法と免疫療法に干渉し、以下の臨床転帰をもたらす可能性があります。1) 治療効果を高める、2) 抗がん作用を阻害し、効果を損なわせる、3) 抗がん剤の毒性を媒介する。
細菌が抗がん剤を阻害するひとつの例が、腫瘍組織中に存在するマイコプラズマ・ヒオリニスです。この細菌は抗がん剤ゲムシタビンの効果を低下させてしまいます。ガンマプロテオバクテリア(大腸菌、セラチア、クレブシエラなどのグラム陰性細菌)がゲムシタビン耐性をもたらすことが分かっています。これらの細菌は薬剤の効果を下げる酵素を放出し、抗がん剤を不活性化してしまいます。そのため、ゲムシタビン治療を行う場合は、抗生物質と組み合わせて使用すると治療効果が高まります。
プラチナ製剤化学療法は、特定種の細菌に依存した治療のひとつです。マウスに抗生物質カクテルの併用療法を行うとがんの退縮が少なくなり、マウスの生存率が低下しています(オキサリプラチン治療)。一方で、抗がん剤シスプラチンと乳酸桿菌を組み合わせたがん治療は治療効果が高まったとする研究もあります。この例では、抗がん剤の効果が細菌が生み出す活性酸素(ROS)に依存していました。

シクロホスファミド(CTX)治療は化学療法と免疫療法を組み合わせたがん治療です。CTXは免疫刺激に依存しています。そして、免疫系が適切に働くためには細菌の助けが必要です。マウスモデルを使った実験では、CTX治療はマイクロバイオームが傷ついていない場合にのみ効果的でした。マウスのCTX治療では、リンパ節と脾臓にグラム陽性細菌 (ラクトバチルス・ジョンソニー、ラクトバチルス・ムリヌス、エンテロコッカス・ヒラエ) を再定着させ、これらの細菌によって免疫応答を強化しました。無菌マウスと抗生物質を投与したマウスは両方ともCTXに耐性がありましたが、エンテロコッカス・ヒラエの経口投与を行ったマウスではCTX応答が回復しました。
細菌は抗がん剤の毒性を媒介することもあります。プロドラッグのイリノテカンがその一例です。イリノテカンは肝臓で不活性化されますが、腸管に到達すると細菌の酵素によって再活性化され、腸を傷つけて下痢を引き起こします。マウスでは腸内細菌の多様性の低下とフソバクテリウムおよびプロテオバクテリアの増加が、抗がん剤の毒性に相関していました。
がんの免疫療法は特に適切な細菌の存在に依存しています。このことは、人間の免疫系がマイクロバイオームに強く依存していることを改めて示しています。抗がん剤のイプリムマブ治療はバクテロイデス・シータイオタオミクロンとバクテロイデス・フラジリスに強く依存しています。消化器系の副作用が多いイプリムマブでさえ、バクテロイデス門の細菌が多いときには媒介性大腸炎が減少しました。
ビフィズス菌はT細胞応答に強く関連しています。プログラム細胞死タンパク質リガンド(PD-L1)抗体療法をビフィズス菌カクテルと組み合わせて行うと、マウスにおいてメラノーマの増殖が抑えられました。
逆にがん治療もマイクロバイオームに影響を与えます

