製品に汚染はないか、細菌や菌類が混入していないか?
2022年05月20日
ウイルスが肺に感染するとどうなるのでしょう、どんな状況なら良性なのでしょう?
ウイルスが肺に感染するとどうなるのでしょう、どんな状況なら良性なのでしょう?

最近まで、肺はほとんど無菌状態だと考えられていました。(写真:© sewcream – stock.adobe.com)。
約9ヶ月間、新型コロナウイルスが世界を席巻しています。効率的に宿主を探し、全大陸に広がります。深刻なプラットフォームとして、特に最初の数週間から数カ月間の不確実な時期には、この話題に関する報道を控えたいと考えていました。ウイルスがあまりにも新しいので、単なる憶測に過ぎませんでした。そこで、今回は、ウイルス感染に備えるための基本的な情報に限定しました。
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2020年9月中旬の今日、私たちはいくつかの知見を得ました。そして、このテーマで発表された様々な情報の中から、私たちが良心的に紹介できる健全な研究が登場したことをお知らせします。米国国立医学図書館の国立衛生研究所は、8月中旬にさまざまな研究の概要を発表しました。
PubMedおよびScopusデータベースに検索語(SARS-CoV-2) OR (コロナウイルス病2019) OR (COVID-19) AND (マイクロバイオーム)で登録されている2020年7月20日までの全論文について分析しました。この評価では、肺のマイクロバイオームが健全かどうかということと、Covid-19疾患の重症度との関連に焦点を当てました。基礎となるデータベースは、科学論文をリストアップしています。
健康な肺のマイクロバイオームとはどのようなものなのでしょうか?
最近まで、肺はほとんど無菌状態だと考えられていました。(記事推薦:未解明な肺のマイクロバイオーム)。
実は、健康な肺はそれほど密集していませんが、多様性は比較的高いのです。正常で健康な肺のマイクロバイオームでは、Firmicutes(ファーミキューテス)、Bacteroidetes(バクテロイデス)、Proteobacteria(プロテオバクテリア)という細菌株が優勢で、Prevotella(プレボテラ属)、Veillonella(ベイロネラ属 )、Streptococcus(連鎖球菌族)という属が優勢であることがわかります。肺の病気の場合はその逆で、多様性は低下するが微生物の密度は高まり、やがて蔓延します。そのため、健康な肺のマイクロバイオームは、常にバランスを保っています。免疫細胞の活性化により、炎症や感染症が予防され、安定した免疫力が維持されます。
肺のマイクロバイオームがバランスを崩したら?
研究によると、病気によって肺のマイクロバイオームが典型的な「ミスマッチ」を起こしていることが分かっています。例えば、喘息や気管支炎を患っている患者さんでは、Haemophilus(ヘモフィルス)、Neisseria(ナイセリア)、Fusobacterium(フソバクテリウム )、Porphyromonas(ポルフィロモナス)の存在が増加します。嚢胞性線維症は、古典的にはPseudomonas(シュードモナス)、Staphylococcus(ブドウ球菌)、Stenotrophomonas(ステノトロホモナス)、Achromobacter(アクロモバクター)およびStreptococcus(連鎖球菌)の過剰発現と関連しています。肺炎は通常、肺炎球菌やインフルエンザ菌B型、RSウイルス(respiratory syncytial virus)などによって引き起こされます。換気が必要な病態でも、換気をしていない比較群に比べ、桿菌の密度が高いことが明確に表現できます。Pseudomonas、Corynebacterium、Rothiaの発生が増加し、Streptococcus、Prevotellaの比率は肺炎のない症例より低くなります。
異なるタイプの肺炎であっても、肺のマイクロバイオームの特定のコロニー形成と関連している可能性があります。私たちの肺に誤って定着し、病気を引き起こす代表的なウイルスとして、ライノウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルスなどがあります。つまり、肺のマイクロバイオームの多様性と密度は非常に動的であることが、広範なデータからわかるのです。
肺の構造と病原体に対する免疫
肺はもともと、常に環境からの攻撃にさらされており、それに対処するための合理的な設備が整っています。肺は、酵素、タンパク質、リゾチームを含む粘液の層で囲まれています。これらは、感染の可能性のある細菌を殺すことができます。また、肺の細胞は免疫細胞と常時接触しており、必要な時に迅速な免疫反応を引き起こすことができます。マクロファージ、リンパ球、リンパ系細胞、好中球は、身体の防御機構をサポートします。そのため、有害な外敵が体内に侵入する前に、多くの場合、呼吸器官で無害化されます。
