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2019-08-27 17:19
by Kristin Neumann
  Last edited:

ロッテルダム・マイクロバイオーム・カンファレンス2019 –マイクロバイオーム愛好家にとって素晴らしいイベントとなりました!

マイクロバイオーム・カンファレンス2019、ワールドトレードセンター(ロッテルダム)
マイクロバイオーム・カンファレンス2019、ワールドトレードセンター(ロッテルダム)

2019年5月に、ロッテルダムでマイクロバイオーム愛好家にとって素晴らしいイベントが開催されました。Global Engage社が多くのマイクロバイオーム研究者、特にマイクロバイオームに関連する産業に携わる研究者をロッテルダムに招きました。カンファレンスでは次の3つの主題が扱われました。

  • 第6回マイクロバイオーム研究開発およびビジネス・コラボレーション・フォーラム
  • 第3回プロバイオティクス会議
  • 皮ふマイクロバイオーム・薬用化粧品会議

MyMicrobiomeのスタッフも参加し、マイクロバイオームの研究開発分野における最新かつ興味深いニュースを聴講しました。その内容を要約します。

皮ふマイクロバイオームの問題はとても大きく扱われました。私たちは「MyMicrobiome standard 18.10」の認証制度を常にアップデートしているため、この問題には特に関心があります。

 

L’Oréal社やNestlés社などの大企業だけでなく、スタートアップ企業(YUN社、AOBiome社、ElsiBeauty社、Gallinée社)も開発した製品のバックグランドとなる研究について説明してくれました。

YUN社AOBiome社は、化粧品産業において本当にプロバイオティクスと言える製品の3分の2を占めています。残りの3分の1がEsse社の製品です。

Gallinée社は、発酵した重湯を使って世界初のプレバイオティクスであり、ポストバイオティクスでもあるヘアケア製品を開発しました。キャッチコピーは「健康で美しい髪の毛のために、洗う回数を減らしましょう!」です。ポストバイオティクスは細菌から産生された物質のことです。

YUN社はにきび治療のための乳酸桿菌カプセルを開発しました。このカプセルに含まれている細菌は、皮ふに到達するまで生存しています。乳酸桿菌は皮ふに定着するために、プロピオニバクテリウム・アクネスやブドウ球菌と競合し、にきびの症状を抑えます。


(写真左側:マリー・ドラゴ、Galinée社創立者とクリスティン・ノイマン博士(MyMicrobiome) | 写真右側:イングマール・クラエス、YUN Therapeutics社CSOとクリスティン・ノイマン博士(MyMicrobiome))

ELSI Beauty社は、人々が普段仕様している化粧品やクリームに126種類もの成分が含まれていることを発見しました。つまり、私たちは126種類もの物質を顔に付けているのです。これでは何らかの症状が起きても不思議ではありません。ELSI社はわずか3種類の成分のみ含んだ保湿セラムを開発しました。

『Hudbibeln』(肌のバイブル)の著者でスウェーデンのスキノーム・プロジェクトの共同発起人であるジョアンナ・ジルブロとの座談会では、生きた細菌を使った化粧品と死んだ細菌を使った化粧品について議論を行いました。また、「プロバイオティクス」とマイクロバイオーム・フレンドリーな化粧品に関して規制がないことについても話し合いました。

座談会にて、ジョアンナ・ジルブロと
座談会にて、ジョアンナ・ジルブロと

すでに多くの「プロバイオティクス」製品とマイクロバイオーム・フレンドリーな製品が化粧品市場に存在しています。しかし、これらの製品の広告宣伝に対して、規制やガイドラインは存在していません。

化粧品業界では、どんな製品であっても細菌や細菌の一部を含むものは全てプロバイオティクスと呼ばれています。少なくとも、食品業界では「プロバイオティクス」という言葉には明確な定義があります。その定義とは、「適切な量で用いられたときに宿主の健康に良い影響を与える生きた細菌」(国際プロバイオティクス・プレバイオティクス学術機関、略称ISAPP)です。生きている細菌も死んだ細菌も両方とも、肌に何らかの効果はもたらします。ほとんどの場合は乳酸桿菌が用いられています。乳酸桿菌は食品業界ではすでに徹底的に研究されており、安全だとみなされているからです。死んだ細菌も生きた細菌も両方とも抗生物質成分を含んだり、放出することができます。また、肌に良い代謝物質を含むことも可能です。さらに、生きている細菌を使った本当のプロバイオティクスは肌のpHを調整し、例えば乳酸が適切に機能できる状態にすることができます。また、生きた細菌はときには肌の上で生存することもあり、その結果、死んだ細菌よりも長時間効果をもたらすことができます。

