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2020-02-29 11:25
by Lisa Keilhofer
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お口をケアしましょう! 口内マイクロバイオームを理解し、正しくケアする

口内マイクロバイオーム
口内マイクロバイオームをケアしましょう! (画像: © kei907 – stock.adobe.com)

私たちの口は、気温や酸性度、化学物質の組成の大きな変化に日々対応する役割を持った入り口のようなものです。食文化の視点で見れば、私たちの口は熱く熱した食事(例えば、中華料理)や過剰な砂糖(西洋料理)に苦しめられることもあり、その一方で、発展途上国では口内衛生がないがしろにされたり、逆に先進国ではマウスウォッシュの使い過ぎなど過剰な衛生手段が問題となっています。そのため、口のことについて考えるには良いタイミングだと思いました。私たち現代人の口は今どのような状態であり、またバランスの良い口内環境を保つためにはどうすれば良いのでしょうか?

口内マイクロバイオームはどんなものですか?

様々な研究施設から集まった、デンタルケアと栄養学を専門とする科学者のチームが、口内マイクロバイオームについて重要な知識をエッセイにまとめています。まず、人間の口は9つの部分に分けられます。頬粘膜、硬口蓋、角化歯肉、口蓋扁桃、唾液、歯肉縁下歯垢、歯肉縁上歯垢、喉、そして舌背です。口内マイクロバイオームは一つの部位ではなく、それぞれ特異的に細菌が定着したさまざまな部位の集合と言えます。

平均的な口内マイクロバイオームには、6~9の系統の20~50種の細菌が存在しています。最も割合が大きいのがレンサ球菌ですが、プレボテラ属やベイヨネラ属もいます。それ以外にも、さまざまな細菌や菌類、ウイルスや古細菌が存在しています。

口内マイクロバイオームはどのように発達するのですか?

妊娠中に、胎児は胎盤を通して母親の口内マイクロバイオームと接触し、耐性を発達させます。ほとんど無菌状態の胎児が生まれた後、すぐに細菌が定着を始めますが、特に母親の体の中にいる間に胎児が耐性をつけた細菌が増えていきます。面白いことに、人生の最初の出来事である誕生において、自然分娩か帝王切開かの違いが、母乳と人工乳の違いと同様に重要な変化をもたらします。この違いは、生まれてきた子供の人生に影響を及ぼします。一度定着した細菌や細菌群を再び定着させることは難しいのです。

口内マイクロバイオームのバランスが乱れるとどうなりますか?

虫歯、歯石、歯周炎などは、口内マイクロバイオームの乱れによって起こる最も典型的な病気です。実際、虫歯は人類で最も顕著にみられる病気の一つです。そして、多かれ少なかれ、虫歯は重大な結果をもたらします。穴の開いた歯は、あらゆる種類の細菌にとって入り口となり、治療しなければ二次的な病気がもたらされます。栄養不足や口内衛生が十分ない場合も、プラークと呼ばれるバイオフィルムの形成につながり、虫歯の原因となります。炭水化物、特に糖分を多く含んだ食品の過剰な摂取は、バイオフィルムが形成される最も典型的な原因です。口内pHが5.5以下になると、脱灰が起こり、硬組織が傷ついてしまいます。(>>>関連記事を読む(英語))

なぜ私たちの歯はこうも敏感なのですか?

人間の体の多くの部分にとって、「より少ないことはより多いこと」です。自然に近い環境で生きている人々は、マイクロバイオームのとても複雑なシステムは自然のまま手付かずである方が良いことを示してくれる良い例です。しかし、口内衛生が十分でない発展途上国のオーラルヘルスを比較すると、先進国よりもより多くの虫歯が認められています。しかも、21世紀の人類は3000年前の古代エジプト人と同じように虫歯の問題に直面しているのです。有名なアイスマンのミイラであるエッツィは現代人よりも良好な消化管マイクロバイオームを持っていましたが、虫歯には苦しんでいました(エッツィについては「エッツィ(アイスマン)のマイクロバイオームは現代人よりも健康」の記事をお読みください)。

一般的に、工業的に加工されていない天然の食物が歯をより磨くことは正しいです。ですが、現代人は調理された食物や炭水化物(これらは数千年前にようやく始まったものです)を食べているため、より虫歯が生じやすくなっており、口内衛生は不可欠です。ヒトのマイクロバイオームは調理などの現代の習慣に大してとてもゆっくりとしか適応していきません。

すぐに分かる正しいデンタルケアのやり方

したがって、正しいデンタルケアを身に付けることが大切です。口内マイクロバイオームは特別なケアを必要とします。それは私たちが子供のころから知っていること、つまり1日に二度は歯を磨き、できれば食後は毎回歯を磨くことです。歯磨き粉は歯を強化するためにフッ化物を含んでいるものを使いましょう。電動歯ブラシは通常の歯ブラシよりも効果的ですが、同時に強すぎる力で歯肉を痛めてしまうこともあります。その結果、歯頸が露出して痛みが生じ、虫歯が発生することもあります。歯磨きはしっかりと行う必要がありますが、同時にスムーズに行ってください。子供たちが知っているように、糖質は歯を傷つけます。ですが、果物やジュースの酸が歯のエナメル質をひどく傷つけることはあまり知られていません。果物を食べたりジュースを飲んだ後すぐに歯磨きを行うと、より歯を傷つけてしまいます。一時期、電動歯ブラシが流行しました。現在では、歯肉下の細菌が除去されるどころか増えることが分かっており、これらは使われないようになっています。歯磨きに加えて、日々のデンタルケアの中でデンタルフロスを使うことが推奨されます。

