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2022年05月10日

消化管と腸内細菌は新しく知られるようになったスターです

消化管と腸内細菌は新しく知られるようになったスターです

Our gut
人間の消化管が大切な役割を担っていることが一般にも認知されてきています。消化管は「人体の第二の司令塔」と呼ばれることさえあります(画像: ©ryanking999 – stock.adobe.com)

書店に行ったら、何が最新のトレンドなのか確認してみてください(ただし、新型コロナウイルス以外のテーマです)。私たちは喜んで、消化管マイクロバイオームが話題のトレンドになっていると言えます!ドイツの雑誌の「GEO」誌と GEOコンパクト誌 (GEO誌2020年6月号GEOコンパクト誌59号(ドイツ語)) は、消化管マイクロバイオームをそれぞれ表紙のカバーとしました。以前は科学的根拠が弱いと言われていたものが、現在ではとても重要なテーマであることが分かり、大きな注目を集めています。GEO誌は科学的な内容の記事を重視し、主要な雑誌の中でリーダーシップを発揮しています。そのため、ドイツで数ある雑誌の中でも象徴的な存在となっています。GEOとGEOコンパクトは人々の自宅のリビングルームに何冊も置かれています。読者の方は、時には10年前の話題が何だったのか調べるために、過去の雑誌を適当に選んでページをパラパラとめくることもあります。または、過去10年の間にすっかり常識となり、誰も疑いをはさまなくなったテーマを確認することもあります。消化管マイクロバイオームに関してもそうなることを祈っています。

消化管マイクロバイオームは決して新しく出てきたテーマではありません

厳密に言えば、消化管マイクロバイオームは新しく出てきた内容ではありません。ディック・ハラー博士は20年前のインタビュー記事の中で、早くも消化管マイクロバイオームについて論じています。ですが、消化管マイクロバイオームの話題は蔑ろにされたり、時には気味の悪い話だと思われることもありました。現在でも例えば、「糞便移植」による治療は多くの人にとっては恐ろしいもので、一般的な治療ではありません。ですが、糞便移植も少しずつ受け入れられ始めています。

実際、人間の消化管が大切な役割を担っていることが一般に認知されてきています。消化管は「人体の第二の司令塔」と呼ばれることさえあります(第一の司令塔は脳です)。食べ物の消化機能以外にも、消化管は免疫器官でもあり、数兆の微生物が住み、絶えず脳と相互作用しています。これらの一般的に認められた消化管の働きを、私たちは昔から直感的に知っていました。このことは「腸感覚」という言葉からも分かります。アジアの言語や文化では消化管を体の中心であり、生命の入り口だと捉えています。

消化管マイクロバイオームについては次の記事をお読みください。

>>> 青春の泉の発見–それはあなたの消化管マイクロバイオームにあります

>>> 知性を持つ胃―人間の第二の脳

ぜひ読んでおきたい、人間の内なる価値に関する記事

GEO誌やGEOコンパクト誌の記事のすべてをここで紹介することはできませんが、いずれの記事は要約だけを読むにはもったいないほど素晴らしいものです。ほとんどの方は、口から胃や腸などの消化管まででどのように消化が行われるのか、また消化器系がどのように病原菌を選別し排除するのかについて、なんとなくのイメージを持っています。重要な点は、西洋医学が脳を人体で唯一の司令塔と考え、様々な治療で消化管を無視していたことです。脳と消化管は迷走神経によって直接繋がっています。迷走神経はとても重要な役割を担っています。消化管からの情報は、感情と精神構造を司る脳に転送されます。

そう、消化管は脳とコミュニケーションを取っているのです。脳が高度なストレスにさらされると、腸は自らの機能を低下させてエネルギーを節約し、脳にエネルギーを供給するのです。ストレスと過敏性腸症候群などの疾患との相互関係、腸疾患と抑うつとの相互作用は、人体の中でもいちばん多く働いている二つの器官の強い関係を示唆しています。GEO誌の記事では、脳が腸から集めた情報を元につくる「データベース」について論じています。人間の体が新しい状況を経験する度に、データベースに保存された経験済みの出来事が参照として確認されます。そして、実際に脳が対応を計算し始める前に、データに基づいて傾向が判断され、脳が一定の決定を行うように促されるのです。これはとても納得できる話です。私たちが時に「腸の決定」は次善のものに過ぎないと考えてしまうのは、素晴らしい腸の働きを理解していないからです。実際、過去の経験に基づいた腸の決定は、「もう一つの」脳の決定と同じくらい有効なものなのです。

永遠に続く病原菌との闘い

GEO誌の他の記事では人間の免疫系について論じています。病原菌は「絶えず」人間の体に侵入し続けており、よく調整された免疫系が感染を防ぐために常に必要とされています。この記事で確かなことは、著者のマリア・キラディ氏が記事の内容で新型コロナウイルスのことを想起させないように、最大限自らを律していることです(彼女は特定の細菌感染症について論じるときもこの態度を崩していません)。

キラディ氏の記事は、次の1000年期で起こりえる生物化学兵器を使った戦争のシナリオを連想させます。戦いは人間の体の中で毎秒事に進行しています。人体は数千年もの間微生物が戦ってきた舞台です。微生物は自らが生息するための空間である人間の体のために戦っていますが、私たち人間はそのことについて何も知らないか、少ししか知らないのです。いずれにしても、できるだけ免疫系を支えることは良い考えです。

マイクロバイオームの科学の知識から何かオススメできることはありますか?

読者の方はこのような質問に対して、具体的な回答が欲しいと思います。ですが、ほとんどのマイクロバイオーム研究はマウスを用いた実験室での研究です。真剣に研究に取り込む科学者であるハラー博士や博士の同僚は、「単純な答え」を提示することは好みません。おそらく、人間がピルを一粒飲めばあらゆる病気を治してくれるようなスーパー細菌は存在しません。ハラー博士は「昔ながらの病気予防の基本」を守るようにアドバイスしています。例えば、食事であれば、多くの果物と野菜、全粒穀物や乳製品、そして少量の肉という食生活を始めることです。また、自分の体に関して、次のように考えて行動すれば上手くいくはずです。つまり、人間の体とは、微生物が密集して住んでいる複雑な生態系であり、病気と闘い、精神状態を良好に保つことで私たちを守ってくれる豊かな生物多様性を持った存在だという考えです。

マイクロバイオームと栄養の関係については次の記事もお読みください。

>>> マイクロバイオームに良い食事と科学的根拠

>>> 健康的なマイクロバイオームを育むのに良い食べ物

著者のカタリナ・フォン・ルスコワスキは以下のことを強調しています。消化管は人間の気分を変化させるだけでなく、気分そのものが生み出される基礎的な環境を作り出します。この一文は、10年後に再び雑誌を読むときのために、ペンで線を引いて強調しておきたい部分です。未来に読み直したとき、「10年前の記事なのに、今でも全く古くない内容だ」と思うはずです。逆に、次のようにも思うかもしれません。「10年前に消化管マイクロバイオームのことを知っていたのに、いまだに適切な行動を取れていない…」。どちらを思うかは私たち次第です。

2022年05月09日

頭皮ケア製品のためのMyMicrobiome Standard 19.10認証テスト

マイクロバイオーム・フレンドリーな世界のために!

