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2020-06-29 17:05
by Lisa Keilhofer
  Last edited:

消化管と腸内細菌は新しく知られるようになったスターです

Our gut
人間の消化管が大切な役割を担っていることが一般にも認知されてきています。消化管は「人体の第二の司令塔」と呼ばれることさえあります(画像: ©ryanking999 – stock.adobe.com)

書店に行ったら、何が最新のトレンドなのか確認してみてください(ただし、新型コロナウイルス以外のテーマです)。私たちは喜んで、消化管マイクロバイオームが話題のトレンドになっていると言えます!ドイツの雑誌の「GEO」誌と GEOコンパクト誌 (GEO誌2020年6月号GEOコンパクト誌59号(ドイツ語)) は、消化管マイクロバイオームをそれぞれ表紙のカバーとしました。以前は科学的根拠が弱いと言われていたものが、現在ではとても重要なテーマであることが分かり、大きな注目を集めています。GEO誌は科学的な内容の記事を重視し、主要な雑誌の中でリーダーシップを発揮しています。そのため、ドイツで数ある雑誌の中でも象徴的な存在となっています。GEOとGEOコンパクトは人々の自宅のリビングルームに何冊も置かれています。読者の方は、時には10年前の話題が何だったのか調べるために、過去の雑誌を適当に選んでページをパラパラとめくることもあります。または、過去10年の間にすっかり常識となり、誰も疑いをはさまなくなったテーマを確認することもあります。消化管マイクロバイオームに関してもそうなることを祈っています。

消化管マイクロバイオームは決して新しく出てきたテーマではありません

厳密に言えば、消化管マイクロバイオームは新しく出てきた内容ではありません。ディック・ハラー博士は20年前のインタビュー記事の中で、早くも消化管マイクロバイオームについて論じています。ですが、消化管マイクロバイオームの話題は蔑ろにされたり、時には気味の悪い話だと思われることもありました。現在でも例えば、「糞便移植」による治療は多くの人にとっては恐ろしいもので、一般的な治療ではありません。ですが、糞便移植も少しずつ受け入れられ始めています。

実際、人間の消化管が大切な役割を担っていることが一般に認知されてきています。消化管は「人体の第二の司令塔」と呼ばれることさえあります(第一の司令塔は脳です)。食べ物の消化機能以外にも、消化管は免疫器官でもあり、数兆の微生物が住み、絶えず脳と相互作用しています。これらの一般的に認められた消化管の働きを、私たちは昔から直感的に知っていました。このことは「腸感覚」という言葉からも分かります。アジアの言語や文化では消化管を体の中心であり、生命の入り口だと捉えています。

消化管マイクロバイオームについては次の記事をお読みください。

>>> 青春の泉の発見–それはあなたの消化管マイクロバイオームにあります

>>> 知性を持つ胃―人間の第二の脳

ぜひ読んでおきたい、人間の内なる価値に関する記事

GEO誌やGEOコンパクト誌の記事のすべてをここで紹介することはできませんが、いずれの記事は要約だけを読むにはもったいないほど素晴らしいものです。ほとんどの方は、口から胃や腸などの消化管まででどのように消化が行われるのか、また消化器系がどのように病原菌を選別し排除するのかについて、なんとなくのイメージを持っています。重要な点は、西洋医学が脳を人体で唯一の司令塔と考え、様々な治療で消化管を無視していたことです。脳と消化管は迷走神経によって直接繋がっています。迷走神経はとても重要な役割を担っています。消化管からの情報は、感情と精神構造を司る脳に転送されます。

そう、消化管は脳とコミュニケーションを取っているのです。脳が高度なストレスにさらされると、腸は自らの機能を低下させてエネルギーを節約し、脳にエネルギーを供給するのです。ストレスと過敏性腸症候群などの疾患との相互関係、腸疾患と抑うつとの相互作用は、人体の中でもいちばん多く働いている二つの器官の強い関係を示唆しています。GEO誌の記事では、脳が腸から集めた情報を元につくる「データベース」について論じています。人間の体が新しい状況を経験する度に、データベースに保存された経験済みの出来事が参照として確認されます。そして、実際に脳が対応を計算し始める前に、データに基づいて傾向が判断され、脳が一定の決定を行うように促されるのです。これはとても納得できる話です。私たちが時に「腸の決定」は次善のものに過ぎないと考えてしまうのは、素晴らしい腸の働きを理解していないからです。実際、過去の経験に基づいた腸の決定は、「もう一つの」脳の決定と同じくらい有効なものなのです。

永遠に続く病原菌との闘い

GEO誌の他の記事では人間の免疫系について論じています。病原菌は「絶えず」人間の体に侵入し続けており、よく調整された免疫系が感染を防ぐために常に必要とされています。この記事で確かなことは、著者のマリア・キラディ氏が記事の内容で新型コロナウイルスのことを想起させないように、最大限自らを律していることです(彼女は特定の細菌感染症について論じるときもこの態度を崩していません)。

キラディ氏の記事は、次の1000年期で起こりえる生物化学兵器を使った戦争のシナリオを連想させます。戦いは人間の体の中で毎秒事に進行しています。人体は数千年もの間微生物が戦ってきた舞台です。微生物は自らが生息するための空間である人間の体のために戦っていますが、私たち人間はそのことについて何も知らないか、少ししか知らないのです。いずれにしても、できるだけ免疫系を支えることは良い考えです。

マイクロバイオームの科学の知識から何かオススメできることはありますか?