化学療法はマイクロバイオームに大きな影響を与えます。白血病患者に化学療法を行うと、排泄物中の細菌の数が100分の1に減ってしまうことが示されています。腸マイクロバイオームの主要な細菌であるバクテロイデス種、クロストリジウム・クラスターXIVa、フィーカリバクテリウム・ プラウスニッツィイ、ビフィズス菌種が3000分の1から6000分の1に減少し、マイクロバイオームの多様性が失われてしまったのです。健康に有益な細菌が減少する一方で、病原菌の腸球菌が顕著に増加しました。
マウスにCTX治療を行うと、バクテロイデスに対するフィルミクテスの割合が増えました。バクテロイデスが大きく減り、放線菌が増加しました。
化学療法がマイクロバイオームに与える影響は、マウスにゲムシタビンを投与した例でも示されています。この例では、主要な腸内細菌であるフィルミクテス門とバクテロイデス門が顕著に減少しました。これらの細菌が減少すると、普段は数の少ないプロテオバクテリア (主に大腸菌) とウェルコミクロビウム (主にアッカーマンシア・ムシニフィラ)が増殖を始めました。このことは、ゲムシタビンを投与すると炎症誘発性細菌が増えることを示唆しています。
化学療法とは対照的に、免疫療法がマイクロバイオームに及ぼす影響に関してはわずかな科学的エビデンスしかありません。ただし、イピリムマブ治療は人間とマウスの両方でバクテロイデスとバークホルデリアを減少させ、クロストリジウムを増やすことが分かっています。
がん治療中・治療後にマイクロバイオームを回復させる方法
がん治療を行うとディスバイオーシスが起き、治療効果に影響を与える可能性があります。がん治療でも、プロバイオティクス、プレバイオティクス、シンバイオティクス(プレバイオティクスとプロバイオティクスを組み合わせたもの)、ポストバイオティクスを用いたさまざまな治療法が、マイクロバイオームを回復させ、がん治療の副作用を予防する目的で研究されています。
プロバイオティクス
乳酸桿菌とビフィズス菌がプロバイオティクスに最もよく使われています。これらの細菌には数多くの研究があり、安全に使うことができます。
人間を対象にしたエンテロコッカス・フェシウムの小規模な研究と、ラットを用いた違う種の乳酸桿菌株・ビフィズス菌株の研究では、プロバイオティクスの効果はまったく示されませんでした。しかし、適切な細菌株を用いて適切な投与量と投与期間で使用すると、大きな効果が得られています。
また別の研究では、人間とラット/マウスの両方で効果があったことが報告されています。ラクトバチルス・ラムノサスを使い、5-フルオロウラシル(5-FU)治療を受けた大腸がん患者の下痢を減らすことができています。また、ビフィドバクテリウム・ブレーベ株のヤクルト飲料は、感染による小児腫瘍から患者を守り、pHレベルを7以下に保つことで腸内環境を改善することが示されています。
化学療法の副作用の緩和にくわえて、プロバイオティクスががん治療の効果を高めることも示唆されています。L.アシドフィルスはシスプラチン治療を行った肺がんマウスにおいて、腫瘍の成長を抑えました。アッカーマンシア・ムシニフィラはマウスの抗PD-1を高める効果を示し、ビフィズス菌はメラノーママウスの抗PD-L1治療の効果を高め、腫瘍の成長をほぼ抑制しました。
プレバイオティクス
プレバイオティクスは主に食物繊維で、大腸の共生菌が発酵を行う難消化性の炭水化物です。プレバイオティクスが発酵されると短鎖脂肪酸 (SCFA)が生成されます。SCFAは腸のpHを下げ、腸内細菌の乳酸桿菌とビフィズス菌の栄養源となります。よく知られているプレバイオティクスの一つがレジスタント・スターチ(RS)です。RSは酪酸の産生を促進します。酪酸は抗がん・抗炎症作用を持つポストバイオティクスです。
がんの予防効果だけでなく、プレバイオティクスは化学療法の効果を高めることも示されています。イヌリンとフラクトオリゴ糖は肝がんマウスで6種類の薬剤(5-FU、ドキソルビシン、ビンクリスチン、CTX、MTX、シタラビン)の効果を高め、余命を延長させました。
シンバイオーシス
シンバイオーシスはプロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせ、相乗効果を発揮させたものです。シンバイオーシスでは、プレバイオティクスがプロバイオティクス細菌の成長を促進するものであることが重要です。現時点では、プロバイオティクスやプレバイオティクスを単独で使用した場合と比べて、シンバイオーシスががん治療にどのような効果をもたらすのかはよく分かっていません。しかし、理論的に考えるなら、プロバイオティクス細菌の成長が促進されるならば、がん治療に良い効果があるはずです。この問題については、さらなる研究が待たれます。
ポストバイオティクス
ポストバイオティクスは、細菌がプレバイオティクスを発酵して産生した物質です。代表的なポストバイオティクスは短鎖脂肪酸(SCFA)の酪酸で、炭水化物発酵によって産生されます。その効果はすでに説明したとおりです。つまり、ポストバイオティクスには酪酸を産生する生きた細菌と同じ効果があります。そのため、プロバイオティクスは生きた細菌の安全な代替物となります。
ぜひご紹介しておきたいイン・ビトロ研究に、ラクトバチルス・プランタルムの上澄みが抗がん剤5-FUの毒性を高め、アポトーシス(プログラムされた細胞死)を増やし、がん細胞の生存数を減らしたというものがあります。この研究結果は、がん治療の効果を高めるためにポストバイオティクスを利用することができ、またポストバイオティクスには有害な副作用を軽減する可能性があることを示唆しています。
抗生物質
抗生物質はマイクロバイオームに大きな影響を与えます。しかし、がん治療では抗生物質を使わなければいけない症例もあります。その場合、可能であれば、抗がん剤の効果を低下させる特定の細菌だけを標的にしたものを用いるのが好ましいです。抗がん剤を阻害する細菌の一例が、がん細胞組織中のマイコプラズマ・ヒオリニスです。この細菌は抗がん剤ゲムシタビンの効果を下げてしまいます。一部の症例では、M.ヒオリニスに対する抗生物質が治療効果を高めています。このことは、ゲムシタビンと抗生物質シプロフロキサシンの併用で治療した結腸がんマウスの例でも示されています。
上の例は別としても、抗生物質はほとんどのがん治療で免疫-化学療法の効果に悪影響を及ぼします。抗がん剤の効果が低下するだけでなく、副作用も増悪します。この問題については、マウス/ラットや人間を対象としたシスプラチン、オキサリプラチン、抗CTLA-4免疫療法、抗PD-1免疫療法、抗PD-L1免疫療法、CpGオリゴデオキシヌクレオチド免疫療法、CTXなどのさまざまな研究で示されています。
結論―マイクロバイオームに配慮してください!

ほぼすべての病気に、宿主(人間)の遺伝的素因や食べ物・生活習慣などの環境要因に加えて、マイクロバイオームが大きく関わっています。
宿主である人間と医薬品、そしてマイクロバイオームの三者はとても複雑な相互作用の関係にあります。科学者たちは、このとても複雑な相互作用の関係性を解明するという素晴らしい仕事を成し遂げています。しかしその一方で、多くの科学研究では動物モデルを使っており、その結果が完全に人間に当てはまるわけではないことは心に留めておく必要があります。
健康な生活習慣を心がけ、豊富な種類の未加工食品を食べ、そして安全なプロバイオティクスとプレバイオティクスを利用する。そうすれば、がんの成長を防いで治療効果を高め、医薬品の副作用を軽減できる可能性があります。
マイクロバイオームに配慮してください―マイクロバイオームがあなたを気遣うように!
がんとマイクロバイオームについてより詳しくは次のウェブサイトをご覧ください。microbiomejournal.biomedcentral.com
免責事項:このサイトやブログの内容は医学的助言、診断や治療を提供することを意図したものではありません。