化粧品開発の分野では、頭皮のケアは重要な問題です。頭皮が傷つくとふけが生じ、見た目が損なわれたり、男女に関わらず不衛生な印象を与えます。肩や衣服に付着した不快なふけを取り除くための製品は、未だに数多くあります。ですが、私たちのマイクロバイオーム・フレンドリー認証テストに合格した製品は、頭皮のマイクロバイオームのバランスを整え、ふけの問題を解決することを約束します。それは、ふけが発生する主原因がマイクロバイオームの乱れだからです。

健康な頭皮のために!

頭皮でよく見られる細菌と菌類

健康な頭皮のマイクロバイオームでは、数種類の細菌と菌類がよく見られます

Healthy scalp microbiome
細菌に優しい環境の基本的な前提条件は、頭皮の皮脂、pH、水分量、そして蒸発量が適切な関係になっていることです(画像 © kei907 – stock.adobe.com)

プロピオニバクテリウム属アクネ菌は頭皮の健康を測る重要な指標となる細菌です。頭皮では通常、表皮ブドウ球菌がふけの増加に関わっています(参考論文(英語):Saxena et. al)。また、マラセチア菌も頭皮の健康に重要な細菌です。バランスの良いマイクロバイオームでは、M. restrictaやM. globosaが見られますが、傷ついた頭皮のマイクロバイオームでは未だに種類が特定されていないマラセチア菌の増加が観察されます。

頭皮のマイクロバイオームの細菌は、アミノ酸やビタミンB、ビオチンなどの毛髪の成長に重要な物質の代謝を担っています。これらの細菌に優しい環境の基本的な前提条件は、頭皮の皮脂、pH、水分量、そして蒸発量が適切な関係になっていることです。

これまで、ふけの対策は、菌類が過剰な増加の予防に限られていました。ですが、現在の最新の研究では、健全な頭皮のマイクロバイオームは、バランスの良く整った細菌環境に強く依存していることが示されています。したがって、マイクロバイオーム・フレンドリーな環境を整えることが、頭皮ケアの目標となるべきなのです。


マイクロバイオーム・フレンドリー認証シールは信頼の証です。私たちの認証テストは最新の科学的知見に基づいています。

2022年05月08日

細菌性膣炎の効果的な治療法

細菌性膣炎の効果的な治療法

女性にとって共通の敵である細菌性膣炎
女性にとって共通の敵である細菌性膣炎(画像: © Maksymiv Iurii – stock.adobe.com)

女性にとっての共通の敵―細菌性膣炎

多くの女性が再発性の細菌性膣炎に苦しんでいます。この病気は、膣内の細菌の構成がバランスを崩し、病原菌の繁殖に有利な状態になることで起こります。自然な状態では、出産に適した年齢の女性の膣内では、さまざまな種の乳酸桿菌(例えば、ラクトバチルス・クリスパタス)が最も見られます。膣内の自然な細菌の構成にとって好ましくない影響を受けると、健康な膣フローラが変化し、さまざまな症状(おりもの、悪臭、炎症)を引き起こす細菌増殖し、深刻な結果をもたらす可能性があります。 深刻な結果とは、早産(英語)や流産、HIVウイルス感染のリスク増加(英語)などです。 pHを低く保つことで膣内を守る働きをしている乳酸桿菌は、細菌性膣炎が起こると急速に数が減ってしまいます。その一方で、 ガードネレラ・バジナリスや他の嫌気性細菌などの好ましくない細菌が急速に増加するのです。

細菌性膣炎の原因はさまざまで、元々の体質や衛生用品の過剰な使用、抗生物質、銅付加子宮内避妊具やストレスなどがあります。膣フローラがすでに病的な状態になっていれば、性行為で病気になるリスクも上昇します。


膣フローラ
膣フローラ-清潔さとにおいのレベル(画像: © Artemida-psy – stock.adobe.com)(Picture: © Artemida-psy – stock.adobe.com)

最初に必要なのは診断です

治療を始める前に、カンジダ症(酵母菌の定着によって起こります)やトリコモナス膣炎の感染の可能性を排除するために、まずは正確な診断を行うことが重要です。従来の伝統的な医学では、メトロニダゾールやクリンダマイシンなどの抗生物質を用いた治療を行います。副作用が起こる可能性は別としても、細菌性膣炎の1年以内の再発率が50%と高いことを考えるなら、抗生物質を用いた治療の70%から80%では効果が期待したほどのものでないことは強調するべきです。細菌性膣炎の再発率(英語)が非常に高いにも関わらず、抗生物質による治療は未だに行われ続けているのです。

再発を防止するための生物学的製剤

この現状を改善するために、科学者たちは何年もの間研究を続け、抗生物質による治療後の乳酸桿菌の予防的投与によって、高い再発率を下げられるかどうか調査を行いました。

フェーズIIの二重盲検無作為化プラセボ対照試験(英語)が2016年から2019年にかけて行われ、非常に大きな成功を収めました。試験結果は2020年5月発行の「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」誌で報告されています。この臨床試験は、クレイグ・R・コーエン博士らの主導の元に、アメリカの企業Osel Inc社の生物学的製剤Lactin-V (ラクトバチルス・クリスパタスCTV-05)を試験したものです。Lactin-Vは粉末状の薬剤で、塗布器具を用いて直接膣内に投与します。ラクトバチルス・クリスパタスは健康な膣フローラで最も多く見られる乳酸桿菌の一種です。この乳酸桿菌は乳酸と過酸化水素を産生し、細菌性膣炎の原因となる病原菌の成長を抑えてくれます。

