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2020-06-11 13:57
by dn
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細菌性膣炎の効果的な治療法

女性にとって共通の敵である細菌性膣炎
女性にとって共通の敵である細菌性膣炎(画像: © Maksymiv Iurii – stock.adobe.com)

女性にとっての共通の敵―細菌性膣炎

多くの女性が再発性の細菌性膣炎に苦しんでいます。この病気は、膣内の細菌の構成がバランスを崩し、病原菌の繁殖に有利な状態になることで起こります。自然な状態では、出産に適した年齢の女性の膣内では、さまざまな種の乳酸桿菌(例えば、ラクトバチルス・クリスパタス)が最も見られます。膣内の自然な細菌の構成にとって好ましくない影響を受けると、健康な膣フローラが変化し、さまざまな症状(おりもの、悪臭、炎症)を引き起こす細菌増殖し、深刻な結果をもたらす可能性があります。 深刻な結果とは、早産(英語)や流産、HIVウイルス感染のリスク増加(英語)などです。 pHを低く保つことで膣内を守る働きをしている乳酸桿菌は、細菌性膣炎が起こると急速に数が減ってしまいます。その一方で、 ガードネレラ・バジナリスや他の嫌気性細菌などの好ましくない細菌が急速に増加するのです。

細菌性膣炎の原因はさまざまで、元々の体質や衛生用品の過剰な使用、抗生物質、銅付加子宮内避妊具やストレスなどがあります。膣フローラがすでに病的な状態になっていれば、性行為で病気になるリスクも上昇します。


膣フローラ
膣フローラ-清潔さとにおいのレベル(画像: © Artemida-psy – stock.adobe.com)(Picture: © Artemida-psy – stock.adobe.com)

最初に必要なのは診断です

治療を始める前に、カンジダ症(酵母菌の定着によって起こります)やトリコモナス膣炎の感染の可能性を排除するために、まずは正確な診断を行うことが重要です。従来の伝統的な医学では、メトロニダゾールやクリンダマイシンなどの抗生物質を用いた治療を行います。副作用が起こる可能性は別としても、細菌性膣炎の1年以内の再発率が50%と高いことを考えるなら、抗生物質を用いた治療の70%から80%では効果が期待したほどのものでないことは強調するべきです。細菌性膣炎の再発率(英語)が非常に高いにも関わらず、抗生物質による治療は未だに行われ続けているのです。

再発を防止するための生物学的製剤

この現状を改善するために、科学者たちは何年もの間研究を続け、抗生物質による治療後の乳酸桿菌の予防的投与によって、高い再発率を下げられるかどうか調査を行いました。

フェーズIIの二重盲検無作為化プラセボ対照試験(英語)が2016年から2019年にかけて行われ、非常に大きな成功を収めました。試験結果は2020年5月発行の「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」誌で報告されています。この臨床試験は、クレイグ・R・コーエン博士らの主導の元に、アメリカの企業Osel Inc社の生物学的製剤Lactin-V (ラクトバチルス・クリスパタスCTV-05)を試験したものです。Lactin-Vは粉末状の薬剤で、塗布器具を用いて直接膣内に投与します。ラクトバチルス・クリスパタスは健康な膣フローラで最も多く見られる乳酸桿菌の一種です。この乳酸桿菌は乳酸と過酸化水素を産生し、細菌性膣炎の原因となる病原菌の成長を抑えてくれます。

生物学的製剤Lactin-Vの試験内容

臨床試験では細菌性膣炎と診断され、メトロニダゾールゲルで治療を受けた18歳から45歳までの女性228例が参加しました。参加者の3分の2がLactin-V群、3分の1がプラセボ群に分けられました。Lactin-Vによる治療はメトロニダゾールの最後の投与から48時間後に開始し、11週間継続されました(最初の週の5日間はクリニックで投与を行い、残りの10週間は週のうち2日のみクリニックで投与を行いました)。臨床試験開始から4、8、12、24週間後に、ラクトバチルス・クリスパタス CTV-05の定着率を評価しました。また、試験参加者は生理や性行為などの試験結果に影響を及ぼし得る要因を記録しました。

臨床試験の結果は素晴らしいものでした

  • 試験開始から12週間が経過するまでに、Lactin-V群の女性の30%が細菌性膣炎を再発しました。比較対照のプラセボ群では45%が再発しています。論文著者とアメリカ国立衛生研究所(NIH)の両方がこの効果は顕著であると評価しています。
  • 試験開始から最初の12週間の間に細菌性膣炎を再発しなかった女性では、Lactin-V群では24週間以内に12%(106例中13例)のみ再発した一方、プラセボ群では17%(42例中7例)が再発しました。Lactin-Vの治療期間後に良い効果が見られたのは明確です。
  • ラクトバチルス・クリスパタス CTV-05の膣内への定着率に関して、Lactin-V群では12週間後におよそ80%、24週間後におよそ50%となっていました。

