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2020年03月31日

健康的なマイクロバイオームを育む食べ物

健康的なマイクロバイオームを育むのに良い食べ物

健康的なマイクロバイオームを育むのに良い食べ物
健康的なマイクロバイオームを育むのに最も良い食べ物をご紹介します。

適切な食事は、マイクロバイオームの結構にとって最も重要なファクターです。最新の科学知識に基づいたいくつかの基本原則を守ることで、肥満抑うつも含めたさまざまな病気に対する抵抗力を高めることができます。また、良い食事を行うことは、健康のためだけではありません。家族や友人と一緒に食べる場合も、一人で食べる場合も、食事は日々の生活の楽しみであるべきです。

永遠の若さを手に入れる食べ物は存在する?

これが本当であればどれほど良いことでしょうか。永遠の若さは手に入れられないにしても、日々の食事において適度にマイクロバイオーム・フレンドリーなメニューを加えるのはとても良いことです。マイクロバイオームに配慮した食事を行うことは簡単なのでしょうか?ある研究(英語)によれば、それほど簡単なことではありません。ですが、とても難しいというわけでもありません。24時間のあいだ、動物性の食事を控えるだけで、動物性の食物だけを食べた場合と比べて、マイクロバイオームの構成ははっきりと変わってきます。そして、4日のあいだ動物性の食べ物を摂取しなければ、β-ラクターゼ(ペニシリン型の抗生物質を分解する物質)とビタミンB6の生成に必要な物質の劇的な増加が見られます。また、他にも多くの変化が起こります。

食事によるマイクロバイオームの変化はどのくらい大きいのですが? いつもよりもマイクロバイオーム・フレンドリーな食事に、例えば数か月のあいだ変えるだけで、バランスの崩れたマイクロバイオームを永続的に整えるのことはできるのでしょうか?それとも、もっと過激な言い方をすれば、一定期間だけマイクロバイオーム・フレンドリーな食べ物を食べれば、その後にいつもの食事に戻したとしても、マイクロバイオームは改善された状態を保つことができるのでしょうか?この問題に関して信頼できる実験データは少ないのですが、残念ながら今のところの答えはノーとなります。最近公開された研究の結果(英語)によれば、過去に肥満だったマウスは、マイクロバイオーム・フレンドリーな食事から肥満だったときの食事に戻したときに、肥満でなかったマウスよりも肥満状態に戻りやすいことが分かっています。この理由について科学者たちは、肥満だったときの食事内容が、マイクロバイオームの細菌の構成を恒久的に変化させたからではないかと考えています。

それでは、永遠の若さを手に入れる食べ物は存在しないのでしょうか?西洋の食事や他の不健康な食事は、さまざまな動物実験においてマイクロバイオームを変化させることで、さまざまな病気を引き起こすことが示されています(詳細はこちらの論文(英語)をご覧ください)。ですが、この結果から逆のことも言えます。つまり、マイクロバイオームが健康であれば、さまざまな病気を防ぐことができるのです。人間を対象とした研究データは、主に倫理的理由から少ないのが現状です。人間に関して、食事とマイクロバイオームの変化による病気や治療効果は主に動物実験のデータに依拠しています。マイクロバイオームの細菌の構成や機能の変化が「健康」であるか「不健康」であるかに基づいているのです。

世界にはさまざまな食べ物が存在しており、その多くはマイクロバイオームに与える影響に関して研究がまだ行われていません。従って、以下のマイクロバイオームに良い食べ物のリストの一部には、一部の研究結果から恣意的に選んだものもあります。各々の食物や食成分はマイクロバイオームに作用することで、健康や健康に関わるマーカーを改善することが示されています(または、一般的に健康に良い効果があるとされるマイクロバイオームの変化を起こします)。さらに言うと、どの食べ物が健康に良いかどうかは、個々人の特性によって決まることもあります。

以上の注意は必要ですが、マイクロバイオームに良い食物のリストを作成することで、少しでも読者の方の助けになることを望んでいます。

1. グレープフルーツ-マイクロバイオームの状態を改善

グレープフルーツ
グレープフルーツはとても美味しく、マイクロバイオームに良い食べ物です!