生物学的製剤Lactin-Vの試験内容

臨床試験では細菌性膣炎と診断され、メトロニダゾールゲルで治療を受けた18歳から45歳までの女性228例が参加しました。参加者の3分の2がLactin-V群、3分の1がプラセボ群に分けられました。Lactin-Vによる治療はメトロニダゾールの最後の投与から48時間後に開始し、11週間継続されました(最初の週の5日間はクリニックで投与を行い、残りの10週間は週のうち2日のみクリニックで投与を行いました)。臨床試験開始から4、8、12、24週間後に、ラクトバチルス・クリスパタス CTV-05の定着率を評価しました。また、試験参加者は生理や性行為などの試験結果に影響を及ぼし得る要因を記録しました。

臨床試験の結果は素晴らしいものでした

  • 試験開始から12週間が経過するまでに、Lactin-V群の女性の30%が細菌性膣炎を再発しました。比較対照のプラセボ群では45%が再発しています。論文著者とアメリカ国立衛生研究所(NIH)の両方がこの効果は顕著であると評価しています。
  • 試験開始から最初の12週間の間に細菌性膣炎を再発しなかった女性では、Lactin-V群では24週間以内に12%(106例中13例)のみ再発した一方、プラセボ群では17%(42例中7例)が再発しました。Lactin-Vの治療期間後に良い効果が見られたのは明確です。
  • ラクトバチルス・クリスパタス CTV-05の膣内への定着率に関して、Lactin-V群では12週間後におよそ80%、24週間後におよそ50%となっていました。

Lactin-Vの投与による安全性のリスクは認められませんでした。

生物学的製剤Lactin-VはフェーズIII試験へ

Lactin-Vが一般に使われるようになるまでには、さらにフェーズIII試験の実施が必要となります。ですが、フェーズII試験の結果は、Lactin-Vが再発予防の治療のためだけでなく、膣マイクロバイオームの全般的な強化にも役立つという希望を与えてくれます。さらに、抗生物質の乱用を減らすためのきっかけとなる可能性もあるのです。

2022年05月07日

動物飼料には未だに多くの抗生物質が使われています

動物飼料には未だに多くの抗生物質が使われています

予測される危険の半分は回避可能?
予測される危険の半分は回避可能? (画像: © Bits and Splits – stock.adobe.com)

2018年11月、Bayerische Rundfunkという雑誌で、動物飼料における抗生物質使用の問題が取り上げられました。特に、「最後の手段」と言われる抗生物質の使用が非常に大きな問題とされています。最後の手段となる抗生物質は、医療分野では使用が厳重に制限されています。薬剤耐性菌の発達を防ぎ、最後の手段となる抗生物質を文字通り、生命に関わる症例のために最後の手段として維持できるよう努力が払われています。食品生産、特に食肉生産で最後の手段となる抗生物質を使うことは、医療分野での努力を台無しにするものであり、薬剤耐性菌を生み出し、緊急時の抗生物質を無効なものにしてしまいます(この問題については、「最後の手段となる抗生物質の、畜産物への使用を厳しく規制する必要性」の記事もご覧ください)。

予測される危険の半分は回避可能?

過去の記事ではEUがこの問題を認識し、法律の整備を進めているという状況について述べて締め括りました。この記事は2018年11月に公開しているので、すでに1年以上が経過していることになります。残念ながら、人々は問題をそのままにする傾向があります。「問題があることは分かった。誰かがすぐに解決してくれるだろう」というわけです。最近公開されたSüddeutsche Zeitung紙の記事(ドイツ語)は、再び食肉生産における抗生物質使用の問題を取り上げました。

食肉業での抗生物質使用の問題を取り上げてからどんな動きがあったのでしょうか?

記事の中で、ドイツの連邦参議院に提案された立法案について紹介されていることが印象的です。問題の存在について認識し、対応し始めてから1年以上経過しても、何の成果も得られなかったのです。確かに、現在、法改正の提案が議論されています。消費者保護団体であるジャーマン・ウォッチはこの状況を批判的に見ており、緑の党に働きかけました。記事は緑の党フリードリヒ・オステンドルフ氏 の「単純に言って、法改正の提案は薬剤耐性菌の発生を効果的に防ぐには適していない」という言葉を引用しています。

また、食料・農業大臣は、法案に直接的な効果はないものの、家畜所有者の書類様式をより簡便にできると述べています。要は、最後の手段となる抗生物質の使用を減らす手段は「第二段階」でようやく計画されているのです。2018年に発表されたEU法では、2022年までに最終的な解決を期待するとしており、ドイツはそれまで待たなければいけません。

消費者はどうすべきなのでしょうか?

この失望させるような動きから、二つの結論を導き出せます。一つ目は、1年以上の間、最後の手段となる抗生物質を使うことの問題を認識しておきながら、これまでと同じように抗生物質が使い続けられ、ようやく行われた法律の提案は、抗生物質の使用を規制するための予備的な段階でしかなかったということです。実効性のある法律が最終的に制定されるかどうか、制定されるとしたらいつなのかは、現時点では仮定の話でしかないのです。消費者の方は、問題の存在が認識されているのだから、有効な解決策がすぐに取られるだろうとは信じない方が良いでしょう。消費者である私たちは、対策が遅れていることをしっかり認識し、問題に対して迅速な対応が取られるとは思わない方が良いです。

二つ目の結論はもっと重要です。これは最初の記事で述べたのと同じ結論になります。私たちは法律による規制を信用することはできず、したがって他の手段、消費者自身の行動によって変化を求めなければいけないということです。安価な食肉をこれ以上求めないのであれば、私たちの提案は短期間で実現されます。私たちは消費者の方々に協力を求めたいと思います。食用肉を割引で買う事を求めるのではなく、地元の生産者や肉屋さんから品質の良い肉を買うようにしてください。そうすれば、私たちの健康に良いだけではなく、地元の食肉業の方々の仕事に感謝を示すこともできます。このような選択を行うことで、複雑な法律よりももっと大きなプレッシャーを食肉製造業者に与えることができます。

2022年05月06日

マイクロバイオーム・フレンドリーと認められた初めての化粧品原料: TILAMAR® Boost 150

マイクロバイオーム・フレンドリーと認められた初めての化粧品原料: TILAMAR® Boost 150

マイクロバイオーム・フレンドリーと認証されたDSM
DSMがマイクロバイオーム・フレンドリーと認証され、化粧品業界を驚かせました

今回、とても嬉しいニュースをご報告できます。私たちは TILAMAR® Boost 150の化粧品原料をマイクロバイオーム・フレンドリーと認証しました。

TILAMAR® Boost 150は高分子化合物で、髪の毛にボリュームを出すための成分です。まずアジア人と欧米人の髪の毛でテストが行われ、使用直後は毛髪が200%ボリュームアップし、使用から24時間後も50%のボリュームアップを維持していました。このボリュームアップ率は多くの消費者がヘアケア製品に求めているものです。そのため、髪の毛のボリュームを増やす原料は、ヘアケア製品に使われる成分の中では最も多く試験が行われています。