私たちは通常、SARS-CoV-2ウイルスのような病原体を呼吸器から取り込みます。肺に入った病原体は、いわゆるACE2(アンジオテンシン変換酵素)と結合する。エンドサイトーシスが起こります、つまり、ウイルスが体内の細胞に浸透するプロセスです。その後、病原体は繁殖を始め、さらに肺の細胞に感染していきます。感染した肺の細胞は死に、一連の免疫反応と炎症プロセスが引き起こされます。これは現在、SARS-CoV-2感染症の経過についても非常によく知られていることです。
防御システムがウイルスの増殖を止められない場合、ウイルスに支配され、肺は大きなダメージを受けます。体内では、免疫反応として非常に多くのサイトカインやケモカインが放出されます。この炎症亢進の状態は「サイトカインストーム」とも呼ばれ、結果として急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を引き起こし、感染症の最も好ましくない経過をたどり、時には致命的となることもあるのです。また、SARS-CoV-2感染では、マイクロバイオームの変化を伴うことが確認されています。特定菌の増加について記載しました。
この新型コロナウイルスは、一種の「ステルス」、PRR(Pattern Recoginition Receptor)を持たない二重膜小胞など、防衛システムから認識されにくい巧妙な仕組みを持っています。ウイルスは肺に直接付着するため、肺のマイクロバイオームが良くも悪くも経過に影響を与えることは明らかです。
肺のマイクロバイオームと健康な生体防御の関係
肺の細胞が免疫防御を呼び起こすためには、無傷の肺のマイクロバイオームが必要です。安定したマイクロバイオームの形成には、病原体との接触が必要である(特にIL-17産生γδT細胞が重要である)ことが研究により示されています。例えば、ある種の細菌にさらされた新生児は、炎症性呼吸器疾患に対する抵抗力が高いことが分かっています。微生物が豊富な環境(動物、ハウスダスト、花粉など自然環境の影響を受ける)で育った子どもは、喘息やアレルギーの影響を受けにくくなります。
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Covid-19の患者さんに関しては、研究症例数がまだ少ないため、一般論を述べることはできません。しかし、肺のマイクロバイオームとウイルス性疾患について一般に知られていることを考慮しても、重度の疾患と肺のマイクロバイオームとの関連性が示唆されています。健康な対照群と比較して、本疾患の患者さんは肺のマイクロバイオームの多様性が著しく低下していることが分かっています。同時に、Streptococcus(連鎖球菌 )、Rothia(ロシア)、Veillonella(ベイロネラ)、Actinomyces(放線菌)などの日和見病原体の過剰が報告されており、サポート効果を発揮するような共生生物はそれほど存在しない。
別の研究では、Clostridium hathewayi、Actinomyces viscosus、Bacteroides nordiiを病原菌として挙げ、有用菌のEubacterium ventriosum、Faecalibacterium prausnitzii、Roseburia、Lachnospiraceaetaxaが不足していることがわかりました。本研究では、Clostridium ramosum(クロストリジウム ・ラモサム)とClostridium hathewayi(クロストリジウム・ハテワイ)の病原菌の数と病気の重症度には直接的な相関があることを提案しています。細菌の存在に加え、真菌であるカンジダ・アルビカンス、カンジダ・オーリス、アスペルギルス・フラバスも重症化の指標として診断されました。
現在までのところ、肺のマイクロバイオームとSARS-CoV-2の経過との関連を具体的に調べた研究は2つ(研究1と研究2)しかありません。そのため、冒頭で述べたように、一般論を述べるのはまだ早いのですが、それはまさに現在十二分にあることであり、MyMicrobiomeではまさに論文ではなく信頼できる情報を提供したいと考えているためなのです。とはいえ、これまでの結果は興味深いもので、類似の症例に関する研究でも確認されています。肺のマイクロバイオームと病気の経過は直接関係しています。
要約すると、まず、無傷でコロニー化しているマイクロバイオームは、基本的に肺に侵入する病原体のコロニー化を防ぐ可能性が高いと推測できます。第二に、肺のマイクロバイオームは、免疫防御を機能させるための基礎となるものです。したがって、この2つの研究から得られた結論は、肺のマイクロバイオームが欠損していると、急性肺不全を伴う重篤な病態になりやすいということです。
したがって、今後の研究では、この関連性に注目する必要があります。同様に、さらなる研究のアプローチとして、プロバイオティクスによる治療法やマイクロバイオーム移植の有効性を調査することが考えられます。また、この研究の著者らは、Covid-19患者から気管支肺胞スワブを採取し、その配列を決定して、上記の治療法に関する確固たる結論の根拠となる大規模なデータベースを作成することを強く勧めています。
2022年05月19日
プロバイオティクス – 大きな潜在的メリットとリスク
プロバイオティクス – 大きな潜在的メリットとリスク