読者の方はこのような質問に対して、具体的な回答が欲しいと思います。ですが、ほとんどのマイクロバイオーム研究はマウスを用いた実験室での研究です。真剣に研究に取り込む科学者であるハラー博士や博士の同僚は、「単純な答え」を提示することは好みません。おそらく、人間がピルを一粒飲めばあらゆる病気を治してくれるようなスーパー細菌は存在しません。ハラー博士は「昔ながらの病気予防の基本」を守るようにアドバイスしています。例えば、食事であれば、多くの果物と野菜、全粒穀物や乳製品、そして少量の肉という食生活を始めることです。また、自分の体に関して、次のように考えて行動すれば上手くいくはずです。つまり、人間の体とは、微生物が密集して住んでいる複雑な生態系であり、病気と闘い、精神状態を良好に保つことで私たちを守ってくれる豊かな生物多様性を持った存在だという考えです。

マイクロバイオームと栄養の関係については次の記事もお読みください。

>>> マイクロバイオームに良い食事と科学的根拠

>>> 健康的なマイクロバイオームを育むのに良い食べ物

著者のカタリナ・フォン・ルスコワスキは以下のことを強調しています。消化管は人間の気分を変化させるだけでなく、気分そのものが生み出される基礎的な環境を作り出します。この一文は、10年後に再び雑誌を読むときのために、ペンで線を引いて強調しておきたい部分です。未来に読み直したとき、「10年前の記事なのに、今でも全く古くない内容だ」と思うはずです。逆に、次のようにも思うかもしれません。「10年前に消化管マイクロバイオームのことを知っていたのに、いまだに適切な行動を取れていない…」。どちらを思うかは私たち次第です。

クリスティン・ノイマン博士, 著者
クリスティン・ノイマン博士
著者

みなさん、こんにちは。微生物学者のクリスティン・ノイマンです。生命の仕組みに興味があり、分子生物学を学びました。…

ファビアン・ガイヤー, 特別寄稿者
ファビアン・ガイヤー
特別寄稿者

ファビアン・ガイヤー氏から素晴らしい特別寄稿を頂きました。
ガイヤー氏はBIOMES社コミュニケーション・チームの一員です。BIOMES社はベルリンを拠点とするバイオ企業で、一般と専門家向けのマイクロバイオーム解析を専門としています。
ガイヤー氏は熟練の「翻訳者」として、人間と細菌の仲を取り持ちます。人間と細菌の関係は長年大きく誤解されていました。

リサ・カイルホーファー, 著者
リサ・カイルホーファー
著者

レーゲンスブルク大学で学びました。
多言語化業務に携わり、フリーランスの編集者としても活躍しています。

キャラ・コーラー
キャラ・コーラー
著者

シカゴのデポール大学とドイツのバンベルク大学で学位を取得し、現在博士号取得候補者となっています。
また、フリーランスの独英翻訳者、英独コピーエディターとしても活躍しています。

インゲ・リンドセット
インゲ・リンドセット
登録栄養士

オスロ大学のインゲ・リンドセットは登録栄養士で、専門分野は糖尿病と肥満、運動療法です。エクササイズの効果を最大限に高めたり、スポーツで最高のパフォーマンスを上げるための研究を行っています。
インゲ・リンドセットについて(ノルウェー語)

マリア・ペトロヴァ博士
マリア・ペトロヴァ博士
寄稿著者

マリア博士はヒトマイクロバイオームの分野で世界的に著名な研究者です。泌尿生殖器の細菌叢とプロバイオティクスを研究しています。ベルギーのルーベン・カトリック大学とアントワープ大学で乳酸桿菌と病原菌・ウイルスの分子相互作用を研究し、博士号を取得しました。博士の大きな業績は、ポスドクフェローのときに行った乳酸桿菌の遺伝的、分子的、機能的特性の研究です。この研究によって、膣内環境下での乳酸桿菌の働きについて素晴らしい知見を得ました。
マリア・ペトロヴァ博士について(英語)

ヨハンナ・ギルブロ博士
ヨハンナ・ギルブロ博士
寄稿著者

ヨハンナ・ギルブロ博士は受賞歴のある皮ふの専門家で、ベストセラーとなった『Skin We’re In』の著者です。
博士は実験皮ふ病学、臨床研究、そしてスキンケア製品開発の分野で15年以上の経験を持っています。また、製薬企業での長い経験を持っています。皮ふ科とコスメティクスの国際会議では、最先端の研究について頻繁に講演を行っています。また、「International Journal of Cosmetic Science」誌で過去10年の間に最も多く引用された研究者でもあります。博士はアンチエイジング成分で複数の特許を取得しており、スキンケア企業でアンチエイジング治療の研究・開発マネージャーを務めています。ギルブロ博士がスキンケア分野のエキスパートであることは言うまでもありません。『Skin We’re In』の執筆が示すように、現在は私たちのような一般人に知識を伝えることを使命としています。
2019年4月の出版の以来、『Skin We’re In』は主要な販売店でベストセラーとなっています。現在、スウェーデン語版のみが刊行されています。
https://www.skinomeproject.com

ディミトリ・アレクセーエフ博士
ディミトリ・アレクセーエフ博士
寄稿著者

ディミトリ・アレクセーエフ博士は消化管マイクロバイオーム、分子生物学、バイオインフォティクス、栄養学分野の優れた研究者です。基礎研究の臨床への応用に情熱的に取り組んでいます。Atlas Biomedグループでの主な役割は、社内外の科学プロジェクトを発展させることです。博士が携わっているプロジェクトは、栄養や神経変性疾患、炎症やがんに対するマイクロバイオームの応用、英国医薬品・医療製品規制庁の承認など多岐にわたります。Atlas Biomedグループでの統合的な役割に加え、ディミトリ博士は現在サンクトペテルブルクITMO大学で助教授を務め、健康のためのアルゴリズム開発を行っています。今後、博士はオランダのフローニンゲン大学医療センター(UMCG)に移り、老化研究に携わることになっています。
ディミトリ博士について(英語)

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