スキンケアには生きた細菌と死んだ細菌のどちらが良い?
「ラクトバチルス・ロイテリDSM 17938-プロバイオティクスとライセートの人間の肌への効果の比較研究」の要約を基にした記事です。著者ヨハンナ・ギルブロ、www.skinomeproject.com、(共著者I・フマラーゼ、É・バトラー、S・ファーブル)。
過去10年の間、マイクロバイオームは主に消化管を対象を研究されてきました。消化管マイクロバイオームに関しては10年以上の研究の蓄積があり、体重の減少やメンタルヘルス、クロストリジウム・ディフィシル腸炎の治療などが、消化管マイクロバイオームの変調と相関していることが示されています。
しかし、人間の体の中で最も表面積が大きい皮ふのマイクロバイオームについては、比較的研究は進んでいません。皮ふは数百万の細菌やウイルス、菌類が生息する場所です。
最初に皮ふマイクロバイオームの役割を知るから始め、そして皮ふの細菌叢が肌全般の健康に関わっていることを理解しましょう(マイクロバイオームと皮ふ疾患については、この記事で詳しく扱っています)。皮ふマイクロバイオームには以下の重要な役割があります。
- 抗菌性や抗炎症性の物質を産生し、望ましくない病原菌や日和見感染を起こす微生物から宿主を守る
- 宿主の炎症を調整する
- 肌バリアをサポートする
- 肌の老化プロセスに関わる
プロバイオティクス細菌の食品への利用
過去100年の間、プロバイオティクス細菌(健康に良い生きた細菌)は、消化管の健康を増進する目的で食品に応用されてきました。消化管の不調などの問題に対して、今やプロバイオティクスや他の細菌学的技術は、伝統的な医薬品と競合しています。現在、尿路のさまざまな炎症・感染症の治療やオーラル・ヘルスなどで、生きた細菌の利用に関心がもたれています。さらに、最近では、皮ふ科分野でのプロバイオティクス細菌の利用にも関心が高まっています。
化粧品業界ではプロバイオティクスの誇大広告に懸念が高まっています
その一方で、プロバイオティクスという言葉は、不活性だったり、死んだ乳酸桿菌に使われていることもあります。
市場で販売されている商品の中で、生きた細菌を利用して開発された製品はわずかしかありません。乳酸桿菌や土壌に生息するニトロソモナス・ユートロファという細菌を使った製品です(AOBiome社)。
論文中では、生きたラクトバチルス・ロイテリとそのライセート(死んだ細菌の溶解物)の効果を比較しています。これら二つを調整したものを、実験用に再現した人の表皮と通常の人の肌に使用しました。そして、人間の肌の抗炎症機能や抗細菌機能、バリア機能への影響を調べました。
研究で用いた細菌種(L・ロイテリDSM 17938)は、経口投与すれば消化管の健康の改善を改善させますが、肌の健康に与える潜在的な効果について公表されたデータは限られています。
興味深いことに、試験の結果は生きたL・ロイテリがライセートよりも大きな効果があることを示しました。生きた細菌とライセートの両方とも、UV誘発炎症性サイトカイン(IL-6からIL-8)に抗炎症効果を示し、肌バリアにも良い影響を与えました。その上で、生きたL・ロイテリは肌に感染する病原菌の予防効果も持っていました。
これらの結果は、L・ロイテリDSM 17938を生きた状態で使用すると、光老化や肌のディスバイオーシスによる細菌の過剰繁殖、皮ふの水分量低下などに対して効果がある可能性を示唆しています。ライセートは抗炎症作用が求められる場所にスキンケアとして用いることができるでしょう。
結論として、L・ロイテリは生きた状態でも死んだ状態でも、人間の肌に局所的に用いることで抗炎症作用を期待することができます。しかし、本当のプロバイオティクスである生きた細菌は、ポストバイオティクスと比較してさらに抗細菌作用も示します。これらの知見は、アトピー性皮膚炎や酒さ、にきびなど他の皮ふの炎症治療に対するプロバイオティクスの研究の可能性を示しています。これらの炎症に対するコルチコステロイドや抗生物質、過酸化ベンゾイルやサリチル酸などの使用を抑制できる可能性があります。
この仮説を検証するためにさらなる研究が求められます。
この問題に関してこちらの記事もご覧ください。「プロバイオティクスとプレバイオティクスを肌に使うと効果がある?キャス・オネイル博士へのインタビュー」
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