製薬業界はプロバイオティクスという新しい製品を手にしました。私たちはすでに製薬会社のマーケティング戦略によって大きな影響を受けています。その証拠をお見せしましょう。ヒアルロン酸や抗酸化剤、L・カゼイ培地というキーワードを聞いたことはないでしょうか。また、それらが持つ特別な効果についても聞いたことはないでしょうか。仮に聞いたことがなかったとしても、何かしらの効果があるとされる物質がヨーグルトに入っているならば、とりあえず試してみるのは良いのでしょうか?
今回の記事では、あまり良くは知られていないプロバイオティクスの実態をまとめます。最初に書きますが、プロバイオティクスは体に良く、さまざまな形で健康を支えてくれます。ですが、多くの場合、プロバイオティクス製品を利用してもお金の無駄になってしまっており、有害な影響があることさえあります。
プロバイオティクスの定義
FAO (国連食糧農業機関)とWHO (世界保健機構) はプロバイオティクスに関して共通の定義を決める必要がありました。このことは、プロバイオティクスの問題の複雑さと混乱を示しています。2001年に決められた定義が、国際プロバイオティクス-プレバイオティクス学術機関(ISAPP)によって2013年に承認されました。その定義によれば、プロバイオティクスとは、「適切な容量で使用されたときに、ホスト(宿主)の健康に益する生きた微生物」 です。したがって、ヨーグルトの中にはプロバイオティクス食品と名付けられるものもありますが、この定義に従えばプロバイオティクス(生きた微生物を含むもの)ではありません。 意図的に含まれたプロバイオティクス細菌の属、種、株が分類でき、その効果が科学的に確認できる場合にのみ、プロバイオティクスと言えるのです。
>>> 詳細は「プロバイオティクスとプレバイオティクス」の記事をご覧ください。
プロバイオティクスのメリット
細かい定義までは知らないけど、プロバイオティクスが食べ物に含まれる生きた微生物であることは理解している一般的な消費者の方向けに説明します。正確には、プロバイオティクスにはどんな効果があるのでしょうか?(「健康に良い」という表現は全く答えになっていません!)。実は、まだ正確な答えは分かっていません。現在言えることは、いくつかの点で健康に有益だということです。
プロバイオティクスは、マイクロバイオームを安定させることで、腸内フローラを変化させます。腸内フローラの変化は、代謝物質や、抗菌物質による特定の病原菌の排除によって起こります。このときプロバイオティクス細菌は外へ排除されます。そして、この効果を持続させるためには、プロバイオティクス製品を定期的に摂取する必要があります。
プロバイオティクスは健康に害はないですか?
現時点では答えは明確です。プロバイオティクスとして食品にカプセルの形で添加されたり、直接添加される微生物の培地に関して言えば、それらは腸の健康を強化してくれるということができます。つまり、健康に害はないです。
CNNの番組で次のような警告が行われました。プロバイオティクスはほとんど効果のない誇大広告だと(英語)。アメリカは世界で最も多くのプロバイオティクスが消費されている国です。2007年から2015年の間に、消費数は4倍になりました。アメリカとヨーロッパではプロバイオティクスが市販されています。少なくとも薬局に行けば、プロバイオティクスを手に入れることができます。または、購入に制約のないスーパーマーケットで購入するという方法もあります。CNNによれば、まさにこの点に危険が内在しているのです。
プロバイオティクスが私たちのマイクロバイオームの微生物にとって有益なのは明らかです。ですが、全ての問題を解決するプロバイオティクスは存在しません。事実、ほとんどの「プロバイオティクス」製品には全く効果がありません。それらは適応症なしで使われ、一定の効果すら示しません。ISAPPの定義によれば、そもそもプロバイオティクスとして認められない場合もあります。
プロバイオティクスに効果は認められているのですか?

