細菌性膣炎の効果的な治療法
女性にとっての共通の敵―細菌性膣炎
多くの女性が再発性の細菌性膣炎に苦しんでいます。この病気は、膣内の細菌の構成がバランスを崩し、病原菌の繁殖に有利な状態になることで起こります。自然な状態では、出産に適した年齢の女性の膣内では、さまざまな種の乳酸桿菌(例えば、ラクトバチルス・クリスパタス)が最も見られます。膣内の自然な細菌の構成にとって好ましくない影響を受けると、健康な膣フローラが変化し、さまざまな症状(おりもの、悪臭、炎症)を引き起こす細菌増殖し、深刻な結果をもたらす可能性があります。 深刻な結果とは、早産(英語)や流産、HIVウイルス感染のリスク増加(英語)などです。 pHを低く保つことで膣内を守る働きをしている乳酸桿菌は、細菌性膣炎が起こると急速に数が減ってしまいます。その一方で、 ガードネレラ・バジナリスや他の嫌気性細菌などの好ましくない細菌が急速に増加するのです。
細菌性膣炎の原因はさまざまで、元々の体質や衛生用品の過剰な使用、抗生物質、銅付加子宮内避妊具やストレスなどがあります。膣フローラがすでに病的な状態になっていれば、性行為で病気になるリスクも上昇します。
最初に必要なのは診断です
治療を始める前に、カンジダ症(酵母菌の定着によって起こります)やトリコモナス膣炎の感染の可能性を排除するために、まずは正確な診断を行うことが重要です。従来の伝統的な医学では、メトロニダゾールやクリンダマイシンなどの抗生物質を用いた治療を行います。副作用が起こる可能性は別としても、細菌性膣炎の1年以内の再発率が50%と高いことを考えるなら、抗生物質を用いた治療の70%から80%では効果が期待したほどのものでないことは強調するべきです。細菌性膣炎の再発率(英語)が非常に高いにも関わらず、抗生物質による治療は未だに行われ続けているのです。
再発を防止するための生物学的製剤
この現状を改善するために、科学者たちは何年もの間研究を続け、抗生物質による治療後の乳酸桿菌の予防的投与によって、高い再発率を下げられるかどうか調査を行いました。
フェーズIIの二重盲検無作為化プラセボ対照試験(英語)が2016年から2019年にかけて行われ、非常に大きな成功を収めました。試験結果は2020年5月発行の「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」誌で報告されています。この臨床試験は、クレイグ・R・コーエン博士らの主導の元に、アメリカの企業Osel Inc社の生物学的製剤Lactin-V (ラクトバチルス・クリスパタスCTV-05)を試験したものです。Lactin-Vは粉末状の薬剤で、塗布器具を用いて直接膣内に投与します。ラクトバチルス・クリスパタスは健康な膣フローラで最も多く見られる乳酸桿菌の一種です。この乳酸桿菌は乳酸と過酸化水素を産生し、細菌性膣炎の原因となる病原菌の成長を抑えてくれます。
生物学的製剤Lactin-Vの試験内容
臨床試験では細菌性膣炎と診断され、メトロニダゾールゲルで治療を受けた18歳から45歳までの女性228例が参加しました。参加者の3分の2がLactin-V群、3分の1がプラセボ群に分けられました。Lactin-Vによる治療はメトロニダゾールの最後の投与から48時間後に開始し、11週間継続されました(最初の週の5日間はクリニックで投与を行い、残りの10週間は週のうち2日のみクリニックで投与を行いました)。臨床試験開始から4、8、12、24週間後に、ラクトバチルス・クリスパタス CTV-05の定着率を評価しました。また、試験参加者は生理や性行為などの試験結果に影響を及ぼし得る要因を記録しました。
臨床試験の結果は素晴らしいものでした
- 試験開始から12週間が経過するまでに、Lactin-V群の女性の30%が細菌性膣炎を再発しました。比較対照のプラセボ群では45%が再発しています。論文著者とアメリカ国立衛生研究所(NIH)の両方がこの効果は顕著であると評価しています。
- 試験開始から最初の12週間の間に細菌性膣炎を再発しなかった女性では、Lactin-V群では24週間以内に12%(106例中13例)のみ再発した一方、プラセボ群では17%(42例中7例)が再発しました。Lactin-Vの治療期間後に良い効果が見られたのは明確です。
- ラクトバチルス・クリスパタス CTV-05の膣内への定着率に関して、Lactin-V群では12週間後におよそ80%、24週間後におよそ50%となっていました。
Lactin-Vの投与による安全性のリスクは認められませんでした。
生物学的製剤Lactin-VはフェーズIII試験へ
Lactin-Vが一般に使われるようになるまでには、さらにフェーズIII試験の実施が必要となります。ですが、フェーズII試験の結果は、Lactin-Vが再発予防の治療のためだけでなく、膣マイクロバイオームの全般的な強化にも役立つという希望を与えてくれます。さらに、抗生物質の乱用を減らすためのきっかけとなる可能性もあるのです。
免責事項:このサイトやブログの内容は医学的助言、診断や治療を提供することを意図したものではありません。