DSMがマイクロバイオーム・フレンドリーと認証されたことは化粧品業界を驚かせました

人々がこのニュースに関心をもったのはなぜでしょうか?オランダの化学企業であるDSMは、マイクロバイオーム・フレンドリーに関する取り組みで先頭を走っています。これまで、マイクロバイオーム・フレンドリー認証テストを受けて合格したは、化粧品企業や製薬企業でした。企業にとって、マイクロバイオーム・フレンドリーな製品の開発は時間とコストの負担が大きいものです。製品を発表・販売する直前に、製品に含まれる成分のひとつでもマイクロバイオーム・フレンドリーでないことが分かると(開発では、研究室で何か月も成分の研究が行われます)、認証テストには通らないからです。そして、こういうことは少なからず起こっています。

クリスティン・ノイマン博士は次のように述べています。

実際、企業の開発した製品が一回目のマイクロバイオーム・フレンドリー認証テストに合格しないことは多く、その場合は原料の化合物を調整する必要があります。

もちろん、このことは開発した企業にとっては悩みの種となります。開発した製品が再び認証テストを受けなければいけないだけでなく、発表や販売開始もスケジュール調整が必要になるからです。予定していたマーケティングの準備から、研究室での開発に戻らないといけなくなり、資金と時間がさらに必要になります。

多くの企業は、自社の製品がマイクロバイオーム・フレンドリーであることは消費者に恩恵をもたらすものの、より多くの資金と時間が必要になることを知っているため、必要悪としてとらえています。しかし、この手間は正当化されるべきものです。認証テストの結果はもちろん企業にフィードバックされています。DSMはマイクロバイオーム・フレンドリーに関する問題を認識し、消費者のために解決を約束した初めての企業です。TILAMAR® Boost 150は、化粧品の製造業者にとって、消費者の期待に応えるハイエンドな化粧品原料というだけではありません。すでにマイクロバイオーム・フレンドリーの基準を満たしている化粧品原料なのです。

DSMにとっては小さな一歩ですが、マイクロバイオーム・フレンドリーな世界にとっては大きな一歩です

DSMの開発した化粧品原料はアジアの市場でよく使われている、単なるヘアケア製品のための原料ではありません。マイクロバイオーム・フレンドリーと認証されたことで、DSMは業界に大きなインパクトを与えました。 現在、化粧品業界の抱えている問題は、利用している化粧品原料が消費者が長期的に利用した場合に与える大きな影響を考慮することなく、マーケットでの短期的なインパクトを目的に開発されていることです。 今、私たちは方向転換の場面にいます。マイクロバイオーム・フレンドリーと認証されたことで、DSMは競合他社に対して大きなアドバンテージとなるセーリングポイントを得ました。

DSMのマイクロバイオーム・プロジェクトマネージャー、アリーネ・フーバー氏は次のように述べています。

DSMの化粧品ビジネスは皮ふ科学、特にマイクロバイオームの関わる皮ふバリアの領域に関して、リーダー的な地位を占める企業と認められました。EPIBIOME BEAUTY™ (EPIDERMAL MICROBIOME)は皮ふの健康とマイクロバイオームの相互作用を維持、強化、そして回復させるDSMのアプローチです。皮ふの細菌叢と皮ふバリアは良くも悪くも相互作用し合い、健康で美しい皮ふをつくりだすこともあれば、敏感肌や乾燥肌を引き起こすこともあります。頭皮についても同様です。頭皮の細菌叢のバランスの乱れ(ディスバイオーシスと呼ばれます)と、ふけや脂漏性湿疹、かゆみなどの頭皮の問題との関連については、日々エビデンスが積み重ねられています。だからこそ、美容で優れたパフォーマンスを示すだけでなく、皮ふや頭皮のマイクロバイオームにとって良い化粧品をつくるための原料を開発することが重要なのです。

もちろん、競合他社は遅かれ早かれDSMに追いついてくるでしょう。ですが、そのためにはより優れた化粧品原料を開発しなければいけません。

今後、どのような素晴らしいスキンケア製品が開発され、マイクロバイオーム・フレンドリーな世界を実現するための大きな一歩が踏み出されるのか、とても楽しみです。

DSMの化粧品原料の試験結果についてはこちらをご覧ください:TILAMAR® Boost 150 マイクロバイオーム・フレンドリー認証テスト結果

2022年05月05日

Codex Beautyが公式にマイクロバイオームフレンドリーと認定されました

Codex Beautyが公式にマイクロバイオームフレンドリーと認定されました

Codex Beauty Biaシリーズ

Codex Beautyの製品がマイクロバイオーム・フレンドリー認証テストに合格したことを嬉しく思います。Codex Beautyにはマイクロバイオーム・フレンドリー認証シールが付けられます。この製品は厳選した原材料を用い、包装は持続可能性に配慮しています。また、植物成分由来の保存料を使い、高度に環境に配慮しています。Codex Beautyの設定した目標は、本当に高いレベルを目指すものです。マーケティングだけを目的とした流行に便乗した批判ではなく、社会的に意味のある目標なのです。

製品開発の背景

バーバラ・パルドス博士
Codex Beautyの創設者バーバラ・パルドス博士

Codex Beautyを創設したのはバーバラ・パルドス博士です。博士のことを知れば、なぜ彼女の開発した製品がマイクロバイオーム・フレンドリーの条件を全て満たしたのか分かるはずです。パルドス博士は才気に溢れ、チャレンジ精神旺盛で、共感性の強い女性です。Codex Beautyについて紹介する前に、その製品が開発された背景について説明したいと思います。学者の一家に生まれたパルドス博士は、好奇心旺盛で忍耐強く、完璧主義的な女性に成長しました。彼女の母親は医師で、父親はカナダのウォータールー大学の数学と化学の名誉教授です。彼女の両親は娘がピアニストになるのを楽しみにしていましたが、パルドス博士はスタンフォード大学で電気工学の博士号を取得し、カナダのウォータールー大学で数学と電気工学の二つを専攻しました。ウォータールー大学は彼女の父親がかつて教えていた大学です。大学教育を終えた後、彼女は生物工学の分野でキャリアを歩み始めました。

