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2020-04-21 13:46
by Inge Lindseth
  Last edited:

加工食品はマイクロバイオームを傷つけ、肥満リスクを高める

P加工食品はマイクロバイオームを傷つけます。
加工食品はマイクロバイオームを傷つけます。

登録栄養士インゲ・リンドセット

2012年に行われたある研究の結果(英語)は不可解なものでした。2グループに分けられたマウスは、同じ脂肪、タンパク質、炭水化物、その他の栄養素を含むエサを与えられました。それにも関わらず、エサが体重の変化に与えた影響が異なっていたのです。1つのグループのマウスは肥満になり、他にも悪影響が認められましたが、もう一方のグループはそうではなかったのです。

この結果は、マウスに与えたエサは栄養素だけが異なるという前提で、マイクロバイオームのことを考慮しないと、説明が難しくなります。というのも、食べ物の違いは栄養素だけではないからです。食べ物がどのように加工されたのかや、食べるスピードや頻度、その他の要因も、食品が私たちに与える影響に関わるからです。これから、なぜマウスが短期間で肥満を起こしたのか考えていきましょう。ですがその前に、食品の原料が収穫された後、人間が何を行っているのかの観点から、私たちの食べ物について考えてみましょう。

食品に含まれる栄養素から食品の構造に視点を変えるときです

食品の原料が収穫された後には加工が行われます。食品加工のさまざまなプロセス中に、原料の構造と栄養素の両方に大きな変化が起こります。栄養素に関して言うと、新しい添加物が加えられたり、原料にもともと含まれていた栄養素が取り除かれたりします。添加物には乳化剤(食べ物の形状を良くするために使われる一般的な添加物)や、甘味料、うま味調味料、穀物の粉末や抽出物、ひき肉、砂糖抽出物、スターチやオイル類があります。食品の栄養素の分析では、これら個々の添加物はあまり重要視されてません。分析では食品の主要な栄養素に着目するからです。したがって、例えば穀粉やグラニュー糖などの加工食品に個別に注目するよりも、加工による影響そのものを調査した方が、「より大きなシグナル」を見つけられる可能性が高いのです。つまり、穀粉や砂糖を含む食品は、それらを含まない食品よりも共通の物理的性質を持っているのです。単純な例を挙げます。日常の食生活と健康への影響を調査する研究でシュガーソースを分析することは、食品の物理的性質を分析することと同じなのです。砂糖が健康に良くない一番の原因が砂糖の持つ物理的性質であるなら、同じ性質を持つ他の食品も同様ものと考えて、加工食品の健康への悪影響の調査対象とすることができます。

現代人は消化しやすい栄養素を含む食品を多く食べています

過去の人間の食べ物について学ぶことは、加工食品が健康に与える悪影響について知ることにつながります。「石灰化した歯石の分析は、新石器時代と産業革命時代の食事の変化に伴って、口内細菌叢も変わったことを示した」という題名の論文は、食品の加工度合いの変化が大きくなったとき、特に農業の開始から産業革命の間の時期には精製糖と穀物の使用が大きく増え、口内細菌叢の構成が大きく変化したことを示しています。口内細菌叢の構成は、健康に大きく関わります。現在、複数の要因によってこの変化を説明できますが、特に重要な要因が一つあります。それは、栄養素の消化のしやすさです。つまり、製粉や他の加工によって、植物や穀物からより多くの栄養を得ることができるようになったのです。

 

何も見えない状態を想像してみてください

そして、飢えで死にそうになっているとき、わずかな量の砂糖と全粒粉が与えられたと考えてください。それまで、砂糖も全粒粉も味わったことがありません。数秒間、あなたは与えられた砂糖と全粒粉に手で触れます。

飢えに苦しむあなたは、砂糖と全粒粉のどちらを選びますか?

この例え話は、リンゴや製粉していない穀物ではなく、砂糖を含む食品やパンを食べたときに、人間の口や腸の中に住む細菌の反応をイメージしたものです。消化が簡単な糖質やスターチに直面すると、生存できるチャンスが大きくなり、細菌の代謝は非常に活動的になります。ある細菌の研究が示すとおり、糖類など栄養素の増加は細菌の毒性(細菌の持つ悪い働き)の強さに関わります。そしておそらく、動物の体の脂肪細胞の調整を阻害する「細菌の領土拡張」にも関わっています(血流中に入り込む細菌の生成物の量が増加(領土拡張)すると、体重調整に影響があることが知られています)。

歴史上のさまざざまな革命的な出来事と、科学的に生産される消化の簡単な非細胞性の食物が西洋の標準的な食事となったことを比較すると、何が言えるでしょうか。現代人はパスタやパン(全粒穀、白パン、クロワッサン、何でも良いですが、これらはほとんどが非細胞性の食品です)、クラッカー、トルティーヤ、ピザ、チョコレート、キャンディー、ワッフル、ドーナッツ、クッキー、そしてソーダなどの食べ物を、アフリカのサバンナに住んでいた人類と比較してどれだけ多く摂食しているのでしょうか?