虫歯は見た目を悪くするものではありませんが、好ましくないものであることは明らかです。何よりも、虫歯は多くの二次的な病気をもたらす可能性があります。したがって、歯は社会的に良い外観を得るためだけでなく、健康全般のために根本的に重要なものなのです。

クリスティン・ノイマン博士, 著者
クリスティン・ノイマン博士
著者

みなさん、こんにちは。微生物学者のクリスティン・ノイマンです。生命の仕組みに興味があり、分子生物学を学びました。…

ファビアン・ガイヤー, 特別寄稿者
ファビアン・ガイヤー
特別寄稿者

ファビアン・ガイヤー氏から素晴らしい特別寄稿を頂きました。
ガイヤー氏はBIOMES社コミュニケーション・チームの一員です。BIOMES社はベルリンを拠点とするバイオ企業で、一般と専門家向けのマイクロバイオーム解析を専門としています。
ガイヤー氏は熟練の「翻訳者」として、人間と細菌の仲を取り持ちます。人間と細菌の関係は長年大きく誤解されていました。

リサ・カイルホーファー, 著者
リサ・カイルホーファー
著者

レーゲンスブルク大学で学びました。
多言語化業務に携わり、フリーランスの編集者としても活躍しています。

キャラ・コーラー
キャラ・コーラー
著者

シカゴのデポール大学とドイツのバンベルク大学で学位を取得し、現在博士号取得候補者となっています。
また、フリーランスの独英翻訳者、英独コピーエディターとしても活躍しています。

インゲ・リンドセット
インゲ・リンドセット
登録栄養士

オスロ大学のインゲ・リンドセットは登録栄養士で、専門分野は糖尿病と肥満、運動療法です。エクササイズの効果を最大限に高めたり、スポーツで最高のパフォーマンスを上げるための研究を行っています。
インゲ・リンドセットについて(ノルウェー語)

マリア・ペトロヴァ博士
マリア・ペトロヴァ博士
寄稿著者

マリア博士はヒトマイクロバイオームの分野で世界的に著名な研究者です。泌尿生殖器の細菌叢とプロバイオティクスを研究しています。ベルギーのルーベン・カトリック大学とアントワープ大学で乳酸桿菌と病原菌・ウイルスの分子相互作用を研究し、博士号を取得しました。博士の大きな業績は、ポスドクフェローのときに行った乳酸桿菌の遺伝的、分子的、機能的特性の研究です。この研究によって、膣内環境下での乳酸桿菌の働きについて素晴らしい知見を得ました。
マリア・ペトロヴァ博士について(英語)

ヨハンナ・ギルブロ博士
ヨハンナ・ギルブロ博士
寄稿著者

ヨハンナ・ギルブロ博士は受賞歴のある皮ふの専門家で、ベストセラーとなった『Skin We’re In』の著者です。
博士は実験皮ふ病学、臨床研究、そしてスキンケア製品開発の分野で15年以上の経験を持っています。また、製薬企業での長い経験を持っています。皮ふ科とコスメティクスの国際会議では、最先端の研究について頻繁に講演を行っています。また、「International Journal of Cosmetic Science」誌で過去10年の間に最も多く引用された研究者でもあります。博士はアンチエイジング成分で複数の特許を取得しており、スキンケア企業でアンチエイジング治療の研究・開発マネージャーを務めています。ギルブロ博士がスキンケア分野のエキスパートであることは言うまでもありません。『Skin We’re In』の執筆が示すように、現在は私たちのような一般人に知識を伝えることを使命としています。
2019年4月の出版の以来、『Skin We’re In』は主要な販売店でベストセラーとなっています。現在、スウェーデン語版のみが刊行されています。
https://www.skinomeproject.com

ディミトリ・アレクセーエフ博士
ディミトリ・アレクセーエフ博士
寄稿著者

ディミトリ・アレクセーエフ博士は消化管マイクロバイオーム、分子生物学、バイオインフォティクス、栄養学分野の優れた研究者です。基礎研究の臨床への応用に情熱的に取り組んでいます。Atlas Biomedグループでの主な役割は、社内外の科学プロジェクトを発展させることです。博士が携わっているプロジェクトは、栄養や神経変性疾患、炎症やがんに対するマイクロバイオームの応用、英国医薬品・医療製品規制庁の承認など多岐にわたります。Atlas Biomedグループでの統合的な役割に加え、ディミトリ博士は現在サンクトペテルブルクITMO大学で助教授を務め、健康のためのアルゴリズム開発を行っています。今後、博士はオランダのフローニンゲン大学医療センター(UMCG)に移り、老化研究に携わることになっています。
ディミトリ博士について(英語)

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