肥満マウスを対象にした研究(英語)では、肥満マウスの細菌叢がナリンゲニンの摂取を妨げていることが分かりました。ナリンゲニンはグレープフルーツに含まれる物質で、抗肥満作用があることが知られています。この問題に関しては、追跡調査を行って1日に2~3個のグレープフルーツを食べれば十分な効果があるのかを確認する必要があります。ですが、グレープフルーツがマイクロバイオームのバランスの乱れを防いでくれることは明らかです。また、にが味が甘い食べ物への欲求を抑えてくれるので、摂り過ぎるとよくない栄養の過剰な摂取を減らしてくれます。グレープフルーツはケフィアやはちみつ、ナッツ類と一緒に食べると美味しくなります。

2. パセリ

パセリ
パセリもまたマイクロバイオームの健康を増進してくれます。

パセリにはグレープフルーツと同じ効果があることが分かっていますが、さらにアピゲニンを含んでいます。パセリを食べるときは、例えばポテトに添えたり、パセリペーストにすると美味しく食べられます。

3. 細胞性の食品(自然食品)

プンパーニッケル
プンパーニッケルをメニューの最初に加えましょう!(© tomas24 – stock.adobe.com)

小麦粉、砂糖、その他の非細胞性の食品(加工食品)を基にした食事は、マイクロバイームに良くない影響を及ぼすという間接的な証拠があります(>>>詳細はこちらの論文(英語)をご覧ください)。プンパーニッケルや米、カーネルや未加工の果物、野菜、肉や魚介類などの自然食品は、細胞性の栄養素を豊富に含んでいます。これらの栄養素は体内に取り込まれたときに、細菌がすぐに利用できるものではなく、分解に時間がかかります。プンパーニッケルにペーストと赤のオニオンリングを添えると、とても美味しく健康的なランチになります!

4. オート-βグルカンや繊維質を豊富に含んだ素晴らしい穀物

オート
オートはマイクロバイオームにとって良い栄養となります。

この素晴らしい穀物はβグルカンや他の繊維質を豊富に含んでいて、自然食品として食べればマイクロバイオームに良い影響を与えます(>>>詳細はこちらの論文(英語)をご覧ください)。オートブランの摂取と炎症の減少には関連がありますが、それは部分的にはマイクロバイオームの変化のおかげです(そのため、クローン病などの炎症性腸疾患の患者に強く推奨されています)。オートを未加工のまま食べれば、マイクロバイオームの状態を良い方向に変えてくれます。シナモン、バター、ナッツ類を加えたオートミールは忙しいときにすぐに食べられる、とても美味しい朝食です。

5. ケフィア-さまざまな乳酸菌類を含む食べ物

ケフィア
ケフィアにはさまざまな健康効果があります(画像: © sewcream – stock.adobe.com)

ケフィアはさまざまな乳酸菌類と、その副産物である微生物を含む食べ物です(>>>詳細はこちらの論文(英語)をご覧ください)。そのため、ケフィアは免疫系ががん細胞(がん細胞は絶えず人体の中で増殖しており、その増殖をコントロールできなかったときに病気になります)と戦う能力にとても良い影響を与えてくれます。また、ケフィアを定期的に食べることで、怪我の回復を助けたり、ACE(アンギオテンシン変換酵素)のレベルを高めたりしてくれます。ACEは血圧を正常に保ち、水・電解質バランスを調整に必要な物質です。マウス実験では、ケフィアは運動パフォーマンスを高めることも分かっています。ダイエットに関してはどうでしょうか?ケフィアはミルクシェイクに混ぜるものとして素晴らしい食材です。また、ココナッツミルクやライムジュースに混ぜ、ジンジャーやバニラを加えるととても美味し飲めます!