数多くの製品が「プロバイオティクス」を自称しており(もちろん、その名前は誤っているのですが、誰も気にはしていません)、医学的なアドバイスもなしに市販されています。特定の治療目的のためにどのプロバイオティクス製品を選ぶかは、完全に消費者の選択に委ねられているのです。記事の最初の目的に戻ることにしましょう。たくさんあるプロバイオティクス製品の中から、ある一つを健康に良さそうだからという理由で選んで購入したとしましょう。
購入した方は間違ったものを買ってしまったと少しでも感じるでしょうか?ほとんど場合、摂取したとしても何の害もない代わりに、何のメリットもない製品にお金を費やすことになります。プロバイオティクスには大きな効果があると考えられているのに、これは悲しい現実です。
プロバイオティクスに期待される効果
CNNの記事が言及しているワシントン大学の研究によれば、プロバイオティクスは正しいものを選べば、有益な補助食品となります。正しい選択をするためには、プロバイオティクスの細菌株を正確に知り、治療目的のために適切なものを選ぶ必要があります。従って、適切なプロバイオティクスを選ぶために、私たちは自分のマイクロバイオームを正確に把握し、何が不足しているのかを知り、プロバイオティクスの利用時に重視する必要があります。
市販されている製品の成分表示は役立ちません。多くの表示は曖昧だからです。セルフ・メディケーションや自己判断による服薬も多くは成功しません。正しい医学的監督の元で、臨床的に正確な細菌株を適切な量で、さらに胃の酸性環境にも耐えられるサプリメントの形態で用いることで、初めてプロバイオティクスは顕著な効果を示すのです。
プロバイオティクスの中には未熟児の助けとなるものもあります。また、クロストリジウム・ディフィシルの感染予防にも、プロバイオティクスが有効であることが証明されました。また、クロストリジウム・ディフィシルに感染した後も、プロバイオティクスに基づいた治療は目覚ましい成功を示しています。クローン病や潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群に対しても同様です。
プロバイオティクスの使用で起こりえる最悪のシナリオは何ですか?

とても興味深いのは、複数の研究が、米国の子供の下痢を伴う胃腸炎では、プロバイオティクスの使用を避けるべきだと指摘していることです。一方で、別の研究は、下痢を起こした発展途上国の子供にプロバイオティクスを与えると、病気の期間が短くなることを示しています。これらの一見矛盾する結果は、患者のマイクロバイオームの状態を把握し、それに応じて細菌株を選ぶことの重要性を示唆しています。
プロバイオティクスの代表的な研究者の一人は、プロバイオティクスとして非常に有効な細菌株が複数存在しており、プロバイオティクスの活用を放棄すべきではないと述べています。同時に、誤ったプロバイオティクス治療が感染症を引き起こす点も考慮すべきです。プロバイオティクスは生きた微生物を扱います。最悪のシナリオは、生きた微生物が血管の中に入り込み、敗血症を引き起こすことです。
プロバイオティクスに関して喜ぶべきニュースもあります
読者の方の中には、毎日プロバイオティクスを利用しても別に悪いことではなく、最悪の場合でも何も効果がないだけだと思っているのではないでしょうか。本当のことを知るべきです。市場には、科学的な定義に当てはまらない自称プロバイオティクスが溢れています。または、消費者自身が生きた微生物を不注意に扱えば、体内に侵入させてしまうリスクを冒す可能性もあります。
幸運にも、「マイクロバイオーム・フレンドリー」シールは成功をおさめました。複数の独立した試験において、プロバイオティクスは「成功をおさめた」ことが示されました。研究室では、正確な細菌株を特定したり、有効量を調べる試験や、効果そのものを検証する臨床試験が行われています。そして、マイクロバイオーム・フレンドリー認証シールは、プロバイオティクスが胃の酸性環境に耐え、腸内で作用する生きた細菌であることを保証します。
これらのプロセスを経てはじめて、プロバイオティクスは安心して利用できる効果的な治療となります。
2022年05月18日
体の内側だけが大事なのではありません – 体の外側(皮膚)にも注目しなければいけない理由
体の内側だけが大事なのではありません – 体の外側(皮膚)にも注目しなければいけない理由