この変化が肥満や他の生活習慣病の増加にどれだけ有意に関わっているのかを判断するには、将来の研究を待たなければいけません。ですが、少なくともある研究の一つは、非細胞性の食品の摂取量が重要な要因の一つであることを指摘しています。その研究では、一般的に健康的とされている地中海の食事(小麦粉中心の食べ物や、乳製品を含む)を旧石器時代の食事(別の言い方をすると未加工の食事)と比較しています。結論を簡単に言うと、旧石器時代の食事は、肥満に関連する要因に関して地中海の食事よりも優れています。また、地中海の人々で米を多く食べている人は、健康マーカーがより良好でした。米は小麦粉のように簡単に消化できる栄養素ではないからです。

食べ物そのものが健康に悪影響を及ぼすことは滅多にありません。健康な食べ物を不健康なものにしてしまうのは、加工です

最初のマウスの話に戻りましょう。2つのグループの違いは、エサの固さだけでした。不健康な結果を示したマウスのグループは柔らかいエサを与えられ、もう一方のグループのエサは同じ栄養ながら固いペレットを与えられていました。細菌にとっての栄養の消化のしやすさは、どんな影響を起こすでしょうか?関連は明確です。細菌ににって栄養が消化しにくいものだった場合、食べ物や栄養素だけでなく、食品の加工を健康に与える影響の要因として研究対象としなければいけません(エサのペレットはマウスの小腸まで達したときに、少しでも「ペレットの形」を保っていたのかは不明です)。

マイクロバイオームの新しい知識は、食事と肥満の関係について、不可思議な結果をより良く説明できる可能性を与えてくれました。

肉をどの程度ミンチするのか、野菜やその他の食材をどのくらい細かく刻むのか、どの程度の期間貯蔵するのかなどの加工も、食事が健康に及ぼす影響に関わっています(関連記事はこちら(英語))。また、乳化剤や食品加工に関わる他の要因が及ぼす影響については、こちらの記事(英語)をご覧ください。

クリスティン・ノイマン博士, 著者
クリスティン・ノイマン博士
著者

みなさん、こんにちは。微生物学者のクリスティン・ノイマンです。生命の仕組みに興味があり、分子生物学を学びました。…

ファビアン・ガイヤー, 特別寄稿者
ファビアン・ガイヤー
特別寄稿者

ファビアン・ガイヤー氏から素晴らしい特別寄稿を頂きました。
ガイヤー氏はBIOMES社コミュニケーション・チームの一員です。BIOMES社はベルリンを拠点とするバイオ企業で、一般と専門家向けのマイクロバイオーム解析を専門としています。
ガイヤー氏は熟練の「翻訳者」として、人間と細菌の仲を取り持ちます。人間と細菌の関係は長年大きく誤解されていました。

リサ・カイルホーファー, 著者
リサ・カイルホーファー
著者

レーゲンスブルク大学で学びました。
多言語化業務に携わり、フリーランスの編集者としても活躍しています。

キャラ・コーラー
キャラ・コーラー
著者

シカゴのデポール大学とドイツのバンベルク大学で学位を取得し、現在博士号取得候補者となっています。
また、フリーランスの独英翻訳者、英独コピーエディターとしても活躍しています。

インゲ・リンドセット
インゲ・リンドセット
登録栄養士

オスロ大学のインゲ・リンドセットは登録栄養士で、専門分野は糖尿病と肥満、運動療法です。エクササイズの効果を最大限に高めたり、スポーツで最高のパフォーマンスを上げるための研究を行っています。
インゲ・リンドセットについて(ノルウェー語)

マリア・ペトロヴァ博士
マリア・ペトロヴァ博士
寄稿著者

マリア博士はヒトマイクロバイオームの分野で世界的に著名な研究者です。泌尿生殖器の細菌叢とプロバイオティクスを研究しています。ベルギーのルーベン・カトリック大学とアントワープ大学で乳酸桿菌と病原菌・ウイルスの分子相互作用を研究し、博士号を取得しました。博士の大きな業績は、ポスドクフェローのときに行った乳酸桿菌の遺伝的、分子的、機能的特性の研究です。この研究によって、膣内環境下での乳酸桿菌の働きについて素晴らしい知見を得ました。
マリア・ペトロヴァ博士について(英語)

ヨハンナ・ギルブロ博士
ヨハンナ・ギルブロ博士
寄稿著者

ヨハンナ・ギルブロ博士は受賞歴のある皮ふの専門家で、ベストセラーとなった『Skin We’re In』の著者です。
博士は実験皮ふ病学、臨床研究、そしてスキンケア製品開発の分野で15年以上の経験を持っています。また、製薬企業での長い経験を持っています。皮ふ科とコスメティクスの国際会議では、最先端の研究について頻繁に講演を行っています。また、「International Journal of Cosmetic Science」誌で過去10年の間に最も多く引用された研究者でもあります。博士はアンチエイジング成分で複数の特許を取得しており、スキンケア企業でアンチエイジング治療の研究・開発マネージャーを務めています。ギルブロ博士がスキンケア分野のエキスパートであることは言うまでもありません。『Skin We’re In』の執筆が示すように、現在は私たちのような一般人に知識を伝えることを使命としています。
2019年4月の出版の以来、『Skin We’re In』は主要な販売店でベストセラーとなっています。現在、スウェーデン語版のみが刊行されています。
https://www.skinomeproject.com

ディミトリ・アレクセーエフ博士
ディミトリ・アレクセーエフ博士
寄稿著者

ディミトリ・アレクセーエフ博士は消化管マイクロバイオーム、分子生物学、バイオインフォティクス、栄養学分野の優れた研究者です。基礎研究の臨床への応用に情熱的に取り組んでいます。Atlas Biomedグループでの主な役割は、社内外の科学プロジェクトを発展させることです。博士が携わっているプロジェクトは、栄養や神経変性疾患、炎症やがんに対するマイクロバイオームの応用、英国医薬品・医療製品規制庁の承認など多岐にわたります。Atlas Biomedグループでの統合的な役割に加え、ディミトリ博士は現在サンクトペテルブルクITMO大学で助教授を務め、健康のためのアルゴリズム開発を行っています。今後、博士はオランダのフローニンゲン大学医療センター(UMCG)に移り、老化研究に携わることになっています。
ディミトリ博士について(英語)

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