Lactin-Vの投与による安全性のリスクは認められませんでした。

生物学的製剤Lactin-VはフェーズIII試験へ

Lactin-Vが一般に使われるようになるまでには、さらにフェーズIII試験の実施が必要となります。ですが、フェーズII試験の結果は、Lactin-Vが再発予防の治療のためだけでなく、膣マイクロバイオームの全般的な強化にも役立つという希望を与えてくれます。さらに、抗生物質の乱用を減らすためのきっかけとなる可能性もあるのです。

クリスティン・ノイマン博士, 著者
クリスティン・ノイマン博士
著者

みなさん、こんにちは。微生物学者のクリスティン・ノイマンです。生命の仕組みに興味があり、分子生物学を学びました。…

ファビアン・ガイヤー, 特別寄稿者
ファビアン・ガイヤー
特別寄稿者

ファビアン・ガイヤー氏から素晴らしい特別寄稿を頂きました。
ガイヤー氏はBIOMES社コミュニケーション・チームの一員です。BIOMES社はベルリンを拠点とするバイオ企業で、一般と専門家向けのマイクロバイオーム解析を専門としています。
ガイヤー氏は熟練の「翻訳者」として、人間と細菌の仲を取り持ちます。人間と細菌の関係は長年大きく誤解されていました。

リサ・カイルホーファー, 著者
リサ・カイルホーファー
著者

レーゲンスブルク大学で学びました。
多言語化業務に携わり、フリーランスの編集者としても活躍しています。

キャラ・コーラー
キャラ・コーラー
著者

シカゴのデポール大学とドイツのバンベルク大学で学位を取得し、現在博士号取得候補者となっています。
また、フリーランスの独英翻訳者、英独コピーエディターとしても活躍しています。

インゲ・リンドセット
インゲ・リンドセット
登録栄養士

オスロ大学のインゲ・リンドセットは登録栄養士で、専門分野は糖尿病と肥満、運動療法です。エクササイズの効果を最大限に高めたり、スポーツで最高のパフォーマンスを上げるための研究を行っています。
インゲ・リンドセットについて(ノルウェー語)

マリア・ペトロヴァ博士
マリア・ペトロヴァ博士
寄稿著者

マリア博士はヒトマイクロバイオームの分野で世界的に著名な研究者です。泌尿生殖器の細菌叢とプロバイオティクスを研究しています。ベルギーのルーベン・カトリック大学とアントワープ大学で乳酸桿菌と病原菌・ウイルスの分子相互作用を研究し、博士号を取得しました。博士の大きな業績は、ポスドクフェローのときに行った乳酸桿菌の遺伝的、分子的、機能的特性の研究です。この研究によって、膣内環境下での乳酸桿菌の働きについて素晴らしい知見を得ました。
マリア・ペトロヴァ博士について(英語)

ヨハンナ・ギルブロ博士
ヨハンナ・ギルブロ博士
寄稿著者

ヨハンナ・ギルブロ博士は受賞歴のある皮ふの専門家で、ベストセラーとなった『Skin We’re In』の著者です。
博士は実験皮ふ病学、臨床研究、そしてスキンケア製品開発の分野で15年以上の経験を持っています。また、製薬企業での長い経験を持っています。皮ふ科とコスメティクスの国際会議では、最先端の研究について頻繁に講演を行っています。また、「International Journal of Cosmetic Science」誌で過去10年の間に最も多く引用された研究者でもあります。博士はアンチエイジング成分で複数の特許を取得しており、スキンケア企業でアンチエイジング治療の研究・開発マネージャーを務めています。ギルブロ博士がスキンケア分野のエキスパートであることは言うまでもありません。『Skin We’re In』の執筆が示すように、現在は私たちのような一般人に知識を伝えることを使命としています。
2019年4月の出版の以来、『Skin We’re In』は主要な販売店でベストセラーとなっています。現在、スウェーデン語版のみが刊行されています。
https://www.skinomeproject.com

ディミトリ・アレクセーエフ博士
ディミトリ・アレクセーエフ博士
寄稿著者

ディミトリ・アレクセーエフ博士は消化管マイクロバイオーム、分子生物学、バイオインフォティクス、栄養学分野の優れた研究者です。基礎研究の臨床への応用に情熱的に取り組んでいます。Atlas Biomedグループでの主な役割は、社内外の科学プロジェクトを発展させることです。博士が携わっているプロジェクトは、栄養や神経変性疾患、炎症やがんに対するマイクロバイオームの応用、英国医薬品・医療製品規制庁の承認など多岐にわたります。Atlas Biomedグループでの統合的な役割に加え、ディミトリ博士は現在サンクトペテルブルクITMO大学で助教授を務め、健康のためのアルゴリズム開発を行っています。今後、博士はオランダのフローニンゲン大学医療センター(UMCG)に移り、老化研究に携わることになっています。
ディミトリ博士について(英語)

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