6. ビーツ -「善玉菌」の成長を促進

ビーツ
クルミとシェーブルチーズを添えたビーツのサラダはとても美味しいです(画像: © Magrig – stock.adobe.com)

ビーツは硝酸塩の摂取源として優れています。硝酸塩は「善玉菌」を選択的に成長させることで、「善玉菌」が「悪玉菌」に打ち勝つのを手助けします(>>>詳しくはこちらの論文(英語)をご覧ください)。この効果は、イミダゾール・プロピオン酸の折り込みによります。この物質は、タンパク質の一種であるmTORを減らすことでがん細胞のような「悪い」細胞の成長を抑えてくれます。がん細胞が増殖しないようにパトロールする役割を担ってくれるのです。クルミとシェーブルチーズを添えたビーツのサラダは、一般的なサラダ(ビーツサラダよりも栄養が乏しい)の素晴らしい代替メニューとなります。

7. オーガニック食品-殺虫剤と添加物が少なく、マイクロバイオームに良い


さまざまな殺虫剤と添加物(>>>論文(英語))がマイクロバイオームの健康に悪い影響を及ぼすことが分かっています(>>>詳しくはこちらの論文(英語)をご覧ください)。特にゲル化剤としてよく使われるカラギーナンという添加物や、加工食品(特に甘味料やクリーム、デザート)で公的に使用量が規制されていないカルボキシメチルセルロースは大きな影響を及ぼします。結果的に、腸疾患のリスクが増大します。加工食品はできるだけ避け、オーガニック食品を利用するようにしましょう。

8. グレープシード-炎症レベルと肥満を改善

種付きのグレープ
種付きのグレープを食事に加えましょう!(画像: © Tim UR – stock.adobe.com)

グレープシードのプロアントシアニジン抽出物は、マウスの細菌叢に作用し、炎症と肥満を改善させることが分かりました。とは言え、現在のところ種付きグレープを探すのは大変です。一般的に売られているグレープは種なしです。ですが、需要は共有を変えます。種付きグレープを食事のメニューに加えるようにしましょう。ホイップクリームをのせたフルーツサラダをデザートに食べるのはいかがでしょうか?

9. ベリー-悪玉菌を減らし、善玉菌の成長を促進

ベリー
ベリーは病気予防に良い影響を与えます

さまざまな種類のベリーが悪玉菌を減らし、善玉菌の成長を促進することで、病気を予防してくれることが分かっています(>>>詳しくはこちらの論文(英語)をご覧ください)。ある研究では、ベリーが悪玉菌が引き起こす腸疾患を緩和することが示されています(>>>研究の詳細(英語))。凍らせたベリーはスムージーに最高です。

10. ハーブとスパイス-食事に風味を加える健康的な手段

ハーブとスパイス
スパイスはどんなメニューにも加えることができ、さらに健康増進にも役立ってくれる調味料です。

一般的なハーブとスパイスとしては、黒コショウ、カイエンペッパー、シナモン、ジンジャー、オレガノ、ローズマリー、ウコンなどがありますが、これらは全てベリーと類似した性質を持っています。いずれも健康に不可欠な善玉菌の成長を助け、逆に悪玉菌を減らしてくれます(>>>詳しくはこちらの論文(英語)をご覧ください)。そして、スパイスはどんなメニューにも加えることができます。この健康増進に役立つ調味料は、さまざまな使い方が考案されています(バジル・パイナップルスムージーすらあります)。また、ハーブやスパイスは砂糖や人工甘味料の素晴らしい代替物となり、健康的な調理を行うのに役立ちます。

MyMicrobiomeではマイクロバイオームに良い食べ物の調査を続けます。この記事も適時更新していきますので、またご覧になってください!

2020年03月26日

ウイルス感染からマイクロバイオームがあなたを守ってくれます!