製品そのものだけではなく、製品に関連すること全てが大切なのです

パルドス博士は生物工学者としてどのように化粧品産業に関わることになったのでしょうか?小さなきっかけが大きな開発につながることはよくあることです。パルドス博士の場合、彼女の息子(今では11歳になっています)が既存の製品に対して肌が過敏に反応していたため、ベイビークリームの研究を始めたことがきっかけでした。ビジネス旅行を数多く行う中で、パルドス博士は数多くの製品を試しに購入しましたが、満足いくものは一つもありませんでした。そんな中、彼女はアイルランドのコークでBia Beautyを見つけるのです。これは彼女の息子の肌が過剰に反応しない初めてのクリームでした。Bia Beautyは天然成分の原材料だけを使っていました。

Codex Beautyの開発はパルドス博士がBia Beautyを手に入れたときに始まりました。その時、Bia Beautyの開発者トレイシー・ライアンは彼女自らアイルランドに自生しているハーブを採取していました。このやり方はパルドス博士の大好きなスタイルでしたが、生物工学的な処理を行うのに良い方法を見つけた際に、より最適な採取方法に変更されました。その採取方法であれば自然を傷つけず、持続性を保つというパルドス博士の目標を達成することもできます。そして、もちろん、Bia Beautyの創始者であるトレイシー・ライアンも、Codex Beautyの開発チームに喜んで迎え入れられました。彼女は現在、Codex Europeのマネジメントディレクターです。パルドス博士にとっては社会的な問題も重要だからです。

Codex Beautyは他のブランドと異なって、利益を最優先に考えていないことが大きな特徴です。彼女は、大企業が70ドルで販売する商品を消費者の健康と環境にとってより良いものとするために、わずか30セントのコストも支払いたがらないことがあるのは理解できないでしょう。利益第一主義でない姿勢はBia Beautyの評価を高めています。もう一つの例を見ましょう。クリームが入っている包装チューブは、従来の石油原料のプラスティックではなく、サトウキビ由来のエタノールを使った代替物質からできています。このため、現在問題となっている温室効果ガスの排出量の削減に貢献しています。これは、環境に悪影響を与える物質を減らすだけでなく、より積極的な環境保存効果があります(>>>詳細はこちらの記事をお読みください)。ですが、これらのCodex Beautyの優れた点は、完璧主義的なバーバラ・パルドス博士が成し遂げたことの一部分でしかありません。

そして一般消費者の元にCodex Beautyが届けられます

Codex Beautyは単なる化粧クリームではありません。精密な科学と情熱的な芸術が組み合わさったものです。保存料はいずれも合成成分ではなく、植物由来のものだけが使われています。他の成分に関しても同じです。Codex Beautyは地元で採れる原材料を購入して使用しており、持続可能性に配慮しています。

Bia Beautyに加えて、Codex Beautyはパタゴニアの自然に由来する成分を含むAntüという製品の開発も進めています。また、北極の藻類を利用したSagaという製品も開発中です。これらはまだ特許申請中であるため全ての詳細が明らかにはされていませんが、販売開始がとても楽しみです。

読者の方にはぜひCodex Beautyのウェブサイトを閲覧されることをオススメします。これほど興味深いウェブサイトはなかなか他にはありません。開発チームがどれだけの熱意を持って、細部まで気を配って開発を行ったのかが分かります。>>>Codex Beauty開発チームのウェブサイト(英語)

そしてもちろん、Codex Beautyのマイクロバイオームフレンドリーな製品を試してみてください!

 

2022年05月04日

人間とマイクロバイオーム-細菌にとっての栄養とは

人間とマイクロバイオーム-細菌にとっての栄養とは

細菌にとっての嵐
人間とマイクロバイオームは異なる存在です。そのため、ときには人間にとって問題のないことが、細菌に大きな影響を与えることもあります。

まず、食べ物の質について考えましょう。1日に食べる栄養の総摂取量ではなく、食べ物の質そのものを基準にして考えてみましょう。

現代人に肥満が多い主因が何なのかはまだはっきりとは分かっていません。ですが、これまでの知見を考慮するなら、「脂肪は体に良くない」とか「炭水化物は体に良くない」と言い切ってしまうのは単純すぎます。マイクロバイオームと人間の関係を考えるなら、脂肪や炭水化物の摂取量そのものは、必ずしも健康に大きな影響を及ぼすわけではないことが分かります。

消化管に住む細菌と人間では、同じ食べ物であっても受ける影響は異なります。何を食べるかを決めるときに、人間の視点からではなく細菌の視点から考えてみましょう。そうすると、食べ物が細菌も含めた人間の体に与える影響に大きな違いがあることが分かります。細菌や他の微生物の視点は、人間の視点とどのように異なるのでしょうか? この観点から考えると、食品の加工レベルと食事の頻度の二つが大きなポイントとなります。

健康に良くない食べ物をしばらく食べ続けたとしても、その影響が小さければ、人間の細胞が元の状態に戻るのは難しいことではありません。ですが、健康に良くない食べ物が消化管に住む細菌を、代謝を妨げる存在に変えてしまうのなら、人間の細胞も簡単には元の状態に戻れなくなります。この人間の体の仕組みは、最近新しくわかったことです。

 

「雛鳥」
「雛鳥」 © Виктор Иден – stock.adobe.com

細菌は孵りたての雛鳥や巣立ちをしようとしている雛鳥と同じ困難に直面します。兄弟の雛鳥たちとの食べ物をめぐる競争で頻繁に負けてしまうと、死んでしまうことになります。私たちの体の中に住む多くの細菌たちは、毎日決まった時間に「繁栄するか滅ぶかの戦い」を繰り広げています。人体の細胞は例え食事が数日行われなかったとしても必要な栄養を受け取ることができますが、細菌にとっては生存のために得られる食べ物は全て得なければいけません。人間がよく食べる食べ物から効率的に栄養を得られる細菌はその点で有利です。それでは、細菌にとって食べ物が多すぎたり、逆に少なすぎるとき、または細菌の栄養として良い食べ物が人間にとっては良いものではなかったとき、一体何が起こるのでしょうか?