しかし、化粧品業界に関しては、今でもプロバイオティクス化粧品に関する基準もなければ、分析手法も確立されていません。

また、マイクロバイオーム・フレンドリーな製品と、皮ふマイクロバイオームを傷つける製品の区別がとても難しいという問題もあります。さらに、保存できる期間を長くし、製造プロセスを容易にする保存剤という大きな問題もあります。保存剤は皮ふマイクロバイオームを傷つける可能性があるのです!他の多くの分野と同様に、化粧品業界でもパラダイムシフトが求められています。保存剤を使わない場合、化粧品の製造コストが増加し、製品が傷みやすくなります。結果的に、化粧品の保存可能期間は短くなってしまいます。MyMicrobiome「マイクロバイオーム・フレンドリー品質シール」によって、マイクロバイオーム・フレンドリーな製品に関する現在唯一のガイドラインを定めました。

クリスティン・ノイマン博士の講演
講演「MyMicrobiome standard 18.10」、クリスティン・ノイマン博士

皮ふマイクロバイオームの話題以外にも、エキサイティングな科学的知見を聞くことができました。

オランダのフローニンゲン大学のポール・ド・ヴォス氏は、プロバイオティクスとプレバイオティクスが消化に与える効果を評価できるようにした研究方法について解説してくれました。この手法によって、彼は様々な種類の食物繊維を調査してエキサイティングな結果を得ました。例えば、でん粉結晶は特に健康に良い繊維です。でん粉結晶は野菜を調理し、再度冷やしたときにできます。ジャガイモを調理するときは一度冷やし、食べるときに温めれば、体重を落とすことができます(マヨネーズで食べても効果があります)!ポール氏は6kgも体重を落としています。長鎖イヌリンと短鎖イヌリンの間に非常に大きな違いがあるということは、驚くべき発見の一つです。イヌリンは一般的な健康に良い繊維質で、抽出物として様々な形で利用できます(イヌリン)。しかし、イヌリンの性質について詳細な知識が抜け落ちていました。つまり、長鎖イヌリンは短鎖イヌリンよりも腸管免疫系の発展に大きな効果を示すのです。マウスの実験では、幼体の頃から固形食を与えていると起こりやすい1型糖尿病の発症が、長鎖イヌリンによって予防されました。短鎖イヌリンでは予防効果は示されませんでした。

イスラエルのバル=イラン大学のオムリ・コーエン氏は、妊娠後期の女性のマイクロバイオームがメタボリックシンドロームの人々のマイクロバイオームと類似していることを示しました。細菌の多様性が低下しており、プロテオバクテリア(炎症誘発性の細菌)と放線菌の数が増えています。妊娠後期の女性のマイクロバイオームをマウスに移植すると、肥満女性のマイクロバイオームを移植したときのように、マウスは肥満を起こしました。マイクロバイオームは妊娠に反応していると考えられます。妊娠とマイクロバイオームの正確な相互作用については、現在研究が行われています。

食品業界では、再びプロバイオティクスに関する議論が盛り上がっています。健康上の利益を実現するために、健康な人を対象とした研究と対象をより絞った研究の両方を実施することが求められています。目標は、世界的に通用するプロバイオティクスの定義を定めることです。

Nestlé社のケイト・ブランチャード氏は、糞便移植とそのリスクについて話してくれました。多くの患者が成功裏に治療されていますが、高度な安全性基準と移植片の正確な分析が絶対に必要です。自己流の糞便移植は行わないことが強く求められます。

マイクロバイオームのトピックは非常に面白く、私たちの健康にとっても実り豊かな研究分野です。しかし、科学はビジネスをしっかりとフォローする必要があり、マイクロバイオームを騙った詐欺には充分に気をつける必要があります。

