ロッテルダム・マイクロバイオーム・カンファレンス2019 –マイクロバイオーム愛好家にとって素晴らしいイベントとなりました!
2019年5月に、ロッテルダムでマイクロバイオーム愛好家にとって素晴らしいイベントが開催されました。Global Engage社が多くのマイクロバイオーム研究者、特にマイクロバイオームに関連する産業に携わる研究者をロッテルダムに招きました。カンファレンスでは次の3つの主題が扱われました。
- 第6回マイクロバイオーム研究開発およびビジネス・コラボレーション・フォーラム
- 第3回プロバイオティクス会議
- 皮ふマイクロバイオーム・薬用化粧品会議
MyMicrobiomeのスタッフも参加し、マイクロバイオームの研究開発分野における最新かつ興味深いニュースを聴講しました。その内容を要約します。
皮ふマイクロバイオームの問題はとても大きく扱われました。私たちは「MyMicrobiome standard 18.10」の認証制度を常にアップデートしているため、この問題には特に関心があります。
L’Oréal社やNestlés社などの大企業だけでなく、スタートアップ企業(YUN社、AOBiome社、ElsiBeauty社、Gallinée社)も開発した製品のバックグランドとなる研究について説明してくれました。
YUN社とAOBiome社は、化粧品産業において本当にプロバイオティクスと言える製品の3分の2を占めています。残りの3分の1がEsse社の製品です。
Gallinée社は、発酵した重湯を使って世界初のプレバイオティクスであり、ポストバイオティクスでもあるヘアケア製品を開発しました。キャッチコピーは「健康で美しい髪の毛のために、洗う回数を減らしましょう!」です。ポストバイオティクスは細菌から産生された物質のことです。
YUN社はにきび治療のための乳酸桿菌カプセルを開発しました。このカプセルに含まれている細菌は、皮ふに到達するまで生存しています。乳酸桿菌は皮ふに定着するために、プロピオニバクテリウム・アクネスやブドウ球菌と競合し、にきびの症状を抑えます。
(写真左側:マリー・ドラゴ、Galinée社創立者とクリスティン・ノイマン博士(MyMicrobiome) | 写真右側:イングマール・クラエス、YUN Therapeutics社CSOとクリスティン・ノイマン博士(MyMicrobiome))
ELSI Beauty社は、人々が普段仕様している化粧品やクリームに126種類もの成分が含まれていることを発見しました。つまり、私たちは126種類もの物質を顔に付けているのです。これでは何らかの症状が起きても不思議ではありません。ELSI社はわずか3種類の成分のみ含んだ保湿セラムを開発しました。
『Hudbibeln』(肌のバイブル)の著者でスウェーデンのスキノーム・プロジェクトの共同発起人であるジョアンナ・ジルブロとの座談会では、生きた細菌を使った化粧品と死んだ細菌を使った化粧品について議論を行いました。また、「プロバイオティクス」とマイクロバイオーム・フレンドリーな化粧品に関して規制がないことについても話し合いました。
すでに多くの「プロバイオティクス」製品とマイクロバイオーム・フレンドリーな製品が化粧品市場に存在しています。しかし、これらの製品の広告宣伝に対して、規制やガイドラインは存在していません。
化粧品業界では、どんな製品であっても細菌や細菌の一部を含むものは全てプロバイオティクスと呼ばれています。少なくとも、食品業界では「プロバイオティクス」という言葉には明確な定義があります。その定義とは、「適切な量で用いられたときに宿主の健康に良い影響を与える生きた細菌」(国際プロバイオティクス・プレバイオティクス学術機関、略称ISAPP)です。生きている細菌も死んだ細菌も両方とも、肌に何らかの効果はもたらします。ほとんどの場合は乳酸桿菌が用いられています。乳酸桿菌は食品業界ではすでに徹底的に研究されており、安全だとみなされているからです。死んだ細菌も生きた細菌も両方とも抗生物質成分を含んだり、放出することができます。また、肌に良い代謝物質を含むことも可能です。さらに、生きている細菌を使った本当のプロバイオティクスは肌のpHを調整し、例えば乳酸が適切に機能できる状態にすることができます。また、生きた細菌はときには肌の上で生存することもあり、その結果、死んだ細菌よりも長時間効果をもたらすことができます。