マイクロバイオームは栄養学の研究の領野を変化させました

この記事では、生物学的にどのような影響を与えるのかに基づいて、人間の食べ物を二つの観点から考えました。一つ目の観点は、人間がある食べ物を長期的に食べたときに、摂取量の大小とは関わらず、どんな種類の栄養が得られるかです。ある栄養が不足した場合や、または逆に、例えばセリアック病になった人がグルテンを摂取した場合は、何らかの症状や病気が起こるはずです。

もう一つの観点は食事をすることや食事の不足が、短い期間で人間にどのような影響を与えるかです。摂取する食べ物の質が低いことによる影響は、時間の経過とともに病気を引き起こすことがあります。例えば、紙で指を切ったときのことを考えてみましょう。傷ができても、健康な体は短い時間で簡単に傷を修復します。ですが、何週間も同じ場所に小さな切り傷をつくり続けると、感染症が起こる可能性が高くなります。食事の品質にも同じことが言えます。質の低い食事を繰り返していると、最後には病気につながってしまうこともあるのです。

食事が人間の細胞に与える影響と細菌の細胞に与える影響の違いの一つは、大雑把に言えば人間の細胞は基本的に同じ状態であり続けるのに対し、マイクロバイオームは恒常的に変化し続けることがあるということです。

従って、健康に良くない食べ物をしばらく食べ続けたとしても、その影響が小さければ、人間の細胞が元の状態に戻るのは難しいことではありません。ですが、健康に良くない食べ物が消化管に住む細菌を、代謝を妨げる存在に変えてしまうのなら、人間の細胞も簡単には元の状態に戻れなくなります。この人間の体の仕組みは、最近新しくわかったことです。

 

ジャガイモの細胞
顕微鏡で見たスターチに含まれるジャガイモの細胞(画像:© ChrWeiss – stock.adobe.com)

人間の体に住む細菌にとっての大きな嵐

栄養濃度が細菌の振る舞いに関わっていることは知られています。一般的に、栄養濃度が濃いほど細菌の毒性を示す働きをするようになります(つまり、「悪い働き」をします、参考文献(1))。ルールが与えられない子供の例で考えてみましょう。このような子供は好き勝手に動き回り、悪い振る舞いをするでしょう。

それでは、細菌にとって栄養濃度の濃いものとは、どんな食べ物が該当するのでしょうか?この問いの答えは、人間にとって栄養濃度が何を意味するのかによっても異なります。細菌にとっては、すぐ近くにある、すぐに利用できるものだけが栄養です。したがって、細菌にとってジャガイモの大きな塊は、ポテトスターチと同じものではありません。ジャガイモの塊は、細菌にとっては繊維質のものなります。繊維質も細菌にとっては良い栄養の一つですが、スターチの方がより価値がある栄養です。ジャガイモなどの未加工の食べ物に含まれるスターチは繊維質の壁に囲まれており、消化管でゆっくりと消化されます。面白いことに、他の食べ物でどのように、またどのくらい、この繊維質の壁が分解されるかはよく分かっていません。ですが、小腸を通して食べ物の細胞から栄養分を可能な限りゆっくりと少しずつ吸収することは、なぜ人工的な加工の少ない食品が健康に良く、加工の度合いが大きい食品が健康に良くないのかを知る手がかりの一つとあります。りんごジュースやスターチ、穀物ミル(小麦粉)は栄養分が繊維質によって覆われていない食べ物です。そして、これらは細菌にとっては栄養濃度の濃い食べ物であり、細菌が悪い振る舞いをするように仕向けます。言い換えると、小腸に到達したポテトスターチが、茹でたジャガイモの塊と同じエネルギーを持っているかどうかはさほど重要ではないのです。細菌にとってどれだけ多くのエネルギーがあるかは、食べ物の構造によって異なるのです。

栄養濃度が濃く、定期的に栄養が送られること(間食)は、消化管の生態系のホメオスタシスの安定には良くありません。従って、細菌にとって次のような食べ物は細菌にとって大きな嵐となります。

  • 非細胞性または栄養分が繊維質で覆われていない食べ物(例えば精製糖やパン)の頻繁な摂取
  • 1日の最初に取る食事と最後に取る食事の間に、短い期間で頻繁に間食を行う事(小腸の細菌にとって栄養が存在しない時間が短くなります)
  • ファイトケミカルの摂取量が少ないこと (細菌の成長が乏しくなります)

このような食事は実際、現代の健康に良いとされる食事のガイドラインの一部に含まれています。つまり、パンなどの穀物を一定量食べ、少ない量の食事を頻繁に取るということです。

過剰な栄養による嵐がさらに強いものになる要素があります。もし、細菌叢に悪さをさせる食事に脂肪が加えられると、悪い影響がさらに大きくなる可能性があります。その理由の一つは、LPS(リポポリサッカライド、細菌の細胞エンベロープに由来し、免疫反応を引き起こします)のような炎症を起こす物質です。LPSは細菌が生成しますが、脂肪に溶けることで、より容易に人間の血流に入り込みます(参考文献2-5)。ファイトケミカルはこの悪い影響を抑えることがあることが分かっています(参考文献5)。

まとめましょう。以上のことは低脂肪食(参考文献6-7)または高脂肪であるが低炭水化物の食事(参考文献8)が脂肪量の低下にある程度有効であることを説明しています。低脂肪食では、LPSを血流に運ぶ脂肪の量が少ないため、比較的多めの小麦粉をベースにした食事でも悪影響はありません。低炭水化物食では、LPSの産生を増加させる炭水化物が少ないため、食事に含まれる脂肪は有害なものとはなりません。脂肪と炭水化物の組み合わせを避けた食事が健康に良いとする意見もあります。

フランス人の食事は健康的?

これまで述べてきた要因が、食事が不健康の原因になるという説にとって重要なら、例外は存在しないことになります。言い換えると、精製糖を多く使った栄養分が凝縮された食事は、全ての人にとって健康に悪い影響を及ぼすことになります。

例えば、1980年代のフランス人の食事について考えてみましょう。卸売りのデータによれば、当時のフランスの食事は1人あたり1日に720kcalの小麦粉を含んでいました。その頃のフランスの肥満率は現在と比べてずっと少なかったのです。このことは、上記の仮説に対して例外となるものなのでしょうか?もちろん、当時のフランスに全く肥満がなかったわけではありません。人口の27%は肥満だったのです(参考文献9)。また、当時のフランスの食事は間食が非常に少なくなっていました(参考文献10)。喫食率や果物や野菜の割合、食品の加工度合いなどの他の要因も、フランス人の食事に影響を及ぼしていると考えられます。さらに言うと、適切な量でない食事が健康に悪影響を及ぼすのには時間がかかります。その悪影響は世代を超えることもあります。例えば、健康に良くない食事がマイクロバイオームを変化させ、そのマイクロバイオームが子供や孫に引き継がれることもあります。子供たちが小さい頃から変質したマイクロバイオームに曝され続けていたのなら、負の影響は大きなものになるでしょう。

参考文献(英語)

  1. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5427672/
  2. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28793772/
  3. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22394503/
  4. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29129737/
  5. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22162245/
  6. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1200726/
  7. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11126204/
  8. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27059106
  9. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10340817/
  10. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4347992/

2022年05月03日

コロナウイルスはどこにでもに存在する?深呼吸して落ち着きましょう

パニックにならず、深呼吸しましょう!

