骨格筋と消化管マイクロバイオームの相関関係が認められました
MyMicrobiomeの読者の方は、健全なマイクロバイオームが人間の健康にとって重要であることをご存知だと思います。多くの記事の中で、私たちはマイクロバイオームと免疫系(「傷ついたマイクロバイオームが健康に及ぼす影響」)、メンタルヘルスとの相互作用(「知性を持つ胃―人間の第二の脳」)、そして数多くの自己免疫疾患との相互作用(「アメリカに移民すると肥満になる可能性が高まるー移民とマイクロバイオームの変化」)について論じてきました。また、皮ふと消化管マイクロバイオームの相関関係も興味深い問題です。そして、今回紹介する驚くべき発見は、最近実施されたマウス実験によって、消化管マイクロバイオームと骨格筋の機能的な相関関係が証明されたというものです。
2019年7月、US National Library of Medicine誌はラヒリ博士たちの研究(英語)を公表しました。博士の行ったマウス実験によって、骨格筋の形成・機能と消化管マイクロバイオームの相関関係が明確に証明されたのです。マイクロバイオームの細菌構成は生理学やホメオスタシス、宿主(人間)の健康維持にとって重要な要因となります。ラヒリ博士たちの研究では、無菌のマウスと細菌に感染したマウスの細菌叢を比較しました。健全なマイクロバイオームを持つマウスでは、器官の萎縮がなく、インシュリンレベルが適切に調整され、そして骨格筋の成長やミトコンドリア機能の遺伝的エラーも防がれていたのです。
消化管が筋肉に及ぼす影響
博士たちの研究では、核磁気共鳴スペクトル測定法(NMR測定法)を用いてマウスの細胞を分析しています。肝臓と骨格筋の細胞を調べ、細胞の構成にいくつかの有意な変化があったことが発見されました。例えば、アミノ酸のグリシンとアラニンの濃度が変化しているのと同時に、コリンの濃度が減少していることが証明されました。コリンは重要な神経伝達物質で、減少すると筋肉と細胞間のコミュニケーションが制限されてしまいます。
健康なマウスは同種の無菌マウスと比較して、一貫して大きな筋肉量を有していました。この現象の説明として、ラプシンとLrp4という神経筋の発達と機能に重要なタンパク質が減少したことが何らかの影響を及ぼした可能性が挙げられます。
博士たちは検定交雑試験を行い、健全なマイクロバイオームをマイクロバイオームが傷ついているマウスに移植し、この説明が正しいことを証明しました。機能が制限されたマウスでは、急に筋肉が発達し、筋委縮マーカーが減少、そして骨格筋の酸化代謝能が改善することが示されました。健全なマイクロバイオームの移植後に、ラプシンとLrp4も増加し、これによって再び強い骨格筋が発達しました。
マイクロバイオーム研究にとっての重要な一歩
最初に述べたとおり、消化管マイクロバイオームと様々な臓器との相互作用については数多くの研究が行われています。ですが、筋組織に対するマイクロバイオームの影響はこれまで研究されていませんでした。今回紹介した研究は、私たち人間がマイクロバイオームから受けている影響の大きさについて、新しい次元の理解を与えてくれるものです。このことは明確でしょう。健全な消化管マイクロバイオームは、人間の体全体の健康にとって不可欠なものなのです。
免責事項:このサイトやブログの内容は医学的助言、診断や治療を提供することを意図したものではありません。