ウイルス感染からマイクロバイオームがあなたを守ってくれます!

マイクロバイオームがあなたを守ってくれます!
マイクロバイオームがあなたを守ってくれます! (画像: © eduardrobert – stock.adobe.com)

マイクロバイオームは免疫系にとってとても重要な存在です。マイクロバイオームが健全であることは、健康全般に不可欠です。そして、現在世界を混乱に陥れている新型コロナウイルスのパンデミックから、マイクロバイオームと免疫系の相関関係が、健康上のさまざまな問題に関わっていることが改めて認識されました。マイクロバイオームは人間をウイルス感染から守ってくれるのでしょうか?答えは、イエスです!

健全なマイクロバイオームは人間の免疫系を強化します。アメリカのミシガン州の研究者たちは呼吸器のマイクロバイオームとウイルス感染の関係(インフルエンザの事例)を詳細に研究しました。実際、マウスや人間を対象とした先行研究では、肺マイクロバイオームがウイルス感染の起こりやすさに影響を及ぼしていることが分かっています。例えば、ある研究では、マウスに抗生物質を投与すると気管支上皮が傷つき、重度のウイルス感染を起こしやすくなることが分かっています。

新生児を対象とした研究では、子供にプレバイオティクスやプロバイオティクスを与えると、呼吸器のウイルス感染症の罹患が減ることが繰り返し示されています。

呼吸器感染を起こすウイルスが人間の体と最初に接触する箇所は、通常は上気道と下気道です。これらの気道はフィルムのような複雑な細菌群によって覆われていて、侵入してきたウイルスと直接的または間接的に相互作用します。そして、人間の体内で共生しているマイクロバイオームは免疫系にシグナルを送り、免疫系は受け取ったシグナルに応じて反応します。また、ウイルス感染はマイクロバイオームの細菌の構成を変化させます。

ある研究(英語)では、人間の呼吸器マイクロバイオームとインフルエンザ感染リスクの相関関係を初めて調査しました。144の家庭から717名の参加者を集め、13日間で5回に渡って調査を行っています。そして、調査したマイクロバイオームを5つのグループに分類しました。この分類により、鼻咽頭のマイクロバイオームの構成は年齢によることが分かりました。一般的に、参加者のうち若者のマイクロバイオームは高齢者のものよりも安定性が低く、よりインフルエンザウイルスに感染しやすい傾向がありました。

マイクロバイオームの細菌の構成とインフルエンザ感染の起きやすさには関連がありますが、例えばマイクロバイオームの多様性に関して違いはありませんでした。より正確なメカニズムを把握するためには、さらなる研究が必要です。それでも、先行研究を見れば、マイクロバイオームが傷ついていると、ウイルスに感染しやすくなることが分かります。さらに、ウイルス感染はマイクロバイオームを変化させ、多くの場合にブドウ球菌やレンサ球菌の二次感染を引き起こしています。

これら一連の研究結果は、ワクチン開発も含めたマイクロバイオームの治療によってウイルスの呼吸器感染リスクを減らすための、将来の研究へのインセンティブとなります。

新しい治療法が確立されるまでは、さまざまな食事(できれば缶詰以外のもの)や、空気のきれいな場所での運動(Covid-19の感染リスクが低い森の中など)でマイクロバイオームをケアして守ってあげましょう。そして、パニックになって殺菌剤を撒くのではなく、手をしっかり洗うようにしましょう。

喫煙や抗菌成分を含むマウスウォッシュは、呼吸器マイクロバイオームに特に有害です。詳しくは、「お口をケアしましょう! 口内マイクロバイオームを理解し、正しくケアする」の記事をご覧になってください。

生活が厳しく制限された状況ではありますが、皆様の健康を祈っています!