パニックにならず、深呼吸しましょう!
パニックにならず、深呼吸しましょう! (画像: © kegfire – stock.adobe.com)

新型コロナウイルスに関する記事はたくさんあります。ですが、私たちはウイルス学者ではなく、新しく公開される記事には最新の情報がいつも含まれているわけではありません。新型コロナウイルスについて、私たちはどれだけ本当のことを知っているのでしょうか。

実際、政治や専門機関はとても良く動いているように思えます。ウイルス感染の対策が遅れれば人命が失われ、逆に過剰な対策が取られれば経済が犠牲になるのは、最近の事例からも明らかです。

新型コロナウイルスの感染率や年齢ごとの死亡率に関しては、今回の記事では触れません。これらについては未だ十分なデータが存在しないからです。今回の記事では、現在分かっていることに注目します。重篤な症例では、上気道だけでなく肺も大きく傷つけられることに関わる話です。

呼吸以外に、肺にはどんな役割があるのですか?

呼吸以外で、肺の働きについて私たちは何を知っているでしょうか?数少ない肺の専門家の一人が、ドイツのヘルムホルツミュンヘン環境健康研究センター(ドイツ語)のミカエル・シュローター博士です。2019年4月に行われたインタビューで、博士は現在の研究で分かっていることについて語ってくれました。

肺は、呼吸によって体内に入ってきたウイルスや細菌、他の物質に対する最初のバリアとなります。息を吸うことで、私たちは必要な物質だけでなく、不必要なものも吸い込んでしまいます。ですが、体は不必要なものを体内には取り込まないようになっています。そして、マイクロバイオームがプレボテラ属の細菌を一番多く含んだ健全な状態であると、肺の防衛力は最も強固な状態となります。プレボテラ属の細菌が何らかの機能を持っているのかどうかや、持っているとしたらどんな機能なのかについては、明確なことはまだ分かっていません。ですが、すでに多くの細菌が肺に住んでいる場合には、外から侵入してきた細菌はより簡単に撃退されることは分かっています。また、肺マイクロバイオームの細菌は免疫系を強化してくれることも分かっています。

(シュローター博士のインタビューの詳細な内容については、次の記事をご覧ください-「科学者たちがほとんど調査されていなかった肺マイクロバイオームの研究に着手しています」

肺の健康のためにできること?

肺の防衛機能を助けるためにできることはたくさんあります。まず、喫煙をしないことが一番です。タバコを吸わない方や、禁煙を考えている方には良い話ですね。ただし、禁煙の他にもできることはあります。

小さな塵の影響は一般的に過小評価されています。車や工場から出る排ガスのナノ粒子は、肺に大きな影響を及ぼします。住んでいる場所によっては、大気汚染は大きな問題です。例えば、北京、デリー、メキシコシティーやサンパウロなどは、大気汚染が深刻です。大気汚染がひどい都市では、ウイルスの拡散を防ぐ予防策だけでなく、高度に汚染された空気を吸い込まないための予防策も大事なのです。

自宅でも、汚染された空気を吸い込まない対策をすることが大事です。例えば、暖房は大きな問題です。薪オーブンは自動車工場よりも多くの微粒子を発生させます。このことはドイツの雑誌「GEOマガジン」2018年11月号(ドイツ語)の見出しを飾りました。良い機会なので自宅の暖房システムを点検し、薪オーブンを使っているのであれば新しいものに変えることを検討してみてください。日昭時間が長くなって気温が温かくなってくれば、コロナウイルスが猛威を振るっている地域では、暖房の使用は控えるのが良いです。

小さなことですが、その分簡単に対策できることがあります。線香や香り付きのキャンドルなどは、リビングルームに小さな欠片をたくさん落とします。フレグランスの入った加湿器は有害なものが多いです。また、空気中に過剰に湿気が集中するとイエダニやカビが増え、ダニの糞やカビの胞子が人間の肺に悪い影響を及ぼします。過剰な湿気は健康に逆効果です。

健康は体の内側からと言われますが、そんなに簡単なことなのでしょうか?

大気が汚染された都市部に住む全ての人々が、コロナウイルスの感染が拡大したときに避難できる海辺のキャビンを持っているわけではありません。現状では、海辺に行くのも難しいのですが…。また、車や工場から出る排気ガスを完全に無くしてしまうこともできません(例え、現在の都市封鎖によって大気の質が少し改善しているとしてもです)。

また、既往症のある方は、線香やキャンドルを自宅から取り除いたとしても、症状が改善するわけではありません。今回のアドバイスは軽度のコロナウイルス感染症の患者で、自宅で療養する必要があり、少しでも症状を緩和させたい方々向けのものです。日常生活の小さな改善で肺への負荷を取り除くことができれば、重症化を避けられる可能性も高くなります。

自宅の環境を改善した次にできること

私たちができることがもう一つあります。肺を鍛えることは健康に良いことが証明されています。都市封鎖を行っている国でも、エクササイズや早歩きは許可されて場合が多く、奨励されているところもあります。 健康な空気は肺にとても良いです(そして、精神の安定にも良いです)。自宅でのヨガは呼吸法を中心としています。ロープを跨ぐスキップをしたり、ダンスなども心肺系に良い刺激を与えます。そして、最後のアドバイスです。ソファーの上に寝そべってダラダラと過ごすことには、とても良い効果があります。笑いながら歌を歌いましょう。心の底から笑って歌えば、健康にとても良いです。

パニックを起こさず、深呼吸しましょう!