私たちは読者の方に GEO誌 (2020年6月、GEO kompakt 59号、ドイツ語)の記事に関心を持ってもらいたいと思っています。記事は「初学者」のためにマイクロバイオーム研究の素晴らしい要約を提供してくれます。また、この分野が現在どれだけ進展したかも示してくれます。
特に、ユテ・エベーレ氏の「驚異的な覆い」という記事に注目したいと思います。この記事は、肌の外皮について論じた8ページと、さまざまな興味深い内容を扱ったインタビューの4ページで構成されています。以下が記事の要約です。
皮膚は一般に考えられている以上の役割を果たしています
一般に、皮膚の役割は低く評価されており、私たちはそのことを当たり前のこととして考えています。論文の著者は、この理由は人々が体の外側の部分よりも内側に注目しているからだと考えています。多くの人々が、皮膚は臓器の一部であり、それも最も大きな臓器であるということを知りません。成人の皮膚は1.5~2qmになり、骨格よりも重量があります。20%の皮膚が失われると、人間は死んでしまいます。皮膚に注目することはとても重要なのです!
皮膚の構造と機能
人間の皮膚は三つの層から構成されています。皮下、真皮、そして表皮ないし上皮です。最も深い層(皮下)は隔離のためにあります。皮下脂肪は体が体温を保持し、過剰な熱を持つのを防いでくれます。また、エネルギーを貯蔵し、外部からの衝撃を和らげるという役割もあります。中間層(真皮)は動脈や静脈、汗腺や皮脂腺が通っています。神経細胞も存在しています。つまり、温度や痛みを感じる機能を持っているのです。脳が真皮から受け取り続ける情報は、人間の生存に関わるのです。皮膚に接触したものは鋭いのかそうでないのか、どんな物体や表面なのか、また危険なものや熱いもの、ケガをするものなのかどうか。これらの判断は、皮膚の感覚器が提供する情報に基づいて無意識に一瞬で決定されます。
しかし、皮膚の役割はダメージを回避するだけではありません。ちょっとした順応によって、座る場所や通り道、物体の角などで私たち自身の重量を感じることで、自分が「私」であり、残りの世界が「外部」であることを認識させてくれます。これは全て皮膚のおかげなのです!
上肌ないし表皮はこの巨大な情報センターの覆いであり、危険な紫外線から守り、体温と水分量の保持を手助けします。私たちの体を覆う真皮は、実際には「私たち」そのものでありません。正確に言うと、私たちの皮膚マイクロバイオームなのです。
細菌は皮膚のシステムの重要な一部です
長年、細菌は接触が避けられないものの、有害で排除すべき存在だと考えられていました。現在では、私たちはこの小さな友人とその代謝物の重要性を理解しており、さらにそれらは皮膚のあらゆる機能の重要な要素であるということも知っています。ある試験結果によれば、複数の微生物の生成する物質が、病原菌の発生を防ぐことを示しています。
>>> 詳細は「ウイルス感染からマイクロバイオームがあなたを守ってくれます!」の記事をご覧ください。
私たちの体に存在する典型的な(そして理想的な)細菌の種類は、体の各部分で特徴的です。放線菌やフィルミクテス、プロテオバクテリア、バクテロイデスは腕や脚の乾いた部分に生息しています。湿った部分(脇やおへそ)にはコリネバクテリウムやブドウ球菌が生息しています。額や鼻、背中などの脂ぎった部分は、プロピオニバクテリウムの住処です。
>>> 詳細は「体のいろいろな場所のマイクロバイオーム」の記事をご覧ください。
皮膚は触れられることを望んでいます
人間の肌は衣服や床、椅子などと絶えず接触しています。気温が低く湿っているか、または暖かく乾燥しているかを、何かまたは誰かと接触することで感じ取るのです。エベーレ氏によれば、特に人との接触の重要性はとても興味深いものです。人との触れ合いは低く評価されるべきではありません。妊娠初期8週目において、胚は母体の人との接触に反応します。そして、私たちは人の体の触れ合いによる刺激を、生涯ずっと必要とするのです。もし、人間同士の接触がなければ(コロナウイルスのパンデミックが引き起こした事態を考えれば分かりますが)、私たちの幸福は失われてしまいます。肌の触れ合いがなければ血圧、心拍数、ストレスレベルも上昇してしまいます。人間同士の接触の欠如は、身体的な不快につながるのです。
スキンケア製品などのクリームを塗ることは皮膚を攻撃するようなことです
もちろん、化粧品や美容業界はこのことをすでに理解しています。良い製品を使えば、クリームは良い効果をもたらしてくれます。香りのついたシャワージェルであれ、ハンドローションやリッチ・フェイスクリームであれ、良い製品は良い効果をもたらします。皮膚はポジティブな反応を示すでしょう。
ですが、私たちの肌を守っている数百万の細菌はスキンケア製品に対してどのように反応するでしょうか?多くの場合、触れ合いはスキンケア製品に含まれる物質よりも良い効果をもたらします。健全な皮膚マイクロバイオームはスキンケア製品を必要としません。ですが、不幸にも、今日では人々の多くは理想的な環境に生きていません。私たちは肌を乾燥させる空調の効いた暖かい部屋に住み、肌に化学的・機械的な影響を及ぼす微粒子や塵に直面しています。また、現代人の仕事は空気を遮断する靴を履いたり、1時間に何度も手を消毒することを求めます。そして、さらに、思春期には、額のにきびを完全に予防するのが難しくなります。長い話を簡潔にまとめましょう。現代人はスキンケアのために定期的なクリームの使用を避けることはできません。
マイクロバイオームを守る
従って、細菌の多様性と皮膚を守るスキンケア製品を選ぶことがとても重要です。そのためには、「マイクロバイオーム・フレンドリー」のシールが貼られた商品を購入するようにしましょう。皮膚の健康に関して、体の内部だけが問題ではないからです!
2022年05月17日
ミュンヘン工科大学のマイクロバイオーム研究 – 排泄物を病気の指標として使う
ミュンヘン工科大学のマイクロバイオーム研究 – 排泄物を病気の指標として使う