2020年03月23日

膣マイクロバイオーム– 隠されたコスモス

膣マイクロバイオーム– 隠されたコスモス

タブーとなっている膣の問題
未だにタブーとなっている膣の問題 (Pic: © Iryna – stock.adobe.com)

過去数十年の間に、消化管マイクロバイオームの問題が注目されるようになりました。さまざまな本や論文によって、この問題が一般的に論じられるようになっています。ごく最近まで、排泄物のサンプルについて話すのには少し躊躇いがありました。しかし、今では腸の細菌群と人間の健康について、恥ずかしさなくオープンに話すようになっています。消化管マイクロバイオームは人間の体の中でも最も複雑な存在ですが、唯一の存在ではありません。口、喉、肌、肺、これら体の各部分のすべてに、それぞれ特徴的な細菌たちが定着しています。また、化粧品業界もマイクロバイオームの問題に配慮するようになっています。数年前と比べると、状況は大きく変化しています。

膣マイクロバイオームというタブー

私たちは消化管や皮ふの細菌について話すという恥ずかしさを克服しましたが、まだ克服できていない問題が一つあります。それは膣マイクロバイオームです。炎症性腸疾患についてはカジュアルに話すことができます。ですが、子供を持ちたいという希望や子宮感染症については、せいぜいのところ婦人科医かパートナーに話すくらいです。公で話すことはありません。この性に関する啓蒙の時代にダブルスタンダードとなっている問題について議論できるように、次のステップに進みたいと思います。今回の記事は、世界の人口の半分を占める女性に影響を与えている体の一部分について、いくつかの事実をご紹介することを目的としています。

絶えず変化する生態系

リプロダクティブ・メディシン・ジャーナル誌で最近公開された論考(英語)で、現在までの膣マイクロバイオーム研究の動向がまとめられました。最初に、膣マイクロバイオームは女性の生涯でずっと同じ状態であるわけではありません。幼児期や小児期の膣マイクロバイオームの構成は、消化管マイクロバイオームに類似しています。その後、思春期までの間に、膣内の細菌群は乳酸桿菌種へと変化していきます。このことから次の考えが浮かびます。 乳酸桿菌種は糖や他の炭水化物を乳酸に代謝します。乳酸はpH値を病原菌が好まないレベルに維持し、感染を防いでくれます。

現在の婦人科学では、流産や早産の多くが子宮感染症によって引き起こされることはよく知られています。時に、細菌は膣や子宮頸を超えて胎盤に定着することもあります。これによって、膣マイクロバイオームの構成とpH値が胚にとって良くない変化を起こします。その結果、胚の変化や流産、早産が起こるのです。つまり、膣マイクロバイオームが健全な状態であることは、妊娠を成功させるための重要な前提条件なのです。

膣マイクロバイオームは様々な影響を受けやすい、脆いシステム

膣マイクロバイオームを変化させるのは、病原菌の定着だけではありません。ホルモン値の変化(生理や妊娠、また女性の生涯を通じて変化します)もまた、膣マイクロバイオームの構成に影響を及ぼします。思春期には、エストロゲンとプロゲステロンの値が上昇し、乳酸桿菌の定着が促進されます。これは、妊娠するには最適な状態です。

また、喫煙や性行為、ホルモン剤の摂取(例えば避妊薬)、加齢、遺伝子の変化などは、マイクロバイオームの構成と多様性に影響を与えます。例えば、大腸菌やカンジダ菌の数は、ペッサリーとピルを使っている女性では大きく異なります。簡単に言えば、膣マイクロバイオームはとても複雑なシステムで、その働きは様々な要因に依存しています。時に私たちは知らずにその仕組みに影響を与えているのです。

また、膣マイクロバイオームの構成には民族による違いもあります。ある研究(英語)によれば、ヒスパニック系とアフリカ系の女性のpH値は、ヨーロッパ系やアジア系の女性よりも高いことが示されています。このことは、民族の違いが膣マイクロバイオームに何らかの影響を与えていることを示唆しています。