しかし、化粧品業界に関しては、今でもプロバイオティクス化粧品に関する基準もなければ、分析手法も確立されていません。
また、マイクロバイオーム・フレンドリーな製品と、皮ふマイクロバイオームを傷つける製品の区別がとても難しいという問題もあります。さらに、保存できる期間を長くし、製造プロセスを容易にする保存剤という大きな問題もあります。保存剤は皮ふマイクロバイオームを傷つける可能性があるのです!他の多くの分野と同様に、化粧品業界でもパラダイムシフトが求められています。保存剤を使わない場合、化粧品の製造コストが増加し、製品が傷みやすくなります。結果的に、化粧品の保存可能期間は短くなってしまいます。MyMicrobiomeは「マイクロバイオーム・フレンドリー品質シール」によって、マイクロバイオーム・フレンドリーな製品に関する現在唯一のガイドラインを定めました。
皮ふマイクロバイオームの話題以外にも、エキサイティングな科学的知見を聞くことができました。
オランダのフローニンゲン大学のポール・ド・ヴォス氏は、プロバイオティクスとプレバイオティクスが消化に与える効果を評価できるようにした研究方法について解説してくれました。この手法によって、彼は様々な種類の食物繊維を調査してエキサイティングな結果を得ました。例えば、でん粉結晶は特に健康に良い繊維です。でん粉結晶は野菜を調理し、再度冷やしたときにできます。ジャガイモを調理するときは一度冷やし、食べるときに温めれば、体重を落とすことができます(マヨネーズで食べても効果があります)!ポール氏は6kgも体重を落としています。長鎖イヌリンと短鎖イヌリンの間に非常に大きな違いがあるということは、驚くべき発見の一つです。イヌリンは一般的な健康に良い繊維質で、抽出物として様々な形で利用できます(イヌリン)。しかし、イヌリンの性質について詳細な知識が抜け落ちていました。つまり、長鎖イヌリンは短鎖イヌリンよりも腸管免疫系の発展に大きな効果を示すのです。マウスの実験では、幼体の頃から固形食を与えていると起こりやすい1型糖尿病の発症が、長鎖イヌリンによって予防されました。短鎖イヌリンでは予防効果は示されませんでした。
イスラエルのバル=イラン大学のオムリ・コーエン氏は、妊娠後期の女性のマイクロバイオームがメタボリックシンドロームの人々のマイクロバイオームと類似していることを示しました。細菌の多様性が低下しており、プロテオバクテリア(炎症誘発性の細菌)と放線菌の数が増えています。妊娠後期の女性のマイクロバイオームをマウスに移植すると、肥満女性のマイクロバイオームを移植したときのように、マウスは肥満を起こしました。マイクロバイオームは妊娠に反応していると考えられます。妊娠とマイクロバイオームの正確な相互作用については、現在研究が行われています。
食品業界では、再びプロバイオティクスに関する議論が盛り上がっています。健康上の利益を実現するために、健康な人を対象とした研究と対象をより絞った研究の両方を実施することが求められています。目標は、世界的に通用するプロバイオティクスの定義を定めることです。
Nestlé社のケイト・ブランチャード氏は、糞便移植とそのリスクについて話してくれました。多くの患者が成功裏に治療されていますが、高度な安全性基準と移植片の正確な分析が絶対に必要です。自己流の糞便移植は行わないことが強く求められます。
マイクロバイオームのトピックは非常に面白く、私たちの健康にとっても実り豊かな研究分野です。しかし、科学はビジネスをしっかりとフォローする必要があり、マイクロバイオームを騙った詐欺には充分に気をつける必要があります。
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