ミュンヘン工科大学(TUM)は『魅力的な研究』誌(Faszination Forschung)で定期的に研究目標と成果を報告しています。最近の版(2020年2月24号、ドイツ語) の見出しは、本当に読者を興奮させる内容です。「栄養と健康―食物繊維はなぜ健康維持に重要なのか」、「マイクロバイオーム―人間の消化管の生態系」、そして「AIは植物育種に革命的な影響を与えるか」などの見出しが並んでいます。これら3つのうち2つがマイクロバイオームに関連した内容で、直接的または間接的に私たちの使命に関係しています。今回の記事では、ディルク・ハラー博士(ドイツ語)のヒト・マイクロバイオームの研究に注目したいと思います。
ハラー博士と研究内容について
ハラー博士の記事では、ヒト・マイクロバイオームについての詳細な説明から始まります。この雑誌のターゲット層の読者が研究者、大学で学んだ人、学生、ミュンヘン工科大学の従業員であることを考えると、アカデミックな世界で学んだ人々であっても、マイクロバイオームに関する一般的な知識はまだ十分に共有されていないことが分かります。日々、マイクロバイオーム研究に取り組んでいる方はこの事実を忘れがちですが、博士の記事の重要なメッセージは「情報を伝えることが今でも重要である」ということです。
ハラー博士はミュンヘン工科大学ヴァイエンシュテファン生命科学センター栄養学・免疫学講座の研究長です。博士はまたドイツ研究振興協会 (DFG)による他分野横断研究 (SFB 1371、マイクロバイオーム署名1371-消化管におけるマイクロバイオームの機能的関連研究(ドイツ語))のスポークスマンでもあります。ハラー博士は栄養学の研究を行う中でマイクロバイオームに興味を持つようになったとインタビューの中で答えています。博士は栄養学の研究をしているときに、消化管の中でプレバイオティクスが人間とどのような相互作用を起こすのかという疑問を抱きました。この時から、消化管の細胞は感染を起こす病原菌だけを取り込むという教義に対する疑問が起こったのです。実際のところ、私たちの消化管に影響を与えるのは、ほとんどが無害な、または有益な細菌なのです。 当時は革命的だった考え方が、2005年以降は新しい技術によってシークエンス解析で検証できるようになっています(この技術が導入されてからまだ15年しか経っていないのです)。
ハラー博士がインタビューの中で「人間の中の魅惑的な宇宙」と表現するマイクロバイオームは、長年の読者の方には今ではよく知られているはずです。数百種の細菌が人間の中で平和に共存し、人間と相互作用しているのです。そして、ハラー博士は傷ついたマイクロバイオームと病気の因果関係について発見しました。博士の最終的なゴールはこれらの知見を病気の診断、予後、治療に役立てることです。
>>> 詳しくは「傷ついたマイクロバイオームが健康に及ぼす影響」の記事をご覧ください。
ヒントは人間の排泄物の中にあります – ですが、どうやって調べるのですか?
人々の生活スタイルが消化管マイクロバイオームに影響を及ぼすのは明らかです。ですが、マイクロバイオームから分かることは常に同じです。マイクロバイオームは指紋のように個々人によって特徴的なのです(これは、排泄物の分析によって誰であるかが明確に特定できるということです)。ここ20年の間、ハラー博士などの科学者は、マイクロバイオームから明確に判定できる病気を特定しようとしてきました。この研究のために、ハラー博士は無菌マウスを開発しました。そのおかげで、現在では実験動物を完全に無菌状態で育てられることができ、個体に特有な消化管細菌の構成によって実験結果が影響を受けることなく研究できるようになっています。