2022年05月02日

加工食品はマイクロバイオームを傷つけ、肥満リスクを高める

加工食品はマイクロバイオームを傷つけ、肥満リスクを高める

P加工食品はマイクロバイオームを傷つけます。
加工食品はマイクロバイオームを傷つけます。

登録栄養士インゲ・リンドセット

2012年に行われたある研究の結果(英語)は不可解なものでした。2グループに分けられたマウスは、同じ脂肪、タンパク質、炭水化物、その他の栄養素を含むエサを与えられました。それにも関わらず、エサが体重の変化に与えた影響が異なっていたのです。1つのグループのマウスは肥満になり、他にも悪影響が認められましたが、もう一方のグループはそうではなかったのです。

この結果は、マウスに与えたエサは栄養素だけが異なるという前提で、マイクロバイオームのことを考慮しないと、説明が難しくなります。というのも、食べ物の違いは栄養素だけではないからです。食べ物がどのように加工されたのかや、食べるスピードや頻度、その他の要因も、食品が私たちに与える影響に関わるからです。これから、なぜマウスが短期間で肥満を起こしたのか考えていきましょう。ですがその前に、食品の原料が収穫された後、人間が何を行っているのかの観点から、私たちの食べ物について考えてみましょう。

食品に含まれる栄養素から食品の構造に視点を変えるときです

食品の原料が収穫された後には加工が行われます。食品加工のさまざまなプロセス中に、原料の構造と栄養素の両方に大きな変化が起こります。栄養素に関して言うと、新しい添加物が加えられたり、原料にもともと含まれていた栄養素が取り除かれたりします。添加物には乳化剤(食べ物の形状を良くするために使われる一般的な添加物)や、甘味料、うま味調味料、穀物の粉末や抽出物、ひき肉、砂糖抽出物、スターチやオイル類があります。食品の栄養素の分析では、これら個々の添加物はあまり重要視されてません。分析では食品の主要な栄養素に着目するからです。したがって、例えば穀粉やグラニュー糖などの加工食品に個別に注目するよりも、加工による影響そのものを調査した方が、「より大きなシグナル」を見つけられる可能性が高いのです。つまり、穀粉や砂糖を含む食品は、それらを含まない食品よりも共通の物理的性質を持っているのです。単純な例を挙げます。日常の食生活と健康への影響を調査する研究でシュガーソースを分析することは、食品の物理的性質を分析することと同じなのです。砂糖が健康に良くない一番の原因が砂糖の持つ物理的性質であるなら、同じ性質を持つ他の食品も同様ものと考えて、加工食品の健康への悪影響の調査対象とすることができます。

現代人は消化しやすい栄養素を含む食品を多く食べています

過去の人間の食べ物について学ぶことは、加工食品が健康に与える悪影響について知ることにつながります。「石灰化した歯石の分析は、新石器時代と産業革命時代の食事の変化に伴って、口内細菌叢も変わったことを示した」という題名の論文は、食品の加工度合いの変化が大きくなったとき、特に農業の開始から産業革命の間の時期には精製糖と穀物の使用が大きく増え、口内細菌叢の構成が大きく変化したことを示しています。口内細菌叢の構成は、健康に大きく関わります。現在、複数の要因によってこの変化を説明できますが、特に重要な要因が一つあります。それは、栄養素の消化のしやすさです。つまり、製粉や他の加工によって、植物や穀物からより多くの栄養を得ることができるようになったのです。

 

何も見えない状態を想像してみてください

そして、飢えで死にそうになっているとき、わずかな量の砂糖と全粒粉が与えられたと考えてください。それまで、砂糖も全粒粉も味わったことがありません。数秒間、あなたは与えられた砂糖と全粒粉に手で触れます。

飢えに苦しむあなたは、砂糖と全粒粉のどちらを選びますか?

この例え話は、リンゴや製粉していない穀物ではなく、砂糖を含む食品やパンを食べたときに、人間の口や腸の中に住む細菌の反応をイメージしたものです。消化が簡単な糖質やスターチに直面すると、生存できるチャンスが大きくなり、細菌の代謝は非常に活動的になります。ある細菌の研究が示すとおり、糖類など栄養素の増加は細菌の毒性(細菌の持つ悪い働き)の強さに関わります。そしておそらく、動物の体の脂肪細胞の調整を阻害する「細菌の領土拡張」にも関わっています(血流中に入り込む細菌の生成物の量が増加(領土拡張)すると、体重調整に影響があることが知られています)。

歴史上のさまざざまな革命的な出来事と、科学的に生産される消化の簡単な非細胞性の食物が西洋の標準的な食事となったことを比較すると、何が言えるでしょうか。現代人はパスタやパン(全粒穀、白パン、クロワッサン、何でも良いですが、これらはほとんどが非細胞性の食品です)、クラッカー、トルティーヤ、ピザ、チョコレート、キャンディー、ワッフル、ドーナッツ、クッキー、そしてソーダなどの食べ物を、アフリカのサバンナに住んでいた人類と比較してどれだけ多く摂食しているのでしょうか?

この変化が肥満や他の生活習慣病の増加にどれだけ有意に関わっているのかを判断するには、将来の研究を待たなければいけません。ですが、少なくともある研究の一つは、非細胞性の食品の摂取量が重要な要因の一つであることを指摘しています。その研究では、一般的に健康的とされている地中海の食事(小麦粉中心の食べ物や、乳製品を含む)を旧石器時代の食事(別の言い方をすると未加工の食事)と比較しています。結論を簡単に言うと、旧石器時代の食事は、肥満に関連する要因に関して地中海の食事よりも優れています。また、地中海の人々で米を多く食べている人は、健康マーカーがより良好でした。米は小麦粉のように簡単に消化できる栄養素ではないからです。

食べ物そのものが健康に悪影響を及ぼすことは滅多にありません。健康な食べ物を不健康なものにしてしまうのは、加工です

最初のマウスの話に戻りましょう。2つのグループの違いは、エサの固さだけでした。不健康な結果を示したマウスのグループは柔らかいエサを与えられ、もう一方のグループのエサは同じ栄養ながら固いペレットを与えられていました。細菌にとっての栄養の消化のしやすさは、どんな影響を起こすでしょうか?関連は明確です。細菌ににって栄養が消化しにくいものだった場合、食べ物や栄養素だけでなく、食品の加工を健康に与える影響の要因として研究対象としなければいけません(エサのペレットはマウスの小腸まで達したときに、少しでも「ペレットの形」を保っていたのかは不明です)。

マイクロバイオームの新しい知識は、食事と肥満の関係について、不可思議な結果をより良く説明できる可能性を与えてくれました。

肉をどの程度ミンチするのか、野菜やその他の食材をどのくらい細かく刻むのか、どの程度の期間貯蔵するのかなどの加工も、食事が健康に及ぼす影響に関わっています(関連記事はこちら(英語))。また、乳化剤や食品加工に関わる他の要因が及ぼす影響については、こちらの記事(英語)をご覧ください。

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