クリスティン・ノイマン博士, 著者
クリスティン・ノイマン博士
著者

みなさん、こんにちは。微生物学者のクリスティン・ノイマンです。生命の仕組みに興味があり、分子生物学を学びました。…

ファビアン・ガイヤー, 特別寄稿者
ファビアン・ガイヤー
特別寄稿者

ファビアン・ガイヤー氏から素晴らしい特別寄稿を頂きました。
ガイヤー氏はBIOMES社コミュニケーション・チームの一員です。BIOMES社はベルリンを拠点とするバイオ企業で、一般と専門家向けのマイクロバイオーム解析を専門としています。
ガイヤー氏は熟練の「翻訳者」として、人間と細菌の仲を取り持ちます。人間と細菌の関係は長年大きく誤解されていました。

リサ・カイルホーファー, 著者
リサ・カイルホーファー
著者

レーゲンスブルク大学で学びました。
多言語化業務に携わり、フリーランスの編集者としても活躍しています。

キャラ・コーラー
キャラ・コーラー
著者

シカゴのデポール大学とドイツのバンベルク大学で学位を取得し、現在博士号取得候補者となっています。
また、フリーランスの独英翻訳者、英独コピーエディターとしても活躍しています。

インゲ・リンドセット
インゲ・リンドセット
登録栄養士

オスロ大学のインゲ・リンドセットは登録栄養士で、専門分野は糖尿病と肥満、運動療法です。エクササイズの効果を最大限に高めたり、スポーツで最高のパフォーマンスを上げるための研究を行っています。
インゲ・リンドセットについて(ノルウェー語)

マリア・ペトロヴァ博士
マリア・ペトロヴァ博士
寄稿著者

マリア博士はヒトマイクロバイオームの分野で世界的に著名な研究者です。泌尿生殖器の細菌叢とプロバイオティクスを研究しています。ベルギーのルーベン・カトリック大学とアントワープ大学で乳酸桿菌と病原菌・ウイルスの分子相互作用を研究し、博士号を取得しました。博士の大きな業績は、ポスドクフェローのときに行った乳酸桿菌の遺伝的、分子的、機能的特性の研究です。この研究によって、膣内環境下での乳酸桿菌の働きについて素晴らしい知見を得ました。
マリア・ペトロヴァ博士について(英語)

ヨハンナ・ギルブロ博士
ヨハンナ・ギルブロ博士
寄稿著者

ヨハンナ・ギルブロ博士は受賞歴のある皮ふの専門家で、ベストセラーとなった『Skin We’re In』の著者です。
博士は実験皮ふ病学、臨床研究、そしてスキンケア製品開発の分野で15年以上の経験を持っています。また、製薬企業での長い経験を持っています。皮ふ科とコスメティクスの国際会議では、最先端の研究について頻繁に講演を行っています。また、「International Journal of Cosmetic Science」誌で過去10年の間に最も多く引用された研究者でもあります。博士はアンチエイジング成分で複数の特許を取得しており、スキンケア企業でアンチエイジング治療の研究・開発マネージャーを務めています。ギルブロ博士がスキンケア分野のエキスパートであることは言うまでもありません。『Skin We’re In』の執筆が示すように、現在は私たちのような一般人に知識を伝えることを使命としています。
2019年4月の出版の以来、『Skin We’re In』は主要な販売店でベストセラーとなっています。現在、スウェーデン語版のみが刊行されています。
https://www.skinomeproject.com

ディミトリ・アレクセーエフ博士
ディミトリ・アレクセーエフ博士
寄稿著者

ディミトリ・アレクセーエフ博士は消化管マイクロバイオーム、分子生物学、バイオインフォティクス、栄養学分野の優れた研究者です。基礎研究の臨床への応用に情熱的に取り組んでいます。Atlas Biomedグループでの主な役割は、社内外の科学プロジェクトを発展させることです。博士が携わっているプロジェクトは、栄養や神経変性疾患、炎症やがんに対するマイクロバイオームの応用、英国医薬品・医療製品規制庁の承認など多岐にわたります。Atlas Biomedグループでの統合的な役割に加え、ディミトリ博士は現在サンクトペテルブルクITMO大学で助教授を務め、健康のためのアルゴリズム開発を行っています。今後、博士はオランダのフローニンゲン大学医療センター(UMCG)に移り、老化研究に携わることになっています。
ディミトリ博士について(英語)

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