例えば、無菌マウスに何かの疾患を持つマウスの糞便を移植するとしましょう。このマウスが病気になると、マイクロバイオームの細菌構成と病気の因果関係の重要な指標となり、遺伝的要因を除外することができます。また、糞便移植による人間の治療は多くの成功を収めています。例えば、クロストリジウム・ディフィシルによる感染症は、健全なマイクロバイオームを移植することで90%が治療できます。
排泄物のマイクロバイオーム分析はどの病気に役立つのでしょうか?
ハラー博士と世界中の研究者がマイクロバイオームと病気の相互作用について研究を行っています。何が原因で、どんな影響があるのでしょうか?具体的には、認知症、自閉症、肝硬変、大腸がん、クローン病、潰瘍性大腸炎、糖尿病などが対象となります。これらの病気の多くは体のさまざまな部分で発生しますが、マイクロバイオームをより良い状態にすることで、病気の状態を改善することができます。
例えば、2型糖尿病の患者が、消化管の概日リズムが乱れていると診断されたとしましょう。研究の長期的目標は、糖尿病と明確に関連するマイクロバイオームの指標を特定し、予後診断に用いることです。理想的には、まだ漠然としているかもしれませんが、マイクロバイオームを変化させることで、病気になりやすくなる要因を取り除けるようになることです。
ハラー博士たちの研究によって、西洋のライフスタイルと、クローン病、潰瘍性大腸炎や糖尿病のかかりやすさの明確な相関を示されました。また、肥満は上記の病気と類似した炎症マーカーを示します。ハラー博士はこれに関して、システム全体を崩壊させる導火線のようなものだと例えます。このシステムの崩壊はある人々ではクローン病とつながり、他の人々では肥満となるのです。産業化によってもたらされた西洋式の生活スタイルはマイクロバイオームを傷つけ、ある特定の病気に対する免疫を弱めたということができます。
>>> より詳しくは「消化器の疾患とマイクロバイオーム、腸内フローラ」の記事をお読みください。
「毎日出すもの」の重量から健康について多くのことが分かります
排泄物の重量について行った世界的な調査によって、植物質の栄養が少ない先進国では、伝統的に植物質の栄養摂取が多い途上国よりも、排泄物の重量が少ないことが分かりました。ヨーロッパとアフリカを比較すると、例えばウガンダ(470g/日)とスコットランド(72g/日)では、なんと6.5倍も異なります。
この結果はとても単純なものに思えますが、実際に単純なことなのです。マイクロバイオームと病気の関連に関して多くの研究が行われています。また、個人的な要因も考慮する必要があります。ですが、マイクロバイオームが傷つくと、がんに至る病気につながることは明らかです。
ハラー博士は研究の目標について次のように言っています。「20年後に他分野横断研究(SFB 1371, DFG)が終わったのち、私たちは次の疑問に答えられるようになるでしょう。どの病気においてマイクロバイオームが重要な役割を果たしていて、どの病気ではそうでないのか。マイクロバイオームが重要な役割を果たさない病気では、何が大きな役割を果たすのか」という疑問にです。
2022年05月16日
マイクロバイオーム・フレンドリー認証テストの基準