膣マイクロバイオームの適切なケアを行うための大切な結論

マイクロバイオームのケアに関してはいつも同じ結論です。最適なケアとは、マイクロバイオームの複雑な微生物システムのバランスを可能な限り乱さないように気をつけ、外部要因による影響をできる限り小さく抑えることです。喫煙、ドラック、ホルモン療法など、これらは全てマイクロバイオームの脆いバランスを崩してしまいます。同時に、どんな複雑なシステムでも同じことですが、バランスを調整する仕組みは非常に込み入っています。抗生物質が影響を及ぼしてしまうこともあります。抗生物質による治療を選択する際は、メリットとデメリットをよく考えてください。一般的に、抗生物質はマイクロバイオームの細菌の多様性を損ねてしまい、後に回復させる必要がでてきます(詳しくは「抗生物質と薬剤耐性菌の危険性」の記事をご覧ください)。

女性の生涯の中で、ホルモン剤や抗生物質、他の薬剤を使用しなければいけない出来事はあるはずです。それらを使用する場合は、事前によく考えるようにしてください。女性の年齢やマイクロバイオームの状態、妊娠は望んだものなのか、どんな治療が最適なのかなど、さまざまな条件を考慮すれば、上記の薬剤を使用するかどうかの判断は各々の状況ごとに、また女性ごとに異なるはずです。健康な膣マイクロバイオームのライフサイクルについて理解すれば、治療はより成功したものになるはずです。例えば、プロバイオティクスは他の治療の代替案となる可能性があります。>>研究へのリンク(英語)

女性の衛生用品について

これまで医学的な治療について見てきましたが、女性が日常的に利用する衛生用品が、マイクロバイオームに及ぼす影響については不明なままです。最終的な目標は、利用する目的がどんなものであっても、また衛生用品がどんな原料で製造されていたとしても、使用する機会をできるだけ少なくすることです。衛生的に保つためには、添加剤を含んでいない、pHが中性の製品を使う必要があります。最も大事なことは、香水のような化粧品を使わないようにすることです。そして理想的には、マイクロバイオーム・フレンドリーと認められた衛生用品が良いです。複雑で脆い膣マイクロバイオームのバランスを維持することができます。

今、この女性の体の一部分が然るべき注目を集めています。将来的にはマイクロバイオーム・フレンドリーな衛生用品が標準となることを祈っています。

2020年03月11日

動物研究による新しい発見―マイクロバイオームと食事の関係について

動物研究による新しい発見―マイクロバイオームと食事の関係について

コアラ
コアラの排泄物の大規模なシークエンシングが行われ、様々な種のコアラのマイクロバイオームが明らかにされました(画像: © RyanFowlerPhotograph – stock.adobe.com)

私たちのウェブサイト「マイマイクロバイオーム」の目的は、読者の方に最新の情報をお届けすることです。今回は、動物のマイクロバイオーム研究で得られた新しい知見について簡単にご紹介します。常連の読者の方はすでにご存知だと思いますが、動物と人間のマイクロバイオームには類似点も多く、動物研究はヒトマイクロバイオームを理解するための重要な前提条件です。ですが、動物研究の結果の全てが人間に当てはまるわけではありません。いくつかのケースでは、全く逆の結論が得られることもあります。動物と人間のマイクロバイオームについて、二つの面白い研究をご紹介します。