マイクロバイオーム・フレンドリーな世界のための基準
早くも紀元前3000年にエジプトで石鹸が発明されてから、人間は、肌に住む小さな友人であり、私たち自身と私たちの肌を守ってくれる細菌や菌類、ウイルス(集合的に微生物と呼ばれます。また、微生物の遺伝子の集まりがマイクロバイオームと言われます)を傷つけることばかり行ってきました。
ですが、この状況はゆっくりとですが変わりつつあります。変化は今まさに起こっている途中で、止めることはできません。この変化は西洋人の生活習慣を完全に変えてしまうパラダイムシフトとなるでしょう。パラダイムシフトは健康についての考え方に起こります。健康についての考え方とは、人間の体と精神、そして共生している小さな友人である微生物を全体的に捉えるような考え方です。
化粧品業界はマイクロバイオームの問題に全力で取り組んでいます
「マイクロバイオーム」という言葉がまだ一般的ではなかったときから、化粧品業界はこの問題に取り組んできました。ですが、多くのいわゆる「マイクロバイオーム・フレンドリー」、「マイクロバイオームにやさしい」と表記された製品が、何の監督や評価も受けずに市場に溢れています。


信頼することは素晴らしいことですが、監督することはもっと素晴らしいことです
マイクロバイオームに配慮したとされる製品や化粧品に関しては、製造メーカーを完全に信頼してしまうわけにはいきません。
また、従来の化粧品も、その多くが程度の大小はあれ抗菌成分を含んでおり、その結果皮ふマイクロバイオームを傷つけてしまいます。私たちはどれほど多くの製品が抗菌成分を含んでいるのか知らないのです!特にデオドラントやクリーム、リップスティック、石鹸、歯磨き粉、マウスウオッシュの多くが抗菌成分を含んでいます。
このような状況は終わりにしなければいけません!
評価基準が明確な、世界初で唯一のマイクロバイオーム・フレンドリー認証テスト!
健康に気を付けている消費者の方たちを、このような現状のまま放置したくはないと思いました。そこで私たちは、世界で初めてのマイクロバイオーム・フレンドリーな製品のための基準を作成し、化粧品やスキンケア製品が皮ふマイクロバイオームに及ぼす影響を評価できるようにしました。製品が認証テストに合格すると、合格したことを証明する「マイクロ・フレンドリー認証」シールをつけることができます。
私たちの評価基準によって混乱した市場に透明性をもたらせればと思います。


私たちのウェブサイトは信用を創出します!マイクロバイオーム・フレンドリー認証テストは科学的知見に基づいています。
人間は、人それぞれ異なった皮ふマイクロバイオームを持っており、さらに肌の各々の部分(顔、お尻、腕、背中…)に異なる細菌群が存在しているため、標準的なテストを開発するのはとても困難です。私たちは肌の各々の部分で特徴的な、鍵となる細菌の80~90%に着目することにしました。試験を行う製品が肌のどの部分に使われるかに応じて、製造メーカーと相談して肌のどの部分をテストするのかを決定します。肌の各部分で、それぞれ異なる一群の細菌をテストするのです。
MyMicrobiome Standardの概要

MyMicrobiome Standard 18.10
MyMicrobiome Standard 18.10は顔と体の皮膚に影響を及ぼしえるすべてのスキンケア製品をテストするための基準です。

MyMicrobiome Standard 19.10
MyMicrobiome Standard 19.10は頭皮に影響を及ぼしえるすべてのヘアケア製品をテストするための基準です。

MyMicrobiome Standard 20.10
MyMicrobiome Standard 20.10は乳幼児の皮膚に影響を及ぼしえるすべてのケア製品をテストするための基準です。

MyMicrobiome Standard 21.10
MyMicrobiome Standard 21.10は女性のプライベートゾーンに影響を及ぼしえるすべてのケア製品をテストするための基準です。

MyMicrobiome Standard 22.10
MyMicrobiome Standard 22.10は足の細菌叢に影響を及ぼしえるすべてのケア製品をテストするための基準です。

MyMicrobiome Standard 23.10
MyMicrobiome Standard 23.10は口内フローラに影響を及ぼしえるすべてのケア製品をテストするための基準です。
マイクロバイオーム・フレンドリー認証テストで何が分かりますか?
認証テストでは、皮膚マイクロバイオームに製品がどんな影響を及ぼすか、さまざまな側面から調べます。


製品を使う箇所の皮膚では、そこに定着している細菌が何の影響も受けずに成長できるか?

製品を使ったとしても、多様なマイクロバイオームが維持されるか?

製品を使ったことで、善玉菌の成長が抑制され、逆に悪玉菌の繁殖が促されるようなスキンバランスの乱れが起こらないか?
製品はすべての評価項目で1から3のグレードで評価されます。すべての評価項目で2以上の評価を得ると、認証テストに合格したものとされます。可能であれば、私たちは製造メーカーに製品をよりマイクロバイオーム・フレンドリーなものにするためのアドバイスを提供します。
製品が皮膚マイクロバイオームを構成する細菌に負の影響を与えないのであれば、認証テストに合格できるということになります。
品質の証マイクロバイオーム・フレンドリー認証シール
製品が認証テストに合格し、マイクロバイオーム・フレンドリーと認定されたら、製造メーカーは合格した製品にマイクロバイオーム・フレンドリー認証シールを付けることができます。