コアラは特定の種類のユーカリしか食べることができません

2019年8月の初め、「アニマル・マイクロバイオーム」はミカエラ・D・J・バイルトン、ロシェル・M・ソーたちの行ったコアラの排泄物に関する研究を公表しました。この研究ではコアラの排泄物の大規模なシークエンシングを行い、様々な種のコアラのマイクロバイオームが、特定の種のユーカリを食物とすることに直接の相関があることを示したのです。人間にとっても、食物はマイクロバイオームの構成に直接の影響を及ぼします。ですが面白いことに、コアラにとってこの関係は逆なのです。コアラの赤ちゃんは、生まれてくるときに時に母親の排泄物に接触することで、母親の消化管マイクロバイオームを受け継ぎます。この消化管マイクロバイオームの定着は、コアラの個体がどの種のユーカリを消化できてどの種のユーカリを消化できないかを決定する、重要な要因になるのです。そして、消化できる種のユーカリが不足した場合には、その個体は他の種のユーカリを食べることはできず、生涯一種類だけのユーカリに依存することになるのです。というのも、一度定着したマイクロバイオームを、自然環境下で簡単に再定着させることはできないからです。しかし、科学者たちは他の種のユーカリを食べる同種のコアラのマイクロバイオームを移植することに成功しました。そして、マイクロバイオームを移植されたコアラは、移植の前までは消化できなかった「新しい種の」ユーカリを消化できるようになったという驚くべき結果が得られました。

今、この結果はとても重要です。というのも、オーストラリアでは数百エーカーのユーカリの森が森林火災の被害を受けており、数千匹のコアラにとっての大切な食糧(そして生活空間)が失われたからです。火災から助け出されたコアラたちを、単純に火災の被害を受けなかった別のユーカリの森に移せば良いのではありません。家を失ったコアラたちを救うには、複雑でお金のかかる手段ですが、新しい居住地に元から住んでいるコアラたちの糞便移植を行う方法が最良かもしれません。

この研究の結果は、コアラを救うという実践的な価値だけでなく、科学の理論的な価値もあります。コアラでは食物がマイクロバイオームの構成に影響を及ぼすのではなく、逆にマイクロバイオームが食べられる食物に影響を与えたのです。マイクロバイオームが、どの食物が消化可能でどの食物が消化できないかを決定する前提条件となっているのです。

鳥やコウモリとマイクロバイオーム

2019年12月、カリフォルニア大学サンディエゴ校が動物のマイクロバイオームに関するもう一つの研究(英語)を報告しました。それまでは、マイクロバイオームと宿主の間には強い相関・相互関係があり、同じ種の動物で類似したマイクロバイオームを持つと考えられていました。しかし、カリフォルニア大学の新しい研究によって、空を飛ぶという能力が、マイクロバイオームの構成を決定する重要因子の可能性があることが明らかにされました。研究では、コウモリと鳥類を調査し、空を飛ぶ生物はできる限り体重が軽くなるようになっていると結論付けました。このことを考える上で、マイクロバイオームは最初に考慮べきものです。マイクロバイオームの存在によって、人間の体重は数キロほど重くなっているからです。進化上の利点がなければ、全く使われなかったり、稀にしか使われない微生物は減っていくはずです。

さらに、カリフォルニア大学の研究では、宿主とマイクロバイオームの相関関係がこれまで想定されていたほど大きいわけではないことが示されています。逆に、研究はコウモリ(と鳥類)において重要な要因は共通であり、マイクロバイオームに関しては相関性はこれまで仮定されていたほど大きくはないことが証明されました。数千年以上同じ状態を維持している、非常に安定したマイクロバイオームを持つ種もいる一方で、マイクロバイオームを劇的に変化させてきた種もいるのです。空を飛ぶ動物は後者であり、マイクロバイオームとは独立して進化してきたのです。コアラの研究が示した結果も考慮するなら、食物とマイクロバイオームの相関関係は現在ある程度相対化されたと言えます。

共同第一著者のセ・ジン・ソン博士の研究チームは、動物のマイクロバイオーム研究のパラダイムシフトとなったこれらの結果に興奮しています。また、マイクロバイオーム研究で著名なロブ・ナイト博士も、これらの研究結果がメタゲノミクスとメタボロミクスの研究が進むスタート地点であると見ています。言い換えると、これらの動物研究によって、ヒトマイクロバイオームをより理愛するための重要な一歩が踏み出されたということです。

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